気付くと見慣れない天井だった、木造でできた天井で中央に大きな丸太が一本柱のように僕の上を通っている。
よく見ると、怪我した場所に誰かが治療してくれたのか、体中に白い包帯が巻かれている体の痛みに耐えながら体を起こし部屋の中を見渡すと、一階建てのようで隅にベッドがありその近くには暖炉があった。
その暖炉の近くには木で作られた大きなテーブルがあって、その近くには二つソファーも置いてありかなり広い家に住んでいるようだ。
少し頭を動かしただけでずきずきとする。
起き上がるだけでも一苦労だ……
「まだ起きない方がいい」
そう言って近づいてきたのは先ほどグリフォンの巣で出会った緑の髪の少女だ。
先ほどの格好とは違って、黒いシンプルなワンピースを着ていて頭には羽で作られた髪飾りを付けていた。
「君が治療してくれたのか、ありがとうな」
「構わないよ、そういえば自己紹介がまだだったな私の名前はアウリスだ」
婉容な雰囲気で話すアウリスと名乗る彼女は、僕が寝ているベッドの近くにある椅子に座った。
「それにしても、君は何であんなところにいたんだ?」
「それが、気づいたらあそこにいてその前の出来事が思い出せないんだ」
なぜグリフォンの巣にいたのか、頑張って思い出そうとするが頭に激痛が走り思い出すことができなかった
。いって!!と叫び頭の痛みに悶えてる姿を見たアウリスは、突如として僕を優しく抱きしめた。
「無理に思い出さなくてもいい、今君は怪我を早く治すことを優先してくれ」
突然抱きしめられた僕は、何故か目から涙が出てきていた。なんでだろう?ただただ抱きしめられてるだけなのに
「あ!ごめん!迷惑だったか!?」
僕の涙に気づいたアウリスは、僕から急いで離れた。
「いやいいんだ、なんでだろう?なんで涙が……」
突如として溢れてきた涙を服の袖で急いで拭いた。
涙が出てきた理由が全く分からなかったが抱きしめられた時に彼女の暖かさを肌で感じ、懐かしい気持ちになってつい涙が溢れて来てしまったのだろうと思う、そんな事を考えていると、突如としてドアが勢いよく空いた。
「アウリス先生!!!」
入ってきたのは黄緑色の短髪で頭に新芽のような葉っぱが生えた小さい女の子だった。
二人はアウリスの元へ駆け寄った。
「フローラとエルフィーか、どうしたんだい?」
「綺麗なお花もってきたの!」
「アウリス先生に似合うかな?って思って冠にしてきた」
そういって二人は、大きな冠を二人で片手ずつでもってアウリスに見せた。
「二人ともありがとう、大切にする」
二人から花の冠を受け取ると、頭に優しくの壊さないように載せて二人の優しく微笑んだ。本当にこの娘は、大人の女性って感じでなんというか、近所に住んでいる小さな子に人気のお姉さんのようである二人の幼女はベッドにいる僕を見つけると、僕が珍しいのかずっと見つめている。
「先生~この人は~?」
「あぁ、この人はグリフォンの巣で怪我をしていたところを助けてあげたんだよ」
「へぇ~」
よっぽど珍しいのか、僕の事をあちこち眺めている。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんは人間?それともワーウルフなの?」
「多分人間……」
「どこから来たの?名前は?」
質問攻めにする幼女をアウリスは、そこまでにしときなさいと言い僕から遠ざけた。
「すまんな、あの娘達ああなると止まらなくなるから」
「いや……あの娘達は人間ではないのか?」
「あの娘達はアルラウネという森に住む妖精の種族だよ、たまにこうやってアルラウネの子供たちはここに遊びに来るんだよ」
「ねぇアウリス先生、今日はどういうことについて教えてくれるの?」
幼女たちは僕と話していたアウリスの服を早く早くと言って自分たちの方向へと引っ張っていた二人に「わかったわかった」と言って諌めたアウリスは、二人に読んでいた一冊の本を広げて今日はねーと言って二人に学校の教師のように教え始めた。
「なんか、お母さんのようだな」
僕がそう呟くと、アウリスはこちらを振り向いて嬉しそうに「そうか?!」と言った。
「私は子供が大好きなんだ、健気で可愛い子供たちを守ってあげたいその一心で私はこの森に住み始めたんだ」
二人に優しく丁寧に教える彼女の姿は聖母のようだった、なるほど先ほど感じたのは母親のような感覚は彼女から溢れ出る母性だったのかと納得したが、なぜ涙が溢れ出たのかは分からずじまいだった、そんなことを考えていた時だった。ドアが勢いよく空き緑の髪の毛に頭の上に花が咲いた大人のアルラウネの女性が飛び込んできた。
「アウリス先生!」
「どうしました?シルビアさんそんなに慌てて……」
「それが、グリフォンがアルラウネの集落を襲い始めて……」
「またか……今行く!」
アウリスは、家を飛び出してシルビアと名乗るアルラウネについていった。あれ?グリフォン……?そういえば僕グリフォンに何かされたような……思い出そうとするとまた頭が痛み始めた。
「大丈夫?人間のお兄ちゃん?」
フローラとエルフィーは心配そうに僕の頭をなでなでしてくれている。
「あぁ、大丈夫だ」
それにしても、なんだろうこの感覚は、あの娘を一人で絶対に行かせてはいけない全く、あの娘面識も何もないのに……思い出せない……
一方、二人の精霊はというと、ブライトガーディアンズの女騎士レイナと共にエアリアの森を歩いていた、彼女はまず行きたいところがあると言い地図を頼りに
歩いている。
「どこへ行くんですの?」
「さっき話した光が降り注いだ場所にいきたいの、そこで少し確かめたいことがあってね」
しばらく彼女について歩いていると、だんだんと周りの空気が先ほどの清々しい空気から重い空気に変わって行ってるのを感じた。明らかに先ほど歩いていた場所とは違う、一緒の森を歩いていたはずなのに。
「ここだね」
彼 女はそういうと、少し凹んでいる地面を触り呪文を詠唱し始める。
「レイナさん何を……」
話しかけようとするセレステを、ネレイスはしーっと静かにするように促した。するとどうだろう、地面の中から黒い靄が湯気のように湧き上がり、黒い人型の魔物ようなものが怒りに満ちた呻き声を上げながら、レイナに襲い掛かろうとする、だが彼女の呪文にも抗えず煙のように消えてなくなってしまう。そしてその黒い人型の魔物が消えたと同時に周りの雰囲気も清々しい空気へと戻る。どうやら今の詠唱は呪いなどを解除する解呪の呪文のようだ。
「これで解除できた……」
「今のって……」
「呪縛ですわね、」
「呪縛って……?魔法とは違うんですか?」
何も知らないセレステにレイナはゴホンと咳払いして立ち上がり、説明を始める。
「呪縛は一種の催眠術みたいなもの、人の感情の自由を奪ってコントロールしてしまう恐ろしいものなの」
「てことは、誰がこれを使って魔物や様々な種族を狂暴化させるように仕向けてるってことですか!?」
「でも、呪縛は普通は1人しか操れないはずですわ、こんなに大勢ましてや何百を超える魔物を操ることなんて……」
「やっぱり、精霊が関係あるのかな?」
こんな恐ろしいことをやっている者がいるのかと思うと、腸が煮えかえる思いだった。このままだと被害者が増える一方であろう、止めなくてはいけない……手遅れになる前に
二人の精霊はそう心の中で誓った。
「ひどいよねー、ほんとうにー」
「うん、絶対止めなくちゃ……ってあれ?」
「やっほー、久しぶりだねー二人とも♡」
「「フォンセ!?」」
突如として現れたフォンセにびっくりした精霊二人だったが、冷静にレイナは腰に携えていた剣を抜きフォンセに向けた。
「貴方ね、呪縛を使って大勢の民衆の感情を操っているのは!!」
「私じゃないってば」
「嘘をつかないで、呪縛の光が現れた時に貴方が近くにいたっていう目撃情報があったのよ」
素人なら怖気図いて逃げ出してしまいそうな鋭い目つきで話すレイナだが、フォンセはため息をついてやれやれと言いながら語り始めた。
「私はたまたまあの場所にいただけ、呪縛なんて使えない」
「でも、貴方が使えなかったとしても呪縛を使える奴のサポートを貴方がしているんじゃないんですの?」
「だから知らないって言ってるじゃん」
「嘘ついてるんじゃないでしょうね?」
3人はフォンセを取り囲んでどんどんと追い詰めていく、まるで崖っぷちに追い詰められた犯人のようにするとフォンセは突然目から涙をこぼすと、その場でぺたんと尻もちを付き大声で泣き始めてしまった。
「うわあああん!!私は知らないって言ってるのにぃ!!ひどいよぉ!!」
突然の出来事に困惑する3人、本当にこの精霊は幼い子どものようだ……本当にこの娘は関与していないのか?この様子を見ていると恐らくは嘘はついていなさそう?3人はどうしようという風に困り果てた顔で顔を見合わせたその時だった。どーーーん!!と森の奥から何かが落ちたような鈍い音がした。
「今の何の音?」
「あっちはたしかアルラウネの住んでいる、森ですわね……」
そんなことをレイナとネレイスが話していると、セレステが空を見上げて指を指した。
「あれ見て!グリフォンが爆発した方に向かって、飛んで行ってるよ?」
嫌な予感がする、もしかするとアルラウネがグリフォンに襲われているのではないのだろうか?だとすると、爆発音はなんなんだろうか?グリフォン意外にも襲ってるやつがいる?こうしている場合ではない!3人は爆発している方へと急いで走った。
「うわああああん!!あれ?いなくなってる……」
フォンセは、3人の走っていく後ろ姿を眺めて、見えなくなったのを確認すると涙を拭いて、お尻について砂を払いながら立ち上がった。
「はぁ、本当に知らないのに……信じてくれないから泣きの演技する羽目になるなんて
まさかあれが呪縛の光だったなんてね」
フォンセはその呪縛の光を使える奴に一人心当たりがあった、だけどそいつは……
「それにしても、あいつはどこにいるのかしら?」
僕はベッドに横たわりながら考えていた。本当に僕はここでアウリスの帰りを待ってていいのか?なんか、大事なことを忘れている気がするそんな気がするのだ。だけど思い出そうとすると頭に激痛が走る。とにかく今は休むことに集中した方がよさそうだ。それにしても外が騒がしいな……アウリスが帰ってきたのか?
「お兄ちゃん!フローラが!!」
入ってきたのは、外で二人で仲良く遊んでいたアルラウネの子供エルフィーだった。
「どうした?」
僕がそう聞くと、エルフィーは僕に飛びつき涙ながらに話す。
「フローラが、フローラが、変な光を浴びて……うわあああん!!」
泣きわめくエルフィをよしよしとなだめていると、どーん!!と地震が来たような地鳴りが響いた。僕は悲鳴を上げるように痛む体を起こし、窓から外の様子を見た、そこには……
「なんじゃありゃぁ!!!!」
それは先ほどまでの愛くるしい姿だったフローラではなく、おぞましい姿に成長したフローラの姿だった。容姿はもう大人の女性となっていて、下半身は地面から生えた大きな血のような色の花になっていて、地面からは巨大な緑色のツルがタコのようにうねうねと動いていた。
「どうなってるんだよ、あれ……」
フローラは窓から見ている僕の姿を認知すると、悲鳴のような呻き声を上げ、巨大なツルをアウリスの家に向かって伸ばしてきたのだ、あんなのくらったら家が倒壊して僕達が下敷きになってしまう……逃げないと……だけど、ダメだ激痛で動けない……くそ!!こんな時に!!せめてこの娘だけは……僕はエルフィを守るために覆いかぶさった。
「ふぅ、間に合ったね」
助かったのか?僕は起き上がりもう一度外を見るとそこには巨大なツルを、大きな剣で受け止めているゴスロリ服を着た黒髪ロングの小さな少女がいた。