綾小路がAクラス卒業ではなく童貞卒業を目指す話   作:ファウストの劫罰

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体育祭編 最終回 です。


#51 寝れない口にはParilia ment

 

 

 

南雲は撤退した。

第三者が現れない以上、龍園と一之瀬がサシで対峙することになるだろう。

今回の体育祭、一之瀬は龍園に一方的やりたい放題されている。

それでも、気持ちを切り替えて、既に前を向き始めたBクラスとしては、ここで龍園を退けることに大きな価値がある。

 

だがしかし、一之瀬に加勢する人間も悪は絶対に許さない正義の味方も現れない。

 

前者の理由は明確。一之瀬を慕う者こそ、彼女に拒絶されることに強い抵抗があるからだ。

彼女が他の人が巻き込まれる展開を望まない以上、一之瀬に忠誠心がある彼らに割り込むことなどできやしない。

それは、彼女の親友である白波千尋やBクラスの副リーダーを任されている神崎も同様だ。

皆、揃いも揃って彼女を信じることしか出来ていない。

 

俺から言わせれば、それは一之瀬を慮っての行動じゃなく、自分可愛さに逃げ腰になっているだけ。

彼らには一之瀬帆波を信用している自覚があっても、一之瀬帆波に信用されている自信がないのだ。

 

そして、後者。そのこの答えはシンプルに人がいない。

世間では度重なるヒーローの殉職や福利厚生への不満、職場のパワハラが問題になり常に業界は人材不足。

文句を垂れても、『そもそもヒーローなんてものは慈善活動であって労働ではない』と決まり文句が返ってくるだけ。

自ら薦んで、ヒーローになりたがるのは馬鹿か変人くらいのものである。

 

その愛すべき馬鹿は数分前に龍園に薄っぺらい正義だけもって立ち向かい、哀愁漂う背中だけを残して爆散した。

まだ、変人枠である高円寺が空気を読まずに割って入る可能性もゼロではないが…、いまだ前髪の角度を入念に調整しているようだ。

競技が始まればその角度は一瞬で崩れ去るだろうに。

行動パターンを分析し、思考をトレースすることで大体の人間の行動を予測できる俺だが、あいつだけは全く読める気がしないな。

 

…何がともあれ、ここからはスムーズに事が進みそうだ。

 

「いい機会だと思わねぇか。一之瀬」

「どういうことかな?」

「くくっ。惚れ惚れするぜ。まだそんな顔できるんだからな。とことん虐め甲斐のあるやつだ」

龍園の攻撃に対して、一之瀬帆波に守る術は一つもない。

だが、彼女は龍園に対して一歩も退く様子がない。

なろう系主人公のような不敵な立ち振る舞いに、思わず期待してしまいそうになる。

 

「随分と抽象的だね。はっきりと言えばいいのに」

「お前らしい稚拙な煽りだ。内心焦っているのが表情に出てるぜ?」

「要件は何かな?まさか、私の顔色を窺いに来たわけじゃないよね?」

「おいおい。早漏か?会話を楽しめよ。コミュニケーション能力だけが取り柄だろ?」

「下品な人は回れ右。私だって相手は選ぶんだよ。他あたってもらえるかな」

龍園の弄ぶような言い回しにとことん付き合わない一之瀬。

 

今、一之瀬は頭に銃口を突きつけられているようなもの。

龍園を刺激すれば、引き金を引く手が早まるだけ。

ここまで、あからさまな態度を取られれば、流石に龍園も気付くだろう。

 

「そういうことか。糞つまらねえ女になったな。」

「生まれつき私はこうだよ。見定めが甘かったんじゃない?」

「まあいい。俺も丁度飽きてきた所だ。望み通り、速攻で終わりにしてやるよ」

「…」

 

龍園が感じた通り、一之瀬に龍園の遊び相手は務まらない。

一之瀬の達観した様子は打つ策略があるからではなく、既に一歩先の現実を受け入れているからだ。

龍園が木端微塵に破壊しようとしている誰にでも優しい一之瀬帆波はとうに手放している。

 

「くくっ。だんまりか。ほんっと、被害者面がうまいやつだ。まるで俺が悪者だ」

龍園は改めて立場を明確に言葉にする。

自分が加害者で一之瀬が被害者。一之瀬が善で自分が悪だと。

これはソーラービームでいうタメのターン。威力をあげるための布石だ。

 

…関係ないが、龍園に特殊技は似合わないな。

絶対、物理特化の種族値でCは最底辺だろうし。

いや、意外とバンギラスみたいなパターンもありえるのか?

 

だがその最低限の攻撃でも、この体育祭で邪道な限りを尽くした龍園に対して、『何を今更当たり前なことを』と思っている生徒達には効果抜群の攻撃だ。

そもそも龍園と他のフラッシュモブとでは大きなレベル差があるから、効果いまひとつでも確殺だろうが。

 

「この馬鹿共の様子を見るに、まだお前が汚い女だってことはバレていないようだな」

「…」

 

龍園の直接的な罵倒にも変わらず沈黙を貫く一之瀬。

以前、龍園は一之瀬を売女だと憶測で罵った。

その延長線上にある言葉なのは計算の内。まだ、龍園の言葉を真に受けている奴は現れない。

 

「くっくっくっくっく…。」

フリーザ亜種のような狂気じみた笑いはグラウンドに沈黙を作り出す。

龍園の言葉に耳を貸さまいとしている人間にも、龍園の言葉が耳に届く状況になってしまっている。

 

「馬鹿もそこまでいけば芸術だ。」

 

「そんな馬鹿のために分かりやすく言ってやる」。

 

「この女、一之瀬帆波は犯罪者だ。」

 

龍園は諸刃の斧を振り下ろす。

一線を飛び越えるような発言にグラウンドは徐々にざわつき始めた。

人を犯罪者呼ばわりすることは、侮辱罪や名誉毀損罪に該当する。

下手をすれば立場は一瞬で入れ替わる。

一之瀬帆波にとっては、これは龍園が見せた大きな隙になる。

 

これは龍園が噓をついているならの話だ。

否定の声は一之瀬からあがらない。

 

「これは優しさからの忠告だ。ここから先、沈黙は肯定だぜ。一之瀬帆波。」

 

『一之瀬帆波』と『犯罪』。

別の言語に思えるくらい、関連性がない単語の羅列。

一之瀬帆波がこの学校に入学してから、積み上げてきた物が盛大に崩れる音がした。

 

一之瀬に裏切られたと感じた人間は声を大にして真偽を問いかける。

一之瀬を信じ抜く人間はその疑惑の声を弾圧しようと躍起になる。

対立化した局面は先程までの沈黙が噓だったように、騒然とし始めた。

まるで、人気ストリーマーの荒れ始めたコメント欄のようだ。

 

この場を収められるのは一之瀬の答えだけだ。

 

「……みんな、ごめん。」

 

絞りだしたのはどこに向けたかも分からない謝罪。

それは犯罪者であるということを肯定したと同義だ。

その声明をはっきりとした声で、しっかり前を向いて言えたのは、一之瀬の胆力と覚悟の賜物だろう。

 

「…っ、帆波ちゃん!なんでっ!」「ふざけんなよっ!」「そんな言葉で納得できるわけないだろ!」「説明しろ!!!」

 

謝罪会見に群がる協調性のない記者の言葉のように、口々に意見が飛び交う。

聖徳太子も泣いて黙るカオス状態。

1年Bクラスは正真正銘、死んだ。

頭を失っても変わりがいる幻影旅団とは違う。

手足でしかなかった人間に出来るのは喚いて嘆くだけの無様なものだった。

 

「…競技どころじゃないな」

堀北兄にとって、一之瀬帆波の話は競技が進まなくなったトラブルくらいにしか認識していないようだ。

 

「会長は一之瀬の話を知っていたんですか?」

「いや、お前と同じだ。」

つまり、知っていたのではなく察していたということか。

気持ち悪い言い回しせずにそう言えばいいのに…。

それにしても、橘先輩の肩を持つ情に厚い真似をしたと思えば、一之瀬帆波に対しては冷め切っているようだ。

 

この男、将来結婚したら嫁との日常的な些細なトラブルに、正論でロジハラしてすぐに黙らせそうだ。

そして、面倒な男かと思えば、記念日でもない日にいきなりサプライズで海外旅行に連れてったりする。

飴と鞭の温度差がアメリカのオクラホマ州の気温差くらいある奴だ。

時折、優しさを見せてバランスとる感じ、DVの手法そのものである。

 

「少し楽しみにしていたんだがな」

「何をですか?」

「不思議なことを聞くやつだ。お前と走ることに決まってるだろう」

本人は『戦える機会は早々ないから』くらいの動機で話してそうだが、誤解されそうな言い回しだ。

無意識かもしれないが、俺に甘い飴を押しつけてこないでほしい。

この男に飴を貰っても廃棄するだけ。

結果的に食品ロスに繋がってSDGsへの貢献度下がってしまうじゃないか。

 

 

『…あ~、あ~。マイクテス、マイクテス。』

 

選手をグラウンドに集めた時よりも遥かにうるさいアナウンスが流れる。

まさか、前代未聞の競技中止のアナウンスかと一瞬考えたがそれは杞憂だった。

試験ではないと謳われているものの、競技の結果によってPTが動く。

俺達の1位は既に確定しているが、他はその限りではない。

雨が降ろうが競技は実施されるだろう。

 

それにしても偉そうな口調とスカした声。

顔は見えていないのに、勝手に脳内補完される。嫌な生理現象だ。

 

「どいつもこいつも好き勝手に動きやがって…。後で教師陣に文句を言われるのは俺なんだぞ」

会長は手に負えないといった様子でこめかみを抑える。

この男も中々不憫である。やはり、血筋には抗えない。

 

『え~。この度、業務連絡を任された副会長の南雲だ。"誰の仕業"かは分からないが、学内でトラブルが発生したようで、教師陣は今、緊急対応に追われている。』

そういえば、この体育祭、生徒会も運営に関わっているんだったな。

アナウンスの一部の役割を代行することくらいなら、生徒会権限を行使すればギリギリ教師に許可される範疇だろう。

頭が固い担任教師連中ではなく、臨時の教諭だしその分セキュリティは甘いだろうしな。

 

…それにしても龍園に真っ向から喧嘩を売ってる癖に、直接表現はしない嫌味ったらしい強調の仕方だ。

喧嘩売ってんのかと問い詰めた際に、被害妄想だの拡大解釈だの言われ、白を切る余地を残しているのが実に気持ち悪い。

こういう部分が南雲が嫌われている理由の一端を担ってそうだ。

 

『教師陣の尽力により、もうまもなく競技開始だそうだ。予定時刻としては10分後。その間、暫しご歓談をと言いたいところだが…。そういう空気でもないだろう?』

どうやら、南雲は競技開始時刻の連絡だけで終わらすつもりはないようだ

 

『教師陣曰く、トラブル発生に伴ってできたこの待機時間で平等性を損なうことは由々しき事態だと考えているらしい。』

隣にいる堀北兄が由々しきという単語を聞き、ほんの僅かに口角があげる。

 

オタクくんさぁ…。

由々しきは別に某日常系アニメのことじゃないからね?

ゆゆしき難民やごちうさ難民のSOSに構ってられるほど、公務員も暇じゃない。

悪いが、勝手に野垂れ死んでおいてくれ。

 

『だが、既に賽は投げられた。よって無かったことにはできない。が、被害を抑えることはできる。』

被害など俺にとっては何一つない。どうでもいい話だ。

だが、朝の目覚ましアラームより不快な南雲の声は耳を塞いでも聞こえてくる。

 

くそっ。こいつ…脳内に直接話しかけてきやがる…っ。

…いや、グラウンドの喧騒をかき消すくらいの爆音でアナウンスが流れているだけだったわ。

 

『俺は一之瀬帆波の犯罪の一部始終を知っている。それを聞けば意見が変わる者もいるだろう。今から全てを話す。興味のないものは耳でも塞いでおけ』

 

龍園の目的は果たされている。

だが、表情から先程までの余裕が消えた。

それは作戦に失敗したからではなく、南雲に邪魔をされたことによる憤りだ。

だが、テントの中で放送している南雲を止めることは出来ない。

 

南雲は予め準備された台本を読むかのように、導入~結末までの綺麗な3部構成で説明した。

 

・一之瀬帆波が過去に犯した罪は万引きであったこと。

・その犯罪には同情を請うような背景があったこと。

・窃盗した物品はお店に返し、謝罪により許しを得て刑罰に問われることにはならなかったこと。

 

『以上が事の顛末だ。一部始終を知った上でどう思うかは個人の自由だ。だが、一つだけ教えておこう。』

 

『罪刑法定主義の日本において、一之瀬帆波は法律上犯罪者には分類されない。』

罪刑法定主義とは、犯罪なくして刑法なし、刑法なくして犯罪なしという考え方。

どんな犯罪も刑事裁判で有罪判定を受けなければ刑罰が下される事はない。

 

罪を裁くのは法であって人ではない。

一之瀬帆波の犯罪は裁れずに無かったことになったのだ。

確かに南雲の言う通り、犯罪者とは呼べないだろう。

 

事の顛末を聞いて、またしても、大衆の意見は揺らぎ始める。

だが、飛び出た杭を打つように龍園は言葉を振るう。

 

「くくっ。逆効果だな。副会長。店側を泣き落として、犯罪をもみ消した背景は汚い性根の写し鏡だぜ?娘に前科をつけない為にプライドを捨てて床を舐めた母親にはあっぱれだな」

一之瀬帆波の顔が僅かだが歪むのが見えた。

おいっ!!母親を馬鹿にするのはライン越えだぞ!!

…龍園は既にラインの向こう側にいるんだった。言ってる言葉に容赦がない。

 

「それは、流石に…。」「うん。帆波ちゃんの母親は悪くないんだし…」

龍園の母親を冒涜するような発言には流石に、反論の声がチラホラと聞こえる。

だが、これは龍園の巧妙な罠だ。

反論を引き出すための侮辱だったのだ。

 

「母親は悪くないだと?くくっ。馬鹿を休み休み言えよ。本当に罪を償う気があるなら、自首するのが正当だろうが。わざわざ、店に出向いたのは同情を買って法外に許してもらうためだろうが。」

龍園は客観的評価は鋭く的確に嫌な部分をついていく。

 

店側としても、娘のために土下座して謝罪する母親を警察に突き出す行為には罪悪感を伴うだろう。

たった1分程度の通報一つで家庭丸ごとを潰してしまうようなもの。

生半可な人間に選択できるようなことじゃない。

実際にそれを武器に、一之瀬帆波の母親は交渉に勝ったのだ。

 

どれだけ、汚れて傷ついたって娘を守る。

その行為に拍手をする人間もいれば、龍園のように泥を投げ、踏みつける人間もいるのだ。

 

龍園のロジックに自分の考えの足りなさに気付かされる者も多い。

暴力的な龍園の発言には、知性が裏付けされている。

時として、下手な罵詈雑言よりも、正論ハラスメントの方が攻撃力が高いのだ。

 

「所詮、親子揃って性根が犯罪者なんだよ。」

 

二度目の龍園のラインを飛び越えた発言には、他の人間を黙らせる。

それだけの力があった。

これでもう、一之瀬帆波の味方をする人間は本当にいなくなった。

 

 

…たった一人を除いて。

 

 

『言いたいことはそれでお終いか?』

 

 

天から聞こえる機械を通した声は波のように落ち着いている。

振り回されている感情や荒れている心を安らげるような冷静さだ。

 

『好き勝手言ったんだ。俺からも一つ言わせてもらう』

龍園が無言で訝しむ様子を見て、南雲は続ける。

 

『この学校が犯罪行為を働いた一之瀬帆波に下した評価はBクラス。一之瀬帆波を犯罪者とするなら、一之瀬帆波以下の評価を受けた人間は犯罪者以下ってことになるな。』

南雲は一之瀬帆波を犯罪者ではないという言い分から、即座に切り替える。

一之瀬帆波以下となれば、一年の半数を上る数だ。

学校の評価など微塵も興味がないだろうが、そこに龍園も無論含まれる。

 

『本件とは関係ないが、俺の黒い噂くらい厚顔無恥なお前らも聞いたことくらいあるだろう。あれは全て事実だ。』

雑談を挟むような気軽さで南雲は爆弾を投下する。

南雲が自分にとって都合の悪い生徒をあらゆる手段を持って消した事実。

半信半疑だった物に明確な答えを見せた。

 

『もし、俺がその過程で汚い手段を使ったとしよう。お前らはそんな汚い俺以下の食って捨てられるだけの芥同然ってことになるな。』

 

南雲の暴露の目的はヘイトの分散だ。

話題性で言えば、南雲の黒い噂も一之瀬の過去と同等レベル。

一之瀬帆波に一挙に向けられていたヘイトを自分にも向けさせた。

 

南雲は本気で一之瀬帆波を助けるつもりらしい。

その動機が一之瀬帆波本人なのか、それとも龍園にコケにされた事への反骨精神なのかは分からない。

 

『そろそろ目が覚めたか?自分の立場が理解できたか?』

 

『この学校、いや、この社会は実力至上主義。文句があるなら、実力を示せ。負け犬の遠吠えは俺には響かない。以上だ。』

 

ブツッ。コードを思いっきり引き抜いたような音が幕切れの合図だった。

もう、この場で語るべき言葉は失われた。

 

一之瀬の過去や南雲の手口にどれだけやっかみをつけた所で、虚しさに苛まれるだけだ。

 

「…気に食わないな」

堀北兄が静まり返ったグラウンドでボソッと俺にだけ聞こえる声で呟く。

 

「それ、称賛の言葉ですよ」

「俺はあいつのことを認めていないわけじゃない。気に食わないだけだからな」

「そうですか」

「…お前はそうは思ってないようだな」

「いいえ、道化役にしては見事だと思いましたよ」

最後に笑うのはピエロだと言っていた彼らの末路を俺は知っている。

 

「綾小路。相変わらず捻くれてるな。」

「自分以外信じていないだけです。少なくとも、俺には賢い選択には思えません」

 

その後、教師陣が戻ってきた後、すぐに競技が再開した。

先程までの騒動が噓のような違和感を残しながらも閉会式までスムーズに進行していった。

 

ワンサイドゲームとなった結果発表に当然どんでん返しもない。

 

俺達AクラスDクラス連合である赤組は大差で勝利。

1年Dクラスとしては学年一位、学内総合一位の成績を収め、俺と高円寺が最優秀選手に選ばれた。

 

そして、白組は問答無用に-100cl。

学年別の順位別に1位+50cl 2位変動なし3位−50cl 4位−100clとなる。

 

この体育祭の結果を反映した時のclの推移はこうだろう。

 

前回までの順位

 

Aクラス (坂柳)924pt

Bクラス(一之瀬)880pt

Cクラス(龍園)740pt

Dクラス   238pt

 

1位+50cl 2位変動なし3位−50cl 4位−100cl

 

Aクラス (坂柳) 924pt ±0

Bクラス(一之瀬)680pt -200cl 

Cクラス(龍園) 590pt -150cl

Dクラス(綾小路)288pt +50cl

 

やはり、今回の体育祭、リターンが少ない。

高円寺の運動能力の開示、俺の運動能力の開示、坂柳への貸し。

それだけ払って得られたのが50cl。

 

ポジティブにマイナスを避けれたことを喜んでおくか。

 

「長い一日だったわね。はやく帰って寝たいわ」

「好成績だが喜んでいいのかは微妙だしな。」

めずらしく、ぐったりと疲れている鈴音。

いつもの覇気がない。

 

「そういえば、今日、お前の兄さんと結構話したぞ」

「…貴方聞いてた?私、疲れてるの。重い話はやめて」

重い話って。腹違いとか生き別れってわけでもなく、お前ら普通の兄弟だろ。

鈴音のこめかみを抑えるような仕草があの男と重なる。

 

「似てるよな。お前ら二人。」

「馬鹿な冗談言わないで。殺されても知らないわよ」

こいつ、どれだけ嫌われてると思ってんだ…。

いや、入学してすぐ、あの男が無抵抗の鈴音に容赦なく襲い掛かってるの見たんだった。

あの時は、夜中に誰の目にも付かない建物の影での出来事だったから、強姦されているんだと思ったなぁ。

 

…てか、冷静に考えて、あの男もヤバい行動してるよな。

常識人ぶった人間が一番サイコパスってはっきりわかんだね。

(この語尾、外村か誰かが言ってたんだけど、元ネタあるのだろうか。今度調べておこう)

 

「…話題は彼女のことで持ち切りね。」

俺達は黒板に張り出された結果を見ているが、教室は別の話題で盛り上がっている。

坂柳の助力で取れた結果だというのに、皆は驕っているようだ。

 

「ああ。一之瀬、Bクラスのリーダーを退いたんだっけか」

「…興味ないフリはやめて。貴方と彼女が仲良かったのはもう知っているのよ。」

本当なんだけどな。

俺は一之瀬帆波に興味はあるが、Bクラスリーダーや生徒会書記というポストに興味はない。

 

「てっきり、貴方が助けるんだと思ってたわ」

「どうしてそう思うんだ?」

「…それは…。」

「…」

「す、好きな人の役に立ちたいと思うのは自然なことでしょう?」

俺の無言の圧に言葉を絞り出す鈴音。

まるで、自分の話をしているかのように、顔を赤くして答えている。

 

「…鈴音は俺が一之瀬帆波を好きだと本当にそう思うのか?」

「ち、違うの?」

「もし、さっきの行動理念と感情が一致するなら、答えは出てるんじゃないか?」

「普通はそうかもしれないわね。でも、貴方は裏がありそう」

「酷い言われ様だな。」

まあ、実際に俺が一之瀬帆波を助けない理由はあるわけだが。

 

「それに、私は彼女がBクラスであることよりも、貴方がDクラスであることの方が信じられない」

「だから、裏があると?」

「ええ。」

「そうか」

まあ、これだけ能力を開示すれば仕方もないことか。

 

「貴方、人を殺したりしてないわよね?」

「…」

あの短い会話からいきなり突拍子もないことぶっこみすぎだろ。

流石に言葉も出ない。

いくら、感情表現に乏しいとはいえ、殺人鬼呼ばわりされるのは心外だ。

 

「沈黙は肯定よ?」

「んなことあってたまるか。黙秘権を殺す気か。」

逆にお前を権利を剥奪した不法行為で訴えてやる。

…おっと、この発言は時事的に少し危ないか。

 

「それ言えば、頑固で強情で我儘で自己中心的だが能力は悪くないお前がDクラスなのもおかしな話だろ。」

「無駄に形容詞が多いのはこの口かしら」

鈴音は俺の耳を掴んで引っ張ってくる。

こいつ、ギャグセンス高すぎだろ。どこが口やねん。

 

「暴力的も追加で。」

「ふんっ。」

「耳とれる耳とれる。本当に千切れるから。」

俺の懇願に鈴音の魔の手が退いた。

ヒリヒリする耳を抑えながら、なんだこのギャグ漫画みたいなやり取りはと我ながら思う。

 

「それで、本当に彼女に対して何も思うところはないわけ?」

「…今日はやけに突っかかるな。」

「わ、私だって不安なの。」

「何がだ」

「…貴方が私以外の誰かを好きになることがっ!」

本日のヒステリック気味な鈴音さんの理由はこれか。

そういや、二人三脚も鈴音じゃなくてかや乃と走ったんだったな。

 

「そこは安心してくれ。当分その予定はない。」

鈴音を好きになる予定もないわけだが。

「信じられないわね」

「じゃあ、どうしろと?」

「分からないの?」

鈴音が真剣な目で俺を見据える。

…待て。これは悪い流れな気がする。

 

「おい。綾小路はいるか?」

教室の後方のドアから俺を呼ぶ声がかかる。

グッドタイミングだ。佐枝ちゃん冴えてる〜っ!!()

 

「急用が出来た。行ってくる。鈴音、今夜は暖かくして寝た方がいいぞ。」

俺は鈴音に忠告して、すぐに茶柱先生の元に向かう。

 

…それにしても、鈴音、皆が他の話題に夢中になってるとはいえ公衆の面前で大胆すぎる。

 

ヒステリックが爆発する前に何とか手を打たないとまずいようだ。





タイトルはSANTAWORLDVIEWの楽曲の冒頭のlyricです。
気になる人は是非。。

ようやく、終わりました。体育祭編。

原作同様、全然報われない一之瀬帆波が報われる日が待ち遠しい。

個人的な話ですが、2月25日に待望のマイカーが納車します。よう実新刊の発売とのダブルコンボで今ハピハピ状態です。


#特選中落ちかるびwin


追伸

黙秘権の時事問題いじったとこだけは燃えないでくれ‥
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