綾小路がAクラス卒業ではなく童貞卒業を目指す話   作:ファウストの劫罰

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#9 お金が無くても幸せはある

 

6月1日。俺たちに振り込まれたポイントは0だった。

茶柱先生が貼り出した紙には、Dクラスを除くクラスが100Pt近く伸ばしている。Aクラスに至っては1004Ptだった。

 

「ちょっと先生!他のクラスはなんでポイント伸びてるんですか!?」

池が声を張り上げて質問する。

「中間テストを終えたご褒美みたいなものだ。100ptが全クラスに支給されている。」

なるほど。やはり、須藤の退学によるペナルティはクラスポイントのマイナスか。

 

「どいうことっすか!」

池は反射で会話してるな…。

 

「もう、察している人はいるんだろう?わざわざ私が言葉にするのも無粋だと思うが、一つだけ情報として明確にしておこう。退学者が出たクラスはマイナス100クラスポイントされる。そういう事だ。」

クラスは動揺に包まれるが、洋介はいちはやく発言する。

 

「須藤君は悪くない。僕のフォローが足らなかったんだ。須藤君を悪く言うなら僕を責めてくれ」

洋介より、クラスに献身的な人間などいない。

誰も洋介を攻めることなど出来るはずもない。

こうして今日も、洋介は理想を追求する。

 

「堀北を責めるのはお門違いか?」

俺は意地悪く隣にいる堀北に聞いてみる。

 

「…一概にそうとも言えないわね」

堀北も須藤の退学には責任を感じているらしい。

「だろうな」

 

「ま、適材適所だよ。堀北。出来ないことはしない方がいい」

「その嫌味も今は痛く聞こえるから不快ね」

「なら、次は失敗しないことだな。今回、お前のせいで須藤は退学して、クラスポイントは0のままだ。責任を感じてるのならそう言うことになるということ忘れるな」

 

「……貴方なら須藤くんを救えたんじゃないの?」

「もし、そうなら、俺に責任転嫁するか?」

「いえ、単純な疑問よ」

「愚問だねぇ〜。私に出来ないことはないのでね〜」

答える気はないので、俺の中の高円寺先生ではぐらかしておく。

 

「くだらない。」

「まあ、真面目に答える気は無いってことだよ。そんな事を今更言ったって何も変わらないだろ?」

「それは…そうね。」

「ちなみに、お前が教えるのを諦めた佐倉。俺が何もしなければ退学していたとだけ言っておく。」

「答えを言ってるようなものじゃない。小テストの時の学力は須藤くんと大して差がなかった佐倉さんを救えたのなら、須藤くんも当然救えたはずだわ。」

 

「まあ、堀北に任せておけば大丈夫だと思ったんだが、買い被りすぎだった。悪かったな」

「……謝られてるのにこんなに腹が立つものなのね。」

「これからは出来ないことに息巻くんじゃなくて、煙に巻いて逃げて、俺に任せてくれていいからな。」

「貴方ねぇ、さっきから下手に出てると思って――」

 

俺は食い入るように言う。

 

「堀北。結果が全てだ。結果が出なかったのに、努力した過程を褒めるなんて慰めはありがた迷惑だろ?結果が出ないということは過程が間違ってるんだから。堀北は今回、過程から間違えていたんだよ。俺たちが勉強会を開いている間に指をくわえて見てた2週間も。須藤に高圧的な態度で接して1日無駄にしたことも。須藤への指導方法も全てが稚拙だった。あんなことで結果は出るはずがない」

 

「さっきと話が違うわね。私の過程を見て、稚拙だと思っていたなら、私に任せておけば大丈夫だなんて発想は出てこないはずよ。」

「ああ。だけど、今回は最後まで堀北を信じることにしたんだ。過程はダメでも結果を出す、結果オーライのケースもあるしな。」

「ああ言えばこう言う。貴方、ほんとにめんどくさいわね。もういいわ」

 

堀北を煽るように言ったが、堀北は責任と自分の不甲斐なさを少なくとも自覚していることは分かった。それは、以前の堀北とは考え方が変化していることの証明だ。

 

今回の件でゆっくりと気付いていくはずだ。ポイント増加のチャンスを無為にしたのは自分だと。自分一人ではAクラスに上がるのなんて絵空事だと。

 

---そうなった時に孤立している堀北が頼れる相手は俺しかいない。

 

――――――――――――――――――――――――

 

6月はこれといったイベントもなかった。

クラスポイントは0Ptのままで俺たちの生活は質素で色のないものだ。

他クラスとの貧富の差は圧倒的で、劣等感に苛まれる日々が流れていく。

 

洋介も声をかけたりして、必死に繋ぎとめているが、クラスメイトの顔付きは洋介の望むそれではないだろう。

 

平田は放課後部活動に行く。放課後にやることがあるからだ。

もちろん、期末テストに向けての勉強も少しずつ進めている。

だけど、それをやらせ続けるのはまずい。ポイントも無く、部活動にも参加していないメンバーには娯楽が無いからだ。

 

娯楽は心にゆとりを与える大切なものだ。

 

その日の放課後。動くことに決める。

 

「軽井沢。ちょっといいか?」

「え、うん。なに?」

「いつも、放課後何やってるんだ?」

「何って、そんなに大したこと出来てないわよ」

 

軽井沢はこの間の中間テストの時、講師役との俺とグループのみんなとの橋渡し役を上手くこなした。

軽井沢グループでの軽井沢の立ち位置は揺るがないものになりつつある。

 

「今日は何する予定なんだ」

「今日は佐藤さんと篠原さんと部屋でお話することになってるけど。」

「丁度いい。その2人も合わせて俺の部屋に来てくれ。やりたいことがある」

俺は、軽井沢に部屋番号を言い渡す。

突然の出来事に驚いてるようだ。

 

「え、何するの?」

「なんてことは無い。ただお話するだけだ」

「…女子がお話っていう分にはいいけど、男子がそれ言うときもいだけだから、辞めた方がいいよ」

「それ、女子の共通認識か?」

「たぶん。そうなんじゃない?」

「分かった。これからは辞める」

このへんの感覚は俺にはまだ掴めていないな…。

 

寮の狭い部屋に呼べる人数は限られてくる。

俺含め現時点で4人。あと呼べても3人が限界か。

俺はメッセージで松下とみーちゃんにも声を掛ける。

やはり、やることは無いのかすんなりと承諾された。

後は……。

 

「外村。ちょっといいか?」

「おお。綾小路殿。どうしたでござろう?」

「今日これから暇か?」

「拙者、4月にポイントを費やしてしまったが故に最近はずっと暇である!」

外村はアニメや漫画が大好きだ。それとタブレットを購入して、色々やってるようで電子の分野にも優れた能力を持つ。

 

外村の生活は娯楽に溢れている。

持続的にポイントを必要とする趣味じゃないからだ。

だからもし、生徒をリフレッシュするという目的なら、外村は今日、必要ない。だけど、俺の目的はそうじゃない。

 

「今日俺の部屋で、ちょっとした企画会議をやるんだ。参加しないか?」

「ほう…。企画会議…。いい響きである…。拙者、馳せ参じませう」

俺には理解出来ない口調を多用する外村。

了承してくれたことだけ分かった。

 

「なら17時になったら俺の部屋に来てくれ。」

 

これでメンバーは集まった。計7人だ。

俺はケヤキモールによって買い物してから帰る。

寮の部屋を軽く掃除して、17時を待つ。

 

17時を近付くにつれて続々とメンバーが部屋に訪れてきた。

俺の部屋は色の無い部屋のままで、各々、何も無い!と反応していく。そして、17時になる前に全員が揃った。

 

俺は先程ケヤキモールで購入した1つ100Ptの格安のクッションを皆に渡す。

黒いクッションカバーも購入したので、1ペア200ptの7つで1400pt。そこそこ手痛い出費だが、佐倉の時の反省を踏まえても必要経費だ。

 

俺はベットに腰掛けて座ってるみんなを見下ろす形をとる。

 

「今日は集まってくれてありがとう」

我ながら、洋介が言いそうな台詞だなと思う。

 

「綾小路殿、碇ゲンドウみたいでござる。」

「は?何言ってんのこのオタク。それより。何するのかまだ聞いてないんだけど~」

「それは今からみんなで考えようと思っててな」

「え?どゆこと?」

口々に疑問の声が飛び始める。

外村の比喩表現がオタクの一言で一蹴されていて可哀想だった。

 

「簡単に言えば企画会議だ。皆ポイントが無くて、遊びに困ってる。だから、ポイントが無くても楽しい遊びを求めてるんじゃないか?」

 

「なるほどね。あんたもたまにはいいこというじゃん。ちょっと楽しそうだし」

 

軽井沢はこういう時便利だな。

波紋の如く広がって、俺の意見は支持されていく。

 

「ただ、いきなりこの場でそんなことを言われても、中々案が出るとは思えない。だから今日は、俺が企画案を持ってきた。聞いてもらえるか?」

 

面々が頷くの見て話を進める。

俺は先程ケヤキモールで買ってきたトランプを2セット取り出す。

 

「例えば、こんなのはどうだ?放課後定期的にトランプ大会を開く。そして、6月最後にトータルの成績が1番良かった人にプライベートポイントが贈呈される。こんな遊びだ」

 

「そのプライベートポイントは誰が出すの?」

「1人参加費300ptを徴収する。それなら個人の負担も少なく済むだろ?」

「なるほどね。300ptなら払えるかも。」

この参加費徴収は譲れない工程だ。

たかが自販機のジュース二本分。払えてもらわないと困る。

 

「今回、参加してもらうように呼びかけるのは部活動に参加していない人達。クラスの半数は部活動に参加していない事も踏まえると約20人。全員は無理だとしても15人程度は集まると思う。そうすれば合計4500ptだ。それに企画する俺としては大勢に参加してもらいたい。だから、個人的にもう少し賞金を用意するつもりだ」

 

「え、綾小路くんがポイント出すの?」

「ああ。参加者が何人であれ、1万Ptまでは賞金額を引き上げる予定だ」

「え、いいの?」「そんなの悪いよ」

俺がポイントを出すと聞いて、流石に悪いと声があがる。

 

「気にしなくていい。俺は企画する側だしそれくらいの方が参加する気になるだろう?それに、俺も参加するんだ。俺が得することも全然ある」

「…でも」

それでも、まだ納得はしてないようだ。仕方ない…。

これは奥の手段で、あまりやりたくなかったが…。

 

俺は外村に目配せする。今まで黙っていた外村は口を開いた。

 

「綾小路殿。それでは綾小路殿が……」

 

「大丈夫。僕、トランプ最強だから」

 

限りなく中村悠一の声に寄せて言う

 

これは外村が言っていた。今1番アツいアニメの台詞。

外村曰く、この作品は義務教育であり、知らない人などいないと言っていた。

ならば、このネタがウケることは必至。のはずだ…。多分。

 

だが、この場の空気は凍りついた。

隣の外村は「最高の出来でござる〜」っと言っているが、この場は最悪の空気だ。

 

そういや、外村はさっき盛大に滑ってたのに平然としていた。

その時点で気づくべきだったのだ。

 

だけど、1人、控えめに吹き出して笑いを堪えてる人がいた。

みーちゃんだ。

そう言えばみーちゃんは日本の漫画やアニメの文化を好きと言っていたな。

そして、みーちゃんは笑いを堪えらなくなったのか、口を大きく開けて笑った。

 

「あはははは」

 

俺が滑ったことよりも、普段、控えめに笑うみーちゃんが吹き出して爆笑していることに皆の目が行く。

一通り笑い終えた、みーちゃんが俺の方を向く。

 

「あ、綾小路くん。それ、流行ったの1年前だよ」

笑いの涙を目に貯めながら、みーちゃんは笑顔でそうツッコんだ。

 

世間の流行に疎い俺がみーちゃんに言い渡された衝撃の事実に空いた口が塞がらない。

 

「綾小路くんって、たま~にちょっと無理するよね〜。今もそうだけど。自己紹介の時も」

松下にそんな指摘をされる。

 

「そうだね。そんな無理しなくてもいいのにって思う時ある。さっきのは…面白かったけど」

みーちゃんもそれに乗っかるように笑いながら言う。

 

一見成功してたように見えた自己紹介の時のラップも今の1発ギャグのようなネタも普段の俺とは乖離しすぎていたようだ。

 

軽井沢はニヤついた表情でこっちを見て核心に触れる。

 

「確かに〜。無理してる時の綾小路くん。陰キャが頑張って陽キャのフリしてる感じあるかも〜」

おい。軽井沢。その台詞は多方面に刺さってるぞ。

俺が弄られてるのを見てか、みーちゃんが滔々と話し始めた。

 

「…綾小路くんが凄いのはみんな知ってるよ。須藤くんが退学して、落ち込んでた平田くんを助けたことも。私達に勉強を教える時、色々工夫して良い点数を取らせようと頑張ってた事も。綾小路はそのままで十分……かっこいいから、無理しなくてもいい思う」

 

顔を赤くして、照れながら言葉を紡いだ。

その照れたみーちゃんを暖かく見守るような空気が女子達の中で生まれていく。

俺は直接みーちゃんに勉強を教えていないが、俺の工夫を知っていたらしい。

 

「ありがとう。確かにちょっと無理してたかもしれない。これからは気を付ける」

 

俺がそう返すとみーちゃん、笑って頷いた。

軽井沢は仕切り直すかのように手を叩いて、提案する。

 

「そうだ!じゃあ、綾小路くんがトランプ最強ってことを今から証明してもらおうよ〜」

その発言を聞いて松下も乗っかることを決めたようだ。

 

「じゃあ、それが証明出来なかったらさっきの話無しね」

「そうしよ〜」

 

どうやら、今からのトランプ負ける訳には行かないらしい。

 

神経衰弱。大富豪。七並べ。ダウト。

 

この後行われた全てのゲームで俺は運良く、好成績を収める。

イカサマしてるんじゃないかと軽井沢に疑われたレベルだ。

 

これで晴れて賞金額1万円のトランプ大会の開催が可決された。

 

この日、実感したことがある。

 

今日の集まりは俺が誘ったこと。

異性だけを誘っては外聞が悪い。

洋介がモテてもあまり、女子から避難の声がないのは、男女問わずに接し方が変わらないからだと分析した。

 

だから、俺は慎重な判断の元、外村を選んだ。

結果からして外村は傍に置いておく友達としてはやはり適してる。

 

現実の女子にはコミュ障を発揮する点と二次元で満足してしまってる点。

そして痛い言葉遣いとあけすけにしてるオタク趣味は女子にはウケが悪い。

だけど、性格も温厚そのものだし、悪いやつではないのも周知の事実。

 

だから、一緒にいて、仲良く接していても評判が落ちない点も清隆的にポイントが高い。

 

ちなみにこの語尾も外村に教えてもらったものだ。

この語尾もトレンドだと言っていたが、今回の反省を踏まえて外村の話は信じないことにする。

 

あれだな。合コンの時に隣に自分より低スペック置いておく。あの感じに似てる。

池や山内では同じ効果は得られない。

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

次の日の放課後。

トランプ大会の参加希望者は集まってきた。

参加資格は300Pt支払える能力があることと、部活に所属していないことのみ。比較的低いハードルだ。

部活に所属していない生徒で参加しなかったのは、堀北と幸村。そして、池と山内だ。

 

当初の予定通り15人集まった。

 

2つのグループに分けてトランプ戦行う。

次の機会では人をシャッフルする。

このルールで何回か大会を行って、1番好成績の者にポイント贈呈という流れだ。

 

参加出来なかった池と山内は4月時点で0ptまでポイントを使い切っており、絶対返すという根拠無き事を相手と約束して5月にはお金を又借りするような行為をしていた。

 

彼らが参加する資格を持てるはずは無かった。

 

佐倉も最初は渋っていたが、唯一話せる俺と一緒のグループに混ぜるという条件を出すと、了承してくれた。

組み合わせを変える権限は俺にあるからな。

 

これも合コンと同じ。幹事は少しの融通と幅をきかせられるのだ。

 

トランプを選んだのは正解だった。

 

運の要素も大きいため、トランプ大会はいい息抜きになる。

将棋やチェスなどの実力重視のボードゲームにしていれば、普段の勉強に現を抜かして、こっちの大会に尽力する人も出てくるだろう。それは本末転倒だ。

 

いい感じに息抜きできたのか、生徒の表情は日に日に明るくなっていった。

椎名もこないだ会った時に、Dクラスは楽しそうで少し羨ましいですなんて零していた。

 

彼女も彼女なりにクラスでの悩みを抱えてるのだろう。

 

「綾小路くん。ありがとう」

「洋介。言っただろう。俺を頼れって」

洋介にはまだ迷いがある。

 

「別に些細なことでもいい。少しでも悩みがあれば、すぐに俺に頼ってくれ。洋介は軽視してるかもしれないが、お前が感じた悩みの種は、対応が遅れるとすぐに取り返しのつかないことになる。…繰り返すつもりは無いんだろう?」

「うん。繰り返すつもりは無いよ。綾小路くん。…綾小路くんがクラスのリーダーをする選択肢はないの?」

 

俺はここで洋介に少し情報を開示する。

 

「ないな。洋介がリーダーを下りるなら、俺も傍観する。俺がやるのはお前の手助けであってクラスの手助けじゃないからだ。」

「綾小路くんはAクラスには興味が無いの?」

「ああ」

その事について洋介は詳しく聞いてこない。今はそれでいい。

聞かれても答えられないからだ。

 

「分かった。今度からは些細なことでも綾小路くんに相談する。今回はありがとう。綾小路を頼ることすら出来ない頼りない僕を助けてくれて。」

あと一押しだなと、俺は確信する。

 

「洋介。俺の事は名前で呼んでくれないか?」

洋介は驚いたような顔を見せる。

俺からこの提案することは無いと踏んでいたのだろう。

 

「うん。僕もいつか呼べたらって思ってたんだ。清隆くん。これからもよろしく」

 

名前を呼び合うことで、心理的に距離が近づくと、図書室の文献を参考にした。

どこまで効果があるかは分からない。

 

だが、洋介は人を頼ることが出来ない頼りないリーダーだと自覚した。

それを自覚することは、過去を俺に明かした洋介と底の見えない俺の間にあった見えない壁を取っ払うだろう。

 

そして今、俺たちの間にあるのは、洋介が悩んでた種を俺が綺麗に刈り取った事実のみ。それさえあれば信頼関係が築ける。

 

洋介絡みの面倒事も増えるかもしれないが、これは必要なプロセスだ。

 

――――――――――――――――――――――――

 

「トランプ大会!優勝者は〜みーちゃんです!」

 

櫛田の声により、優勝者が発表される。続けるように櫛田は言う。

 

「そして、惜しくも準優勝!企画の綾小路くんでーす」

最後は俺とみーちゃんの一騎打ちのような形だった。

俺は相手が誰であれ、勝つつもりは無かった。

俺が勝っても白けると思ったからだ。

 

みーちゃんなのは偶然だが、優勝はみーちゃんであって欲しいと思っていた。

みーちゃんは俺がポイントを多く出した事実を知っている。責任感の強いみーちゃんが得たポイントの使い道は還元だとしてもおかしくない。

 

優勝者のみーちゃんと準優勝者の俺は並んで表彰台(教壇)に立った。

 

「最後は負けたよ。おめでとう。みーちゃん」

俺は惜しみなくそう言う。

 

「では、優勝のみーちゃん。その賞金の使い道はどうするんですか?」

櫛田はノリノリで司会する。凄く様になっている。

 

「え、ポイントの使い道……?」

「そうです!何かあればお答えください!」

一歩間違えればダル絡みだふが、櫛田にその辺の抜かりはない。

 

みーちゃんは考えるような素振りの後、隣にいる俺の方を向いた。

 

「じゃあ……綾小路くん!」

「何だ?」

「2人でご飯行ってくれませんか?」

 

みーちゃんは十名のほどの観衆の中そんな風に俺を誘ってきた。意外に大胆だ。

 

「俺でいいなら。喜んで」

 

俺とみーちゃんを邪推するような雰囲気ではなく、暖かい拍手の中、大盛り上がりのトランプ大会は幕を閉じた。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

7月になっても、俺たちのクラスポイントは変わらず0ptのままだった。

だが、0Ptでもこのクラスなら楽しく過ごせると考える人も多いようで先月のようなどんよりとした空気は無い。

他のクラスは……

 

俺は黒板に貼られた紙と前回の結果を見比べる。

 

特筆すべきはCクラス。50ポイント引かれている。

Aクラスは1004Ptのまま変わらず、Bクラスも僅かだがポイントが減っている。これは何かあったと見るべきだな。

後で椎名に聞いてみることにしよう。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

朝のホームルームに椎名にメッセージを送る。

が、放課後になっても既読が付かなかった。

いつも、すぐに返信してくる椎名にしては妙だった。

 

俺たちは既に期末テストへ向けての勉強会を始めていた。

今日も今から、その勉強会の講師役をする。

 

平田、櫛田チームは教室で、俺のチームは図書室で行うことになっている。

 

俺は放課後、いち早く、図書室に向かい、席を確保した。

すると、いつもより人が多くなっていく。

 

見覚えある集団はBクラスだ。どうやら、面々も図書室で勉強するようだ。

俺は軽井沢達に早く来るようにメッセージを送っておく。

席の取り合いになるのも面倒だ。

 

「君、ここの席使うの?」

 

薄ピンク色の髪の毛が特徴の女子生徒が話しかけてくる。

何処かで見た顔だ。

その生徒は俺が確保している図書室の角の10席の大きいテーブル席を見てそう聞いてくる。

 

「ああ。悪いけど、すぐにクラスメイトが来るんだ。ここの机だけは使わせてもらいたい」

「あ、ごめんね。取ろうとしたわけじゃないの。確認したかっただけ。でも、その言い方だと、隣のテーブル席は使っていいんだよね?」

「ああ、それは構わない」

彼女はそれを確認すると、Bクラスの生徒に声をかけ、俺に確認をとったテーブル席に座らせた。

 

「ありがとね。静かにするから迷惑はかけないよ・・・あれ、何処かで会ったことある?」

 

一之瀬はそう言ってジロジロと俺の顔を観察するように見る。

 

「あ!4月中旬くらいに職員室の前で会ったよね?」

俺はそれを聞いて思い当たる。確か生徒会云々言っていたな。

 

「確かにな。」

「ここで会ったのも何かの縁だね。私は一之瀬帆波。君は?」

その少女は一之瀬と名乗る。

 

「俺はDクラスの綾小路清隆だ。」

「綾小路くんか~。よろしくねっ」

「ああ、よろしく」

何をよろしくされたのか分からないが、話はこれきりのようだ。

 

気まずくなって、俺が軽井沢達が早く来ないかと入口の方を見ていると、騒がしい連中が入ってきた。

態度も素行も図書室には相応しいとは思えない。

 

「あれ?勉強するしか能のないBクラスのお利口ちゃんたちは今日は図書室で仲良くお勉強か?」

 

体格は良さそうに見える男がBクラスの面々に頭の悪そうな言葉を吐く。

Bクラスの面々が顔を顰めている。

 

そこに一之瀬が割って入るのと、椎名が走ってくるのは同時だった。

 

「何か用かな――」

「やめてください。石崎くん。図書室を使ってる皆さんの迷惑です」

 

先程の頭の悪そうな発言をしたのは石崎という生徒らしい。

 

「うるせぇな。椎名。関係ないだろお前には」

そう言って、石崎の制服を掴んで、止めようとする椎名の手を払う。

椎名はバランスを崩し転んでしまった。

 

「関係あります。私も同じCクラスの仲間です。」

転んでもなお、石崎への説得はやめそうになかった。

Bクラスの面々もCクラスの内乱には驚いてるようだ。

 

「こっち見てんじゃねぇよ」

石崎の隣にいた生徒もまた口悪く言い放つ。

 

俺は割って入ることに決めた。

椎名のためじゃないぞ?図書室という神聖な場所で騒がれるのは気が済まなかったんだ。

 

「これ以上、騒がしくするようなら先生を呼ばせてもらうがいいか?勿論、その際には、俺はCクラスのお前たちがBクラスに煽るような行為をしていたと説明することになる」

 

石崎という男の目を捉えて言う。

石崎の隣を通り抜け、後ろで転んでいる椎名に手を伸ばす。

 

「大丈夫か?」

「…はい。大丈夫です。ありがとうございます。綾小路くん」

 

椎名は俺にだけ聞こえるような声でそう言う。

椎名を引き起こすタイミングと同時に石崎は話しかけてきた。

 

「お前、誰だよ」

石崎という生徒は俺を睨むようにして言う。

 

「俺はDクラスの茶柱だ」

石崎ではなく隣の男がそれを聞き、嘲笑を浮かべ口を開く。

 

「はっ!どこの誰かと思えばDクラス!?中間テストで退学者を出した間抜けクラスじゃねぇか。どうだ?0Pt生活は?楽しいか?」

茶柱という名前よりもDクラスであることの方が彼らには大事な情報らしい。

 

「ああ。血の気が多く、醜く煽ることしか出来ないお前らよりはこの学校を楽しませてもらってる」

「…口だけは達者だな」

「どうやら、周りが見えなくなるほど、その筋肉で出来た頭に血が上ってるらしい」

 

俺の言葉を聞いて、周りを見渡す石崎とその他。

周りの生徒は皆、石崎達を鬱陶しく思ってることは一目瞭然だ。

それに気づいた時、お前らの居場所は無い。

 

石崎達は舌打ちして俺の横を通り過ぎる。

 

「覚えてろよ。茶柱」

ああ。お前こそ、その名前をよく覚えておけ。

 

Cクラスの面々は図書室から去っていった。

 

「綾小路くん。ありがとうございました。私は後を追います」

椎名も再度俺にお礼をして図書室から出ていった。

 

「いやぁ、Cクラスの人達にも参るね〜」

一之瀬はいつの間にか俺の隣に立っていてそんな風に言う。

 

「Cクラスにしつこく絡まれているんだろ?大変だな。Bクラスも。」

「およよ。何で執着されてるって分かったの?」

「石崎の口振りだ。『今日は図書室で勉強か?』が不自然に聞こえたからな。」

「にゃるほどねー。」

 

勿論それだけではない。むしろそれだけで判断してしまうのなら浅はかだ。

石崎が稚拙な言動を考慮すれば、単に日本語が不自由なだけであることを拭い切れないからだ。

 

BクラスがCクラスに絡まれていると思った根拠は別にある。

 

まず、石崎に煽られた時Bクラスの面々は皆、初めて絡まれたような反応じゃなかった。

 

それに加えてクラスポイントの増減。

Bクラスは5月から6月でクラスポイントは100Pt増えたものの減点はなかった。

授業態度などは完全に改善されたこそ為せる技だ。だからこそ、6月から7月の間にクラスポイントが減っているのは、何かアクシデントがあったことを示唆している。

 

だが、こんな推理を一之瀬に聞かせる理由も意味も無い。

 

一之瀬が何かを語ろうとしたがその前に、軽井沢達が図書室にやってきた。一之瀬は言葉を飲み込んでお礼を言う。

 

「ありがとうね。綾小路くん。助かっちゃった」

 

俺が動いたのは図書室の秩序を守るためだが、それを伝えるのはかっこつけすぎだろう。

…まあ、Bクラスにも借りが出来たと思えば好都合だ。

 

「気にしなくていい」

 

その後の勉強会は滞りなく進行して、その日は終わった。

 

――――――――――――――――――――――――




須藤の名前が出るのもこれで最後かもしれません。
R.I.P

やっとタグの一之瀬が出てきました。

退学者が出た時のペナルティってクラスポイント-100だった認識だけど誤ってるかもしれません。もし違ったら教えてください

p.s正直、呪術廻戦の五条悟の下りはマジで要らなかったと思う
全部外村のせい。


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