「ダーリン見えてきたよ、王都アヴァロン」
霊力によって黒い靄と共に王都近辺に現れる白いフードを被った男とフォンセ、男の目には王都入口の門が反射していた。
「ここに来るのも、数十年ぶりか……」
懐かしい風景を見て感慨深い気持ちになる男、だがこの町を見るのはもう……。
「どうしたの?ダーリン?」
「いや、なんでもないいくぞフォンセ」
王都に向かって歩き出す男、その後ろを「待ってー」と親を追いかけるカルガモの子のようについていくフォンセだったが何かを思いついたのか急に立ち止まる男。
「少し早いが、前夜祭としゃれこもうか……」
「いいんじゃない?ダーリン♡」
男は王都とは逆方向に方向転換し歩いて行った。
僕は悩んでいた、どうすればアウリスに一番のお礼ができるか、アウリスの好きなものや欲しいものがわからない今どんなお礼をしていいのか僕は頭を抱えていた。こんな事ならネレイスに聞いておくべきだったか……いやいや……そんなこと聞いたら何をされるかわからないだろ!ああもうどうすればいいんだよー!
「ソゲン、どうした?具合でも悪いのか?」
隣にいたアウリスが僕に近づき気掛かりな顔をしてこちらを凝視する。
「あぁ、ごめん……」
また心配をかけさせてしまった、今日は僕がアウリスの手を引く番だったのにダメな男だな……そんなこと考えていると、アウリスは出し抜けに僕の手を握った。
「アウリス?」
「ソゲン、私行きたいところがあるんだ、一緒に来てくれないか?」
「え?」
「今日は私に対するお礼のために一緒に出かけてるんだろ?なら今日は一日私の行きたいところについて来てもらうぞ」
そういって力強く僕を引っ張るアウリス。
「いやいや、それじゃあ僕からのお礼になら……」
僕がアウリスに懇願するように訴えると、僕の口を指で抑える。
「私は君を独り占めにしたいんだ……、だから今日は私の行きたいところへついて来てもらうぞ」
「だからって、そんなに引きずらないでー!!」
それから僕はアウリスの行きたいお店を転々と回った、薬草のお店、そしてその薬草を調合するための道具を売るお店さらには服屋にも寄りアウリスに似合う服を選んであげた。とてもうれしそうだった。普段のクールで落ち着いた雰囲気とは違って今のアウリスはセレステと同じように愛愛しい女の子に見えた。本当にお出かけに誘って良かった、アウリスのこういう一面も見れたんだから。
「すまない、少し調子に乗ってしまったみたいだ……」
「いや別に構わないよ」
「王都に来たら、行きたい店がたくさんあってな。」
行きたい場所を回り切った僕とアウリスはおしゃれな雰囲気のカフェに入り休憩していた。アウリスは買ってきた調合するための道具をキラキラした目で見ていた。
それにしてもすごく落ち着いた雰囲気のカフェだ。可愛らしいフリルがついた服を着たウェイトレスさんが歩いていた。まぁそれにしてもすごく綺麗な女性の方がたくさんいるお店だなぁ……いでで!!!
「何を見てるんだ」
まるで獲物を駆る鷹のような目で睨みつけ、僕の頬を引っ張るアウリス。
「ひいいいい!!」
「全く……目の前にも美少女がいるのに……」
そう言いながら頬を膨らませる。すごく可愛い……普段クールな雰囲気の娘がこうするギャップがたまらないな。スマホがあればカメラに納めて待ち受けにしたい。
「なぁ、ソゲン」
「ん?なんだ?」
「私はソゲンの役に立てているか?」
「え?」
アウリスから予想外の質問が飛び出してきた、普段のアウリスからは想像もできないような質問だ。
「私は不安だったんだ、アイロンベインで二人が寝たきりになり、私一人っきりになって
本当にソゲンの役に立っているかって……」
そう不安げに話すアウリス、二人がいなくなって彼女にのしかかる責任感とプレッシャーの重さは凄まじいものだっただろう。アウレリアの家の裏で見た弱弱しいアウリスになってしまうのも無理はないか……、だけど僕の答えはただ一つだ。
「お前は僕の役に立ててたよ、君が居なければオリハルコンも見つからなかっただろうし、あの作戦も成功できなかった、本当にアウリスには感謝しているよ、ありがとう」
「そう言ってくれると、本当に助かる……」
頬を赤らめて顔を下に向けるアウリス、何か本当にいつもの彼女とは違うような。
「お待たせしました~、コーヒーとケーキのセットです」
机の上に置かれたのは、ブラックコーヒー二つとベリーのケーキだった。ベリーのケーキはこのカフェの看板メニューらしい。ベリーが挟まれたふわふわの生地の上に、薄い紫色のクリームがたっぷりと塗られており、ベリーの香りが鼻を撫でて食欲を誘う。
早速食べようとフォークを手に取り食べようとすると、僕の目の前にケーキとフォークが置かれた。
「いらないのか?」
そう聞くと、顔を赤らめたアウリスは何かを言いたげに体を震わせている。
「どうした?どこか悪いのか?」
「……てほしい……」
「え?」
「……させてほしい……」
「ごめん、よく聞こえなかったもう一回言って」
「食べさせてほしいって言ったんだ!!」
子供の用に大声を出すアウリス、カフェ内にいた客が一瞬こちらを向いた。えーとつまり恋人がよくやってるあのあーんって言うやつをやってほしいってこと?
「別にいいけど……」
僕はフォークを持ってうまく一口サイズに切り分けて突き刺した。ふとアウリスの方を見るととても恥ずかしそうにさっきよりも顔を赤くしていた。そんな表情をされると僕も恥ずかしくなってくる。ぷるぷると震える手をアウリスの口へ運ぼうとすると、頭の中に一つの記憶が再生される。
「もし次アウリスに手を出したら、あの程度じゃすみませんからね?」
まずい、今のこの状況ってネレイスからみたらアウリスに手を出してるのでは……いやいやあの時は押し倒したからじゃないか……たかがあーんくらい手を出したことになるまい!!でもバレたらなんか言われそうだなぁ……。
まずい、今のこの状況ってネレイスからみたらアウリスに手を出してるのでは……いやいやあの時は押し倒したからじゃないか……たかがあーんくらい手を出したことになるまい!!でもバレたらなんか言われそうだなぁ……。
「どうした?」
フォークにケーキを突き刺したままかたまっていた僕に見かねて声をかける。
「なんでもないよ……じゃあ……」
「まさか、ネレイスに何か言われたのか?」
なんという鋭い感性、当たりだ。
「な、なんで……」
「まぁ、そういうことだろうと思ったよ」
クスクスと忍びわらいをするアウリスに一言「ごめん」と謝る。
「別に謝る必要はないよ、どうせあんまりアウリスに無理させるなとか、手を出すなとかそんなことを言われたんだろうけど気にする必要はない、私がやってほしいって言ったって言えば許してくれるさ」
「そ……そうか……」
本当に許してくれるんだろうか?なんかそれを言うと逆効果なような気がするけど……。
本当に許してくれるんだろうか?なんかそれを言うと逆効果なような気がするけど……。
「それともまさか、私じゃいやだって言うのか?」
「いいえ、嫌じゃないです!!」
僕はプルプルと震える手をアウリスの口へと運ぶと、アウリスの小さな口が開いてその中へケーキを入れた。
「すごくおいしい……」
とても幸せそうな顔をしていた、その顔はケーキがとてもおいしかったのか、僕にあーんされて嬉しかったのか……まぁどちらもとも考えられるか……何はともあれ喜んでもらえてよかった。
「じゃあ私からも……、はいあーん」
気が付くとアウリスもフォークにケーキを突き刺し、こぼれないように手を添えて僕の口へ運ぶ準備をしていた。
「いや、僕はいいよ……」
「あーん!!」
「あーん」
僕はアウリスの気迫に押され口を開けると、ケーキを口の中へと入れられる。
「おいしい……」
ベリーの甘酸っぱさと生クリームの甘さがとてもマッチしていておいしい。イチゴとはまた違ったアクセントが効いていてこれもありだ。
「あらー、仲がいいんですねー」
聞きなじみのある気品ある声の方向を向くと、悪戯っぽく笑った表情をしているミレイユとレグナーが立っていた。突然の騎士団の服装をしたレグナーの登場にカフェ内はざわついていた。
「ソゲン、もう精霊の娘とそんな仲だったのかー」
「いやいや、えっとその……いでで!!」
「まぁ、そんなところです」
アウリスは僕の腕の皮膚を強くつまみながら、そう答えた。はぁもうどうにでもなれ……そんな時だった、突如として町にけたたましいサイレンが鳴り響いた。
「騎士団各位連絡!王都近辺に魔物の群れが出現!繰り返します!王都近辺に魔物群れが出現!騎士団各位は入口の門に集まってください」
カフェ内は突然のアナウンスにカフェ内は騒然となっていた。
「まだ予告の日時には2日も早いぞ?」
「とにかく急ごう、ソゲン!」
僕と3人は入口の門へ走った。
入口の門にはレイナとエリーゼとアルべリク団長の姿があった。
「魔物群れは?」
僕が騎士団長に聞くと、「まだ現れていないよ」と答える。
「どうやら、完全に王都にめがけて向かって来ているようです」
「まだ予告の日数には早いはずだけど……」
そんなことを言っていると向こうの方から煙を上げながら、魔物群れがこちらに向かって凄まじいスピードで迫ってきていた。
「ワーウルフの群れです!」
エリーゼは望遠鏡をのぞき、「ざっと数えて300はあると思われます」と言う。
「どうやら、宴の前の前夜祭らしいなぁ」
レグナーがそう言いながら聖剣を抜くと、それを合図にそれぞれ3人も聖剣を鞘から抜いた。レグナー紫色の刀身そしてレイナはレイピアを思わせるような刀身。エリーゼは枝のように何個も分かれた刀身。そしてアルべリクは星空のような刀身の聖剣をそれぞれ構えた。
「アウリスいくぞ」
「あぁ!」
僕はドライバーを装着すると、アウリスのカードを取り出す。
「変身!」
≪Gail metamorphosis!≫
アウリスのカードを装填すると、緑の色の粒子が鎧となって形成され、ディーパ ゲイルフォームが王都に立った。
「なるほど、それが君の力か……」
「これがディーパ……かつて世界を救った……」
エリーゼが興味深そうに見つめていると、レイナが「来ます!!」と号令をかけた。
「聖なる輝き、グラムの勇者、レグナー!」
「闇を切り裂く、エクリプスの使徒、レイナ!」
「勇者の誇り、エッケザックスの守護者、エリーゼ!」
「不屈の意志、デュランダルの戦士、アルべリク!」
「「「「我らが聖剣使い達、いざ参る!!!!」」」」
4人そう叫ぶとはそれぞれワーウルフに斬りかかった。
「すごいかっこいい名乗りだなぁ……僕達も作るか?」
「そんなこと言ってないで私達もいくぞ!」
「おわああああ!!」
そう言ってゲイルスピアを握り、アウリスに引っ張られる。
「はあああ!!!」
「レグナー、冒険者になって剣の腕鈍ってるかと思ったけどそうでもないみたいね」
ワーウルフに力強く斬りかかるレグナーを見て、レイナはからかうように言う。
「馬鹿野郎!これでも鍛錬は怠っていないんだ!ミレイユ!補助魔法を頼む!」
そう言うとミレイユは杖をかざし「ブースト」と唱える。
「ふーん……、私も負けてられないわね!」
レイナは地面踏み込むと、凄まじい閃光のようなスピードで次々とワーウルフを切り裂き、その後ろでミレイユも様々な魔法で支援していた。
「エリーゼ、減ってきたか?」
アルべリクはエリーゼにそう聞くと、水晶玉のような道具を取り出す。
「はい、かなり数を減らしてきています」
「なんとかなりそうだな」
アルべリクは安心した表情でワーウルフをどんどんと真っ二つにしていった。
一方こちらは空からワーウルフをけん制するように倒すディーパ。
「さすがのワーウルフも空中にいる敵には何もできないみたいだな!」
(ソゲン、あまり調子に乗るなよ?)
調子に乗って低空飛行をしてワーウルフに攻撃しようとすると、一匹のワーウルフがもの凄いジャンプ力で襲い掛かってきた。
「うおっと!!」
間一髪上空へ急上昇することで回避することに成功する。
(ほら言わんこっちゃない……)
さすがに敵が弱すぎて調子乗りすぎてしまった、こうなりゃ一気に仕留めてやるか!
僕はゲイルスピアに渾身の力を込めて、ブーメランのように投げつけると、まるで斬撃破のようにワーウルフ達を素早く切り裂いていった。
「おー、気にワーウルフが……」
「さすがソゲンくんだね」
「これがディーパの力か……」
「ワーウルフ、全滅を確認しました」
エリーゼが水晶玉を見つめてそう言うと、4人は剣を鞘に収めた。
「ほとんど、ソゲンに倒されてしまったなぁ……」
「ソゲン君を騎士団に誘って正解だったよー」
レグナーとレイナは近づいてきて、僕にあーだこーだと話しかけてきた。ただ槍をブーメランのように投げただけなのになぁ……。そんなことを思っていると望遠鏡を覗いていたエリーゼが異変に気付いた。
「あれ?倒したはずなのにまた煙が立っています……」
「なんだと!」
アルべリクはエリーゼから望遠鏡を受け取り覗くと「まだ来てるぞ……」と表情が険しくなった。それを聞いたレグナーとレイナと僕はもう一度武器を構えた。
「今度はゴブリンの群れだ!しかも……さっきの2倍はいる……」
「嘘でしょ……」
一気に緊張感が高まった、しかもさっきの戦闘から間もないため4人の疲労も溜まっている……このまま次の戦闘に突入してしまうと……こうなれば……
「ソゲン君?どうしたの?」
僕は空へ飛び上がり急上昇すると、一気に加速しゴブリンの群れの上空へと移動する。
「ソゲン、一体何をする気だ?」
4人の騎士たちとミレイユはゴブリンの上空で浮遊する僕を心配そうに見つめる。
(おい、ソゲン何をする気だ?)
「必殺技で一気に蹴散らす、さっきのワーウルフよりも数は多いが所詮は雑魚の群れだ」
≪Gail! fainalatack!!≫
≪Gail! finalatack!!≫
「はあああああああ!!!!!」
次々とゴブリンの群れを木っ端みじんにしていき、一瞬にして全滅させることに成功する。
「ふぅ……」
「なぁ、俺達ぶっちゃけいらないんじゃないか……?」
「「「たしかに……」」」
レグナーの問いかけに、3人は唖然とした顔で答えた。
変身を解除した僕は5人のもとへと戻った。
「お疲れ様、ソゲン君」
「やっぱソゲンお前は凄いなー」
「あはは……どうも……」
「それにしても、あんなにたくさん魔物群れを操れるのはやはりオディオと言う奴の仕業か……」
「となるともしかすると、近くに来ている可能性がありますね……」
「王都の警備隊に、怪しい男がいないか警備に当たらせよう……、レイナ頼めるか?」
アルべリクがそういうとレイナは「わかりました」と言い王城の方角へと走って行った。
「レグナーやソゲンもご苦労だった、今日は休んでくれ」
僕とレグナーにそう声をかけるとアルべリクも本部へと戻って行った。
「私にもご苦労様と言ってほしかったです」
ミレイユは不機嫌そうに歩いていくアルべリクを睨みつける。
「相変わらず、気に入らない野郎だ、俺達も行くぞミレイユ」
「あー、待って下さいレグナー!」
王都へと入っていく二人の背中を見送り、もう一度王都の外を見渡す。
奴はもうこの近くに来ている事は間違いない……、そうなると期日までに探し出して倒しておく必要がある。どこにいる?オディオ……。
奴はもうこの近くに来ている事は間違いない……、そうなると期日までに探し出して倒しておく必要がある。どこにいる?オディオ……。
「なぁ、ソゲン?」
「どうした?アウリス?」
服の袖をひっぱるアウリスの方を向くと「私達も帰ろう」と笑顔で言う。
「そうだな、帰るか……」
アウリスと共に僕も宿屋へ戻ろうと門をくぐろうとした時だった。
「ソゲン君、何やってるの?」
「アウリスとのデートは楽しかったかしら?」
振り向くと買い物袋や荷物をもった3人の精霊の姿だった。
あーやべーこの3人のことすっかり忘れてた……。
あーやべーこの3人のことすっかり忘れてた……。