僕はセレステの後を追って村に向かって一目散に走っていた。この時体力のなさはもう走ることに夢中になっていて忘れていたのだろう息が荒くはなっていたが、そんなことよりも村人の命が大事だと言う気持ちで走っていた。ようやくセレステの姿を捉えると大声でセレステに呼び掛けた。
「セレステ!あ、あんたは一人で抱え込みすぎだ!だから…僕にも手伝わせてくれ!」
やはり何も返してくれなかった、セレステの体に触れられる距離に詰めると彼女の肩を掴もうと手を伸ばすと、熱気だろうか?触ることができないほど熱い何かが手に伝わってくる、燃え盛る灼熱の炎のような熱さだった。
直接触れていればやけどでは済まされなかったであろう、なぜセレステの体がこんなに熱く?そんなことを考えているとおーい前から初老の村人らしき人がこちらに向かって走ってくるのが見えた。僕らを見つけた安心したのかその場でバタンと倒れてしまった。
「お、おい?大丈夫か?」
僕とセレステは立ち止まり、倒れた村人の体を起こす。彼の額から血が流れており、呼吸も走ってきたせいか荒くなっている
「魔、魔竜兵が、いきなり攻め込んできて、しかも、
今回は親分みたいなやつもいて…村人が何人もやられてしまっ……ゴッホゴッホ!!!」
村人はひどく衰弱してるようだった、喋るのもやっとの状態だ。セレステは立ち上がると、私のせいだ……、私のせいだ……何度も何度も呪文のようにつぶやいた。僕は君のせいじゃないと何度も言い聞かすようにセレステに言葉をかけていたが、突然声にならないような叫び声を上げ走り去ってしまった。
「おい!セレステ!」
僕は村人を背負い後を追いかけようとしたが村人は僕を手で押しのけた。
「いや、あんさんは村へ先行ってくれ…」
「でも、あんたをここへ放ってなど…」
「俺の事なんてどうでもええ!あんたはセレステとともに村を守ってくれ!」
僕は村人に軽く無言で会釈をするとセレステの後を追いかけた。絶対に村とセレステを救って見せる!。
村はフォンセの言う通り大勢の魔竜兵によって襲われていた。数十、いや数百はいるであろう、至る所から火の手があがり村人達は襲ってくる魔竜兵に斧や桑で応戦しているが、女性や子供は抵抗もできず逃げ惑う光景は、凝視できない痛ましい惨状であった。
なんだよ、これは、まさかフォンセ……いや、今はそんなこと考えてる暇はない!!エレフェントドライバーを持つ自分の手は震えていた。本当に村やセレステを救えるのか?救うどころか自分は死んでしまうかもしれない……そんなことを考えると手の震えが止まらなかったのだ。だけど今この状況打破できるの自分しかいない!!!
≪driver starting≫
少女の声とともに僕の腰にベルトが巻き付けられる。そして震える手を握りしめた。
「変身……」
≪empty Transform≫
僕はそう発すると正義のヒーローディーパーに再び変身する。
まずはどこにセレステがいるのかを見つけないと、おそらく先に到着している彼女を見つけるためにあたりを見渡した、いた!遠くで赤く燃えるように輝くセレステの姿をみつける、その様子は村を襲う魔竜兵に対する、怒り、憎悪、恨みまでも感じて、近づくこともためらってしまいそうな様子だった。
だけど…僕の彼女の元へと走り出そうとすると若い村人が旅人さん!と呼び止めた。
「この剣使ってくれ!」
少し古びた鉄製でできた剣を僕に手渡す。それを見た僕は「助かる!」と言って受け取ると、若い村人がセレステを指指した
「セレステさん何かおかしいんだ、変に赤く光ってるし大丈夫だよな?」
「あぁ、大丈夫だ!僕に任せろ!」と僕意気揚々とサムズアップをした。
だが内心はどうしよう、どうしようと不安な気持ちでいっぱいである、こうでもしないと自分にできると自信がわかなかったのだ、僕は意を決して魔竜兵へ斬りかかった。
赤く輝いたセレステはいつもよりも強力な火球を襲い来る魔竜兵に次々とぶつけ、魔竜兵は次々と燃え盛って塵となっていた。
くそ!!数が多すぎる…なかなかセレステの近くにたどり着けない…負けじと魔竜兵を村人からもらった剣で切り裂いていたが、弱い敵でも数で応戦されては……僕は一心不乱に剣で魔竜兵を切り裂き続ける。
「旅人さん!セレステのおばあさんが!!」
その声の方を向くと逃げ遅れて魔竜兵に囲まれたセレステのおばあさんが見えた。僕は「今行くぞ!」とおばあさんの元へと走り出す。その声はセレステにも届いておりセレステがおばあさんがいる方に目を向ける。
しかし僕はそれに気づいておらずおばあさんのもとへと走った。
「私のおばあちゃんに近づかないでええええ!!」
まるで子供のような叫び声をあげるとマグマのように赤く燃え盛る火球を手に宿し
勢いよく僕とおばあさんや村人の周りにいる魔竜兵に投げつける。
「セレステ?!」
僕はその叫び声に驚き振り返ったが遅かったセレステの手から放たれた燃え盛る火球はおばあさんを囲んでいた魔竜兵にぶつかり大きな爆風を起こした。
「うわあああああ!!」
周りにいた僕と村人とおばあさんは爆風に巻き込まれ吹き飛ばされた。
煙が晴れて魔竜兵は塵となって消えていたが、周りの民家には火の手があがり地面にも火球が当たったであろう場所に大きな穴が開いている。「み、みんな大丈夫か?」と僕は倒れていた村人とおばあさんに声をかける。
「あ、あぁでもおばあさんが」
若い村人がおばあさんを指差すと倒れて動かなくなっていた。僕が声をかけるが全く応答がない……まさか……?その状況を見て唖然としている人物がもう一人いた。
「お、おばあさんが……私が……おばあさんを……嘘だ!嘘だ!私はおばあさんは守ったはずなのに!そんな……」
僕は唖然としているセレステに声をかけようと叫んだ。
「セレステ!もう少し力加減を!」
だが、その時だったセレステの体から突然赤い閃光が放たれ、辺りに赤い眩い閃光と熱気に包まれた。セレステは発狂にも思えるような叫び声をあげ宙を舞った。
体が炎に包まれ衣服が赤い服炎に包まれ巫女服のような衣装へと変貌し綺麗な赤い髪の毛も赤とオレンジが混ざった燃え盛っているような色に変色、額にはベルトに刻まれた紋章と同じ紋章が刻まれ、さらに腰には刀ような武器がセットされた。
「セレステ…??」
僕と村人は村娘の時とは全く違う雰囲気になったセレステを茫然とただ眺めているだけだった。
そしてセレステは狂気に満ちた顔を僕に向けると不敵に笑みを浮かべる。
「はははあははははは!!!!そうだおばあちゃんがいなくなった村なんて…もう全部燃やしちゃえばいいんだ…」
「な、何言ってるんだ!まだおばあさんが死んだわけじゃ…」
「黙れぇ!!!!!」
セレステは腰に携えていた刀を抜刀し僕におそいかかる。
「あぶね!!」
間一髪剣で刀を受け止めることに成功をするが刀をもっていたもう片一方の手のひらから火炎放射のような攻撃を繰り出す。
「ちょ!あっち!あっち!!」
「もういいんだ…みんななくなっちゃえば…」
おばあさんを傷つけてしまったショックで、おかしくなってしまったのか?もしそうなら早く止めないとセレステが村を全滅させてしまう!!
「あーあー遂に覚醒しちゃったね~」
突然聞いたことがある妖艶のある少女の声がする。声のした方を向くとフォンセが屋根の上から見下ろしていた。
お前のせいだろうが!!とフォンセを一喝し僕はフォンセをマスクの中からにらみつける。
「ひっど別に私は何もしてないのになー、せっかくいいこと教えてあげようと思って来たのに」
フォンセは地面から小さな黒い腕を僕に向かって伸ばした、そして黒い腕はベルト部分にあった四角いケースをつかみ取り僕の目の前に投げつけた。
「最初に会った時から気になってたんだよねー、これなんだろうーってさー」
僕の目の前に投げられたケースは地面に転がると蓋が開き4枚のトランプのような
カードがあたりに散乱した。
なんだこれはと僕はそのカードを拾い上げ1枚、1枚確認すると白黒だったが美術館に飾られている絵画のようなイラストが描かれておりその中央に見たことがない少女が描かれていた。1枚、1枚確認しているうちに僕はあることに気づいた。
「なんで、このカードにセレステが描かれるんだ?」
紅蓮の炎が舞うイラストにセレステと瓜二つの少女が描かれているのだ。
「気づいた?」
フォンセは子供のように笑うと、さらに続けた。
「いま彼女はー暴走中っていうかー精霊の力を制御しきれていない状態なんだよねー」
「そんなことはわかってる!どうやったら正気に戻せるんだ!」
僕はフォンセを問い詰めていると、どしーん!という地ならしのような音が驚いた。
「ギャオオオオス!!」
それは大将という言葉が似合う、ゆうに2m、いや3mはある魔竜兵の姿だった。他のものとは違い甲冑を着ておりそして頭には立派な兜をかぶっている。
村人たちはそれを見るやいなや腰を抜かすものもいれば一斉に逃げだす者がいて村中大パニックに陥ってしまう。
「嘘だろ…まじでいたのかよ…」
僕は内心逃げ出した気持ちでいっぱいだった。足は震えカードを持っていた手も震えていた。突然のボスの登場に僕は恐怖で震えが止まらない状態だ。
「大将だか何だか知らないけど、邪魔しないでくれるかな!!!」
大将の姿を見たセレステは魔竜兵の大将に刀で切りかかっていったが大将も1mを超えるような大きな刀を抜きセレステを弾き飛ばす。
「しつこいなぁ…!」
セレステも負けじと手から燃え盛る火球を大将にぶつけ続けた。
僕はその様子を見ていたがなかなか踏み出せずにいた。恐怖で震えが止まらなかったのだ、剣を握る力もない。
「なんだよ…俺…正義のヒーローになるんじゃなかったのかよ…」
「ほらほら!ファイト!ファイト!」
フォンセが後ろで陽気にエールを送っているようだったが僕にはその声も届いていなかった。
ただでっかいドラゴンを目の前にしただけで恐怖で動けなくなってしまう自分が情けなかった。そして僕は持っていた剣を地面に放り投げ天に向かって絶叫をした。
「くそぉぉぉぉぉ!!!!!!」
何もできず悔しさに暮れている時、その状況を打破できる、出来事が起こる。
「セ…セレステ…」
後ろから力ない老婆の声がかすかに聞こえたのだ、まさか!と後ろを振り返るとセレステのおばあさんが顔を上げ手をセレステの方へ伸ばしていたのだ。
「おばあさん!大丈夫か!?ここは危ない!逃げよう」
僕はおばあさんを抱きかかえると間髪入れずセレステに向かって叫んだ
「セレステ!!!!!お前のおばあさん生きてるぞぉ!!!!!」
「え…」
セレステはそれを聞きこちらを振り返るとその瞬間セレステの狂気じみた顔はいつもの村娘の優しいセレステの表情へと変わり周りを覆っていた赤いオーラも消え去った。それを見た大将は好機と見たのか刀でセレステを吹き飛ばした。
「きゃあ!!」
僕は急いでおばあさんを近くにいた若い村人に引き渡し、倒れたセレステのもとへ走った。
「おい大丈夫か!?セレステ!?」
「ソゲン君……私……」
「今は気にするな!あのでかいやつを二人で倒すぞ!」
投げつけた剣を拾って構えるが、剣先ががくがくと震えていた。やっぱり、震えが止まらないな……情けない、女の子が隣にいるのに……僕は……
「大丈夫だから、私もよくわかんないけど頑張るから」
震える僕の手の上に優しくセレステは自分の手を被せる、とてもやさしい温もりで勇気がわいてきたこれならいける!!僕は意を決してとつげきしようとしたその時だ、ケースから一枚のカードが僕の前に飛び出した。
それはセレステと瓜二つの少女のイラストが描かれたカードだった。よく見ると先ほどまで裏面がトランプのような模様だったが僕のバックルと同じような紋章へと変わっていた。
もしや!と初変身した時の事を思い出した。そうあの時はわからなかったが、今ならこのバックルの使い方がわかる。僕はバックルのカバーを開けカードを装填し閉じる。
≪ignis! stand-by!≫
予想通りだった。僕はもう一度決意を込めて叫ぶ。
「変身!」
≪Ignis!metamorphosis!≫
セレステの姿消えベルトが少女の声でそう発すると
赤い甲冑を思わせるよう鎧が胸に、腕と足には赤く燃え滾るパーツが、そして複眼には赤い鳥が被さり、複眼は燃えるように赤くなる。それはまさに赤い鎧武者のような姿になっていた。