ドマイナー地方でチャンピオンやってるけど質問ある? 作:鯖村
マシュマロの内容は、皆様にお寄せいただいたコメントからほぼ原文ままでソーン達でも拾えそうなものをいくつかピックアップさせていただきました。いつもありがとうございます。
・匿名メッセージサービス「ポロックBOX」
ポロックボックスとは、匿名のメッセージを受け付けるサービスの一つです。
攻撃的な内容をAIが削除してくれる特徴があるため、匿名メッセージサービス内では比較的利用率が高いもので様々な人が利用しています。
「ポロックを投げ合うような優しい世界」を目指して作られたサービスです。
ジュラ地方のチャンピオンが本気でポロックを投げてみたところ壁にめり込みました。
応接室の様な部屋で少年を真ん中にして3人がソファーに座っている、手前には黒いテーブルが設置されておりそれぞれ目の前には飲み物が置かれている。
画面の右側にはショートカットに大きな黒縁メガネをかけサファリジャケットを身につけた女性、画面左側には白いジャケット姿の目つきの悪い男性が座っている。
「初動画!! 新メンバー!! ハイ自己紹介!!」
元気良く真ん中に座る少年、ジュラ地方チャンピオンのソーンが二人を促す。
画面左側に座る男性がサッと片手を軽く上げる。
「おは蛮族。四天王のセラジネ、フェアリータイプ専門」
続いて画面右側に座る女性がにっこりと笑顔で手を振る。
「おは蛮族~。同じく四天王のアニス、エスパータイプ専門でガラル出身でーす」
「……チャンピオンのソーンです」
「言えよおは蛮族って」
「絶対似合うよソーンくん」
ニヤニヤ、ニコニコと笑う二人に挟まれ憮然とした表情のソーンが渋々片手を上げる。
「…………おは蛮族~」
「……ブフッ」
「ばーーーーか!!!!」
堪え切れずに笑ったセラジネをソーンが即座に片手で画面外へ投げ飛ばす。
離れた位置で着地の音がするのを見守りながらも眉間にしわを寄せてアニスが呟く。
「うーん相変わらずその見た目でそのパワーは詐欺だよねぇ」
「コイツ10歳ん時にもうドラゴンタイプとかブン投げてたからな」
特にダメージもなく画面内に復帰したセラジネがそう補足するが、アニスはますます呆れた表情になる。
「年齢関係ないよねぇ、ドラゴンタイプを投げるの時点でおかしいの分かってジュラっ子達」
「子って年齢じゃないじゃんね、セラジネは」
「おいカメラ止めろアニス笑うなコラ」
仕返しとばかりに鼻で笑われたセラジネが立ち上がるが、そこまで映した後に【グダったのでカットです】というテロップ表示と共に画面が暗転する。
「ちょっとグダったけど、いつの間にか設置されてたポロックボックスにいっぱい投稿が来ていたので今日はオレ達でいくつか答えていきます」
「折角なのでアタシ達も食べます、ということでポロック作ってきたよぉ」
「作ったの俺だが?」
アニスの言葉に反論しつつ、セラジネがテーブルの真ん中にポロックの盛られた皿を移動させる。
「じゃあ一通目」
「マジ」
「マジだねぇ」
「いえーい!」
「なんなら10歳時点でヤバかったんだよコイツ」
「アタシは11歳の時に知り合ったけどその頃にはもうこんな感じだったよねぇ」
「いえーい!! 次!!」
「いない」
言い切ったセラジネに代わり、アニスがずいと画面中央に寄り眼鏡を指で押し上げて話し始める。距離を詰められたソーンが横にずれ、何が起きるか察したセラジネがため息を吐く。
「御三家って該当地方に生息する特殊基礎の3タイプでバランスが取れてて二段階進化して新米でもある程度育てやすく優秀でヒトに好意的なポケモンっていう難しい選出だし研究所や専門機関で人に慣れさせてある程度の躾はしてあったり結構手が掛かってるポケモンだからジュラの設備で御三家を用意するのは難しいよねそもそもジュラだと3タイプの選出の時点で困難だと思うのある意味今後の課題でもあるよねこれは」
「いつも思うけど、アニスお前いつ息継ぎしてんの?」
「アニス、特殊基礎の3タイプってなに?」
「草、水、炎タイプのことだね。ヒトと違う生態のポケモンを飼育するってなると色々勉強することが多くて大変でしょ?勿論ノーマルや格闘、飛行、虫タイプのポケモン達だって一緒に過ごすなら勉強は不可欠だけど人の住処の近くでも見かけたりするからイメージがつきやすい部分もあるんだよね、逆に炎水電気氷ゴーストなどのヒトと生息域や生態が大きく離れるようなポケモン達の飼育は新米ポケモントレーナーの躓きやすい点でもあって、そこでまずはタイプ相性も三竦みになる草水炎のイメージを掴み易い3タイプを特殊な生態のポケモン達を理解する為の特殊基礎3タイプって位置づけで御三家としてポケモンリーグ、ポケモンセンター、研究所の共同で新人トレーナーへ譲渡してるんだねこれは正式名称ってわけじゃないから覚えなくて良いよ」
喋りたい所まで喋ったのか元の位置に戻るアニス、説明の礼を述べながらソーンも中央に戻る。
「つまり、御三家となるポケモンの選出と安定して新人トレーナーにポケモンを渡せる専門の育成機関の二つが揃わないのでジュラに御三家はいない。ってことでいいな。そもそもジュラは新人トレーナーの旅立ちは推奨してない、基本イッシュ送りだ」
「だよねぇ、でも二人はジュラで旅してたよね?」
「いや、俺はイッシュで少し旅してからジュラに戻った」
「そんでまた出て行って数年後に戻ってきたんだよなー」
「で、ソーンくんは10歳でジュラを旅と」
「楽しかった!」
「良かったねぇ」
「次いくぞー」
「おいでトゲリップ!」
ポンと軽快な音を立ててボールから飛び出す白くもちもちとした恐竜のぬいぐるみ、もといトゲリップ。ソーンの膝の上に座ってパタパタと手足を動かしている様子を苦々しい表情で見るセラジネが呟く。
「出たな極悪はんぺんドラゴン」
「可愛いんだけどねぇ」
「何が駄目なんだよていうかセラジネはフェアリー使いじゃんリップの何が不服だおら」
二人からの反応に不服そうなソーンがトゲリップを持ち上げセラジネに押し付ける。
「いやフェアリー無効*1のドラゴン野郎はちょっと」
「数少ないジュラ固有フェアリーなのに」
「俺はトゲリップだけは捕まえないってハナの神に誓ってる」
「セラジネくん、昔ソーンくんに喧嘩売ってリップちゃんに全抜きされたってホント?」
「…………」
アニスの言葉に固まったセラジネ、トゲリップはそそくさとソーンの元へ戻った。
「……ウ゛ァ゛ア゛ア゛アアァァァァ!!!!」
「あー、泣かすなよアニス」
「えぇ~アタシのせい?」
頭を抱え叫ぶ成人男性を放置し、画面は暗転。何事もなかったかのように動画は続く。
「ハイ次!」
「かかっておいでよジュラの森」が正しいよねきっと。
「言われてんぞ」
「オレじゃなくてジュラ全体の評価だもん」
「かかっておいでよって言うのはソーンくんっぽい」
「それはそう」
「はい次」
「ガブ上へのお便り多かったねぇ」
「お前腕試しガブリアスに何したんだよ?」
「え、何も? 引きずったからかな?」
「えぇ……あの子巨大個体だから100kg以上あるでしょ」
「捕まえないのかって質問もあったけど」
「オレと戦いたいのに捕まえたら可哀想じゃん」
セラジネとアニスは顔を見合わせ肩を竦めて笑う。ジュラ地方では強いトレーナーにはポケモンが寄ってくるものだ、色んな意味で。
「あとは証についても質問とか来てたねぇ」
「これ質問じゃねーよ」
「ホウエン……ダイゴさんだ! へー、あの人黒曜石好きなん?」
チャンピオンの名前にはしゃぐソーンが服の中に隠れていたペンダントトップ……先日の配信で明らかに異質さと厄ネタの気配を漂わせていた黒曜石を取り出す、妖しく煙る黒曜石は変わらず沈黙を保っていた。
「あー、ホウエンチャンピオンは石がお好きなんだって、それはないないしようねぇ」
「その石は入手不可だからしまおうな」
そしてすぐに二人からしまうように言われた。
「石……あ、ヒの神の試練なら今もあるしアイツ強い奴が好きだし試練制覇したらこれとか貰えるよ」
耳につけた蝶の翅を模したターコイズのイヤーカフを見せるソーン。
「そうだねぇ……証ですけど、実際ジュラ地方外の人でも試練を制覇して神に認められれば入手出来ます、アタシがそうだし。腕試しポケモンが証持ちを追ってジュラを飛び出してくることもないです、一応ね」
「証そのものは神から預かったウロコとか羽根とか爪とか体の一部であることが殆どだ、他は宝石とか」
言いながらセラジネがカメラに向かい手の甲を見せる、右手の親指にはめた指輪にはソーンがピアスにしていたポケモンのウロコと同じもの、そして人差し指にはめた黒い指輪は光が当たると星空のようにも見える石を指輪状にした物のようだ。
「形は変えちゃっていいから指輪とかピアスとかヘアピンとか皆色々好きに加工してるねぇ」
セラジネの言葉に続いてアニスがそう話し自身の眼鏡のフレームを指さす、フレームには白と黒の小さな石がはめ込まれている。
「あと、言っとくけど16も証を持ってるのはソーンだけだ」
「そうだね、アタシ達やジムリも持ってるけど少なくて2,3個で多くても10個はいかないくらいかな」
「神事の時期にジムの場所から専門タイプのことまで色々あるからな、そもそも証は数持つ必要もないんだよ」
「いっぱい持ってる方が楽しいのに」
「ソーンくんルールなしのバトル好きだもんねぇ」
「うん」
「他は……まぁいいだろもう」
「そうだねぇ」
「じゃあ今日はおしまい!」
テーブルの上にあったポロックが空になっていることに気付いたセラジネが終了を促し、アニスも同意しソーンが終了を宣言する。
「またポロックボックス溜まったら何人かその場にいた人達で答えていきますね~」
「ご視聴ありがとうございました」
「またねー!」
三人が手を振って動画は終了した。
・おまけ
「ジュラ地方覚書」より抜粋
◇ハネッコ
私はジュラの村々を歩いてきたが、どの村にもハネッコ達がいた。
風の届く場所なら何処にでもと云われるほどに彼らの生息範囲は広い。だがジュラ地方の厳しさを散々に体験した後に見ると彼らが多く生息しているのは不思議に思える。
村に住み着いているハネッコ達はのんびりと太陽の光を浴びて過ごしていた。
ジュラ特有の進化をするわけでもないハネッコ達を村の人々は当たり前のように世話している、私が不思議に思っていることを察していた同行者はしかし時期が来れば分かるとしか言ってくれなかった。
そして、私はその理由を知った。
それはジュラで最も大きな祭り「死者の日」の事だ。
祭りの準備が始まると人々は村に住み着くハネッコ達を村中に飾り付ける。
ハネッコ達も整えられた場所に居着いて大人しくしている、沢山の花と共に飾り付けに取り込まれたハネッコの姿は愛嬌があって面白かった。
これが村全体で世話をしている理由なのかと思い納得したのだが、こんなものではなかったのだ。
祭りの当日、私は本当に驚いて言葉が出なかった。
昨日まで沢山いたハネッコ達が皆、ポポッコへ進化していたのだから。どこを見ても立派に咲いたポポッコの花で彩られ、村も街もどこも明るく清浄な空気に満ちていた。
そして祭りを堪能した最後の夜、月の明かりを受けたポポッコ達はワタッコへ進化し、それぞれふわりと舞い上がって見えなくなっていった。
面白いことにジュラのハネッコ達は皆一様に死者の日になると日の出と共にポポッコへ進化し、祭りの終わりにワタッコへ進化し風に乗って旅立っていくそうだ。
興味深い事に、縄張りにうるさいジュラのポケモン達は誰もこの日のワタッコ達が風に乗って旅立っていくのを邪魔することはないのだ。皆が見守り、あるいはこの日だけ目を閉じる。
彼らは祭りを彩った報酬としてジュラの神々から何らかのエネルギーを受け取っているのかもしれない。
そう考えると誰もワタッコの旅立ちを止めない理由も想像がつくような気がした。
箸休め回。新キャラ二人、四天王の若い組。
試練制覇するようなジュラ民は(ジュラ基準で)マイペースで度胸しかないので神に対峙して証としてウロコとか貰っても目の前で「持ち運びに不便だから折っちゃえ(ペキペキ」ってするような奴ばっかだし神も神で証あげるような相手には「大胆な破壊……イイネ!」とか言い出すのでみんな好きな風にして身につけてます、ジュラ地方は平和だなぁ。
本来なら死者の日に飾られる花はマリーゴールドですが、ジュラ地方ではハネッコ達がメインです。
彼らの進化が生命のサイクルのようで似合う気がしたからです。