人類が絶滅した世界で人外に狙われている   作:山崎春のパン祭り

1 / 2
 あぁぁー何もかも投げ出して異世界転生してぇー。可愛い人外に飼われてぇー。仕事に行きたくねぇ……あぁーーーもう人類滅びろ! そんな精神状態と願望を込めてキーボードを叩いて出来た作品です。色々お察しください。


第1話ー出会いー

 

 

 オッス、オラ転生者! クソ上司のせいで過労死したらと思ったら、なんか女神に出会ってテンプレ転生させてやるから、3つ願えを言えと言われたんで、また軽々と死にたくない上ちやほやはされたいけど、バトルや冒険とかはしたくなかったオラは『不死』と『自分だけが特別の存在』と『そこが平和なファンタジー世界』と願ったんだ。それらは見事に受諾されて、異世界美女とスローライフがオラを待っている!! オラ、わくわくしてきたぞぉ~!

 

 ……と、思っていたんですよ。最初は。でもなんか目が覚めたら、前世の体のまま、何故か裸で森に居た。これ転生では無くて、転移なのでは? 空を見上げれば大小異なる3つの太陽が、中天に懸かっている事が、ここが異世界であると教えてくる。

 

 左右に首を回して、周囲を見渡しても鬱蒼とした森しかない。はぁ、そうこう言っても仕方ないないので、とりあえず先人の知恵を借りて、葉っぱで股間を隠した。だがどこから出れるかも分からず、森を彷徨っていた俺は徐々にこれ夢じゃないのか? と思えるようになってきた。

 しかし1匹のイノシシ? みたいな動物に出会い、彼がこれが夢じゃない事を有り難くとも教えてくれた。彼は俺を見るなり突進してきた。突然の事と迫る死の恐怖に俺は結局動けず、彼の二本の固く大きいツノが俺の腹部を突き刺さった。

 

 一瞬なにが起こったのか分からなかったが、徐々に痛みの信号が脳に達し、俺は叫ぶことすら難しいかった。痛みで動けず地面に伏せる俺にイノシシは興味を失い去っていった。

 

 腹部の2つの穴からはみ出る腸に俺は、先ずグロっ! と思い、次に俺は女神から『不死』を賜ったじゃなかったのか。と思った。しかしそれの様な考えも激痛で長くは続かず、早く俺を殺して、この痛みから解放してくれだけを考えていた。当然。その様な願いは届くはずもなく。およそ3時間経過して、やっと俺は気を失った。

 

 再び目が覚めると、傷は塞がっていた。……どうやらこの『不死』は、どんな怪我でも、死ぬと治るタイプらしいかった。でも良かった。怪我はそのままで、昔読んだ漫画みたいに身体がなくなっても意識だけは残るみたいなタイプじゃなくて。それに俺は不老不死を望んでいないのだ。死は怖いが、ずっと生き続けるのも怖い。わがままを言えば、飽きるまで生き続けたいのだ。

 

 身を起こして俺は、森を彷徨い続けた。その後ケモノに襲われる事なく平和であったが、水は葉っぱで何とかなったものの食料もなく三日間も彷徨っていた俺は、動ける気力すらなかった。腹ぐうぐうと鳴り続ける。これって、1回死ぬと、この喉の渇きと腹の空腹も治るのだろうか……。いやだな。いくら生き返ると言っても、自分から死ぬのは嫌だな……。そう考えていたら、空腹でかすれる視界に、白い肌と赤い瞳をした銀色髪で耳が長いイケメンが見えた。そして、俺はまた気を失った。

 

 次に目が覚めると、俺は檻の中に居た。目の前で、さっきの銀色髪耳長イケメンと銀色髪耳長デブ(どちらも目が赤い)が何か話をしていた。しかし聞き取れても、その言語を理解する事は出来ない。女神め、よくある何故か異世界に行ったのに1秒と掛からずその世界の言語を理解できる能力をくれや。

 

 銀色髪耳長イケメンと暫く話した銀色髪耳長デブは、俺を興味深く見た後小袋を取り出しイケメンに渡した。中身を確認したイケメンはホクホク顔で去っていった。デブはイケメンを笑顔で見送ると、どこかに行った。しばらくして、デブはペットにエサをあげる様な皿を俺に出してきやがった。

 俺は中身を見る。何が入っているのか分からない白濁としてドロドロなものだった。ぐうぐうと腹が鳴った。仕方ない……俺は人差し指で少しソレを掬って味見した。不味い。無理やり形容すればボンドみたいな味だ。とは言え、背に腹は代えられない。俺はソレを無理やり腹に流し込んだ。

 

 周囲を見る。明るいとは言えないここには、他にも檻あり、中にはエロ漫画の主人公。ファンタジーの代表モンスターとも言える。ゴブリンがそれぞれの檻に入っていった。

 

 ここまで来て俺は気づいた。どうやら俺はあのイケメンにペット? 奴隷? として売られたらしい。え? スローライフ? 俺のスローライフはいずこに?

 

 

 

 

 それから半年後。俺は未だに檻の中にいた。デブはここの主人で偶に檻から出してくれるが、それも風呂の時と偶にの数分程度で直ぐにまた檻に入れられる。どうやら彼は我々の最低の需要を満たす程度で、それ以外どうでもいいらしい。

 ペット仲間であるゴブリンたちは売れられては補充され、売れられては補充されていた。そんな中俺は誰か俺も買って欲しいな。そんな羨望の眼差しを送っていたが悉く無視された。普通に考えて、緑色で気持ち悪いブスなゴブリンたちより人間の俺の方がいくらかましだろうに……何故だ。まさか俺の顔はゴブリンより酷いのか……。泣きそう……。

 それはそうと、少し分かったことがあった。どうやらここの人々は人間ではない。だってみんな赤い瞳と銀色な髪で耳が長かったし。ファンタジー的に考えて彼はエルフ? もしくはヴァンパイアだろう。もしそうだったら、彼らは見た目以上の年齢という事になるな。

 

 あと一回も人間を見かけないのは何故だ。少なくとも俺みたいに売られている人もいるはずなのにどうして。まあ、いずれ見かけるだろう。とりあえず今の目標は、ここから出る事だ。

 

 「あ、え!? …陛…。どう……の様……所に?」

 

 こちらからでは見えないが、デブが驚いたようで、何かを言っていた。

 ああ、そうだ。一つ言い忘れたが、最近少しとは言え、やっと彼らが何を言っているのかが分かった。人の脳って凄いなーー(感心)。

 

 「なんだ? いけないのか?」

 

 どうやらデブは一人女性客と話しているようだ。

 

 「いえ! とんでもございません! それで本…どの……用でし…うか?」

 「? 貴…はペット屋だろう。当…ペ…を買……たに決…いる…か?」

 「あ、はい! そうですよね! それでどのペットに致…か? 今…のはリザードマン、オーク、ミノタウロス、そ…数は少…ですがゴブリンがおります」

 「子…へのプレ…ントだ。ゴブリンで…い」

 「そうですか。分かりました。ではこちらへ」

 

 そう言ってデブが入って来た。続いて入って来たのは、当然赤い瞳と銀色な髪で耳が長かったが、そのローグヘア髪とクールな美貌に俺は目を奪われた。この人に買ってもらいたい! 俺は瞬時に思った。絶対に俺はスローライフを送るんだぁー!

 

 「俺! 俺! 俺! 買って!」

 

 俺はそう彼女に向かって叫んだ。

 

 『なんだ。こいつは。人語を喋っている様に聞こえるが』

 『へへ、ゴブリンの亜種です。最近どうやってか知りませんが言葉を覚えたようです。』

 『亜種か……確かにな変な肌の色だ』

 『へい。なので他の客は気味悪がって、こいつを買いようしません。どうです? 陛下。確かに変な肌の色ですが、だからこそあまり存在しないレアものです。安くしますよ?』

 『カタコトとは言え、人語を喋るのか、娘の遊び相手にもなれるな。いや、先ずは1周してからだ。それからでも遅くない』

 

 え? 俺の事ゴブリンって言わなかった?

 彼女とデブは会話を交わしているが俺の言語能力ではまだ少し理解できず、それから彼女は俺を一瞥して奥の方へと入っていった。

 

 「頼むから誰か買ってくれよ……」

 

 もう狭苦しい檻の中で寝たくない。もうあの気持ち悪い食べ物を食べたくない。そう考えながら檻の中で俺は溜息つく。もうブラック企業でも良いから日本に帰りたくなってきた。思ってたのと違う!! 俺は心の中で叫んだ。そして悲痛感と共に虚無感が体を襲った。

 ……もういいや。次にあのデブが檻を開けたら、あいつを殴って気絶させて、その空きにここから逃げよう。どうせ俺は死なないし。何とかなるだろう。

 そう思い、俺は頭をあげた。すると、既に檻は開けられていたのだ。目の前にはあのクール美女とニコニコなデブが立って居た。

 

 

 

 

 クール美女に買われ喜ぶのも束の間、首輪を付けられた俺は、その後風呂に入れられたあと下着だけを着用を許された。そしてどうやら、俺を買ってくれたクール美女は相当なえらいさんのようで、高級そうなドレスを着ていて、護衛が彼女の周りにいた。彼女と一緒に馬車に乗り(なお、俺はその後ろの檻)、しばしして、広い庭園を抜けて大きな城に到着した。

 

 今までに見たこともない荘厳な内装をぼけーと眺めながら、彼女のあとを不安な足取りでついていく。俺が彼女らの言語で恐る恐る質問しても、彼女は俺をそのキリッとした目で一瞥するだけで、何も言わず歩みを進めた。時より俺が歩くのが遅いのか、背中を彼女の護衛に強く押される。まるで犯罪者にでもなった気分だ。

 

 すると、彼女の足が急に止まった。どうやら彼女の目的の場所に着いたらしい。ドアノブは金色で、白くて大きな扉に、彼女はノックをする。返事はなかった。彼女はまたノックをした。今度は言葉を追加して。

 

 「エリーゼ。私だ」

 

 その言葉を聞いたのか、ドアは直ぐに開けられた。何か小さい物が顔を覗かせた。

 

 「母上……」

 

 小柄でツインテールの白い髪をした同じ様にキリッとした目つきの彼女は、クール美女、彼女の母に悲しそうにそう呟いた。

 

 「約束したのにっ……なんで私の誕…会にきてくれなかったんですかっ……」

 

 静かに、だが怒りがその言葉の端々から感じられた。どうやらクール美女は娘の何かに来なかったらしい。

 

 「すまん。…事が忙しかった」

 

 クール美女は簡潔にそう言った。謝罪はすれど、悲しむ自分の娘に向かって冷静沈着な物言いに、流石クール美女だと感嘆を禁じ得ない。

 

 「そう、です……か。では仕方ありません」

 

 そして、このエリーゼと呼ばれたツインテールロリも負けず劣らず簡単に受け入れた。

 

 「それで、ソレは何ですか?」

 

 エリーゼの目は俺へと向けられた。無関心で、どこか見下している目だ。

 

 「ゴブリンの…種だ。お前への誕…日のプ…ゼ…トだ」

 

 あれ? 今、やっぱり俺の事ゴブリンって言ったよね? それに誕…日のプ…ゼ…ト? ああ、誕生日プレゼントか。え? 俺が?

 

 「プ…ゼ…ト……ありがとうございます。母上」

 

 エリーゼは声と体をわずかに震わせてクール美女に抱き着いた。

 

 「うむ。では、私はまだ執務があるので、…城にもどる」

 「えっ……? は……い。分かり、ました。お気を付けください」

 

 彼女は母から離れて、無理やり強がった。

 

 「うむ」

 

 そんな彼女を見て、クール美女は特に何かを言う事はなく。護衛と共に去っていった。

 彼女は母を見送ると、その親伝えの冷徹な目を俺に向けた。

 

 「入って」

 

 そんな言葉と共に氷の様なひんやりとした感触が突然俺の肘に伝わり、それが彼女の手であると気づくと、既に無理やり引いて彼女の部屋に入れさせられた。

 

 中は無駄に教室ほど大きく、絨毯の上には一人用には大きい、まして子供には似合わないクイーンベットがあり、その傍にはテーブルと椅子、壁に油絵が飾り付けられ、そのどれもが高級そうであった。

 

 「あ、の……」

 

 小さな背中を向けてくる彼女に、俺は話しかけた。誰も答えてくれないが、子供の彼女ならと、ここはどこなのか、そう問おうとした。しかし、彼女は、冷たい死神の様な暗く赤い瞳を俺に向けゆっくりと近づいてくる。

 突如の彼女の接近、まだ子供なのに、あのクール美女に負けず劣らない威圧感に、この様な全ての生物を軽蔑す目に、情けない事に俺は足をすくわれてしまった。

 地面に倒れる俺を彼女は構わず、歩み続ける。彼女の可愛いらしい顔が俺の顔の前まで来て、ようやく止まった。

 

 「あの、なにをっーーあ”ぁつ」

 

 痛みと共に体の何か抜けていくのを感じる。彼女は子供とは思えない力で俺の肩を掴み、首に自分の頭をうずめて、何かを吸い取っている。それが俺の血であると分かった瞬間。

 

 「むっ!」

 

 彼女の唸り声と一緒に吸い取っていく速度も上がり、肌は冷えていき俺の意識も遠ざかって行った。やっぱり彼女たちはヴァンパイアだったのか……。

 

 

 次に目が覚めると、夜になって居た。俺は……死んだのか? 窓から月光が差し込んだ。森を彷徨っている時に気づいたが、この世界は太陽は3つだが、月は一つだけだった。

 首に手を当てて確かめるが、吸血穴の感触はない。ではやっぱり、俺は死んだ?

 身を起こして、周りを見た。その途中、月明かりしかない黒闇の中で二つの赤い光が目に留まった。

 こっわ! こえぇわ。

 

 「なっ……! 生き返ったのか……どうやって……」

 

 彼女は近づいて来て、俺を見て吃驚した様だった。

 生き返ったと言う事は、やはり俺は一回死んだのだろう。復活するのにこんなに時間を要したのは、恐らく彼女に血を全部吸われたのが原因かもしれない。でか、この子俺を吸い殺したのか……。怖い……。

 しかし、どうやって……か。女神と言って信じて貰えるか分からないので、嘘をつくとしよう。丁度彼女はヴァンパイアだし。

 

 「えっと、それはエリーゼさまが「それは私の愛称だ。いくらか貴様が動物では希少種のゴブリンの亜種だとしても不敬であるぞ」

 

 俺の言葉を遮り、彼女は静かにだが怒って言った。えっ……。動物……ゴブリン……もういいや。だって、俺。エリーゼって名前しか知らないし。

 

 「ごめんなさい! でも、何とお呼びすれば……」

 

 彼女はよく聞いてくれたと誇る様に自分の名前を口にした。

 

 『私の名は、エリザベート・マリア・アーデルハイト・フォン・カーミラライヒだ。貴様の様な人語もままならない動物に言っても対牛弾琴になるかも知れないが、このヴァンピーア帝国の第1王位継承者にして真祖の第1王女であるぞ!』

 

 え? エリザベートなんだって? 後半全然聞き取れなかった。何とか王女だけは聞き取れたが……王女様か……道理で……。

 

 「も、申し訳ございません! エリザベート……さま?」

 

 聞き直すのも彼女の機嫌を損ねるかも知れないので、俺は恐る恐るその名を口にした。

 

 「……貴様が動物と鑑みて、その名を口にする事を許可しよう」

 「あ、ありがとうございます!」

 

 まだ不満だったもののギリギリ及第点らしい。

 

 「ではさっきの話に戻しますが、それは、エリザベートさまがヴァンパイアで、俺を誤って眷属にしたのではないですか?」

 「ありえん。他の種族を眷属に出来るのは始祖のみだ。ましてや動物を眷属に出来るはずがない」

 「あ、はい。そうなんですね」

 

 へーこの世界では、そう言う設定なのね。

 

 「では、自分も分からないです」

 

 もうお手上げだ。君も分からない俺も分からない。この理由で頼む! これで納得してくれっ。

 エリザベートはまだ納得いかない表情であったが、俺に抱き着いて来た。また俺を吸い殺すのか? そう思い体がこわばった俺にエリザベートは、さっきまでの冷たい目と打って変わって優しさ目でそう言った。

 

 「そうか……まあいい。なんとあれ貴様が生き返って良かった。それと今日から貴様の名はリンだ」

 

 

 

 

 どうも、リンと名付けられたゴブリンの亜種です。あれから更に三ヶ月が経ちました。季節は巡り、最近寒くなり始めました。檻からなかなかの寝室に変わり、ご飯もといエサは白いドロドロした物からマトモのペットに出す物(偶に肉が出てきて嬉しいです)へと、主人はデブからツインテールロリに変わったものの、相変わらず外には出れず自由がないです(トイレと風呂は入れてもらえます)。

 

 ツインテールロリ、エリーゼ、いや、エリザベートは学校でもあるのか、朝起きて制服に着替え俺にエサをあげたら、部屋から出ていき、夜まで戻ってきません。寂しいです。

 しかもエリザベートと話したのはあの日だけで、血も吸われる事はなく、あれ以降話けても無視されます(でもお陰で言語力は上がりました)。偶に睨んでもきます。あと掃除にくるメイドにも無視されています。悲しいです。

 

 この日もそうなんだろなと、夜に学校から帰ってきたエリザベートに無視されるも知りながら、お迎えの言葉を言って睨まれました。仕方ないのでいつもの様に地面で寝ます。すると、驚いた事に朝起きると、エリザベートが俺に抱き着いて泣いているではないか。

 

 「うぅぅ……っ! リン! ごめんなさいっ! 私っ! また我慢できずにっ!」

 

 え……? なにこれどういう状況?

 

 「えっと……エリザベートさま?」

 「え……? またあなた生き……」

 

 エリザベートは泣くのも忘れて、俺を見つめてくる。なぜか貴様呼びからあなたに昇格した。ちょっと嬉しい。

 

 「またって?」

 「ううん。それよりあなた……一体何者なの……?」

 

 おぉー? 良くぞ聞いてくれた。この三ヶ月言って訂正しようとしたのに、いつも「黙れ」と塞がれて言えなかった事。

 

 「信じてくれるか分かりませんが、実は俺はゴブリンなんかじゃなくて人間なんです」

 「にん……げん……」

 

 エリザベートはハンマーで叩かれた様な表情になった。やはり彼女は気付かなかったらしい。てか、この世界で一人も俺が人間だと気づいてくれなかった。悲しいすぎるだろ。

 

 「じゃあ……じゃあ! 今までどこに隠れて居たの? あなたの親は何処にいるの? どうやってこの国着いたの? あなたの仲間は?」

 

 俺の言葉を信じたのか、ここ着て、エリザベートに会ってから初めて彼女は子供の様に目を光らせて、質問してくる。と言っても彼女は、俺より遥か年上だろうけど。

 しかしやっと興味を持ってくれた事は嬉しいが、彼女の早口で怒涛の質問に俺は答えられない。

 日本っていう世界で死んで女神に会って、転生させてくれた。そんな言葉。誰が信じると言うのだ。なので……

 

 「申し訳ございません。エリザベートさま。実は自分が人間である、としか知らないのです。目が覚めったら檻の中に居て、それ以外何も覚えてないんです」

 

 よくある異世界ラノベでの言い訳。ごめん~、わたし記憶喪失なの~だから、何も覚えていないの~だ。なぜか復活できるのはご愛嬌。大丈夫かな。俺、実験台送りにならない?

 

 「そう……なのね」

 

 見事に彼女の望んだ答えではなく、失望の眼差しが俺を見つめる。そして、無言で俺に近づいて来た。あ、もしかして。これって、この三ヶ月間ご無沙汰の……。良いだろう。来い。君の様な可愛い子にまた殺されるのも本望だ。

 俺は再び死を覚悟して、エリザベートの接近を目を閉じて受け入れた。

 生きているとは思えない冷たい体温を体が感じたあと、首から痛みが走り、あの同様血が失っていく感覚があった。だが、暫くしても俺の意識は失う事はなかった。

 

 怖ず怖ずと目を開けると、エリザベートは激しい呼吸で肩を上下させて、何かに陶酔している恍惚の表情を浮かべて言った。

 

 「リン。これから毎日私にあなたの血を飲ませて」

 

 なにその一昔前のプロポーズみたいのセリフ。可愛い。はいとしか言えないじゃん。

 

 




狙われている(食欲)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。