綾小路がAクラス卒業ではなく童貞卒業を目指す話 作:ファウストの劫罰
龍園の元を離れ、待っていた堀北と並んで帰る事にする。
堀北は嘲笑うかの様に、龍園の方に向けて言った。
もう聞こえない距離だが。
「後で困った時どうするかが見ものね。」
「ああ。そうだな。」
龍園が本当に試験を投げ出したとは思えない。それならわざわざ他のクラスに知らせる必要もないだろう。試験ポイントを全て投げ出した先に取れる戦略は限られる。確かめる必要があるな。
「堀北。お前は先に戻っててくれ。」
「貴方は?」
「もう少し様子を見てみる。スポット更新までには戻る」
「分からないわね。」
そう言って堀北は戻って行った。
ここで待つのは龍園達の動向を見るためじゃない。
俺がここに来たのは点呼が終わってすぐ。
なら、ここで待てば他クラスも来るかもしれない。
そう思いここに残る事にしたのだ。
数十分後。案の定、一之瀬が神崎を連れて現れた。
一之瀬達は龍園の方に向かう。
まあ、龍園は俺達と同じように一之瀬達に夏のバカンスを見せつけるようにしていた。
話が終わったのか、一之瀬達が戻ってきた。
一之瀬達が帰っていく。
龍園の目が届かないとこまで来たところに、偶然を装って話しかけた。
「一之瀬。頑張ってるようだな」
「あっ!綾小路君。綾小路君も、もしかして龍園君に呼ばれたの?」
「ああ。さっきな。もう話してきた」
「え?一人で?大丈夫?」
一之瀬には龍園に目をつけられてる事を相談してたからな。
「いや、さっきまで堀北がいたんだけどな。先に帰ってもらった」
「そうなんだ。今は何してるの?」
俺は一之瀬を指差す。
「え?」
「一之瀬を待ってた」
「…え?私?」
「ああ。」
「そ、そうなんだ。…て、ていうか人のこと指しちゃ駄目なんだからね。」
そう言って俺が指してた指は一之瀬の両手に包まれて、ゆっくり下ろされた。
「そうなのか。それは知らなかった」
そんな、暗黙なルールがあるのか。左手の握手とかと同じようなものか。
「うん。で、私に何か用?」
「ああ。単刀直入に聞く。ベースキャンプはどこにしたんだ?」
「にゃはは。本当に単刀直入だね。…なら綾小路君、良かったら一緒に来る?」
「いいのか?」
「うん。綾小路君だし。それに、別に隠してるわけでもないから。」
「じゃあ、お言葉に甘えることにする。」
俺は一之瀬と神崎に案内されてBクラスのベースキャンプに向かう事になった。
「それにしても、龍園君は凄いことするな~。クラスポイントを大きく得られる最初の試験を放棄するなんて考えられないよー」
「一之瀬の言う通りだ。あいつは目立ちたいだけの馬鹿なんだ。こんなポイントの使い方をして後5日持つわけがない。」
一之瀬も神崎も龍園の戦略を見抜けていないようだ。
それに神崎は龍園に一度してやられた分、言葉が尖っている。
「そうだな。俺もそう思う。」
俺はとりあえずは嘘をついておいた。
この試験でBクラスの戦略が見えてこない以上、情報をあまり与えない方がいい。
「あ!もう着くよ」
辿り着いたBクラスのベースキャンプは木に囲まれており、テントを3つも4つも置けるスペースはない。それを補うのはハンモックだ。寝泊まりには困らなそうだ。
それに、井戸も近くにあり色々と融通が効きそうな便利そうなスポットだった。
神崎はスポットに着くと、クラスメイトに呼ばれて向かって行った。
「面白い場所を確保したな。」
「うん。色々工夫が必要だけどね。だから、作業量も沢山あって大変だけど、今のところクラスで楽しくやってるよ」
見渡してみても笑顔な生徒が多い。楽しんでるというのは本当だろう。
俺は一之瀬から使ったポイントの詳細や、生活の工夫点などを教えてもらった。
「参考になった。ありがとう」
「いいよ。気にしないで。綾小路君には返しきれない借りがあるんだから。それで、他には何か聞きたいことある?」
「そうだな。Aクラスのベースキャンプについて知らないか?」
「大体の位置は分かるよ。でも、情報を得るのは難しいんじゃないかな。」
一之瀬はその理由も丁寧に教えてくれた。
「なるほどな。Aクラスってどんなクラスなんだ?」
「うーん。難しい質問だね。一枚岩じゃ無いことだけは確かだよ。クラス内でもごちゃついてるみたい。」
俺がピンと来てないことを一之瀬が勘付いたのか補足する。
「具代的にはリーダーが二人いてしょっちゅう揉めてるんだよ。坂柳さんと葛城君。二人は相性が悪いみたい。今回の試験は坂柳さんが休んでるから、葛城君がリーダーをやってるみたいだけどね。」
「なるほどな。それで―」
「綾小路君。偵察ですか?」
俺が一之瀬にさらに深く話を聞こうとした時に、近づいて来て話しかけてくる生徒がいた。
「千尋ちゃん。そんなに綾小路君を邪険にしないで。私達Bクラスは綾小路君にはお世話なってるんだから」
「で、でも…」
「大丈夫。綾小路君はいい人だよ」
「……」
白波千尋にとって俺がいい人かどうかは重要じゃない。
「いや、悪い。白波の言う通りだ。そろそろ邪魔者は退散させて貰うよ。悪かったな長居して」
「本当に気にしないで。私が呼んだんだから。」
「そう言ってもらえると気が楽になるな。じゃ、ありがとう。お互いいい結果が出せるように頑張ろう」
「うんっ。またね。綾小路君。」
一之瀬の戦略はDクラスと似たようなもの。
徹底的にポイントを節約して、より多くのクラスポイントを残す方針のようだ。
親身に接してくれる一之瀬には悪いが龍園の思惑を伝える事はしなかった。
それをしない方が俺の為になる。俺は一之瀬に対して心の中で謝罪しておいた。
――――――――――――――――――――――――
俺がやってきたのは探索で昨日見つけた洞窟。
入り口付近には仮設トイレ2つにシャワー室か。
内部にはビニールを繋ぎ合わせた巨大な目隠しが広がっている。やはり、ベースキャンプはここか。
俺が遠目からそれを確認していると、後ろから声をかけられる。
「ねぇ、あんた何してるの?」
「ああ。道に迷ってな。」
「ふーん。そうは見えないけど。名前は?」
「人に名前を聞くときは自分から名乗るもんだ」
「…めんどくさ。まだそんな事言う人いるんだ。」
面倒臭くても悪いが譲る気はない。それを悟った目の前の女子生徒は名乗った。
「神室真澄」
それだけ言って、こっちが名乗り出るのを待っている。
「まあ、それを聞いたところで名乗ろうとは思ってないんだけどな」
「あんたねぇ。普通に会話出来ないの?」
神室真純と名乗った女子生徒は俺の態度が気にいらないらしい。
まあ、俺が神室に対して取った言動は誤魔化しに皮肉に屁理屈だ。うん、まともな返しはしてないな。
「名乗る前に一つだけ聞かせてくれ。Aクラスのリーダーって誰なんだ?」
「は?」
「あ、悪い。誤解を招く言い方だった。クラスを牽引してる存在のことだ。例をあげるならBクラスなら一之瀬みたいな事だな。」
「それでも一緒。私から教える事は何もない。それよりあんたもここにいること知られるのは困るんじゃないの?」
「別に困らない。言っただろ。迷っただけだって」
「ふーん。なら、野次馬が来てたって報告しに行くわ」
「ああ。お好きに」
神室は俺がコソコソ隠れて偵察しに来てると勘違いしてる。
報告すると言っても行動しようとしないところを見ると、俺にそれを指摘する事で何かを引き出せると思っているな。
俺は立ち上がり、Aクラスのベースキャンプの方に向かう。
「ちょ、ちょっと」
神室から声がかかったが無視して進む。
「なんだお前。どこのクラスだ」
こいつは確か弥彦だったな。
「Dクラスの綾小路だ。その中に用がある。入れてくれないか?」
「はっ。どこの誰かと思えばDクラスかよ。頭の悪い連中の集まりだろ」
石崎みたいなやつだな。
「そうだな。それで、中には入ってもいいのか?」
「駄目に決まってるだろ。ここはAクラスが占有してるんだ。Dクラスに使用する許可はないだろ。」
「では、お前達がここを占有してる証拠はあるのか?装置は中なんだろ?それを確認する権利は俺にもあるはずだ」
「そ、それはっ…」
俺が石崎亜種を説き伏せていると大型の男が洞窟から出てくる。
「おい、何をしている。客人を呼んでいいと言った覚えはないぞ」
「葛城さん!Dクラスの雑兵が偵察に来たんです。中に入れろって!汚い連中です」
「汚いのはお前の方だろう。お前達がやってる事は占有じゃなくて独占行為だ。装置を確認する。ただ、それを要求してるだけだ」
「だったら、遠慮せずに中に入ってくれて構わない。その代わり、覚悟しておく事だ。指一本でも触れた瞬間、俺は他クラスへの妨害行為として学校側に通達する」
リーダーということもあり、理路整然とした反論。さすがはAクラス。
「屁理屈だな。それで咎められるとは考えられない。何故なら、それはお前達の独占するような行為に問題があるからだ。」
「確かにそれは完全には否定しない。だが、これは暗黙のルールだと俺は考えている。お前達Dクラスは川を、Bクラスは井戸を半ば独占するように占有している。誰かがそれに踏み込む強引な手段を取ったか?」
「俺は、さっきBクラスの占有地にも行ってきた。装置の確認も問題なくさせてもらった。そういう手段は実際に取れたわけだ。」
まあ、装置の確認はしてないが、一之瀬に頼めば絶対に確認させてもらえるという確信がある。
葛城は俺の行動に驚いてるようだ。
「お互いのベースキャンプに踏み込み合いが始まれば大混乱を招くぞ。面倒は避けるべきだ。それでもいいのか?」
「お前が想定する大混乱はお互いのベースキャンプにあるスポットの占有のし合いか?別に俺はそれでも構わないが、それで損するのはお前らの方だろ?こんなに拠点を固めてるんだ。一度俺達に占有を許した時のデメリットは計り知れない。仮設トイレにシャワー室の移動だけでも相当な労力だな?」
葛城の懸念はスポット更新時間にそれの取り合いが始まるという事。
葛城の理論では俺は退かない。まだ、確認し終えてないことがあるからだ。
「だけど俺も鬼じゃない。別に俺達はお前達のようにスポットを隠して独占してる訳じゃない。占有の確認がしたいのなら通してやるさ。だけどAクラスはそれも許してくれないんだろ?なら、こちらとしては戦争も視野に入れて動くしかないな」
俺は反論が来る前に補足する。
「俺達は0PTのDクラス。お前らAクラスとは追いつけないくらい差が開いている。もし、その戦争の先に光明を見い出せば死に物狂いで噛み付くぞ。」
まさに、背水の陣。
ポイントを守って、他クラスとの差を縮めたくないAクラスがこの戦争に参加する訳がない。何故なら、Bクラスがこれに参加しない事は目に見えてるからだ。
AクラスとDクラスの潰し合いが始まれば得するのはBクラスだ。それはAクラスとしては許せない事態だろう。
「な、なんなんだよ。お前…。」
弥彦が俺を奇妙な物を見る目で見てくる。
「分かった。なら、入ってスポットを確認すればいい。だが、覚えておけ。それをすればDクラスは俺達の明確な敵になる事を。」
「ああ。遠慮なくお邪魔させてもらう。」
俺はビニールを潜り、Aクラスのベースキャンプに潜入した。
主食はポイントで賄える栄養食か?それに水もある。洞窟でテントがいらない分、節約できてそうだが外の施設も鑑みて、見えるだけでも150PTは吐き出してるな。
俺はAクラスから向けられる非難の目を全てスルーしながら、隈なく見ていく。
「スポットはこの先か?」
俺は葛城に確認しておく。一度来たことがある以上知っているがそうしないと不自然だ。
「ああ。お前もそろそろこの視線の数でこれがどういう行為か分かってきたんじゃないか?」
「ああ。少し苦しくなってきた。もう引き際かもな。確認はできてないがスポットを確認させてもらえる意思は確認した。それだけで十分だ。」
「良い判断だ。ここで立ち去れば、まだ、ダメージは少なくて済むだろう」
「Aクラス率いるリーダー様にその評価されたんだ。もう退かせてもらうよ」
「おまえ!葛城さんに向かって…」
「弥彦。いい。」
俺に向かって非難の言葉を投げる弥彦を静止する葛城。
少し煽る様な口調を取っても、必死なのは弥彦だけか。
俺はAクラスのベースキャンプを後にする。
葛城は立て籠るような作戦を取っていた。
だが、その作戦と整合性が取れない潤沢な物資に必要無さそうな物まで置いてあった。
それに、さっき向けられていた非難の目は俺だけじゃなかった。
葛城に対しても強く向けられていた。
Aクラスも大変だな。
「あんた、意外に大胆ね。。」
外に出て帰る道の途中、神室に呆れたように声をかけられる。
「だから言っただろ。迷っただけだって。」
「はいはい。それで、あんなことして何が目的だったの?」
「もう名前は聞かないのか?」
「綾小路でしょ。さっき名乗ってたじゃない」
名乗ったのは弥彦に対してだけどな。
盗み聞きしたことを自分に名乗られたみたいに言われてもな…。
「それに答えてもいいが、1つ聞かせてくれ。Aクラスのリーダー。坂柳と葛城。どっちが台頭するべきだと思う?」
「…はぁ?」
神室は坂柳の勢力らしいな。
「答えてくれてありがとう。よく分かった。」
勝手に完結していく俺に神室は対応出来ていない。
「…あんた。少し似てるわね。」
「誰とだ?」
「何でもない。会話にならないことは分かったからもう話す事はない」
「それは俺としても助かるな。」
神室は話は終わりと言わんばかりに、森の中に消えて行った。
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Aクラスはあの閉鎖的なスポットに加え、隠蔽性の高い策でスポットの更新を容易にした。
一方、俺達は何人かを引き連れて取り囲んで監視してもらう様にして更新している。
更新時間は朝の点呼時間少し後から始まって8時間周期。確実に点を積み重ねていった。
2日目は滞りなく済んだ。
俺は一之瀬に教えてもらったビニールを沢山確保して寝床の硬さを緩和する方法をDクラスの面々に伝えて実行した。
これで、少しはストレスを減らせるかもしれない。
池と山内は完全に孤立して意気消沈状態だ。
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3日目。
スポットの更新を終えてすぐにCクラスの様子を見にいくと、予想通り人っ子1人見当たらなかった。大半がリタイアしたのだろう。
俺はすぐに方向を変えてBクラスのベースキャンプに向かい、息を潜めて近付いた。
そして、スポットより少し離れた大木に登る。
枝の上に乗り、息を潜める。ここならスポット周辺がよく見えた。
一之瀬達の更新時間は俺たちと違うようだ。
お昼過ぎ1時くらいに更新にやってきた。俺達と変わらず、何人かで周りを取り囲む様にしているが、上から見れば、スポットを更新可能な位置にいる人物は一目瞭然だった。
だが、俺の他にも、茂みの陰に息を潜めてBクラスを観察するような人影があった。
一人は伊吹でもう一人は眼鏡をかけた生徒だ。それを見つけたタイミングで大きな声が聞こえてきた。
「おい!お利口さん達〜?元気してる〜?」
あれは小宮とそして山田アルベルトだ。
山田アルベルトの巨躯はよく目立つ。スポットを取り囲んでいた生徒達がその煽りの方に注目するのが見えた。
神崎は即座に反応しないように止めたが、もう手遅れ。
そこで、動揺を隠しきれなかったのが白波千尋。相当な焦りようだ。
伊吹達にもそれが見て取れただろう。
小宮と山田アルベルトの方には一之瀬が対処に向かったが、そこは漏水箇所じゃない。
上手いミスディレクションだな。龍園。
石崎じゃなくて山田アルベルトを採用した事もその一躍を担っていた。
俺は確実に帰れるタイミングを待って帰る。
そのせいで少しは更新に遅れてしまったが、そんな少しのマイナス要素は気にならなかった。
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俺は帰ってすぐに行動する。
Bクラスと同じような戦略をDクラスの方にも仕掛けてくるならと、俺は少し対策を打つことにした。
俺達は最初に更新に付き添ってもらったメンバーを一度も変更していない。
もし、監視し続けてる人がいた場合メンバーの変化で徐々にリーダーが絞られてしまう恐れがあるからだ。
俺は櫛田といつも囲いをしてくれているメンバーに声をかけて説明し始める。
「え?ビニール?」
「ああ。スポットを更新する時。このビニールに入って更新する。スポット更新機を覆うようにしたいから入れても4人だな。少し窮屈になるかもしれないがこれなら、誰かに見られてたとしてもリーダーを100%断定することはできない。そして、そのビニールの中の人を守るように残った人には取り囲んでもらいたい」
「確かに。それなら、もし見られたとしてもバレる事はなさそうだね。」
櫛田と共に話を円滑に進めていく。
「ビニールの中に入るメンバーはどうする?」
「櫛田はクラスでも目立つ存在だ。ダミーとしても有効的だ。だから、櫛田には入ってもらう。後は…」
「き、清隆君。私じゃだめ?」
みーちゃんは今まで更新するメンバーじゃなかったが、側で俺達の話を聞いてたのか、俺に寄ってきてそんな事打診してきた。
他の女子達が持て囃す様に俺に言う。
「綾小路君。いいじゃん。一人くらい増えたって。みーちゃんを入れてあげなよ。」
まあ、俺としても好都合だ。
「ああ。じゃあ、みーちゃん頼めるか?」
「うんっ」
みーちゃんが俺と密着したいだけなのは俺以外にも明け透けていた。
ここで断らない方が後の為だろう。
「残り一人だが、佐藤。頼めるか?」
「えっ!わ、私で良いの?綾小路君」
「ああ、頼む。」
俺達は新体制で更新に向かった。今から、ビニールでスポット更新機を隠すようにして、更新することになった。
周りはそれを取り囲むように、四方に広がって守っている。
これで、もし何処かで見てる誰かにはリーダーが4択まで絞れたことだろう。
――――――――――――――――――――――――
何も起きないままゆっくりと時が進んでいく。
池と山内は大人しく、洋介や櫛田に協力する姿勢を見せている。
いくら嫌々だとしてもそれに反抗したところで、反感を買うのは見えてるからだ。
池はやる気は無さそうに見えるが、人よりも釣りや山菜や果物を取ってくるのが上手い。案外、サバイバル向きの能力をしているようだ。皆もそれに気付いているから、特に文句は出なかった。
終わりが見えてきて、この試験も5日目。
その日は雨が降った。
堀北は低気圧で頭が痛むのか苦しそうだ。いや、最初からか。
雨が降れば、ここまで使ったポイントは100PT前後と順調に節約してきたポイントも吐き出すしか無くなる。皆のモチベーションも下がり、パフォーマンスも下がるだろう。
仕掛けてくるなら今日だ。
俺達は朝の点呼前にスポットの更新に向かった。
やはり皆の表情は明るくない。
ビニールの中に4人ではいる。
「清隆君。今日も頑張ろうね」
みーちゃんの表情だけは明るかった。
スポットの更新機を覆い隠した瞬間、それは訪れた。
「あんた。ふっざけんじゃないわよ」
女子の低い怒号が響き渡る。
クラスメイトがざわつき始めた。
洋介が止めに入っている声が聞こえる。
「え、何何。何があったの?」
「ちょっと私、外に出てみる」
みーちゃんは、相当動揺してる様だ。
佐藤は好奇心のままにビニールの外に出て確認しに行ってしまう。
俺達はその喧騒の中。すぐに更新を済ませた。
そして、俺は更新を終えてすぐさまにビニールを剥ぐ。
木々の枝葉から落ちてくる雨が冷たかった。
みーちゃんは怒号に怯えてるのか、俺の左腕に抱きついていた。
俺も状況を確認しようと、喧騒の方に目を向けると伊吹がブチギレて眼鏡の男に一方的に暴力を振るう光景があった。
洋介が本格的に仲裁に入ろうとした時、伊吹は即座に踵を返した。
「もういいっ!!!」
眼鏡の男も立ち上がる。
「皆さん。すいません。迷惑をかけてしまって。僕は彼女を追いかけます。」
そう言って伊吹を追って去って行った。
「な、なんだったんだ??」
そんな声がクラスから出る事は仕方がない事だった。
Cクラスの突然の喧嘩も、それがDクラスのこの場所のこの時間で行われた事に対して疑問を持つ生徒は誰一人いなかった。
俺はその後、あの男が近くにいるという痕跡が綺麗さっぱり消えてる事を確認した。
自分が張った伏線に対して考察が鋭い人がいて自分はびっくりです。
タイトルだけ思いつかなくて、いっつも適当に書いてるので治したい所存です。
茶柱先生との制約と誓約がある以上、無人島でひたすらイチャイチャするだけでは話がまとまらないのが悩みです。
次回で無人島編は完結させたい。