綾小路がAクラス卒業ではなく童貞卒業を目指す話   作:ファウストの劫罰

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#11 あくまでチェック。

 

「清隆くん。幸村くんと堀北さんどうにかすることできないかな。」

 

洋介はそんな風に俺に相談してきた。

彼が幸村に勉強会の講師役をお願いして、うまくいかなかったのは知っている。

 

そして、彼が幸村に声をかけた目的は勉強会の講師役の負担を軽くすることではなく、孤立している幸村をクラスの輪に入れることだ。

 

「今はまだ無理だな」

「…そっか」

洋介の顔つきは少し暗くなる。

 

「焦るな。洋介。堀北も幸村も勉強ができる生徒だ。少なくとも退学者が出ることに繋がらない。二人とも一人でいる事を今は望んでいる。お前がやるべき事は堀北や幸村を取り込む事じゃない」

 

洋介は俺の言葉を咀嚼するように聞き入る。

 

「清隆君。僕はどうすればいい?」

「幸村や堀北が一人でいる事を悪く言う生徒が出てくる。いや、もう出てるかもしれない。それを懸念してるんだろ?洋介は。」

「うん。そうだね。そんな話も聞かないと言えば嘘になる。それと、この今のクラスの立ち位置が固まったまま時間が進むのが怖いんだ」

 

洋介は今、クラスの結束力が強くなっていってるのを感じてる。

そこの輪に後から入るのは簡単な事じゃないことを知っている。

 

「高円寺はいいのか?」

今、クラスで明確に孤立してる生徒は幸村,堀北,そして高円寺だ。

先程、平田は高円寺の名前を挙げなかった。

 

「高円寺君は…」

「洋介が高円寺の名前を挙げなかったのは、高円寺をどうにかする手段が無いと思ったからだろ?俺もその通りだと思う。だけど、高円寺は無理で、堀北と幸村をどうにかできると思ってるのなら間違ってる。今の段階では、堀北も幸村も高円寺と同じだ。どうしようもできない」

 

それに、三宅は洋介、長谷部も櫛田の方の勉強会には参加しているが、他の生徒のように毎日のように参加してるわけじゃない。

必要だと感じた時に参加する。そんなスタイルを取っている。

それこそが勉強会の本質だ。クラスの結束力が高まっているのはあくまで副産物だ。

 

「洋介、孤立している生徒は悪じゃない。それを悪く言う方が悪いんだ。その根本にある線引きだけは失うな。楽に逃げるなよ。」

 

人は正しい道標を持ってないと楽な道へと進む生き物。

洋介は孤立組に陰口を叩く大勢を矯正することよりも,孤立組を無くすことで問題を解決しようとしてる。

 

「清隆君。ありがとう。」

「もういいのか?」

「うん。おかげで僕が間違ってることがわかった。やるべき事が見えてきた。」

 

洋介は俺の言葉を正しく理解したようだ。

顔つきは先程までと違い明るい。

 

洋介は今後、その陰口を言う生徒を執拗に咎めるだろう。 

俺が洋介に与えた、行く先を示す方位磁石は正しいようで正しく無い。

陰口や愚痴を失くすなんて理想が叶えるのは一之瀬率いる仲良しBクラスでも不可能だからだ。

 

だから、洋介はその断罪行為によって一部からは必ず疎まれる。

洋介の理想の追求は他人に価値観を押し付けている事に他ならないからだ。

 

それは洋介の魅力に、泥を上塗りする事になる。

 

――――――――――――――――――――――――

 

「石崎。今,何て言った?」

「はい!Dクラスの茶柱に横入りされて邪魔されてしまって…」

「馬鹿が。それはDクラスの担任の名前だ。」

龍園は石崎の腹に容赦なく、蹴りを入れる。

 

「す、すいません」

「それに、俺は言ったはずだぞ。Bクラスに動きがあれば、報告しろって。勉強する場所を教室から図書室に移したんだ。それは立派な動きだ。勝手な判断でチャンスを逃して責任が取れんのか?あ?」

龍園は腹を抑えている石崎の胸倉を掴み引き上げる。

 

「しかも、Dクラスの雑魚に仲裁されて、おめおめ引き下がって来たわけだ。」

石崎の顔つきは恐怖に支配されている。

もう言葉を発することも出来なかった。

 

「ふっ。まあいい。今回はもうBクラスは辞めだ。人の目の中に逃げ込んだ以上、手を出すのは藪蛇。それより,そのDクラスのふざけた野郎。そいつの情報を持ってこい。だが、無用な真似だけは絶対にするな。向こうのクラスポイントは0ptだ。痛い目を見るのは一方的に俺らの方だ」

 

石崎は龍園に睨まれながら、声を絞り出す。

 

「わ、わかりました」

「分かったならもう行け。2度とくだらん報告はしにくるなよ」

 

石崎は走って龍園の元を去った。

龍園はBクラスへのお遊びを経て少しずつ、学校の仕組みに慣れていく。

7月に入ってから減ったCクラスのクラスポイントは50ポイント。そのマイナスの甲斐はあって、どこまでの行為はセーフでどこまではアウトなのか。段々とそのラインを見極めていく。

 

龍園もまた一之瀬と同じく、見据えるターニングポイントは夏のバカンス。

それまでは準備期間。龍園は夏のバカンスまでは表立って行動するつもりはない。

 

――――――――――――――――――――――――

 

期末テストまで残り3日。

今日の勉強会も恙無く終える。

 

軽井沢達はまだ残ってお喋りをするようだ。

佐倉は松下にそのお話に来ないかと誘われたようだが、悩んだ末に断っていた。何か私用があるらしい。

 

俺も帰る事を選択する。

必然的に佐倉と一緒になり、並んで図書室を出た。

 

「何か用事があるんだってな」

俺は廊下を歩きながら、そう話しかけた。

 

「うん。実は、デジカメが壊れちゃって‥」

「デジカメ?」

「うん。これ。」

佐倉はピンク色のデジカメを鞄から出して言う。

 

「カメラが趣味なのか?」

「え…。うん。そうなの」

なんか間が合ったが肯定する。

 

「じゃあ、今度良かったら写真見せてくれないか」

「え!…み、見たいの…?」

佐倉は驚いた声をあげる。興味本位からのお願いだったが。。

 

「いや,無理にとは言わない。」

「…あ、綾小路君が、見たいなら見せてもいいけど…」

「そうか。なら楽しみにしてる」

「…うん。」

 

俺達は一緒に玄関を出た。

そこで、佐倉が急に立ち止まった。

 

「どうしたんだ?」

「その…。今からデジカメの修理に行かなくちゃならなくて…」

なるほど。私用とはその事だろう。

 

「ケヤキモールか?」

「うん。」

 

ケヤキモールへ向かうなら、寮に帰る俺とはここでお別れだ。

 

「そうか。じゃあ、また明日な」

「あっ。いや、その、それで…」

 

挨拶を告げたが、挨拶は返ってこない。

どうやら、佐倉には話がまだあるようだ。

俺が聴く姿勢を見せると、佐倉は遠慮がちにも話し始めた。

 

「その、あ、綾小路に私の写真見せてあげる代わりにさ…、その…デジカメの修理に付いて来てくれない?」

「デジカメの修理?」

俺がついていく意味があるのか?

 

「うん。だ、だめかな?」

「いや、そんな事でいいなら全然付き合うぞ」

別に寮に帰っても、予定はなかったため承諾する。

それに、佐倉がお願いしてくるのは珍しいからな。

 

「ほ、ほんと!?ありがとう…。綾小路君」

「いや、全然構わない」

 

俺は佐倉の横に並び、ケヤキモールの家電量販店へと一緒に向かう。

そういや、行ったことないな家電量販店…。寮備え付けの家電で満足していたし。

 

「…すぐ直るかな」

彼女は不安な様子でカメラを片手にそう零した。

心の声が漏れてしまったような印象だ。

 

「カメラ。よっぽど好きなんだな。」

「え、うん。へ、変かな…?」

「いや、むしろいい趣味じゃないか?そこまで熱を入れられる物があるのは正直羨ましい。早く直るといいな」

俺には読書くらいしか趣味と言えるものがないからな。

 

「うんっ」

 

「修理するのはあそこか?」

俺が指差した先には修理の受付場所があった。

カメラのモデルが受付にも何台か置いてある。

佐倉が持ってるのに似てるタイプもある。

 

「あ……」

佐倉が俺の指差した先を見て、何か嫌なものを見つけた嫌悪感を露骨に表したような表情になる。

 

「どうした?」

「いや、その。…なんでもない」

佐倉は懸命に笑顔を浮かべて、受付に向かう。

さっきの顔は何でもない人には到底見えなかった。

 

佐倉についていくようにして受付に並ぶ。

店員はねっとりとした視線を佐倉に向ける。

 

「ハァ・・・たしかに、これハァ・・保証期間ないぃ。、だからぁ‥はぁぁ・・無料で・・交換できるよぉ」

 

息遣い混じりで説明する店員。

人見知りの佐倉にとっては最悪の相手だろう。

佐倉は机の上の紙に住所と連絡先を記入するように説明されたが、完全に固まってしまっている。

 

俺は、机の上のペンを取り、紙の必須項目の欄を記入していく。

 

「修理が終わったら俺に連絡ください。」

「ちょっと、君!?このカメラの保有者は彼女だよね?」

「メーカー補償は販売店も購入日も問題なく証明されてます。法的な問題はどこにもないですよね?…それとも、彼女じゃなければならない理由はあるんですか?」

店員は歯を噛み締めるような素振りを見せるが渋々といった様子で了承する。

 

「…分かりました。」

 

その後、佐倉はカメラの修理は1週間かかると聞いて、落胆して肩を落としていた。

 

「近寄り難い空気の店員だったな。知ってたのか?」

「…う、うん。カメラを買いに来た時に。。ちょっと気持ち悪い感じだよね。」

「なるほどな。それで、俺に同行をお願いした訳か」

「うん。ありがとう…。綾小路くん。凄く助かった」

「気にするな。店側から連絡が来たら佐倉にも連絡する。その時も、良ければ一緒に取りに行こうか?」

「いや…。そこまでは悪いよ。…取りに行くだけだし一人で大丈夫。。」

 

まあ、今日と違って受け取りに来る時は住所等の情報を教える必要は無い。

今日の控えを渡せば、店側も問題なく対応するだろう。

 

「そうか。だが、もし俺が必要になったらいつでも連絡してくれ」

「うん。何から何までありがとね。綾小路君。」

佐倉は俺の打診を断ったが、不安そうだ。

 

「ああ、気にするな。それに、1週間かかると言っていたが、ちょうど期末テストあけだし心いっぱいカメラを満喫できると思えばちょうど良いんじゃないか?」

 

俺は別の視点から、ポジティブに捉えてそう話す。

 

「そ、そうだね。…それに、綾小路と千秋ちゃんのお陰で勉強もほんの少しだけど、自信ついてきてるんだ」

「いい傾向だな。あと1週間だ。一緒に頑張ろう」

「うんっ!」

 

佐倉は松下のことを千秋ちゃんと呼び、相当慕っているようだ。学力も少しずつだが伸び始めている。

1週間後の期末テストの赤点回避も堅いだろう。

 

――――――――――――――――――――――――

 

尾行されている。

見たことの無い顔だが。

松下と食堂にいた時。

佐倉とケヤキモールに行った時。

そして、寮に帰るため、通学路を歩いている今も俺の

後ろをつけて、遠巻きから様子を伺っている奴がいた。

 

俺はカメラを取り出し、シャッターを切る。

この距離ならシャッター音にも気付かれないだろう。

だが、その距離があるため、解像度も悪い。

一見してこの人物が誰か分かる人は限られているだろうな‥。

 

「櫛田ちょっといいか。」

「綾小路君?珍しいね?どうしたの?」

 

期末テストも明日に控えた昼休み。

俺は櫛田に話しかけた。櫛田と話す時は、周りに人がいた方が良い。

俺が用があるのは表の櫛田だからだ。

 

俺は携帯を見せて、次々にスライドしていく。計3人。 

 

「この写真が誰か分からないか?」

「変な画像だね。うーん。これは山脇君でこっちが小宮くん。もう一人は解像度が悪くて分かんないや。でも、小宮くんと山脇君はCクラスの人だよ。」

と、なると、もう一人もCクラスの奴だろう。

やり口が全く同じだからな。

 

「もしかして、綾小路君ってモテる?」

櫛田がそんな風に聞いてくる。

俺が尾行されてることを画像から読み取れない櫛田じゃ無い。遠回しに意図を聞いてるんだろうな。

 

「Cクラスのガタイの良いやつ限定でモテ期が来てるらしい。今日は山田アルベルトが来るかもな。」

 

「私、小宮君と山脇君は友達だよ?話聞いてあげようか?」

櫛田は何を思ったかそんなこと打診してきた。

 

「いや、大丈夫だ。向こうは俺が気付いてることに気付いていない。だから、櫛田が詮索して勘付かれるのは避けたい。」

「それもそうだね。また、何かあったら相談して?じゃあね。」

「ああ、助かった。」

櫛田はお昼ご飯を友達と食べるようで、教室を出ていった。

 

俺をつける真似だけして何も接触して来ない点。

尾行する人を毎回変えている点。

それに、毎日尾行してくるわけでもない。

Bクラスへの絡み方とは手口が全く異なるのが気になるところだが、放置し続けるわけにもいかなそうだ。

 

――――――――――――――――――――――――

 

万全を期して迎えた期末テストは誰一人欠席することなく終末を迎える。

そして、勉強からも束の間の解放となり、心置きなく遊べる週末がやって来る。

 

その週末の明日はみーちゃんとの約束がある。

 

そんなことを考えていると、笑顔のみーちゃんと目が合う。だが照れたようにすぐに逸らされる。

もう、俺はみーちゃんにチェックをかけられている。

 

みーちゃんだけでなく教室の生徒の顔付きは皆、明るい表情を浮かべている。

 

そんな生徒達を見て、茶柱先生は大きく手を叩いて、注目させるような素振りの後話始めた。

 

「お前たちの表情を見る限り、テストで退学者が出ることはなさそうだな。そんなお前たちにご褒美だ。来週からは夏のバカンスに連れていってやる」

 

俺が一之瀬に聞いていたように、他のクラスの生徒のコネクションから知っていた人達もいるようで、驚いている生徒とそうじゃない生徒が半々だ。

 

茶柱先生はその反応を無視して、その旅行の詳細を語っていく。

来週の月曜日から一週間は無人島に建てられているペンションで夏を満喫してその後の一週間は豪華客船の上で宿泊する。

生徒たちにとっては夢のような日程が組まれていた。

 

今度は生徒全員が驚いていた。教室のボルテージは最高値を記録した。

茶柱先生は楽しみにしておくように言い残して、教室を去っていった。

 

「楽しみだな。夏のバカンス」

堀北に対してそう話題を振ってみる。 

 

「‥貴方は信じているの?茶柱先生の話」

流石に、堀北も夏のバカンスについて、手放しに信じるまで盲目にはなっていないか。

 

「ああ。堀北は信じていないのか?」

「信じれるわけないでしょう。あんな話」

「根拠はあるのか?」

「この学校に来て、散々裏切られてきた。それだけで信じない理由には十分よ」

 

一之瀬と違い、堀北はクラスポイントが得られる機会になるとは思っていないようだ。

疑うことがせいぜいだ。

 

「それにしても‥流石ね。」

「何がだ?」

「別に何でも無いわ」 

 

堀北はテストを終えたクラスの皆の顔つきを見て、理解したはずだ。

堀北の力は必要ないって事実を。

それを知ってしまった今、堀北がクラスメイトに手を差し伸べていい理由は無くなった。

もう誰も堀北を頼らない。そして堀北もまた、誰も頼れない。

 

一之瀬の言う通り、この夏のバカンスが学力を問わないクラスポイントを競い合う場になるとしたら、

堀北にとっての山場になるだろう。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

俺は寮に帰ってきて、夕飯も食べず物思いに耽っていた。

 

明日は夕方からケヤキモールでみーちゃんと落ち合って、

ディナーに行く約束がある。

 

そのためには目の前の問題を片付けておかなきゃならない。

俺は一本の電話をかける。

 

「あ、も、もしもし?一之瀬です。」

「綾小路だ。悪いな。こんな時間に電話して」

「気にしないで。私も頼ってくれて嬉しいし」

そういう一之瀬の他にも複数、声が聞こえた。

 

「もしかしてお取込み中だったか?」

「あ、気にしないで。期末テストも終わったし打ち上げ?みたいなことやってたんだ」

「悪いな。打ち上げムードに水を差すような真似して」

「あはは。ほんとに気にしないで。...それに逆に変に盛り上がってたりするし。そ、それに綾小路君達のグループのおかげもあって、今回は結果に期待できそうなんだ」

「それはお互い様だけどな。ていうか、変に盛り上がってるのはどういう事だ?」

「んーん!何でもない。それで、相談って何かな」

 

「相談の前に質問いいか?Cクラスの動向が気になってな」

「あ、そのことなら心配しないで。ぱったりと音沙汰なくなったの」

流石にBクラスからは今回、手を引いたか。

 

「なるほどな。」

「それがどうかした?」

「ああ。実は俺、Cクラスに尾行されているっぽいんだ」

「え、綾小路君が?だ、大丈夫?」

「ああ、ほんとに尾行されているだけで特に実害はない。」

 

「そうなんだ。。」

「もし、俺にあてがってしまったとか責任を感じてるなら不要だぞ。あの時は俺が俺のためにしただけだ」

 

そう言っても一之瀬の返事は明るくならない。

なので、早々に本題に入ることにする。

 

「尾行されていることは別に問題じゃないんだ。手口が一之瀬の時と違うのが気になってな。尾行している人は毎日変わるし、直接的な絡みは一切無し。そして、尾行してこない時もある。何が目的か見えてこないんだ」

「なるほど。私たちの時と全然違うね。というか、その条件で良く尾行されているって気づいたね」

「人からの目線には敏感なんだ」

 

そうか。尾行されてることに気付くことは本来なら難しいことだ。

それを失念していた。これで一之瀬が誤魔化されてくれるかは微妙だな。

 

「ふーん。でも、そのやり方なら、もしかしたら金田君が絡んでるかも」

「金田?」

聞いたことない名前だった。

 

「私たちの間でも一回有名になってね。クラスメイト一人一人に話しかけて、色々聞いてきたらしいの。最初は普通に話しかけてくる人にしか見えないから厄介で。。」

クラスの内情を知るために聞き取り調査したわけか。

善意溢れるBクラスの生徒ならうっかり漏らしたくない話を話してもおかしくないな。

 

「懐に入り込んで情報を集めるのか。諜報員そのものだな。」

「そう!それ!綾小路君、表現するのうまいね…。まさにそんな感じ」

電話越しで、手を叩いて喜ぶ一之瀬。

そのリアクションは実際に対面して会話するときのものだと思っていた。

 

「だから、石崎君が金田君に相談してやり方変えたんじゃないかなって。さっきの綾小路君の話聞いた感じだとね。」

「なるほどな。参考になった。ありがとう」

「うん。…綾小路君、ほんとに何か困ってたら連絡してね」

「ああ。そうさせてもらう」

 

俺は電話を切る。

どれだけ責任を感じないように釘を刺しても、責任感は拭えない。

そういうものだ。

 

一之瀬にはCクラスの矛先が俺に向いたこと知ってもらう必要があった。

 

そして、俺はもう一本、明日のために電話を掛けた。

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

やるべき事やり終えて、俺は床に就いた。

尽くせる手は尽くした。

あとはどれだけ思うように進むか次第。

 

入学して3ヶ月が経った。

 

みーちゃんとの約束。

もう告白をしてくることを確信できるピースは十分すぎるほど揃っている。

 

しかも、夏のバカンスの話を聞いて、さらに告白を後押ししただろう。

付き合いたてのカップルが過ごす最初のイベントとしては適当なものだからだ。

 

入学以来の一大イベント。

 

俺は明日の命運を祈って眠った。

 

 

 

 

 

 




綾小路のみーちゃんの告白への回答は如何に。
伏線は張り切りましたが、どうなるかは明日の自分次第です。



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