化け物の奥で水柱が上がる。砲弾が飛び越えた。
「ご…ぜろ……」
観測機から絶え間なく流れ込んでくるモールスを復号化しながら砲弾を手に持つ。
ザクセンが開放レバーを押し出す。白煙を上げる薬莢が音を立てて転がり落ちた。
「飛び越したであります。50m手前に。」
「50mダナ。」
ザクセンがハンドルを回す。砲がほんの少し下を向く。
自分が砲弾を再び押し込み、レバーを引き戻す。
「尾栓閉鎖。撃…」
瞬間、防盾がギィンと鋭い音を立てる。
機銃弾が命中したらしい。
「撃つのであります!」
再び砲が轟音を上げる。化け物が爆風に飲み込まれる。
「効力射!撃ち続けるのであります!」
新しい砲弾を手に持ちながら叫ぶ。
「分カッテル!」
ザクセンが再びレバーを押し開ける。
自分が再び砲弾を詰め込み、レバーを引き戻す。
砲が轟音を上げ、化け物が爆発に巻き込まれる。空に壊れた砲が舞い、ぼちゃりと海に沈む。
「クタバレ、忌々シイ化ケ物ガ!」
「次弾装填で…」
次の砲弾を手に取ろうとし、空を切る。
もう砲弾がない。
「弾切れであります!」
「揚弾筒ハ?!」
すぐそばの箱を覗き込む。
…動作音は聞こえない。
「故障しているか、あるいは砲弾乗組員がいないのでありましょう…」
「…トイウカ、ソモソモ私達ハ物資ヲ運ンデタンダヨナ…?」
「そうでありましょう。先を急ぐのであります。どこへ向かうので?」
ザクセンが少し離れたところの扉を指さす。
「アノ先ダ。」
ガタガタと階段を駆け上がってすぐ、背中を轟音が押し出す。
振り返ると、ついさっきまで2人で取り付いていた単装莢砲が煙を上げ、ぐしゃぐしゃの鉄塊に成り果てていた。
「危なかったでありますな!」
「全クダ。アイツノ知能ガ低クテ助カッタ、トデモ言ウベキダガ…」
木張りの甲板を押し出されるように駆け出したその時。巡洋艦そのものが大きく波に揺られる。
ぐわんとした揺れに体を取られ、その場で尻もちを突く。
「大丈夫カ!?」
「大丈夫であります!扉を!」
慌てて立ち上がろうとするが、波をもろに被っている甲板が嫌というほどに滑る。
「クソ、開ケ!開ケッテ!」
ザクセンが扉を引き開けようとしているのが見える。
つと、空からプロペラの音が聞こえてくる。
放った機体が返ってきたのかと見上げると、まっすぐとこちらに向かってくるレシプロ機が視界に飛び込んでくる。
自分が放ったのは
「――ぁ。」
声が漏れる。体が動かない。完全に固まってる。
動かない体に反して、思考がせわしなく動き続ける。
あれは
1発くらいなら大破しないかもしれない。
本当に喰らっても
艤装も展開している。大丈夫だ。
ぐっと目を閉じ、来るであろう衝撃に備える。
「―――――!!」
誰かの声と共に、自分はドンという衝撃を受けた。