奇跡王来伝   作:ナエゴン

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第一章 奇跡を超えた奇跡のドラゴン

この世界には超獣の名と魂が記憶されている。肉体が滅びても、その魂や歴史が完全に滅びる事はない。超獣王来烈伝というものがあるが、あれに載っていなくとも超獣の名と歴史は"ここ"に全て載っているのだ。

今回は、「奇跡王来伝」とでも言うべき歴史の数ページを、「彼」の記憶を覗きながら見ていこうか。

 

 

彼の名はミラダンテ。「ミラダンテ」とは「奇跡を越えた奇跡の者」に与えられる名であるため本名ではないのだが、彼はその名誉ある名を誇りに思っている。故に、彼にとってそれが本名かどうかなど些細な問題なのだ。

 

彼はランド大陸『光の国』の龍王である。1つの時代に1つしか目覚めないとされる力、「革命0」を持ち、その力で国を護っていた。

 

 

ある日の事だった。突如、彼の前に時空の穴が開いた。その奥には、身体中に車輪を纏い、真紅のボディに包まれたクリーチャーが次々と他のクリーチャーを襲っているのが見えた。

 

これは何だと思っていると、穴から声が聞こえてきた。

 

『この悪しきクリーチャーを倒せ。お前の持つ、未来の革命0の力が必要だ。』

 

私が未来の革命0を持つ?ならばこれは過去からの声?彼は困惑したが、すぐに冷静になる。

 

声の主は真紅のクリーチャーを「悪しき者」などと称していたが、それと比べ物にならない程に邪悪な意思を声の主から感じていた。怪しい。何かある。彼は部下達を呼び、この穴をなんとか塞ぐつもりだった。

 

 

そうしなかったのは、更に別の声が穴から聞こえてきたからだ。

 

『このままでは光の国は滅んでしまう。どうか我らに僥倖を……奇跡を……』

 

誰かに語りかけているのではなく、祈っているような口調だった。それも、今にも息絶えようとしているほど弱々しい声で。先程の声の主と違って、心の底からの想いに聞こえた。何より彼の気を引いたのは「光の国」という言葉。よくよく見れば、穴の奥に見える風景は彼の国のそれに似ていた。少し迷った後、彼は穴に飛び込んだ。

 

 

 

 

穴の中は果てしないトンネルのようだった。進めど進めど、奥に辿り着く気配がない。いや、少しずつではあるが近付いていた。時の流れに逆らうというのは、途方も無い道程を要するものなのだろうか。

 

どのくらいの時間が──あくまでも"その時の彼の感じた時間"ではあるが──どのくらいの時間が経ったのだろうか。彼は遂にそこに辿り着いた。

 

彼が降り立った場所は、惨状となった光の国だった。勿論彼の時代と風景はかなり違うが、地形や王宮を見るに、過去の光の国である事は間違いないようだ。だが、肝心の真紅のクリーチャーの姿はない。手遅れだった?そう思っていると、背後からか細い声がした。

 

「そこのお方……私は光の国の王、ミラクルスターという者です。どなたか存じませんが、どうか、我々に力を貸していただけませんか。」

 

驚いて振り返ると、そこには傷だらけで倒れている龍の姿があった。光の国の王という事は、私の祖先だろうか。名前に「奇跡」を示す言葉が入っている事から、その可能性は高いように思える。いや、今はそんな事を考えている場合ではない。

 

「勿論です。あの真紅のクリーチャーはどこへ行きましたか?」

 

「我々を制圧した後、壁の森へと向かいました。火の国へ行く、と話していたように思います。」

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

あの真紅のクリーチャーは火の国までも襲うつもりか。文明は違えど、同じランド大陸の国。見捨てる事は出来ない。幸い、壁の森も火の国も、私の時代まで存在し続けている。方角は頭に入っている。そう考えて火の国へ向かおうとした時、再び声をかけられる。

 

「お待ち下さい……壁の森を超えるには7日7晩かかると言われるほど、火の国への道は長いです。ですが、敵はあまりにも速い。それに、敵が過ぎ去ってから既に半日以上の時間が経過しています。今からではとても……」

 

「問題ありません。私なら奴らにも追いつけます。」

 

彼はそう言うと、革命0を発動する構えを取った。

 

「そのエネルギー……もしや革命0ですか?これほどの力を持つ者が実在したとは……」

 

「えぇ。私は貴方の声を聞き、未来からこの時代に来たのです。」

 

彼がそう答えると、ミラクルスターは目を見開き、そして涙を流した。

 

「これほど大きな奇跡が起きるとは……心から感謝致します。貴方の名は?」

 

「私の名は、ミラダンテです。」

 

次の瞬間、ミラクルスターの視界からは彼の姿が消えていた。

 

「ミラダンテ……なんと美しい名前なのでしょう。」

 

ミラクルスターは恍惚とした表情を浮かべ、やがて眠りに落ちた。

 

 

 

 

真紅のクリーチャー《レッドゾーン》を筆頭とする集団「音速の侵略者」達は、壁の森を半日で通過し、火の国を襲撃していた。圧倒的な強さを誇るレッドゾーンは火の国までも壊滅状態に追い込んでいたが、この時代の革命0を持つ者にして火の国の王《ドギラゴン》と、この時代に蘇り、進化した過去の英雄《デス・ザ・ロスト》の2体の革命0の力により、完全には制圧が出来ずにいた。

 

そこに、突如としてミラダンテが出現した。革命軍も侵略者も突然の乱入者に驚きを隠せなかった。

 

基本的には、光の革命は奇跡を導く力である。だがミラダンテの持つ革命0はその更に上の次元、「時を止める」という強大な力に到達していた。時を止めたことで、彼は火の国へすぐに辿り着く事が出来たのだ。

 

辿り着いたは良いが、ここで彼に1つ問題が発生した。傍から見たらワープでもしたかのようだが、移動自体は己の翼で"あの"壁の森を駆け抜けたため、その時点で彼は力の半分近くを消耗していたのだ

しかし、ドラゴンを超えたドラゴンであるドギラゴンの力により、デス・ザ・ロストとミラダンテの力が高められる。その上、単体でも強力な革命0の力が3つも揃ったのだ。こうなっては、もはやレッドゾーンに勝ち目はなかった。

 

 

 

 

レッドゾーンを倒した後、彼らの元に2つの情報が舞い込んできた。1つは、「禁断の存在」の言い伝えが残る「壁の雪山」で「幻影の侵略者」達が不審な動きをしている事。もう1つは、水の革命軍と、修行に訪れた剣士達が海から「海底の侵略者」の襲撃を受け、更に「正体不明の存在」を目撃した事。

 

彼は「正体不明の存在」の方に関心を抱いた。もしや、自分をこの時代に呼んだ者と関係があるのかもしれない。次に向かうべきは海底……彼はそう決めた。

 

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