「は、はぁ?」
訳が分からない、なにを言ってるんだよこの令嬢様は……私の物になりなさい?
「いや、僕は物じゃねーよ!!」
そういうとネレイスはため息を「はぁ……」と吐き「いい?」と改まる。
「私だけの男になりなさいって事ですわ……」
「え?……それってつまり……」
「もう!!貴方はどこまでにぶちんですの!?私はソゲンが好きって事よ……
恥ずかしいからこんなこと言わせないで……」
そう言いながら顔を真っ赤にして頭から沸騰したお湯の如く煙を上げるネレイス。
始めての出来事だった、女の子から告白されるのってこんな気持ちなんだ……すごく胸がドキドキしてすごく嬉しい気持ちになっていた。
いや待て待てなんでこうなった!!いたずらをしたことを白状させることが目的だったのに!!あれ?待てよ?じゃあ今までのいたずらとかって……。
「まさか今までのいたずらは僕が好きだったからってことなのか!?」
「そういうこと♡」
「じゃあなんで、エアリア温泉でセレステと混浴なんてさせたんだよ」
本当にネレイスが僕の事を好きなら、セレステと混浴なんてさせないはずだが……。
「さすがのセレステもソゲンに裸を見られたら嫌われるかなーって思って……そうなれば
自ずとソゲンは私の元へ来ると思ったのですわ」
「けど、セレステは嫌うどころから喜んで僕と混浴をしてあてが外れたと」
「そうですわ……あの痴女め……」
メラメラと怒りの炎を燃やすネレイス、なんで僕だけのためにそこまで……。
「私は欲しいものを手に入れるなら手段は選びませんわ……、まぁでもさすがにソゲンの
大切な仲間を利用したことは反省していますけど」
「お前なぁ!!」
目的のためならなんだってする、ネレイスの腹黒い一面が今日で明るみになってしまった。本当に悪役令嬢みたいである。
さてどうする、ここで僕がネレイスにOKの返事をしてしまえば旅の支障になりかねないぞ?
「今すぐに返事しろとは言いませんわ、さすがにまだソゲンに私の事全部見せていませんし」
ネレイスの秘密や隠し事まだあるって言うのか、この先が恐ろしい。
「とりあえずその手段を選ばないって言うのやめてくれないか?それがあるだけでお前がしでかすことが怖くて仕方がないんだよ……」
「まぁ、ソゲンの言う事なら聞くしかありませんわね……、それでは今日の所は引き下がるとしますわ」
そういってドアを開けて出て行こうとするネレイスは「あぁ、そうそう言い忘れましたわ」と言い振り返った。
「なんだよ」
「もし次アウリスに手を出したら、あの程度じゃすみませんからね?」
その後に「おやすみ」と言いながら出ていくネレイス、彼女の言った言葉からは凄まじい殺気を感じた。思わず「ひぃ!」と声を上げてしまう程である。それにしてもネレイスはこれからどう接すればいいんだ?好きと言われたからにはもう今まで通りの接し方はできそうになさそうだ。
はぁ……、他の3人にバレないようにしないとなぁ……。
次の日の朝。
「また眠れなかった……」
エアリア温泉街のセレステの時といい、今回のネレイスといい僕は女の事になると寝れなくなってしまうようだ。コーヒーを飲みながら洗面台の鏡に立った。僕ってそんなに魅力があるのかなぁ……?あれ?待てよ?ネレイスのいたずらが僕が好きだったのなら、セレステの過剰なスキンシップも僕が好きだから?いやいやそんなわけ……一人の女の子に
告白されたからって調子に乗るな!と自分を呵責する。
あぁ……そうかちゃんと眠れてないからこんなこと考えるんだな!そうだそうだ。そうと決まればこのままお昼まで寝よう。それから王都を見まわろう、それとドアにカギをかけて寝よう。僕はそのままベッドに倒れると夢の中へと旅立ったのだった。
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
凄まじい攻撃によって何十mも吹き飛ばされる僕、目の前には黒く禍々しく光る眼差しを光らせ
僕と同じように漆黒アンダースーツに黒い鎧を付けていた。そして腰には……。
「所詮お前は先代のディーパのように強くないな」
「なんだと……」
見ると僕は精霊の力をまとっていない、エンプティフォームとなっていた。
なんだよこれ……どうなってるんだよ……パニックになり周りを見まわたしても精霊4人の姿はなかった。
「終わりだ……ディーパ」
そういって、持っている武器を僕目がけて振り上げる黒い鎧の男。
「所詮お前は精霊がいないと……役立たずな男だったということだ」
やめろ……その言葉僕に言わないでくれええええええええええええ!!!!!!!
「はぁ…はぁ…夢……??」
気が付くと飛び上がるように起き上がっていた僕、どうやら夢のようだった。
どれくらい寝ただろう……?外を見るとどうやらお昼くらいまで寝たようだ。起き上がろうとすると腰の部分に違和感を覚える。
何だろうと?お腹のあたりを見ると何故かエレフェントドライバーが装着されていたのだ。
「いつの間に……??」
ドライバー勝手に何か危険を察知して勝手に装着されたのか?いやいやそんなわけがないか……寝ぼけて装着してしまったんだろうなと自分を説得しドライバーを脱着した。それにしてもすごい汗の量だ……後でお風呂に入りたいな。
そう思いながら布団を片付けていると
「すいません、ここはソゲンさんのお部屋で間違いないでしょうか?」
入口のドアがノックされ、ドアの向こうから女性の声がした、誰だろう?ここの従業員さんかな?僕は立ち上がり入口に向かうと、ドアを開ける。
「はい、どなたですか?」
「はじめまして、ソゲンさんブライト・ガーディアンズ騎士団のエリーゼと申します」
立っていたのは、レイナさんと同じ白い服に赤いミニスカートを身に着けそして頭には大きな魔法使いのトンガリ帽子を被っていて、トンガリ帽子からはピンク色の長いツインテールが伸びていた。そして特筆すべきは……。
「あの、今私の事小さいと思いましたよね?」
「いや……別に」
なんでこいつ僕が今思っていたことを……と思ったが、日常的に小さいなと言われ続けているんだろう。
「これでも私20歳なんですけど」
「僕の一個下なんですか!?こんなに小さいのに??」
「小さい言うな!!!!」
先ほどの真面目な賢そうな喋り方とは一転して、子どもじみた喋り方で怒りをあらわにする。本当に20歳なんだろうか?
しばらくして落ち着いたのかエリーゼは咳払いをして「すいません取り乱して
しまいました」と元のしゃべり方に戻る。
「ところですごい汗ですけど、何かあったんですか?」
「い、いえちょっと暑かっただけなので大丈夫です」
僕はタオルで顔を拭きながら、笑顔で答えた。さすがに騎士団の人にまで心配をかけるのはまずい。
「そうですか、ならよかったです、ところでソゲンさん年上なんですから敬語はやめてください」
「じゃあそうさせてもらうよ、で用件は?」
「はい、今日は団長のご命令でソゲンさんにご挨拶に参りました」
「挨拶?これはまたご丁寧に」
僕ってそこまで偉い人じゃないと思うけどなぁ、なぜそこまで?
「後それと、こちらを」
そういって渡してきたのは、ドラゴンのバイクが入っていたものと同じ木箱だった。
まさか……。
「騎士団本部に届いていたらしいんです、差出人が誰かは分からないんですが、宛名がソゲンさんだったので」
「それはどうもご足労をおかけいたしました……」
あの女神めぇ、また他人に迷惑をかけるような届け方を!次会ったら説教してやる。
「それにしても、僕がここにいるってよくわかったな」
「はい、街で赤い髪の女の子に聞きました」
「セレステに?!」
「えぇ、困ったら赤い髪の小さな女の子に聞いてねとレイナ副団長に言われましたので
それに王都では赤い髪は珍しいのですぐにわかりました、迷惑でしたか?」
「い、いえ」
ピンクの髪も結構珍しいとは思うけど……まぁ赤い髪も他の町ではほとんど見かけなかったし相当珍しいのだろう。また帰ってきたら何か言われそうだ。
「では、私はこの辺で……」
そう言うとエリーゼは綺麗に背中を曲げお辞儀をすると、マントを翻し僕の前から去って行く。それと入れ替わりに隣の部屋からアウリスが出てきた。
「今誰かと話していなかったか?」
「あぁ、騎士団の人だよ、僕に挨拶をしにきたんだってさ」
「騎士団の人がなぜ?あーそういえば昨日騎士団には期限付きで入ると言っていたな
だから服装が違っていたのか……」
「派手過ぎて僕には似合わないよな?」
「いや、すごく似合ってるよ、君にぴったりだ」
笑顔で少し顔を赤らめながら、そういうアウリス、それを見て思わず僕も恥ずかしくなってしまい「あ、ありがとう」と僕まで顔を赤らめてしまった、話を変えないと。
「ところで、セレステは出かけているのか?」
「うん、ネレイスとと一緒にエンデルの日用品を買いに行ったよ」
「マジで?」
ネレイスもいたかー、まずいなぁ……騎士団とは言え女の子だったからなぁしかも小さくてかわいい帰ってきたら二人になにを言われるか、しかも昨日ネレイスにあんなことを言われたばっかだしなぁ。
「どうした?」
「い、いやなんでもない、あ、そうだ僕達もどこかへ行かないか?」
「いいけど、急にどうしたんだ?」
「アイロンベインでずっと助けてもらったばっかだし、お礼をしたいなって」
「別に気にすることはないのに……」
口では遠慮しているが表情を見ると、とてもうれしそうである。もう少し後押しすれば……。
「あれ?アウリスさん言ってませんでしたっけ?」
「何がだ?」
「こういうのは素直に受け取るのが常識だぞって」
そういうと口が緩んで「まさかそれをソゲンから言われるなんてな」ととても機嫌良くこぼした。
「着替えてくるから待っててくれるか?」
そういうと僕が返事をする間もなく疾風の如く部屋へと入って行く。そんなに嬉しかったのかなぁ?僕も一度水でも浴びるか。
しばらくして、黒い騎士団の服に着替えて自分の部屋のドアの前で待っていると隣のドアが開き「待たせてすまない」とアウリスが出てきた。
「いつもと少し違うかもだけどどうだ?」
その言葉の言う通り、白鳥のように白いシンプルなドレスに胸元にはこれまた控えめな可愛らしいリボンが付いていて腰には茶色のベルトが巻かれており、スカートもいつもより少し短かめだ。
「いつもの奴よりかわいいよ、似合ってるよ」
「そんなに褒めても何も出ないぞ……」
僕に褒められてよっぽど機嫌がいいのか、クールな自分をなんとか保ってはいるが溢れ出る感情を抑えきれずとてもにこやかに笑っていた。
「大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ早く行こうか!」
僕ら二人は並んで宿屋をでた。
ここは王都城内、アルべリクは城内に続く赤い絨毯の上を歩いていた。壁には王都の紋章が描かれた垂れ幕が飾られており独特の雰囲気を醸し出していた。
「アルべリク団長、ご機嫌麗しゅうございます」
「これはオリヴィア様、今日もお美しいですね」
目の前に現れたのは、緑と白の鮮やかなドレスを着こんだ長い黄緑色の穏やかな雰囲気の女性で、頭の上には金色のティアラが輝いていた。アルべリクは彼女の前で片足を斜め後ろに引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ背筋を伸ばしたままの挨拶をする。跪礼と呼ばれる目下の者が目上の者にする挨拶である。
騎士団長がなぜ?と思われるかもしれないが何を隠そう目の前にいるのは現国王の娘、第二王女のオリヴィア殿下だからだ。
「あら、相変わらずお世辞がうまいですねぇ、騎士団長様は」
オリヴィアはそう言いながら手のひらで口を隠しながら嬉しそうに笑う。
「お父様の具合はどうですか?」
「それが今日は喋れる状態ではなくて……」
現国王は病の床に就いていた、病状は思わしくなく高齢ということもあっていつ崩御されてもおかしくはない状況だった。
「そうですか……今日は面会はできそうもございませんね、ではここで私は失礼いたします」
頭を下げてその場から立ち去ろうとするアルべリクに「お待ちになって」と声をかける。
「もしお父様が崩御されたら、次期国王は私にしてくれるんですよね?」
オリヴィアの穏やかな雰囲気の顔が、不気味な形相へと変わる。それを聞いたアルべリクも無表情ではあったが、身が引き締まる思いだった。
「ですが、現国王は次は第一王女のソフィア殿下をということなので、厳しい戦いになるかと」
現国王には3人子供がいて何れも女性であった、まず王位継承第一位の長女ソフィア、そして第二位の次女オリヴィアそして第三位には三女のイリアナがいる。見ての通りオリヴィアは第二位であるため、ソフィアが死ぬか、病気で公務ができなくなった時にしか
オリヴィアは王位継承ができない。しかも病の現国王も次はソフィアをと推しているため非常に厳しい状況である。
「そうよねー、ソフィアお姉さまがいるから普通は無理よねぇ、でもぉ貴方をレイナを差し置いて騎士団長にしてあげたのって誰だっけぇ?」
アルべリクに近づき妖艶な声でそう囁くオリヴィア、無表情なアルべリクは「オリヴィア様でございます」と答える。
「だよねぇ、貴方には私に返しても返しきれない恩があるものねぇ……」
静かに「はい」と答えるアルべリク、普通の男なら彼女の誘惑に負けてしまいそうだが彼は慣れているのか全く表情を崩さない。
「まぁ、でもまだお父様はご存命で先の話だと思いますし……慌てることはないです」
「策は考えておきます、きっとオリヴィア様を玉座へと導いてみせます」
そう言い放ちその場から立ち去る、その後ろでキラキラと目を輝かせるオリヴィアは「期待してるわ」と言い小さく手を振った。
「あ、そうそう」
「まだ何か?」
「精霊の騎士ディーパが王都に来ているんですよね?」
「えぇ、まぁ……」
「絶対にディーパをレイナに取られないでくださいね?」
そういってニッコリと笑うオリヴィアに「承知いたしました」と一言だけいい足早に去って行った。
「やれやれ……オリヴィア殿下も無理難題を突き付けてくる……」