綾小路がAクラス卒業ではなく童貞卒業を目指す話   作:ファウストの劫罰

56 / 81
#53 責任は押し付けるもの、管理も押し付けるもの

 

 

…疲れた。すごく疲れた。

体にあるのは疲労感と空腹だけ。

男子高校生であることを疑うほどに無気力で重たい体を必死に歩かせる。

もう一歩も動きたくない。しかし、まだ自分の部屋までは遠い。

どこでもドアがあればいいのに、そんな短絡的な思考が頭の隅に浮かんでくるほど限界だった。

 

願わくば、もう誰とも会いませんように…。

 

「あっ清隆君。」

 

フラグを建てた瞬間、スーモを見つけたかのような呼び声が後ろから聞こえてくる。

飲み会の一次会で何とか理由をつけて抜け出した帰りに、キャバクラのキャッチに声をかけられた時の気分だ。

心の中にいるいつも穏やかなイマジナリー綾小路清隆も、これにはムンクのように叫んでいる。

…いや、確かムンクは叫んでいるのではなく幻聴や幻覚に怯えているんだったか。

なら、この後ろから走って近付いてくる足音も幻聴ってことでいいですよね?

 

俺の現実逃避は叶わなかった。

俺のつまらない思考の隙をついて、既にすぐ後ろを取られている。

お前は気付いたら後ろにいるメリーさんか何かか。

変な人形を拾った覚えも捨てた覚えもないぞ。

 

俺は出来ないなりにも、できる限りにうんざりとした表情を作って振り向く。

…どうやら、帰り道に友人を見れば必ず挨拶してくるフッ軽な男の他にもう一人いたらしい。

 

「あっ本日の主役じゃんっ。主役は遅れてくるってか~。」

「…珍しい組み合わせだな。洋介」

フッ軽な男と一緒にいたのは、尻軽な櫛田だった。

酷い言いようだと思われるかもしれないが、開口一番に茶化すような冗談と共に身を寄せてくるのだから仕方ない。

外村や山内あたりなら、それだけで表情筋が緩んで情けない顔を晒すだろう。

俺に彼らと同じように身体的接触を図っても、意味がないことは彼女はよく知ってるはずだが…。

 

「そうかな?櫛田さんとは仲が良い方だと思ってるけど…。」

「そういうことじゃない。二人で一緒に帰っているところ何て初めて見たってことだ」

「勘が鈍いね綾小路君っ。つまり私達はそういう関係なんだよっ」

交際関係を匂わせるような発言を軽々とする櫛田。

もし洋介が彼氏であるなら、俺の腕に胸を押し付けて上目遣いを向けてくるこの状況は倫理的にまずいだろう。

 

…いや、俺が倫理観を語るのは流石に無理があるか。

不倫理君より不倫理君なことをするのが俺の目的だしな。

 

「そうか、おめでとう。なら今すぐ離れてくれ」

「本日の主役なんだからダメだよっ。おもてなししないとっ」

俺がうざがるように振りほどいても、櫛田はそれに負けないようにしがみついてくる。

これが、おもてなしなら、日本の文化であるおもてなしがエロい意味で認識されるぞ。

『女子高生のお・も・て・な・し』ってタイトルをつければほら、成人向け作品のタイトルが完成だ。

 

…今日の櫛田はどこかおかしいな。

俺に対して好感度を稼ぐ必要ないため、櫛田から身体的接触を図る時はいつも意図がある。

洋介の手前、他の男子と同じように接しているだけには思えない。

だが、プールのあの時のように明確な目的があるわけじゃない気がした。

 

「櫛田さん。そういう冗談はよくないんじゃないかな?」

「あはは、ごめんね。冗談冗談」

 

洋介は真面目なトーンで櫛田の冗談を不躾に跳ね返す。

マジレスって最強の防御法なんだよなあ。

櫛田のふわふわした雰囲気をいてつくはどうのように綺麗に消し去った。

ふざける雰囲気でも無くなったことにより、櫛田は俺からも距離を取ってくれた。

洋介いつもありがとう。

 

「それで、二人は何をしてたんだ?」

 

櫛田と洋介はDクラスの華の二人だ。

他クラスの人間が見れば、カップルとしても友人としても違和感のない組み合わせ。

だが、俺はこの2人が一般的な友人の付き合いをしていないのを知っている。

この2人は明確な意味がなきゃ成立しない組み合わせだ。

 

「さっきまで、クラスでプチ祝勝会があったんだ」

「…なるほどな。それで、本日の主役か…。」

ていうか、俺その話聞いてない。

え?クラスラインで連絡した?

もしかして、俺以外のメンバーを集めたクラスライン存在したりしないよな?

今の時代、PTAが黙っちゃいないよ?

いや、俺の親は逆にあらゆる方法を駆使してPTAを黙らせる方向で動いていじめを加速させて俺を退学させようと目論みそうだ。

 

それに、別に好きにやってくれていい。

むしろ波風が立たないのであれば、今参加しているクラスラインに抜けたいくらいだ。

俺、クラスラインとかで発言しないタイプどころか、既読すら付けないため、未読メッセージが999+になってるしな…。喋りすぎなんだよ。佐藤とか前園とか。

 

……そんなことより、プチ祝勝会ってなんだ?

 

「あ、安心して。祝勝会を改めて別日にやるとかそういう意味合いじゃないから。」

どうやら、洋介が浮かれたDクラスの面々に喝を入れるためにつけた名前らしい。

全ての能力が高水準の洋介もネーミングセンスセンスは人並みらしい。

プチ祝勝会って安直すぎだろう。プチトマトじゃあるまいし…。

そのネーミングの付け方だと、進化前ポケモンのニックネームには全てミニかプチを付けることになるぞ。

 

だが、Dクラスの皆は単純な馬鹿が多い。

『本当の祝勝会はAクラスになった後でね。』

なんて爽やか笑顔で言って焚き付けている光景が目に浮かぶ。

相変わらず、リーダーとしての役割を全うしているようだ。

 

「流石だな。洋介。」

「僕一人じゃ出来なかったことだよ。櫛田さんも協力してくれたんだ」

「私はクラスのためにできることをやっただけだからっ」

どうやら、モチベーターとして櫛田は一役かってでたらしい。まあ、その点において彼女の隣に出る者はいないだろう。

さらに、櫛田の凄いところは男女両方のモチベーターになっているところ。男子に媚びるような雰囲気を毛嫌う女子の扱い方すら熟知している。

 

"クラスのため" 櫛田には似合わない言葉だな。

彼女が吐き気を我慢しながら男子に接触していることや内心でボロクソに誹謗中傷しながら、女子の会話に笑顔で相槌を打っていることは洋介さえも気付いていない。

 

「なら、今はその祝勝会の帰りってことか?」

「僕は祝勝会の途中でサッカー部の先輩に呼ばれてちゃってね。それが終わって帰ってる途中に偶然櫛田さんと会ったんだ」

体育祭の後にクラスの祝勝会に参加して、さらには部活動に参加か…。

余りにもエネルギッシュな生き方を前に敬礼しそうになった。

 

「櫛田は何してたんだ?」

「私は茶柱先生に進路のことで相談してたんだ」

櫛田は表情一つ変えず、息をつくように噓をつく。

その時間の茶柱先生は地面に這いつくばって俺の靴を舐めようとしていたはずだ。

…なんてツッコミどころ満載のツッコミ入れれるはずがなかった。

まあ大方、特別棟の屋上で手すりにでも不満をぶつけていたんだろう。

 

「そういう綾小路君は?」

「生徒会だ。それよりも、祝勝会から洋介と櫛田二人だけが抜けて、今一緒にいる状況。合コンで抜けがけしてるみたいだな。」

俺も櫛田に倣って息をするように噓をつく。

そして、生徒会について深堀りされても困るため、インパクトのある話題で流れを上書きする。

 

「清隆君。そういう冗談はよくないんじゃないかな」

「ああ、悪い。」

櫛田が鎮圧されたのも頷ける。

洋介のマジレスには思わず謝ってしまうような力があった。

洋介はカプ厨に厳しい。

偽りの交際関係を仄めかすような発言を許してくれない。

 

「ていうか、綾小路君。合コンを抜け駆けって古いよ。今時の高校生はそんなことしないからっ」

櫛田は俺を小馬鹿にするように、肩を叩いて言ってくる。

 

「そうなのか?」

「そうだよ~。小学生ですら、インスタのDMでナンパする時代だよ?そんなあからさまにオープンな恋愛やらないって~。」

櫛田曰く、携帯電話の普及は恋愛の在り方を大きく変えたという。

漫画やアニメでよくあるラブレターや連絡先を紙に書いて渡す文化はもうなくなった。

出会い厨の口説き文句の『あとLINEやってる?』は死語になり、今では『とりま、インスタ繋がろー。』がトレンドらしい。

インスタのフォロー数はステータス的な一面もあり、断られるリスクが低いのが櫛田的にポイント高いようだ。

 

「抜け駆けとか駆け落ちとかはもう、ドラマでも共感性羞恥感じるよね~」

 

口振りから櫛田の偏見という訳ではなく、リアルな女子高生の共通見解だろう。

最近の現役女子高生の意見の攻撃力は高すぎる。

通常攻撃が範囲攻撃で二回攻撃の設定モリモリのドラクエの裏ボスくらいの攻撃力。

ドラマの脚本家とか原作作家とか、もれなく中年のおじさんなんだから、もう少し手加減してやって欲しい。

スライムにマダンテ打つのか。お前たちは。

 

「参考になる意見だな。それで、櫛田は恋愛経験があるのか?」

「清隆君。それは--」

俺は洋介の静止を手で遮って、櫛田の目を捉える。

ノンデリな質問であることは承知の上だ。

 

「流石に初めてかも。何の遠慮もなくストレートに聞いてくる人は。」

「そうだろうな。普段から恋愛相談を受けている櫛田に今更そんな疑問を持つ人はいない。」

櫛田は見た目もいいし、性格も外聞だけならいい。

彼氏の一人や二人作ることなど、カップラーメンを作ることよりも簡単だろう。

 

「櫛田は今まで幾多もの恋愛相談に乗ってきた。その過程で知った女子の価値観から恋愛の答えを導き出しているだけなんじゃないか?」

「考えすぎだよ、綾小路君。私にそんな芸当できると思う?」

「…出来るんじゃないかな。」

「平田君っ!?」

「…櫛田さんは他人の感情を読むのに長けているから。できても不思議じゃない。」

 

遠慮がちにも冷静に分析する洋介。

陽介にも櫛田の普段の行動を見ていて感じるところはあるはずだ。

日常生活の中で、心の中で○○して欲しいと他人に思っていることを櫛田はいつの間にかやってのけている。

それが当たり前のことであるように。

 

そして、洋介は打算的な人間を好む傾向にある。

俺や鈴音を高く評価しているように、櫛田の緻密な計算能力と行動力には惹かれるものがあるはずだ。

 

「平田君まで、何を言い出してるのかな?そういう冗談よくないと思うなあっ!?」

さっきの洋介のような言い回しだが、俺達を黙らせる力はない。

俺に『もう黙ってろ』と言わんばかりの圧力が語尾からひしひしと伝わってくるが気に留めない。

 

「洋介の言う通りだ。櫛田のコミュニケーション能力にはしっかりとした裏付けがある」

「…そうだね。僕もそう思う」

「それは、恋愛未経験の自分を恋愛上級者に偽ることだって可能だ」

「…そうなのかもしれないね。」

「導き出される結論は…」

俺が洋介との問答を経て、導き出そうとしている結論はつまり……。

 

「待って。」

「それ以上言ったら、許さないから。」

 

その言葉には先程と違い、しっかりとした圧があった。

いや、圧っていうより殺意だな。

 

「冗談だ。じゃ、俺は4階だから。お先に失礼する。」

 

他愛もない雑談をしながら歩ているうちに、もうエレベーターの前まで辿り着いていた。

俺は固まっている二人を置いて、先にエレベーターに乗り込み、社会人の模範囚のように挨拶して逃げる。

 

櫛田の『何を考えてるの?』と不満が全面に出た表情にエレベーターの扉を閉じることで返事をした。

 

この後、櫛田は洋介に弁解するだろう。

だが、もう洋介は櫛田の隠された一面を垣間見てしまっている。

洋介が櫛田の能力を頼るようになるのに時間はかからない。

 

そして櫛田は、自分を認めて頼ってくる洋介を断れない。

 

――――――――――――――――――――――――

 

俺はベットと一体化するんじゃないかというほど沈んだ体を起こす。

寝る前の記憶は曖昧だが、脳内は非常にクリアだ。

こんな深い睡眠をしたのは久しぶりだな。

それだけ、疲労が蓄積していたということか。

 

俺は近くにあった携帯に手を伸ばして今の時間を確認する。

夜中の1時か…。

今日は休日だから二度寝をするのも一興だが、生憎目は冴えてしまっている。

 

…こういう時、普通の男子高校生は何をするんだろうな。

ふと浮かんできた漠然とした疑問に俺の中から答えは出てこない。

俺は学校に上手く溶け込めているんだろうか。

 

「…とりあえず、LINE返すか」

 

寝ている間に結構なLINEの通知が溜まっていた。

入学して半年が経過するが、メッセージのやり取りは苦手だ。

対面の会話と違い、相手のレスポンスにラグはあるし、感情や表情も伝わってこない。

どうしても、時間を無駄にしている感が否めず、いつの間にか義務感を感じるようになった。

 

その点、鈴音とは気が合う。

彼女とのメッセージは業務連絡か通話履歴しか残っていない。

高校生のやり取りじゃないと言われればそれまでだが、俺が好む建設的なSNSの使い方だ。

 

俺は億劫な手つきで、返信を入力していく。

『ごめん、寝てた』っと。

 

相手がどんなメッセージ内容でも使える汎用性〇効率〇の定型文。これで追加で返信が来る相手だけ対応すればいい。

是非とも、マッチングアプリの定型文機能にも登録してもらいたい。

その際にはこの定型文の起源を主張し、商標登録を済ませて一儲けしよう。

 

『今から会えない?』

 

積み上げられたタスクをこなすように次々に同じ文面で返信していると、1件のメッセージがすぐに帰ってくる。

こういうの!!こういうのでいいんだよ。

シンプルかつ簡潔に。

これはしごできになるために真っ先に身に付ける教養だ。

緊急性と要求がはっきりとしている実に俺好みのメッセージだった。

 

…だが、送信主はかや乃か。

体育会系の彼女が頭の中まで筋肉で出来ている故に送られてきた文面だと考えのは早計だ。

この文面には知性が感じられる。

まるで、俺の好みになるように無駄を限りなく排除して調整したような。

 

『場所は?』

 

若干の違和感を感じつつも、俺は話を手早く進める。

深夜1時に、密会できる場所は限れている。

誰かに見つかるリスクを限りなく低くしたロケーション選びが肝心だ。

 

『0891』

 

携帯のパスワードのように見える数字の羅列。

暗号のようにも見えるそれは彼女の部屋番号だ。

やはり、今までのかや乃とは毛色が違う。

この時間に男子を自分の部屋に招くという事に関して余りにも事務的すぎる。

 

俺はエレベーターではなく、階段を使って彼女の部屋に向かった。

8階まで行くと薄暗い廊下に1本の光の筋が伸びていた。

ご丁寧にドアを少し開けて、場所はここだよというガイドまでしてくれているようだ。

 

「入るぞ」

俺は小声でドアの前で一言断りを入れて、ドアを開けると、シーッと顔の前で人差し指立てたかや乃が出迎えてくれる。

俺が一切の音を立てずにドアを閉めて鍵をかけるとかや乃は小声で話し始めた。

 

「…ごめんね。こんな時間に呼び出して」

「構わない。それより、返信が遅くなってすまなかったな。」

「ううん。それは全然気にしないで。私も返信するの遅いタイプだし…」

かや乃がLINEでのやり取りが苦手なのは解釈通りだ。

もう、相当な手練がかや乃のバックにいるのは確定だな。

 

「俺をドッキリの仕掛け人にでも仕立て上げるつもりか?」

ドアを施錠した今、小声で話す必要は無い。

この寮は都内家賃5万円以下のボロアパートのようなヤワな防音性じゃない。

市民から巻き上げた税金をふんだんに使い、最新設備が整っている。

 

なら、未だに小声を使っている理由は明白だ。

仕掛人がいれば、仕掛けられる側もいるということ。

 

「な、なんで分かったの!?」

「その相手はみーちゃんで協力者が松下だろ?」

「そんな詳細まで!?もしかして、千秋ちゃんに聞いてた?」

「聞いてない。それより早く行かないと怪しまれるんじゃないか?」

かや乃はお世辞にも友人が多いタイプじゃない。

それは水泳部という狭いコミュニティで学校生活の大半を過ごしてきた結果だ。

交友関係から逆算すれば、個人名まで割り出すのは容易だった。

 

俺に急かされたかや乃は焦るように部屋に入っていき、俺もその後に続いた。

 

「じゃーん。みーちゃん。綾小路君だよ~。」

かや乃の無理矢理テンションをあげたような声が室内に響いた。

 

「えええええっ!!?き、清隆君!?な、なんで?」

いい声で鳴くなぁ。

流石の防音性でも貫通しそうなくらいの声量だった。

ドッキリに初めて携わる俺としては、それにどういう反応を返すのが正解か分からない。

 

お化け屋敷のお化け役のように、みーちゃんが鳴くまで驚かせ続ければいいのか?

それとも、目を見開いて驚いているみーちゃんにマジギレして、ドッキリを上乗せする方がいいか?

はぁ…。ドッキリ大成功の看板と定番のBGMでオチをつけれたらどれほど楽だったか…。

 

この舞台の脚本を書いたであろう松下Pの用意不足に責任を押し付けて、無言で立ち尽くすことを選んだ。

 

「え、え、な、何?これ…。ち、千秋ちゃんっ。かや乃ちゃん。」

仏像のようにどっしりと構えた俺にキャパオーバーしたみーちゃんは松下とかや乃に泣きつくように抱きついた。

 

「よしよーし。大丈夫だからね~。みーちゃん。」

「なんで無言っ!?。」

みーちゃんの熱い抱擁に母性を発揮する松下。

俺の予想外の行動に驚きを隠せないかや乃。

深夜一時に何の事情も聞かされずに、面倒事を押し付けられている俺の身になってほしいものだ。

TVの番組だとドッキリされる側にもある程度の事情説明はあるんだぞ…。おっと、これは禁句だったか。

 

「悪い。日本語を一瞬忘れてた。」

「言い訳、適当すぎでしょ…。」

「良かったぁ。しゃべったぁぁぁ。」

「き、清隆君?清隆君なのっ!?」

三者三様の反応だがその中で一番大袈裟な反応だったのはみーちゃん。

俺が喋ったことに気づいたみーちゃんは生き別れの兄弟に再開した時のように俺の名前を何度も呼ぶ。

正真正銘の綾小路清隆だと確信したみーちゃんは松下達から俺の膝上に引っ越してきた。

てか、俺が綾小路清隆であることすら疑ってたのかよ…。

 

待て、マクドナルドのCMみたいなやついなかった?

 

「それで、俺を呼んだ理由は?」

いつまでも、近所のママ友を集めた井戸端会議のような中身のない茶番を繰り広げる気はない俺は本題に入る。

すると三人は気まずそうに目を合わせ始めた。俺への説明責任をを押付け合う雰囲気だ。

 

「あ~。ぇ~と。呼んでみただけ?」

童貞が選ぶ将来の彼女に言われたい言葉ランキングにランクインしてそうなセリフ。

だが、深夜一時に呼び出されて言われれば流石にホラーものだ。

可愛い子ぶったセリフを言う、らしくない松下を俺は真顔で見つめた。

 

「…っ!!み、みーちゃんがプチパニック状態だったから呼んだのっ!!ほら、これは綾小路君の管理監督不行き届きでしょっ!?」

 

俺はみーちゃんの保護者でもなければ、管理監督者でもない。ましてや、彼氏でもない。

だが、言われのない責任かと問われればそれも違う。

みーちゃんの中に俺の存在が大きなるように刷り込んだのは俺だからだ。

 

…プチって流行ってんの?規模の大小を表す言葉としては随分幼稚な表現だと思うが…。

 

「そうなのか?」

俺の膝上で生まれたての小鹿のように縮こまるみーちゃんは静かに頷く。

俺が何故かと聞く前に話し始める。

 

「…かや乃ちゃんは部活辞めた理由は清隆君だって言うし、千秋ちゃんは清隆君と契約結んだって言うし、一之瀬さんも…」

 

段々と目が細まっていく内容だった。

かや乃と松下は俺に目を合わせないどころか顔すら逸らす始末。

かや乃はまだいい。問題は松下だ。

契約ってなんだよ。魔法少女にでもなるつもりか。

中身がビジネスライクな関係だとしても、外向きは交際関係だぞ。

 

そもそも、その話来週が始まってから公開する事実だという認識だった。

…いや、親しい仲の人間のみ先に情報を公開しておくのは定石か。

その時に色んな葛藤が契約なんて濁した中二病臭いワードを引き出してしまったというのがオチだろう。

 

「悪い。説明不足だったか。」

 

女子というのは大きな幹からなる枝葉の集団だと改めて思った。

個人間で完結する問題はなく、瞬く間に伝播する。

 

今回の体育祭で状況が大きく変わったのは3人。

部活をやめさせたかや乃。

俺と偽りの交際関係になった松下。

クラスから孤立した一之瀬。

 

全て、みーちゃんに関わりの深い人間だ。

その全ての変化に俺が関わっていることはみーちゃんなら気付く。

 

「ここ4人だけの秘密にする。その約束をしてくれるのであれば全て話そう」

それは松下が欲する情報で、みーちゃんの心を晴らす答えで、かや乃の次の目標となる。

 

力強く頷いた三人にこの体育祭の裏で起きていた事実と、まだ誰にも言っていない俺のこれからの展望を話した。

 

 




かや乃が部活を辞めた。
櫛田と平田の関係が進んだ。
松下が魔法少女になった。

以上の3本立て構成になってます。

次回軽く体育祭の裏側書いて次に進む予定です。

そして、自分事ですが、よう実新刊も無事に読めました。
原作の方で最近、頭角を現してきたヒロインも早く出したいです。
魅力的すぎる。。。

現状のヒロイン達とのフラグを回収したら必ず出しましゅううう



P>S

ハイキューの映画見てきました。

俺が遠い昔に置いてきた青春でした。。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。