ソゲンがグリフォンに誘拐されてしまった後、二人の精霊はかなり動揺していた。
まさか、ソゲンがグリフォンに誘拐されてしまうなんて、森の方角に飛んで行ったのはわかるが広すぎて探しようがないというのが、現実だ。
セレステはネレイスにどうしようどうしようと呟きながら慌てていた。
「ネレイスさん、森へ探しにいこうよ」
「ダメですわ、行く当てもなく探しに行くのは危険ですわ」
「でも!!」
動揺するセレステの肩を両手で持ち落ち着きなさい!と強く注意する。
「こういう動揺してるときが一番危険なのですわ、まずは落ち着いて行動しないと」
セレステはしょんぼりと俯いて、一言ごめんなさいと謝る。
また悪い癖が出てしまったと、猛省するがそれでも突然の出来事に落ち着いてはいられなかった。
そんな彼女をさらにパニックにさせるものが地面に落ちていた。
「こ、これって、エレフェントドライバー?」
自分たちがいた場所から数メートル離れた場所にソゲンが持っていなくてはいけないものが落ちていた。それを見たネレイスも驚きを隠せなかった。
これを持って森に連れ行かれたとしても生存していた可能性は高かったが、これがないとなると……
「ど、どうしよう……」
「とりあえずアウリスが見つけてくれることを願うしかありませんわ」
ここはどこだろう?どうやら僕は大きな鳥の巣の上にいるらしい。
体がズキズキする……どこかの骨を折っているかもしれない。
頭も痛い。
どこかに頭を打ったらしい……僕は疼く体を引きずり鳥の巣の下を見下ろした。たっか!どうやってここに来たの僕?どうやって降りればいいんだ……?
「君、そこで何をしているんだ?」
「いや、それが全く覚えてなくて……」
魔女?いや魔術師と表現した方がいいのだろうか?額に何かの紋章刻まれていて、緑の長い髪の少女が僕の上を飛んでいた。
緑と白のロングスカートの修道女のような服を着て白いベレー帽をかぶり、そこから長い緑の髪が風になびいている。
ベレー帽の下には上にハーフアップされた髪もちょこんと見えていた。少し吊り上がった目で僕を何も言わずに隅々まで見つめている。
そして僕が怪しいものではないと、決定づけたのか先ほどまで険しい表情だった顔が緩み、僕の近くへと降りると落ち着いた声で話し始める。
「君、名前は?」
「名前……」
あれ?なんていう名前だっけ?てかなんで僕はここにいるんだ?思い出せない……
僕は誰だっけ?
「まさか、記憶喪失か……??」
記憶喪失?緑の髪の少女は大きな鳥の巣に降り立ち、そして起き上がれない僕の体を起こして、体を汲まなく見ている。この緑の娘は何を……?
「ひどい怪我だな……頭も血だらけだ……」
今の状況を全く呑み込めていない僕は頭の後ろに手をまわしゆっくり触る。
いてッ!今までに感じたことがない激痛が頭を襲う。
頭を触った手を見るとべったりと血が付いていた。僕は頭の激痛に耐えられず、意識を失ってしまった。
「おい、大丈夫か!?」
緑の髪の少女の声だけが空に響く、その声を聞きつけたのかどこからともなくグリフォンが巣へと帰還する。
「お前か……この男の記憶を奪ったのは!」
グリフォンはなにを言ってるんだこいつ?といった感じで首を傾げた。
「ふん、言葉で言ってもわからないか、所詮は魔物だからな」
緑の髪の少女はそういって、手に槍を握りグリフォンに向けた。
先が針のように刃先が鋭利になっており、刃先は太陽に反射してギラりと光っている。
槍を向けられたグリフォンはやばいと感じたのか、翼を羽ばたかせ空へ逃げて行った。
「逃がさないぞ!!」
そういうと彼女の目がレーダーのように色が変わり、グリフォンに照準を合わせる。
そして槍を持っている腕に力を籠め、グリフォンに向かって投げた。槍は疾風のごとく風を切って猛スピードでグリフォンの頭に向かって飛んでいき、見事頭を貫いた。
そして槍はブーメランのように彼女の元へ戻っていき、かのZとは見事にキャッチする。
「ふぅ……、さて連れて帰って手当てしてあげなきゃな」
彼女は傷つき倒れた僕を抱えると背中に生えてる白い翼を広げて飛び立った。
一方その頃二人の精霊は、森へ消えた精霊の騎士を探すべく森に向かって歩みを進めていた。なんとか落ち着きを取り戻した二人は霊服を着た姿へと変身し、武器を構えながら入り口に立つ。
「セレステさん、私は後ろを守りますから前はお願いしますね」
「わかりました、お願いします!」
接近戦が得意なセレステは前へ、遠距離戦が得意なネレイスは後ろというフォーメーションを組んだ。これでいつグリフォンや他の魔物が襲ってきても、多少は何とかなるといった感じである。
だがやはり二人では対グリフォンに対しては、不安が残る。
ネレイスはジャンプ力には自信があるが、命中率に関しては不得意であった。セレステは言わずもがな、ジャンプ力は人並みといった感じで空中戦を得意な敵は全く歯が立たないのである。
「やっぱり、グリフォンに関しては不安が乗りますわね」
「そうですね、でもソゲン君がやってたみたいな連係プレイをすればなんとかなるかも?」
そうさっきまでのグリフォン戦で見せた2つのフォーム使った連係プレイである。
一人でどうにもならなくても二人ならどうにかなる、協力すればグリフォンも怖くないということをセレステは力説した。
「そうですわね、アウリスのとこまで持ちこたえれば、いいだけですものね」
二人の精霊は手を交わし、いざ森の中へと足を踏み込もうとした気だった。
森の茂みの中から、大量のリザードマンが待ってましたとばかりに何十匹も飛び出した。
「早速出ましたわね」
「ネレイスさん、援護をお願いします!!」
ネレイスは後ろで銃を構え、セレステは刀を振りかざしリザードマンに斬りかかる。
「はぁ!!」
リザードマンは盾でカードしようとするが、ネレイスが盾をもっている腕を打ち抜き腕を使い物ならなくなった後セレステが体を斬り裂き、ようやく一匹を討伐する。
だが油断はできない、すかさずもう一匹のリザードマンがサーベルをセレステに振り下ろす。
「セレステさん!後ろ!」
ネレイスの呼びかけに素早く反応し、刀で受け止める。
それを好機とみたリザードマン二匹がセレステにさらに斬りかかった。
「甘いですわよ!!」
襲い掛かる二匹のリザードマンの頭を正確に打ち抜き、二匹はその場に崩れ去った。
「ナイスです!」
セレステも負けじと、手に炎のエネルギーを宿し球形にすると、それをリザードマンに投げつけかなりの数を火だるまにすることができた。
そして、さらに刀にも炎を宿し駆け抜ける侍のごとく何匹ものリザードマンに斬りかかり、茂みから襲い掛かってきたリザードマン全員の討伐に成功する。
「はぁはぁ……やっと終わった」
「少し休憩……」
二人が息を切らしながら座ろうとすると、森の奥からさらにリザードマンがこちらに向かって近寄って来ているのが見えた。
「まだいる……」
「上等ですわ……」
二人は上がった息を整えてもう一度武器を構えるが、正直なところもうヘトヘトであった。
特にセレステは、勢いよく駆け抜けながら何匹にも斬りかかったせいで相当な体力を使ってしまったようである。
「大丈夫ですか?」
「う、うんなんとか」
口では大丈夫と言っているが、肩で息をしていてとてもしんどそうだ。
しかも直ったばかりの足が無理がたたっせいかまた少し、悪い状態に戻っているようで立っているのもやっとだ。
「このままでは……」
もうリザードマンは森から出てこようとしている、捕まった彼を助けに行くためにはこれを乗り越えないといけない覚悟を決め、セレステが突撃しようとした時だった。
突如として目の前に黄色く光り輝く閃光のような何かが通ったのだ。その直後に目の前にいたリザードマンは全員血しぶきを上げながら真っ二つなった。
二人は突然の出来事に動揺を隠せなかった、そんな二人の前に白いロングテールコートとそして白銀の小さな鎧、青いスカートを身に着けた若い金髪ロングヘアーの金髪の女騎士がそこに立っていた。
「大丈夫?二人とも?けがはしてない?」
金髪の騎士は二人に近づくと、二人の安全を確認する。
「ええ平気ですわ」
「ありがとうございます!助かりました」
「ところで二人とも、どうしてここに?森は狂暴化した魔物がうようよして危ないですよ」
二人は今までの出来事と自分たちの正体をすべて説明し、金髪の女性騎士は二人の正体に驚かずに話を聞いていた。そして、二人の肩に手を置き、もしかしたらあなたたちと……険しい表情を浮かべながら、二人を見つめた。
二人の精霊はなにを言われるんだろうと生唾を飲み込んだ。
「セイレンタウンのバスコを討伐した、あの精霊の騎士ソゲン一行ですかー?」
はぁ、その事かぁと二人は顔は肩を落とした。
あれ?なんでこの女騎士はセイレンタウンでの出来事を知ってるんだ?
「あ、まだ自己紹介がまだだったわね、ブライトガーディアンズのエレナ・スターライトと言います、よろしくね」
そう言ってエレナを二人に握手をしようと手を指し伸ばす。
「エレナさん、よろしくお願いします」
セレステは、エレナと笑顔で固い握手を交わしたが、ネレイスは険しい表情で
エレナに語り掛けた。
「ブライトガーディアンズって王都アヴァロン公認の騎士ですわよね?
それがどうしてこんな町にいるんですの?まさか何か危機が迫っているとか……」
「長くなるかもだから、場所を変えて話すわね」
3人は森から離れエアリアの小さな喫茶店に入ると、人がいない奥に座席に二人は案内された。
あまり聞かれたくない話なのか、エレナは少し小さな声で語り始める。
「数か月前から魔物が狂暴化して人間や様々な種族を殺してるって言う
事件が多発している話は知ってる?」
「ええ、知ってますわ、セイレンタウンでもマーマン族が狂暴化してましたもの」
それを聞いてセレステもうんうんと頷く。
「それでその狂暴化した魔物には全員一つの共通点があるの」
二人は共通点?と言いながら首をかしげる。
「全員空から降り注いだ怪しい光を浴びているの」
「光!?」
二人は驚いた表情で大声を上げると、店にいた客や店員がこちらに一斉に注視している。
やってしまったという表情で二人は口を塞ぐ、レイナも苦笑いをし話を続けた。
「それって自然現象ってことですの?」
「どうやら、自然現象じゃないらしいのよね」
そう言いながら、腰にぶら下げている小さなカバンから一枚の写真を取り出すと机の上に広げる。
「どう思う?」
二人は写真を凝視すると、そこには禍々しい濃い紫色の丸い光が空から森に向かって降り注いでいるところが収められていたのだ。
「こんな光、自然現象で生まれるとは思いにくいですわ」
「私もそう思う、絶対人為的なものだよ」
「二人もそう思う?実は私もそう思っていたの……これは近くを通りがかったエアリアの 住民が偶然撮影したものなんだけど、近くに黒い髪の少女がいたの目撃したらしいの」
二人はその少女に心当たりがあった、二人は顔を見合わせてその名前を口にする。
「「フォンセ……」」
そう、突如現れては不可解な言動や行動をする、あの闇の精霊フォンセだ。
「知ってるの?」
「えぇ、一応、同じ精霊なんですけど私達とは違って単独行動している精霊なので」
「その精霊怪しいね……、でももし精霊が関与しているなら」
「ブライトガーディアンズだけではどうにもできないから協力しろと」
ネレイスは、レイナがその言葉を言う前に先に言う。
彼女は最初から分かっていたのだ。
恐らく私達に協力者になってもらいたいのだろうと……
「お見通しだったってわけかー」
レイナはにこやかに声を出してアハハと笑っている。
ネレイスは好機と見て畳みかけるようにさらにレイナに言葉を投げつける。
「協力してあげてもいいですわ、但し、条件としてグリフォンに連れ去られた精霊の騎士ソゲンを助けるために、協力して頂きたいのですの」
「ちょ、ちょっと!?ネレイスさん!?」
急な展開にセレステは困惑し慌てていた。
相手は王都の騎士団だぞ?そんなことわがまま言うと怒られるんじゃ?と思っていると、レイナは怒るどころか笑顔で一言「いいよ」と言う。
「私も森で行きたいところがあるからね」
「それじゃ、契約成立ですわね」
こうして、ソゲン本人がいないところで王都の騎士団との協力関係が成立してしまったのだった。