キンゴ・オオタニ   作:ヤン・デ・レェ

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キンゴ・オオタニ

俺は戦争がしたくて軍隊に入った。

 

田舎に生まれてみると、案外軍人として大成することがその郷里の誇りに成ったりする。大局的な視点と主観的な視点の違いだな。

 

でも俺は英雄に成りたくて、勝ち戦がしたくて軍隊に入ったんだ。何か、誇れるものを一つ手に入れるために。

 

俺には才能があった。だからその才能を最大限に生かして、そうして人間同士の戦争で名を遺したかった。

 

大谷キンゴの名を、この俺の名を。

 

 

だが…この国の、日本の軍隊に入って早々に俺の願いは潰えた。

 

 

へへへ…笑わせるぜ、怪獣とロボットが戦ってやがる。使徒とかいう化け物が突然やってきて、そいつをエヴァとかいう巨大な人型兵器で倒すんだと…。

 

オマケに操縦してるのは高校にも上がってないガキだ。何の冗談だ?

 

俺は戦争がしたくて軍隊に入った。英雄に成りたくて軍隊に入った。そのために努力もしたし、飛ぶ鳥を落とす勢いで出世してきた。

 

だがな、俺がしたい戦争は勝ち戦で、そんでもって勝ち戦ってのは不安要素を徹底的に殺した戦略と戦術で華麗に敵を抹殺する戦争なんだ。軍人同士の、戦う覚悟がある者だけで行う戦争なんだ。

 

断じてガキに特攻させて、自分は後ろからっ根性論で応援するだけの…ふざけたヒーローごっこじゃぁ断じてねぇ。

 

そこには無辜の女子供を無闇矢鱈と巻き込むことは許されないんだ。俺は俺が英雄に成るために、そのために新しい戦争を創るつもりだった。戦うことを仕事にしてない誰かを巻き込まない戦争をな、新しい人類の分別ある営みとして戦争を再構築するつもりだった。戦争はなくならないから、これから必ず人類同士の戦争が起こるから、抑制ではなく計画管理に舵を切らせるつもりだった。その為に名前を遺し、俺の目指す戦争が間違っていないことの根拠にしたかった。

 

だが、やっと一軍の将になれた矢先にコレだ…。守るつもりだった子供に守られてるんだ、俺達大人が。

 

国家間のエゴとか、利権とか最早そんな話をしてる場合じゃない。目の前で街が吹き飛ぶんだ。核も使ってないのにな。

 

第三新東京での使徒との攻防戦で、俺たちはあまりにも無力だった。司令部で映像を眺めているだけ、それどころか利権や機密を巡り上層部が動いてる。非現実的な光景を見て、俺達大人の情けなさを目の当たりにして、それでも官僚的な仕組みというヤツがこの国を動かしてる。

 

超絶的な技術でしか倒せない正体不明の敵の出現で俺の世界はひっくり返った。

 

これまで武力で外敵に備えてきたはずの俺達は、肝心の時に税金の無駄と陰口をたたかれ始めた。役立たずの穀潰しは良い方で、今や経済面でNERV(人類の希望の星)を妨害する人類の敵である。

 

次第に予算が擦り減らされて行く。いっそ一度で全て取り上げて欲しかった。そうしたら諦めもついたはずだ。だが、豊富だった財源が少しずつ少しずつ目減りしていくのを見て、一人一人と首を斬られていく自衛官を見て、上層部は諦めるわけにはいかなかったのだ。

 

人類の存亡の危機は理解している。N2地雷で死なないのだ、バカでもわかる。

 

だがな…「お前たちの死に所はここだ。だからプライドも生活も全部捨てて、どこかで野垂れ死んでくれ」そう、言われて誰もが納得できる訳じゃない。

 

大義の為に死ね。それは軍人の宿命だ。

 

それでも、少なくとも俺は戦うこともできず、それどころか死ぬ覚悟も、誇りも…そういった特権すらすべて取り上げられた挙句、なんでもない生活苦で路頭に迷い死ぬことに納得できそうになかった。

 

だから、俺は考え方を転換した。人生の方向転換を図らざるを得なかった。

 

だから俺は初めて使徒を見た瞬間に決めた、俺はNERVに転職するのだと。

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