深海鎮守府と漂着艦   作:henry_stein

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戦艦と蜻蛉

「…ところで、タ級殿は何故我々に味方するのでありますか?」

医務室らしき部屋で合流した時に覚えた疑問をタ級にぶつける。

「タ級…アァ、私ノ事カ。私ハ『コノ土地』由来ダカラナ。仲間ミタイナモノサ。」

タ級が肩をすくめる。

「…仲間、でありますか。」

「アア。皆気ノ良イ奴ダ。トイウカ…私ハ "タ級"ナノカ?」

「えぇ。こちらではそう呼ばないのでありますか?」

「仲間カラハ…ザクセン、ソウ呼バレテイルナ。」

「ザクセン、でありますか。」

「何デモ、"どいつ"ノ未成艦ラシイ。」

カラカラと笑うザクセンに、ふと思いついた仮説を問う。

「…一つお聞きするのでありますが。ザクセン殿の元はなんだったのでありますか?」

「元ハ…確カ、砲戦巡洋艦ダッタハズダ。」

「砲戦巡洋艦、でありますか?」

聞きなれない単語に戸惑っていると、ザクセンが補足してくれる。

「所謂『巡洋戦艦』トカ、ソノ類ノモノダナ。」

「なるほどであります。」

この狭い廊下を走っているうちに、奇妙な感覚を覚えた。

「…何かおかしいのであります。」

「何ガ、ダ?」

ザクセンが振り返る。

「誰もいないのであります。」

「…ソレダケ、切羽詰マッテルンダ。」

そう返され、言葉をつづけようとした瞬間。ひときわ大きな爆発音が頭上から響く。

「着弾でありますか...?」

「イヤ、コッチノ砲撃ダ…第一砲塔ハ動カセタノカ。」

そう呟き、ザクセンが再び走り出す。

「第一砲塔に何か異常があったのでありますか?」

「最初ノ接敵デ、第一砲塔ノ乗員ハ壊滅シタカラナ。」

「壊滅、でありますか…」

「戦艦級相当ノ砲弾ガ、砲塔ニ直撃シタラシイ。」

悔しそうに話していたザクセンが、つと足を止める。

「コノ階段ダ。大丈夫カ?」

「問題ないのであります。」

カンカンと音を立てて登っていくザクセンの後を追い、一つ上のフロアへ飛び込む。

「…此処カラ先ハ、モウ後戻リ出来ナイガ。」

階段を登ってすぐの防水扉に手をかけたザクセンが、つとこちらを見る。

「…本当ニ、後悔シナイナ?」

扉に手をかけたまま、ザクセンが問い直してくる。

「勿論であります!」

自分が即答すると、ザクセンがほんの少し呆れたような顔を見せた。

「…ソウカ、ソウカ!」

嬉しそうに笑い出し、ザクセンが言葉を続ける。

「本艦ハ、貴殿ガソノ義務ヲ尽クス事ヲ信頼シテイル…地獄ヘヨウコソ、アキツ丸。」

扉のハンドルを捻り、ザクセンが力を込めて扉を開く。

ギィと音を立てて開いた扉の先から、嗅ぎ慣れた匂いが飛び込んでくる。

海の匂い、火薬と血、そして死臭。

自分を待っていたのは、地獄だった。

 

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