グリフォンとリザードマンが町を襲撃した後、町では復旧作業が始まっていた。とはいっても魔物たちは民衆に襲い掛かったためあまり建物には甚大な被害は出ていないようである。あの禍々しい光の正体は呪縛というもののようで誰かが人為的に放ったものなのだそうだ、やはり各地で魔物が狂暴化する事件、首謀者がどこかにいるのは間違いないようだ。森にはまだ少し呪縛の残滓が残っているらしく、レイナが一つ一つ解呪の呪文で解呪をして回っているみたいである、そんなことができるのかと驚きを隠せないが、まぁ聖剣を持っている騎士だから、何も不思議ではないか……それにしてもあの集団で襲い掛かってきたのにほとんど傷がついていない風車の頑丈さには驚きを隠せない。
その後僕らはエアリアの町長にも呼び出され、町長からも感謝のを伝えられこれまたお礼として大きな袋に入った銀貨を渡されたのだった、いつものことではあるが本当にこんなにもらってもいいのだろうか?
「やっぱり慣れないな……」
僕は大量の銀貨を入った小袋を見つめて呟いた。
「あら、でもそれがないと旅ができませんわよ?」
「まぁそうだけど……」
僕が戸惑いながら話していると、ネレイスが僕の肩に手を押せて笑顔で話す
「ソゲンに感謝の意を込めて渡してくれてますのよ?ちゃんと受け取ってあげないと」
そう言われて、周りを見渡すと僕を見つけたエアリアの人が僕に笑顔で「ありがとうー」と叫び手を振った。それを見て僕はああ、そうだなと一言答える。
やっぱりまだ慣れないなお礼を言われるのは……
「ところでアウリスは僕についてくるのか?」
「さぁ……多分あの娘はアルラウネの娘達を守るために残ると思いますわ」
「まぁ、そうなるよな」
一方アウリスの家、荒れ果てた家の周りをセレステとアウリスは片づける作業を終え家の中でくつろいでいた。アウリスの家の中にはハーブティーの甘いいい香りだ漂っている。
「アウリスさん、このハーブティすごくおいしいです」
「そうか、セレステさんの口に合って良かった」
「ここの森で取れたハーブなんですか?」
「そうだ、もし良かったらたくさんあるから持っていくか?」
「いいんですか!?」
「帰りがけに渡そう」
二人が笑顔でハーブティを楽しみながら談笑をいるとその匂いを嗅ぎつけたのかアルラウネのシルビアとエルフィーが入ってくる。
「こんにちは、アウリス先生」
「アウリスせんせーい、こんにちは」
「シルビアさん、シルフィいらっしゃい」
セレステも「こんにちはー」と挨拶をすると、エルフィーもセレステの顔を見て「こんにちはー」と挨拶をした。二人が挨拶してる間に机にハーブティーが入ったカップが二つ追加で用意されていて、部屋の中はなお一層甘い香りで包まれる。
「それにしても、昨日は無事で良かった……」
「丁度、地中の家の中にいたんです、異変に気付いた時にはもうグリフォン達が暴れてる最中で……」
それを聞いてアウリスはほっと一息ついた、フローラのような悲劇がまた起こらなくて良かったと心の底から思った。だが、それにしてもエルフィーもあんなものを近くで見せられて、廃人同然になっていたのによくここまで立ち上がったなと驚くばかりだ。本当にあの時の出来事が嘘のようだ。
「ところでアウリス先生、シルフィー、夢の中でフローラに会ったらしいんです」
「え、そうなのか?シルフィ」
そう聞くとシルフィーは少し暗い顔になる。
「うん、本当だよ、もうフローラがいない日々なんていやだって思ってたんだけど、夢の中でフローラが出てきてそんな顔しちゃダメ、じゃなきゃ安心してあっちの世界ににいけないって怒られちゃった」
そう言って笑うエルフィはとてもいい顔をしていた、もう心配する必要はなさそうだ。
「良かった……」
「だからアウリス先生にお願いがあるの!!」
そういってエルフィはアウリスの手を握って顔を近づける。
「あのお兄ちゃんと一緒にあの光を飛ばす悪い奴をやっつけてきてほしいの」
アウリスは「えっ」と一言漏らして、困惑したような顔を見せた。
「でも……私が離れたらエルフィー達を守れなくなってしまうけどいいのか?」
「それは悲しいけど、でもそれ以上にアウリス先生がすごい強い敵と戦ってるって思うと嬉しくなる!!」
「私は……でも……」
悩んでいるアウリスの顔を見たシルビアも口を開く。
「私達もずっとアウリス先生に守られてばっかじゃだめだと思うんです、だから行ってきてください!
世界の平和のために!」
そういったあとシルビアは少し恥ずかし気に「ちょっとかっこつけすぎましたか?」と苦笑いした。
「私はここから離れることは……」
「行ってきなさい」
声をした方向を向くと、アウリスの母が羽を入口に広げて降り立っていた。
家の中へ入ると戸惑っているアウリスに近づく。
「アウリス、行ってきなさい、精霊の騎士と一緒に戦いなさい、そして立派に努めてきなさいそして私の自慢できるような娘に帰って来て」
「お母さん……」
涙を浮かべるアウリスの涙を笑顔で拭ってあげるアウリスの母はさらに続けた。
「大丈夫、アルラウネの森や皆、この家は私が守ってあげるから安心していってきなさい!」
「はい!お母さん!」
二人の仲睦まじい姿をみていたセレステは思った、良かった新しい仲間が増えて……これでまたソゲン君が強くなれると。
でもなんだろうこの複雑な気持ちは、ソゲン君の周りに女の子が増えていくのが嬉しいと思う反面なぜかもやもやするこの気持ちは……
「ダ~リン~、3人目も完了したよ~」
フォンセは男のいる場所へと帰還し男の膝の上に飛び乗った。
「あぁ~よくやった、最後の一人なんだが……」
「これが4人目の精霊かー」
男は4人目の精霊が写った写真をフォンセに見せると興味津々に飛びつくように見つめる。金髪のショートボブ、金髪の垂れ目で背が高くぼーっとした顔で露出の多いまるで民族衣装のような服を着ている。
「背が高いねー、力が強そう~」
「だが、一つ懸念点がある」
「どういうことー?」
「力は強いが相当知能が低く、ディーパと契約できるかだ」
「たしかに、頭が悪いとよくわからないもんねー最悪の場合は私が……」
フォンセがそう言いかけると、男はフォンセの口を大きな手で押さえ言葉を遮った。
「ま、あくまで契約は奴自身ということだな」
「ねー、ところで3人目のご褒美はー?」
「ま、まぁ用意してある……」
そう言って机を指差すと、ホールサイズのケーキが置いてある。半分はショートケーキ、半分はチョコレートケーキだった。それを見たフォンセは目を輝かせ
一目散にケーキに飛びつく。
「やったあ!チョコもあるーー!!」
喜ぶフォンセに安堵の笑みを浮かべる男は、机の引き出しを開け黒いドライバーを見つめる
「もうすぐだ、もうすぐ俺の野望が叶う……」
そう言って机に置いてあった注射器を男は腕に一本、また一本と合計4本差した。
その姿をフォンセは横目にケーキを食べてにらみつける。
「あの男、本当に私のダーリンなの……?」
「これで全部か?ネレイス」
「そうですわね、ありがとうソゲン」
エアリアで食料や、生活雑貨など馬車に積み込んだ僕は、一息をついて馬車に座り込んだ。周りの景色を見ながらあったことを振り返る、いろいろと痛い目にあったりしたけど、エアリアもいい場所だったな……
「おまたせー」
振り返るとセレステが手を振りながらこちらに走ってきているのが見えた、そしてその後ろには
「アウリス……!」
黒い魔女のような黒いワンピースを着たアウリスもセレステと一緒に走ってきていた。
「ソゲン、迷惑でなければ私もソゲンと共に旅をさせてほしい」
立ち止まって息をきらしたアウリスは僕に向かって頭を下げた
「いいけど、アルラウネの森の皆はいいのか?」
「エルフィーにソゲンと一緒に世界を救ってくれと頼まれたからな、子供の頼みじゃ断れないしな」
そう言いながら話すアウリスの顔はとても嬉しそうに見えた。その顔を見た僕も自然と笑みがこぼれる。
「それに君には、返しても返しきれない恩がある!私の命を守ってくれたというな……
その恩をソゲン、君の元で少しずつ返させてほしいんだ」
「あぁ、頼んだぞアウリス」
僕は彼女の頭を頭を優しく撫でると、頭を上げて「あぁ!」と笑顔で答えた。
本当にこの娘のこの笑顔を守れてよかった……。
「ところで旅に出るってどこにいくの?4人目の精霊の情報もないのに……」
たしかに、アウリスはネレイスと交友関係があったからどうにかなったが4人目の精霊は手がかりはない僕は4人目の精霊が描かれたカードを取り出し3人に見せた、短い金髪で、黄色い目をしていてとても背が高く垂れ目で、ぼーっとした顔をしている。
「金髪か……おそらく地の精霊なんじゃないか、この身長の高さなら親のどちらかはおそらく巨人族タイタンだろう……」
「巨人族タイタンということは、鉄鉱の町アイロンベインですわね」
「アイロンベインに行けばいる可能背が高いってことか……、そこって、どれくらいの日数かかるんだ?」
「少なく見積もっても2~3日くらいだ、あのエアリア山道を越えればすぐだ」
そういって、アウリスの指を指した山は、かなり高い山のように見える。おそらく標高としては1000mはないにしても700~800はあるだろう、え?あれ越えるの?え?馬車で超えれる?2~3日で……僕が不安げに山を眺めているとアウリスは僕の肩の上にポンと
手を置いた。
「安心しろ、あの山の中腹には温泉街もあるからちゃんと道も整備されている」
温泉か、そういえば人生で一度も入ったことなかったな……、まさか異世界で初めて温泉に入ることになるとはアウリスやネレイスも目を輝かせて喜んでいる。3人の精霊が盛り上がっている中、おーいとこちらに呼び掛ける女性が一人こちらに向かって走ってきていた。
「レイナさん、もう解呪は終わったんですか?」
「まぁなんとかね」
そういって余裕にⅤサインを見せるレイナさん、でもさすがに早くないか?あんなにもたくさんの光が降り注いだのに、あの量をもう一人でやるにはかなりの日数がかかりそうなものだと思うが……
「お疲れ様です」
セレステは馬車に座り込んだレイナの肩を揉む。
「それにしても早かったですわね」
「呪縛が一か所に集中してて楽だったからねー」
僕はレイナの一か所に集中してという言葉に引っかかった。
「え?あんなに呪縛の光が降り注いでいたのに、一か所に集中してたってのはどういうことですか?」
「うん、森に行ったんだけど魔物が住んでる場所に集中して残照が残っていたの、おそらくだけど集中的に狙ったんじゃないかなって思うの」
「なるほど、あの呪縛の光は無造作に起こしてるんじゃなくて、ちゃんと計画的に起こしてるってことですわね?」
なるほど確かにそうだと思う、だけど完全にその土地の地理や状況を把握していなければそういうことはできないはず、となると考えられることは……
「やはり犯人はフォンセで間違いないという事か……」
「そう考えるのが得策だと思うがな……」
「まぁ、でもまだそう決まったわけじゃないよ証拠がないからねー」
レイナはそういって立ち上がると、「思いっきりの背伸びして温泉に入りたいなぁー」と一言呟いた。
「レイナさんも良かったらエアリア山道にある温泉にいきませんか?」
「そうですわね、これからレイナさんにはソゲンがお世話になりますし」
え?どういうこと?
「皆で温泉も悪くないな……」
「あ、そうそうソゲン君を探せだしたんだしちゃんとソゲン君たちはブライトガーディアンズに協力してくれるんだよね?」
「ええ、もちろんですわ」
「ちょっと待て、僕はそんな事いってないんですけど……」
誰だそんなことを勝手に決めた奴は……、僕は3人の顔を見渡した。セレステとアウリスが申し訳そうな顔をしている中一人、してやったりというような顔をしている精霊が一人
「お前か!!ネレイス!!勝手に決めやがって!!」
「なーに言ってますの?これはソゲンのためにやってあげんたんですのよ?」
「いーや、最初に僕に相談するべきだろうが!!」
僕とネレイスが喧嘩をしていると、アウリスが真ん中にまぁまぁと言いながら僕らの間の仲裁に入った。
「たしかに、ネレイスが独断で決めたことは悪い、だけど考えてみてほしい王都公認の騎士団に協力するという事はソゲンの後ろ盾になってくれるということでもあるんだぞ?」
アウリスの言葉にレイナもうんうんと頷く。
「まぁでも、無理にとは言わないけどね、ネレイスちゃんが勝手に決めたことだし……」
たしかに王都公認の騎士団が後ろ盾になってくれるのはこれほどの好条件なことはない……ネレイスがいなかったらこんなことになってなかったかも、でもあまり大きな組織と関わると後で変ないざこざに巻き込まれるかもしれない……どうしよう……
「まぁでも、今決めろとは言わないよ温泉に入ってからでもいいしね」
「わかりました、少し考えます……」
セレステは僕の顔が少し暗くなったことに気づいたのか、ずっと僕を見つめていた。が「どうした?」と笑顔で問うとセレステは安心して「ううん、なんでもないと」と笑顔で呟いた。
「さぁー行きますわよー!温泉へ!」
ネレイスが操縦席に座ってそう叫ぶと、荷台の席に乗った3人はおーー!と手を上げた。
「なぁ、なんで僕だけ荷物置き場なんだ?」
「女の子だらけの席に座る気ですの!?」
3人の精霊は僕を鋭い眼光で睨みつける。
「すいません、やめときます」
女子だらけの席に座ったら、また変なことになるかもしれないしな……ちょっと狭いけど我慢しよう。
「はいやー!」
馬に出発の合図を送ると、馬車はゆっくりと動き出した。次なる目的地はアイロンベインの前にエアリア山道にある温泉街だ。