仕事が決まれば俺が考えるべきことは一つ。
問題をシンプルに捉えること。それから優先順位を厳格設定し、その通りに行動することだ。
先日、碇司令と冬月副司令に召喚された。勤務初日に呼び出されたので驚いた。だがそれ以上に驚いたのは個人依頼、いや、NERV単体からの極秘指令が下されたことだった。
彼らの言葉を借りれば「NERV利権の敗者」達や、使徒を崇める新興宗教などの過激組織から、NERV所属エヴァ・パイロットを護衛することだけが俺の仕事ではない…という訳だ。
「君にはパイロット及び要人の護衛を頼みたい。このことは君の希望にも添う。だがそれも、ここから先の条件を受け入れた場合に限る。」
「条件とは?」
「君にはジオフロント並びに第三新東京市が本格的な対人戦争の戦場となった場合を想定し、その際の我々の戦略・戦術は勿論、装備や設備に必要となる予算や、実戦での物的・人的被害に関する試算までを立案報告し、全権委任の用意が出来次第秘密裏に実行に移して貰う。」
「…私の論文をご存じで?」
「ああ、だがそれだけではない。君がどのルートでここまで辿り着いたのか…最後まで補足できなかったからだ。カードキーも無しに、寸鉄すら帯びずに、このジオフロント最奥まで、監視カメラにすら君の姿は映っていなかった。」
「……詮索をご希望で?」
「…いいや、完璧な仕事をしてくれればそれでいい。」
「……賢明な判断ですな。では、これにて。」
碇司令が俺に求めたことは、俺の経歴を鑑みれば当然のことだった。だが、今はそれどころではないことも理解しているはずだ。
「我々の最優先事項は使徒の撃滅である。故に、君には個人的裁量の自由を最大限に生かして貰いたい。そのためなら、施設警備の統括責任者兼最高顧問としての待遇も約束しよう。無論、実績を周囲に示してからになるが。」
この言葉から解るのは…つまり、破綻するまでに出来ることをしろと、その為に可能な限りの権限を逐次与える、という訳だ。
随分と買われたものだな。まぁ、まずは装備を整えよう。計画の立案には年単位の時間がかかる。設備の改築と、それに加えて装備の総入れ替えまで考えれば更に一年は必要になるな。
それくらい、NERVは広く深い組織だと言う事だ。ただ、その所為で歯抜けが多すぎる。一事に特化しすぎた結果、この組織は使徒を殺す為なら何でも許されるが、使徒が存在しなければ存在意義を失う。そして、全てが終わった後で何らかの償いを求められる側に回った時、果たして無事で済むのかどうか…。
脆く尖り過ぎている。だが、それを支える土台は残念ながらスーパー軍産複合体でもなんでもなく、爛熟した民主主義と資本主義だ。世界の終幕を目前にしても、この世界から利権問題は喪失しなかった。解消どころか悪化に進んでいる。
難しいことを言ったが、俺の仕事はシンプルだ。女子供を守ること。これに限る。
その為にベストを尽くす。その為に、俺はこの仕事を選んだのだから。