次の日、僕らは宿屋を出て町の中心にある採石場へと来ていた。鉄の匂いがあたりに充満していて気分が悪くなりそうだ……。
僕らは布で鼻を抑えながら洞窟の中へと入っていく。
「ここからは慎重に行こう……」
僕は腰にドライバーを装着しいつでも変身できるように準備し3人も霊服の姿となって武器を構える。
「それにしても本当に静かですわね、ゴーレムがいたらもっと騒がしいものかと思いましたわ」
「ゴーレムは、敵が目の前に来るまでほとんど動かないからな……」
洞窟の中はあちこちの岩肌の中にランプが置かれており、かなりの明るさで道も整備されていて歩きやすい。
整備された道を進んでいくと平たんな道からだんだんと下り坂になっていき、洞窟の奥深くと進んでいるんだなという実感が湧いてくる。
「地図によるとあともうちょっとで採石ポイントのはずだ」
同じ景色を歩いて30分、ようやく採石ポイントへと到着する。
だがそこにゴーレムはおらず辺りには鉄鉱石が散らばっていて、近くには作業員のタイタンが残していった鉄鉱石を運ぶためのトロッコが大量の鉄鉱石が載せられたまま残されている。
「何もいないね」
「ゴーレムがいるのはこの辺りだっていう話だが……」
僕ら4人は辺りを見渡す、だがやはり何もいない……もう少し奥に進むしかないか。
僕は鉄鉱石が乗ったトロッコのスイッチを押し、トロッコを出口へと運ぶ。
「どうしますの?もう少し奥まで進みますの?」
「そうするしかないな……」
僕らがもう少し奥へと歩き出そうとした時、何かを見つけたアウリスが「あれを見ろ」と指を指した。少し奥の岩が盛り上がって平坦になった場所に何かが横たわっているのが見えた。
こんなところに人?しかも女の子ように見える、まさか逃げ遅れたのか?
「あれもしかして……倒れてるんじゃ」
「ソゲン、助けにいこう」
僕らは女の子が倒れている場所へと急いだ。
岩場に近づくと伏臥位の姿勢で倒れている人がいた、
やはり女の子だ……金髪ショートボブの髪型をしていてワンピース一枚だけだった。よく見ると女の子にしては身長が高くかなりガタイの良い体をしている。
「やっぱり女の子ですわ、逃げ遅れてゴーレムに襲われたのかしら?」
「おい、大丈夫か?」
3人の精霊は倒れている女の子に声をかけながら揺らした、すると金髪の女の子の体がビクンとなり女の子はうつ伏せになっている顔を持ち上げた。
「誰……?」
柔らかな声で喋る金髪の女の子は僕ら4人の顔を順番に見ている。
「よかったですわ……生きてて!!」
「無事で良かった、さぁここから出よう」
3人の精霊は金髪の女の子に手を差し伸べる、だが何かおかしい……金髪の女の子は喜ぶどころかずっと無表情だ。
「どうした?早くここから出よう」
僕が声をかけると金髪の女の子は突如として立ち上がる。
「煌天翔鳴……」
「な!!??」
金髪の少女が静かに呟き手をかざすと少女の体が黄色く光り、露出の多い民族衣装のような服に変わる。
その姿に僕らは見覚えがあった。
「この娘……」
「精霊ですわ……」
そうカードに描かれていた最後の精霊その娘だったのだ。
「エンデルの大好きな睡眠を邪魔した、許さない」
そういって岩の上から大きく飛び上がると斧を僕らに向かって振りかざす。
「やめろ!!僕らは君の敵じゃない!!!」
僕らはなんとか避けるが、斧が地面に突き刺さった場所を見ると、大きく凹んでいる、かなりの力だ、今のをまともに受けていたら、体が真っ二つになっていただろう。
「うるさい……」
「ソゲン、今の彼女に何を言っても無駄ですわ」
たしかにネレイスの言う通りだ、今の彼女は睡眠を邪魔されて気が動転している。
そんな彼女になにを言っても無駄だ、かくなる上は……
「ネレイスいくぞ!」
「ええ!って私?」
ネレイスは驚いた表情でこちらを見た、そりゃそうか今までセレステだったもんな。
「お前だよ、変身!」
≪Aqueru!stand-by! Aqueru!metamorphosis!≫
「はぁぁぁ!」
変身してる途中で襲い掛かってくるエンデルを華麗に避け、青い精霊の騎士 ディーパ アクエルフォームに変身する。
「アクエル・シューター!」
「ソゲン、ちゃんと作戦は考えてるんでしょうね?」
僕は銃を構え、エンデルに向ける。
「考えてるわけねーだろ!」
地面を大きく陥没させる斧の威力、そしてそれを生み出す腕力彼女に接近戦を挑もうものなら一発で吹き飛ばされてしまうだろう。
そうなれば接近戦よりも、遠距離戦で戦った方が得策だ。
「たしか、エンデルと言ったな、俺は精霊の騎士ソゲンだ、君を救いたいんだ、それ以外の事は何もしないだから大人しく武器をしまってくれ!!」
「ここから出ていって……」
静かにそう言うとゆっくりジャブをするように右の拳を前につきだす、その瞬間だった、僕の体は勢いよく吹き飛ばされ、数十メートル先に会った岩肌に叩き付けられたのだ。
「ぐはぁ……!!!」
一瞬の出来事だった、一瞬にしてアクエルフォームからエンプティフォームとへと解除され、ネレイスは膝から崩れ落ちその場に倒れた。
「ネレイス!!」
アウリスとセレステはネレイスに駆け寄り、体を起こすが意識がない……。
アウリスは腕に指を当て脈を調べる。
「良かった……生きてる……」
良かったアウリスのような悲劇がまた起こらなくて……、だけど油断は禁物だ。
「ソゲン君、大丈夫?」
体をふらつかせながら起き上がり、「大丈夫だ」と返す僕、なんなんだ今のは……
拳を前に突き出しただけで衝撃波が起こり、数十メートルも吹き飛ばされてしまった。
ネレイスはもうだめだ、残っているのはイグニスとゲイル、だけどここでゲイルを使うわけにはいかない……ならここで使うべきは、いやでもあの精霊とは相性が悪いか……そんなことを考えている暇はない!!
「セレステ、いくぞ」
「わかった、ソゲン君!」
「火の力解放せよ!!」
≪ignis!!metamorphosis!≫
「出て行って言ってるのに!!」
エンデルがそう叫んだ瞬間だった、洞窟内に突如として地鳴りが響き、奥からずしんずしんという足音がしたかと思うと、5体のアイアンゴーレムが現れたのだ。
「嘘だろ……」
「ソゲン、離脱しよう!このままだと全滅しかねない!!」
アウリスはネレイスを背負いその場から逃げようとすると、エンデルはまた拳を握りしめ前に振りかざそうとする。
しかも狙いを定めているのは、生身のアウリスだ。
アイツ、まさか自分と同じ精霊にもあれをやろうって言うのか!!そうはさせない!!
「アウリス!危ない!!!!」
エンデルがアウリスに拳を向けた瞬間僕はアウリスを守ろうと彼女の前に立ちはだかると僕の体はまた先ほど同じように数十メートル吹き飛ばされてしまう。
「ぐはぁ!!!」
ディーパから解除されたセレステがバウンドをしながら僕と一緒に地面に転がる。
「セ、セレステ?」
意識がない……、吹き飛ばされた衝撃でネレイスと同じように意識を失ってしまったのか……。
「ソゲン!!、このままだ本当に全滅してしまうぞ!」
アウリスがそう叫んでいる間にも、じりじりと5体のゴーレムがこちらへと静かに迫ってきていた。
「うおおおおおおお!!!!」
≪Gail metamorphosis!≫
僕は最後の力を振り絞り、アウリスのカードをベルトにセットし ディーパ ゲイルフォームに変身する。
そして、意識がないセレステとネレイスの二人を両腕で持ち上げると背中の白い羽を広げ出口に向かって全速力で逃走する。
「ふわぁ……」
ディーパがいなくなったの確認した、エンデルは元のワンピース一枚だけの姿へと戻りアイアンゴーレムに近寄って声をかけた。
「ねぇ、ゴードン今誰かいた?」
ゴードンと言うアイアンゴーレムはエンデルに「一応いたけど、良かったのか?あんな風な形で追い出して」と呆れた声で言う、そう彼女は今まで寝ぼけていたのである、彼女寝ぼけると稀にあらゆるものを破壊してしまうという悪い癖をもっている。
「別に、構わない」
彼女は無表情でそう呟き、もう一度その場に寝転んだ。
「やれやれ……しょうがない娘だ」
ゴードンは他の4体のゴーレムとともにまた奥へと戻っていく。
「はぁはぁ……」
出口へと命からがら到着した僕は腕に抱えていたネレイスとセレステを降ろし、ベルトを脱着し変身を解除する。
「なんなんだよ、あいつ……、いきなり襲い掛かってきやがって……」
「アイツ相当強いな、今までの精霊よりも桁違いだ」
僕はセレステを背中に背負い、アウリスはネレイスを背中に背負い宿屋へ戻ろうと採石場を後にする。
「あのゴーレム、エンデルって言う精霊を守っているように見えた」
「ソゲンもか……、実は私もなんだ」
エンデルが叫んだ瞬間に奥からゴーレムが僕らに襲い掛かってきた、ゴーレムと精霊が結託している?
それともゴーレムが精霊を操っている?いやそんなことゴーレムにできるのか……?
「なぜ、精霊が魔物と結託して採石場の洞窟を占拠しているのかわからないが、恐らくあの精霊にそれ相応の事情があるに違いない」
「どんな事情があるにしろ、この町の経済にも影響してるからな……何とかしないとな……」
そんな会話をしながら町を歩いていると、目の前に昨日の金髪の淑女が立っていた。
僕らがこちらにいるのに気付くと長いスカートを持ち上げてこちらに急いで向かってきている。
「あの、僕らに何か用ですか?」
金髪の淑女は荒げた息を整えて顔を上げた。
「あの、貴方方が精霊の騎士ソゲンさんですか?」
「まぁそうですけど……」
そう答えると金髪の淑女は背負っているボロボロになった二人を見つけて慌てた様子で頭を下げた。
「その二人……もしかしてエンデルにやられたのですか?」
僕らは「まぁそうなりますね」と答えると、金髪の淑女は本当にごめんなさいと何度も頭を下げる。
この人、なんでこの女性が頭を下げているんだ?
「あの…、貴方は?」
「申し遅れました、私エンデルの母のアウレリアと申します」
「エンデルのお母さん……?」
「エンデルが、ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした
お詫びをしたいので良ければ、うちに来ていただけませんか?」
アウレリアと名乗る金髪の淑女は、そういってまた僕らに頭を下げた。
こう、ぺこぺこと頭を下げられては断ることができないのが人間のサガだ。
僕はアウレリアの顔を見て確認すると、彼女は首を縦に振って行こうと合図をした。
「では、お言葉に甘えて」
「ありがとうございます!ではこちらへ……」
僕らはアウレリアの後ろを付いていく。
二人の精霊が意識を失ってしまているこの状況どうすればいいんだ……。