人類が絶滅した世界で人外に狙われている   作:山崎春のパン祭り

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第2話ー出会い(別視点)ー

 

 

 私の150歳の誕生日会のあとで、母上におよそ50年ぶりに会うと、母上から誕生日プレゼントとして、ペットのゴブリンを贈られた。

 普通のゴブリンよりも身長は高く、肌の色も姿もちょっと違ったので母上に聞いてみれば、どうやら亜種という珍しい存在だった。そもそもゴブリン自体が絶滅危惧動物として希少なのに、この子はその更に上を行く希少らしい。私は初めて母上からの贈り物に、宝物を貰った気分になって、母上に感謝しながら抱き着いた。思えば、母上に抱き着くことが出来たのは100年ぶりの事だった。

 

 次に母上にお会いすることが出来て、抱き着けれるのは何時になるのだろう……。私は、寂寥感に襲われた。

 でも、母上も忙しいのだから仕方ない。何せ、この帝国を統治する女帝なのだから。仕方ないのだから……私は自分にそう言い聞かせって、寂しさを心の縁に抑え込んだ。

 

 母上が王城に帰るのを見送ったあと、私はゴブリンを自分の部屋に連れ帰った。どんな名前にしようかなと悩んでいる時に、

 

 「あ、の……」

 

 と、突然ゴブリン亜種に話しかけられた。普通のゴブリンは人語を話せないのに、このゴブリン亜種はたどたどしくも話せるらしい。

 流石亜種だ。私は納得した。ならば、きっとその血もさぞかしうまかろう。そう思ったら私は我慢できずに、一刻も早く味見がしたい気分だった。

 

 「あの、なにをっーーあ”ぁつ」

 

 私は、ゴブリン亜種の言葉を無視して、オスであろう彼の首筋の皮膚を、吸血する為に特化した鋭い牙で食い破って、流れ出した血をゴクゴクと飲んでいく。

 

 「むっ!」

 

 それは筆舌に表現しがたい美味だった。立場上私は多種多様な血を飲む機会を得ているので、断言できる。これはこの世で一番美味い血だ。もしかしたら、可愛そうにも私たち魔族の乱獲のせいによって、3千年前に絶滅させられた人類と言う動物より美味いのかも知れない(当然私は味わった事はないので、その味を知らないが)

 味蕾を刺激する味に、私は顔がとろけそうになった。

 私は、自分でも血を飲むを止められず、血を飲んでいく。

 

 翌日。私が目を覚ますとゴブリン亜種は冷たくなっていった。突然起きたことに私は、目の前の状況を理解するのに数分の時間を要した。なぜ……?

 そうな事は決まっている。私が彼の血を吸い尽くしたのが原因なのだから。原因が自分にあると分かると、私の涙は止まらなかった。

 

 初めて母上からの贈り物を、この世で一番美味い血を持つ持ち主を、私は一時な欲望でこんなにも早く壊してしまった。

 

 その日1日私は、メイドの呼び声にも返事せず、部屋に閉じこもって、まだ名付けてもいない彼の死体に向けて謝り続けた。私は怖かったのだ。1日も足らずに母上から貰ったペットを死なせた事を、そしてそれを母上に知られる事を、結局どうするべきか分からず、私は母上がこの事を知った時の反応を恐れて泣き続けた。

 

 だから、その日の夜。私の心情は地獄から天国へと引き上げられた気分になった。

 だって、彼が生き返ったのだから。私が理由を聞くと、彼は原因は私がヴァンパイアで、彼を眷属にしたのではないかと聞いてきた。私は、始祖以外のヴァンパイアは他の種族、ましてや動物を眷属に出来ないと言うと、彼は感心した後少し考えて、だったら分からないなと言った。

 結局分からずじまいだった。でも私には彼が生き返った理由や原因などどうでも良かった。大事なのは母上からの贈り物がまだ存在すると言う事だけだ。それにきっとこれは、神様が機会をくれたのだ……。

 生き返った彼に、私は抱き着いた。心の中で2度とこんな事がないように、彼を大切に飼おうと決めた。そして、私は彼をリンと名付けた。

 

 それからと言うもの、私はまるでガラス細工に触れる様にリンを大切に扱った。しかし、私はリンの体を駆け巡るあの血の味を忘れられなかった。体の奥からくる日に日に膨れ上がる欲望を、抑える事がどんどん難しくなっているのを私はひしひしと感じていた。

 

 牛で、豚で、鳥で、色んな動物でも代用しても満たされず、やがて希少動物の普通のゴブリンで代用しようとしても当然満たされるはずがなく、私の精神は徐々に異変を見せていった。

 私は常時リンの事を思い、リンの肌を見つめていた。

 そして、3ヶ月は経ったある日。私は遂に我慢出来なくなった。少しだけ、少しだけなら大丈夫だと。そう思い、私は寝静まったリンの首筋に牙を突き刺し、血を無我夢中に啜った。

 しかし、やはり止める事が出来ず、リンは冷たくなっていた。

 

 またやってしまった。意識を取り戻すと、私は後悔した。リンに泣き付き、神様に奇跡よ、もう1度起きてくれと願った。すると、翌日本当にリンは生き返ったのだ。

 

 私は驚いた。まさか本当に生き返るなんて、それも2度も。私達ヴァンパイアですら1度生き返るのが限度なのに、彼は一体何者……? 私は疑問を彼にぶつけた。

 そして、彼からの予想外の回答に私は愕然とした。なんと彼は、リンは、ゴブリン亜種などでは無く、それよりも希少な、むしろ存在するはずがない絶滅種人間だと言うのだ。しかし人間は生き返ったりするなど聞いたことないので(そもそも生き返ったら絶滅しないので)、彼は人間亜種?なのだろうか?いや、そもそもどうやって、彼の祖先はどうやって3千年間も見つからなかったのだろうか?

 

 もし、仮にもし彼が言っている事が、人間と言う事が、真実なら……彼の血の旨さの原因も頷ける。何せ3千年前、私たち魔族は彼らの美味な血、そしてその肉を求めて、彼らを狩りつくしたのだから。

 激しく鼓動自分の心臓抑え、私は彼に聞いた。今までどこに隠れて居たのか、彼の親は何処にいるのか、しかし彼からの答えは、私の期待に応えられるものではなかった。

 彼が言うには、彼は記憶喪失して、気づいたら檻に居たと言うのだ。

 ……眉唾物の話だ。

 

 しかしどうでも良かった。何せ世界で唯一最後の人間と思われるオスが、私の前にいるのだ。そしてその血を唯一私だけが享受できるのだ。私の胸の中から優越感が沸き起こる。……母上は気づいて無かった様だが、この事を言うべきだろうか。だが、そうすればリンは、私の元から離れて保護され、動物園送りになるかも知れない。そして、2度と彼の血を飲める日は来ないのであろう……そんなのは嫌だ!!! 母上は私にくれたんだ! リンは私だけのものだ!

 

 私はリンの困惑な声を無視して、彼に身体を寄せ、血を吸った。その甘美で刺激的な味をごくごくと味わいながら飲んでいく。彼が生き返ると知ったとは言え、きっとそれは無制限ではないのだろう。3度目はないのかもしれない。私はもっと、もっと、もっと、と脳からくる誘惑を振り切って、ある程度彼の血を飲むだけで彼から離れた。彼から離れる時力みすぎた私の握り拳が、爪が手に刺さり、血が流れた。

 1度目は、初めて飲んだ味に意識を失い、彼を殺してしまった。

 2度目は、また彼の血を吸ったら意識を失うのが怖くて我慢して、しかし結局我慢できず、また彼を殺してしまった。

 3度目の今度は、彼の血を吸う期間が空くまで短ったのか我慢できて、彼を殺さずに済んだ。だったら答えは決まった。

 私はリンに向かって言った。

 

 「リン。これから毎日私にあなたの血を飲ませて」




続きは色々辛くなった時になぜか出てきます。
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