ドマイナー地方でチャンピオンやってるけど質問ある?   作:鯖村

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お気に入り、評価、コメント等ありがとうございます!
沢山の方に見ていただけて嬉しいです、コメントが増えて返信が追いつきそうにないので今後本編で答えられそうなものは本編に、それ以外は活動報告にでもまとめておきます。

ソーンは10歳でジュラを旅した生粋のジュラニンゲンなので冒険ストーリーは終了済みです。
修羅方面で盛り上がっているので今回は可愛い回です。


目指せ自然派素朴系Poketuber

 

 ジュラリーグ、会議室。

 

 テーブルを囲んでいるのは四人。

 ポニーテールにスーツ姿の女性、リーグ職員とジムリーダーを兼任しているフィラム。しかめ面のスーツ姿の男性、フィラムの上司であり同じくリーグ職員とジムリーダーを兼任しているシラー。そして優しげな雰囲気の老人、ジュラリーグ委員長を務めるリンボクとその隣でポロポロと崩れやすいジュラのお菓子マサパンを前に悪戦苦闘しているチャンピオンのソーン。

 

「初回の動画配信についてですが、出来れば紹介するポケモンは穏やかなポケモンにしてみませんか?」

「うん? いいけど、なんで? 最初の配信ってインパクトとか大事なんじゃないの?」

 

 提案するフィラムに対し首をかしげてソーンが返す。

 

「いやインパクトはもう殴り掛かってくるジャラランガやプテラの群れでお腹いっぱいです、あの二日三日でジュラ地方に修羅地方や魔境なんてあだ名までついちゃったんですよ!?」

「私もフィラムくんに同意だな……あの手のポケモンはどうせ今後配信中に乱入してくる、最初に紹介するポケモンくらいは愛嬌のある見た目をした穏やかなポケモンで良いだろう」

 

 この上司と部下はどちらもジュラの外から来ているので感覚が麻痺したジュラ地方民と違いジュラ地方の魔境っぷりを認識している。

 ネット上でジュラ地方の分かりやすい危険度が広く認知されはじめた以上、ネットユーザーの多くはしばらくは何故か流行った魔境大喜利などで盛り上がってくれるだろう。折角なのだから勢いのある内にそれ以外の層の反応を得たいのが二人の考えだった、二人の意見を聞きリンボクがゆっくりと頷き口を開く。

 

「わしはそういうのには詳しくないからねぇ、でもシラーくんやフィラムくんが言うならその方が沢山の人に親しんでもらえるんじゃないかな、ソーンくんはどうしたいかね」

「うん。オレもいいよ、場所はどこがいいかな」

「あの高台の遺跡の祭壇でいいんじゃないかね、天気の良い日は遠くまでジュラ地方がよく見える」

「あの、そこ平時は禁足地じゃありませんでした? 一応各所に配信の連絡はいれてありますけど……」

「わしや禁足地の守人が許可しておる以上いつ立ち入ろうが問題などないからね、そもそもソーンくん一人ならジュラのどこへ行こうが人にもポケモンにも許可を得る必要などないしの」

 

 会議は平和にまとまった、遺跡はともかく祭壇は平時立ち入り禁止なのだがとにかくまとまった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

▶︎

 

 

 

 

 

ライブ

【祝え】おいでよジュラの森【初配信】

  XXX人が視聴中・XX分前に配信開始

ジュラリーグ公式  チャンネル登録 
    

 

 

 空は晴天。薄く広がる雲と太陽をバックに悠々と空を飛ぶ鳥ポケモンのシルエットが見える、離れた位置から猛スピードで近付く別のシルエットが見えるのはご愛敬。大地はというと、地方の半分を占める熱帯林ではなく自然に囲まれながらも空を見上げられる高台で背後にはピラミッドのような祭壇が見える。

 

「チャンピオン系Poketuberです!!」

 

 そんな場所でやや実戦に傾いたタクティカルファッションに身を包んだ少年が、ガラルでよく見るリザードンポーズをしていた。

 そのすぐ傍では少年の相棒たるジュラヘルガーが丸まって寝ている。

 

・そのポーズは別のチャンピオンなんだよなぁ

・リザードンポーズは草

・動いてるの見るとやっぱ若いんだなチャンピオン

・ダンデ知ってるんだ

・ソーンくん、その人もう退いてるけど

・チャンピオンマントのせいで妙に様になるw

 

 数秒間停止した後、ポーズを止めた少年がぱたぱたとカメラの方に近付いて手を振る。

 

「はじめましてこんにちは、ソーンです。さっきのポーズは四天王の一人がガラル出身で教えてもらった! ダンデさんって10年くらいチャンピオンやってたんでしょ、スゴいよなぁ」

 

・こんにちは~

・こん

・ダンデは凄い

・後ろ神殿?

・自然すご

・ガラル出身者いるんだ?

・四天王ってことは学者の人かな

・だからって何でリザードンポーズをチョイスしたのかって謎は残ってるんだよなあ

・ジュラヘルガー寝てる?可愛い

 

「てわけでジュラリーグ公式という名のオレのPoketubeチャンネルも出来たので、初配信です初配信!」

 

・初配信おめでと

・おめ

・おめでとー

・即私物化は草

・ジュラ地方トレンド入りもおめでと

・Poketterフォローしました

・ジュラの映像が見れると聞いて

・ところで気になってたんだけど何で鉄パイプ装備してんの?

・えっ

・本当だ

・ヤンキーじゃん

・不良か???

 

「不良じゃないです、鉄パイプでもないし!」

 

 腰の後ろに差してある武骨な鉄棍を手に取ってカメラの前に出すソーン、そのまま手元で回転させると空を切る音と共に数度素振りして見せる。

 

「護身用です護身用、ただの鋼がっちがちに固めた棒だよ」

 

・そのわりに空を切る音が素人のそれじゃないんよ

・素振りが手慣れ過ぎてる

・明確に武器じゃん

・使い込んでて草

・アブネー奴だったの…?

・ジュラってヤバいところなんですね

・デカヌチャン(ジュラの姿)であったか

・鋼の武器持ったドラゴンに強い蛮族……ソーンくんはカヌチャン族だったのか

・どっちの認識もボロボロで笑う

 

「必要装備だってば、流石に殴り掛かってくるポケモンの爪やら牙やらを素手で防げないし」

 

・んんんん????

・流れ変わったな

・Poketterで見たようなポケモンが襲ってくるなら必要かもなー

・ジュラってヤバいところなんですね

・なんでそんな所でチャンプになったんだ

・むしろなんでなれたのか

・ところでチャンピオンは一人?誰か撮影スタッフとかいないの?

 

「外での撮影だから人間はオレだけだよ、撮影と配信とか諸々はドローンロトムとポリゴンZが手伝ってくれてます」

 

・ロトム流石ロトム

・やっぱドローンロトム優秀だよな

・意外な名前が出てる

・ポリゴンじゃないの?

・その二匹は手持ち?

・ポリゴンじゃなくてポリゴンZなんだ

 

「ロトムは電子機器操作用の子、ポリゴンZは何か知らん間にBOXに入ってた。ポケセンとリーグと警察に頼んで色々調べたけど捜索願出てないし誰かの手持ちだったのかすら分かんないから保護してるー」

 

・???????

・情報量多い多い

・ある日突然ボックスに現れたの?怖くない?

・手持ちではないんだ

・もしかしたら逃げてきたのかも?

・ポリゴンかポリゴン2なら分かるけどZはなぁ

・ポリゴンZあんま知らないんだよね

・Zにデータ関連触らせるの心配じゃない?

 

「ゼットさんはね、かなり優秀にやってくれてる……ロトムこっち撮って……ほら見て、超文明!オレが皆のコメント見れるように半透明のなんかスゴい板を出してくれる!!」

 

 ソーンに促され移動したドローンロトムのカメラが映した先では半透明のホログラムウィンドウが二つ宙に浮き、大きなウィンドウでは視聴者からのコメントをリアルタイムで流している、もう片方は小さなウィンドウでドローンロトムが撮影している画面を確認できるようになっていた。

 

・ホログラムかな

・ホログラムでございますね

・おー、スゴイ

・これは文明レベル高い

・何か凄い板

・かなり板だよこれ

・そうだね、板だね

・この語彙はド田舎

・文明は初めてか?肩の力抜けよ

・便利だなあ

・煽られてて草

・ポリゴンてこんなことも出来るんだ

・へぇ~今度頼んでみよ

・ポリゴンって電気タイプだっけ?

・ノーマルだよ

・強い?

 

「配信作業は好きそうだったから手伝ってもらってるけど、ゼットさんは保護してる子だから戦闘には出さないよ」

 

・そんなもんなん?

・保護って本当に色んな形あるからね、気になる人は調べてみ

 

「この子の場合は保護して5年くらい経ったら保護じゃなく手持ち登録出来るって言われた。ポケモンとかトレーナーとか拾った時点での事情とかで年数は変わるから、皆ポケモンを保護した時はポケセンと警察に相談しようね」

 

・はーい

・急に為になる配信じゃん

・他にも保護したポケモンとかいる?

 

「ポケモンの保護ね、種類は色々だけどやってるよ。丁度いいし今日は保護してる子から1匹紹介しまーすってことで今日は、ジュラでもちょっと変わってるポケモンを見せましょう!」

 

・おっ

・わーい

・どんな子だろ

・ドラゴンタイプ来るかな

・ジュラでも変って

・楽しみ

 

「馴染みのあるポケモンが良いかなって思って、おいで!」

 

 ソーンに呼びかけられ画面外からぱたぱたと薄桃色のポケモンがやってくる。

 見た目はイッシュで見かけるタブンネに似ており、伸びた毛皮がふわりと衣服のように揺れている。

 

「この子はジュラタブンネ!」

 

・かわいい

・可愛い!

・タブンネちゃんだ~!!

・やべーのがお出しされると思ってた

・かわいいいいいいいい!!!!!

・なんかちょっとイエッサン♀にも似てる気がする?

 

「原種より小さくて色味もかなり薄い感じです、色はメガタブンネにも似てるのかな。これもリージョンフォーム、ジュラ固有種だそうです」

 

 ジュラタブンネはソーンの隣で手を前に組んだ姿勢で大人しくカメラに向かってお辞儀をする。

 

・ジョーイさんみたいで可愛い

・メイドさんっぽい

・これはタブンネスレが荒れそう

・かわいいなあ

 

「見た目の特徴はこのお腹のエプロンみたいなヒラヒラかな、内側がポケット状になってて物をしまえるんだよねブンちゃんなんか見せてあげて」

 

 笑顔のジュラタブンネがエプロン部分に手を突っ込んで中から石を取り出す、カメラに向けてそれを見せたあとは再びエプロン内部に収納して元の姿勢に戻った。

 

「ありがとね。えっと、ジュラタブンネの起源ですけど……むかーし、何らかの理由でイッシュからタブンネがまとまった数ジュラに流れ着いてしまったんですけど。まぁジュラって徹底的に弱肉強食なんで秒で絶滅寸前までいったんすよ」

 

 ジュラタブンネの丸い頭を優しく撫でながら解説する。

 後にPoketterで呟かれた有識者曰く過去のジュラ地方にはジュラのポケモン目当てだったり人の少ない田舎故にそこに拠点を置こうとした密猟者の出入りがありタブンネの流出もその関係だと推測されているという補足がされていた。

 

「食いでありそうだもんねブンちゃん」

 

・ブンちゃんお手本のような二度見

・タブンネ見て出てくる台詞じゃない

・感想があまりにも蛮族

・ジュラがどんなところかは分かった

 

「外来種の即絶滅はジュラではあるあるだから」

 

・外来種って生態系乱すイメージだったんだけど

・試された結果の大地……

・外来種が根付けない修羅地方

・試される大地とかは他でも聞くけど試された結果即絶滅はヤバ

 

「えーっと、それで絶滅寸前まで追い詰められたタブンネ達が考えたのがジュラではかなり珍しい方法で、ずばり原種からさらに超超超サポート特化! もうこの際サポート以外の能力は全捨てしてお世話スキルに極振りすることで強い奴のお世話して気に入られ守ってもらおうという決死の大作戦!」

 

・そっち!?

・可愛い外見から繰り出される捨て身の賭け

・プライドかなぐり捨てた進化だ……

・なりふり構ってられなかったんだろうなぁ

・外敵に対してあまりにも歯が立たないなら攻撃技なんて・・・!!ってなるの、か???わからん

・命と種の存亡掛かってたら、まぁ…

 

「元から優れていた聴覚は勿論、危機察知、空気読み、バトルのサポート、身の回りのお世話に磨きをかけ、取り入る相手に絶対に気に入ってもらえる謎の性能を手に入れたジュラタブンネ!!」

 

・あまりにも必死で草

・涙が出てきました

・可愛い見た目からお出しされる必死の助命嘆願

・ジュラってヤバい場所なんですね絶対行きません

・ジュラタブンネちゃんめちゃ可愛い~って思ってけど背景が世知辛過ぎて

 

「まさかジュラでこんな平和な進化するポケモンがいるとは……って感じで凄く珍しいポケモン! 実際色んなポケモンがジュラタブンネを群れに入れてたり、トレーナーと一緒に暮らしてたりするんだ」

 

・平和ではないんよ

・平和(ジュラ基準)

 

 

「ジュラタブンネが選ぶのは天敵だらけのジュラ地方で自分を守ってくれると信じた強い奴だから、ジュラのポケモン達にとっても自分の群れにタブンネがいるのはステータスなんだよな」

 

 

・ジュラタブンネちゃん大勝利?

・蛮族にも温かい心が?って思ったのにトロフィーか

・強さの証明になるわけね・・・・

・まぁ確かにお世話スキルEXで強さの証明にもなるなら群れにいると箔つくかも

 

「ブンちゃんは別の奴に従ってたんだけど、色々あって今はオレんとこで保護中」

 

 ジュラタブンネがニッコリと笑ってカメラに対し手を振っている。

 

「こうした特徴のおかげで、ジュラタブンネはジュラ地方では絶滅寸前から一転愛されキャラになりましたとさ!」

 

・微笑ましくはない

・生きるって大変なんだな

・命に感謝しようね

 

「うん、めでたしめでたし」

 

 カメラに向かって笑いかけたまま、ソーンが腰へ手を回し鉄棍を掴むとそのまま横へと切っ先を向け勢い良く振り下ろす。

 ガキャンと大きな音がして鉄棍を振り下ろした先で地面に埋まるのは尖った岩、画面の端で見切れながら寝ていたはずのジュラヘルガーは既に迎撃の体勢を取り低く唸っている。

 岩を叩き落としてから一瞬の静寂、直後に画面外からぎゃあ、あ、と続く咆哮が響き渡る。

 

「時間あったら手持ちから一匹紹介しようかなって思ってたんだけど腕試し来たんでちょっと行ってきます! いくよトゲリップ」

 

 強襲されたとは思えない気楽さでソーンがボールを投げる。

 中から出て来たのは印象としてはベビーグッズのぬいぐるみのようなフォルムの可愛らしい恐竜のような何か。白くもちもちと柔らかそうな体、頭や背中のトゲは丸く体のフォルムはヌオーやドオーに似ているような似ていないような二足歩行。そしてお腹に青と赤の三角模様が散らばっている。

 

・!!?

・え

・なになになに

・!!!?!??!??

・なんか飛んで来た

・なに?

・まっっっっって

・岩とんできた

・えええええ

・なにがおきてんの

・叩き落した????

・どういう反射神経してんだ

・ええええ

・mttえ11

・待って待って

・えぇぇぇぇ

 

「次回はジュラ地方名物、腕試しポケモンについて紹介予定! チャンネル登録よろしくお願いしまーす!!」

 

・待ってなにそのポケモンンンン

・えっかわい

・なにその子おおお

・トゲピー種!?!??!?

・視聴者置いていかないで

・うっそおわり?

・えぇぇぇぇおつかれさまですたー?

・とんでもねぇわジュラ地方

 

 走り出すソーンを見送ったジュラタブンネがにこりと笑ってお辞儀するのと同時に配信は終了した。

 

 


 

 

 ――同時刻、ジュラリーグにて。

 

「えぇぇ……えっと、シラーさん、これ大丈夫ですかね」

「…………想定の範囲内だろう、腕試しが終わり次第SNSで生存報告させればいい」

 

 配信はバズった。

 

 




(命が)可愛いので隷属を選んだタブンネちゃん、バトルでは原種タブンネより弱い。

最後に出たのはやたらめったら頑丈なタマゴにコモルーしてるジュラトゲピーの進化形、トゲキッスの顔にヌオー・ドオー体形のフェアリー・ドラゴン野郎。

ソーンの服装の想像がつきにくい方はアプリゲーム「アークナイツ」のキャラがよく着てるタイプの服を想像するか検索してみてください、そんな感じです。

ジュラタブンネ・トゲリップの仮イメージ図を活動報告にアップしました。

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