「ソゲン君、今頃二人で……」
レストランに入っていた3人の精霊、セレステは机に置かれたパスタをフォークに巻きつけながら窓の外をぽかんと見つめていた。
「心配なのか?」
「え!!い、いや……そんなことは……」
そう言われ顔を真っ赤にして慌ててフォークに巻き付けたパスタを口に運ぶ。その様子を見たアウリスは吹き出すように笑う。
「ちょっと!!何で笑うんですか!?」
「セレステ、本当にソゲンの事好きなんだなって」
「えぇぇ!!??な、な、な、な……」
アウリスの言葉に、赤くなっていた顔がさらに赤くなり、まるで熟したトマトのように
なっていた。「なんでわかったんですか?」という言葉にアウリスは「いやいや」と前置きをする。
「だって、エアリアの温泉街の時といい、皆気づいてることだと思うぞ?」
アウリスにそう言われ頭から沸騰したお湯のように湯気を出すセレステは「はう~」と言う声を出しながら悶絶をしている。二人の会話を聞いていたエンデルは頭の上にはてながたくさん浮かんでいて何の話をしているのか、わかっていない様子だったが好きという単語だけはわかったようだ。
「皆、ゲンの事大好きなんじゃないの?」
アウリスは顔を赤くしながら「いやいやそんなことは……」と顔を赤くする。エンデルは「ゲン大好き~」と子供の用に無邪気に言う。どうやらエンデルと自分らの考えてる好きは違うようである。
「やっぱり、ソゲン君は人気者だね」
セレステは場を和ませるために「あははは」と笑いながら言う。エンデルの話を聞いて複雑な気持ちになってしまったのか、心の底からは笑っていないようだった。
「そ、そうだな……」
どうすればいいんだ、この空気……何か話題は……とふと外を見るとフードを被った少女が壁伝いにフラフラと今にも倒れそうになりながら歩いているのがみえた。大丈夫か?あの娘という目で見ていたが、突如吹いた風で少女のフードが取れ顔があらわになる。
「フォンセ……!?」
その言葉にセレステはびっくりして、アウリスの見つめた方向を向いた。黒く長い髪そして幼いながらも妖艶な雰囲気を醸し出す素顔、間違いないフォンセだ……、彼女は隠れるように建物と建物間の裏通りへと入って行った。
「追いかけよう!」
「「うん!」」
アウリスはレジに銀貨を二枚を置くと「お釣りはいらない」と言い急いで出ていく。「フォンセいたの?」と二人に聞くエンデルは何もわかっていない様子ではあったが、非常事態であることは分かっていたようだ。
「どこに入って行ったの?」
「確か、ここだったはずだ……」
3人はフォンセが入って行った裏通りへと到着すると、何の躊躇もなく入って行くのだった。
そんな事が起きているのもつゆ知らず、僕とネレイスは昨日のアウリスとは違うカフェに入っていた。
このカフェは二階建てで、二階にはデッキテラスがあり王都の町を一望することができるおしゃれなカフェだった。
「はぁ、すごくスッキリしましたわ……」
「すごく良かったよ」
「それだけですの?」
「うん」
「はぁ……もっと具体的な感想聞きたかったですわ……」
不機嫌そうな顔をしてジュースに付いたストローで息を吹き込みぶくぶくとしていた。
言えない、エリーゼさんにいろいろと馴れ初めとかを聞かれまくってあまり見ていないって……。
「ソゲン?」
「はい!」
「私の事好き?」
笑顔で僕に聞くネレイス、まずいこれ好きって答えないと頭打ち抜かれるやつだ。でも好きって答えればネレイスの思うがまま……。
「まぁまだ言えるわけありませんわよね」
寂しそうな顔をするネレイス、僕は何も言わずに黙っていた。ごめんまだ答えれないんだ、もう少し考えさせてほしい。
「でも、私は誰よりも早く気持ちを伝えられただけで充分ですわ」
「なぁ、ネレイス……本当に僕で良かったのか?確かに僕は精霊の騎士だけど……」
僕はネレイスに申し訳なさそうに話した。僕なんかがネレイスに本当に釣り合う男なのか?と思ったからだ。
確かに彼女は精霊の騎士と一緒になることを望んでいたが、最初に出会った時は貴方を精霊の騎士とは認めない!だとか最悪最低ですわ!と言ってたが、まぁ最後には「まぁちょっとだけなら精霊の騎士として認めてあげてもいいですわよ?」と認めてはくれたが、どこかツンデレじみた感じだった、それがなんでこうなるんだろうか?
「ソゲン怒りますわよ?」
バン!という鈍い音を立てるくらいにネレイスは拳で机を叩いた。
「え?」
「ソゲンはもっと自分が凄いことをしてるという自信や自覚を持つべきですわ」
「レイナさんも同じようなこと言ってたな……、でもなんかそんな自覚がなくて……
僕なんかやったかな?」
「本当に自覚ないんですわね、だって貴方死にかけていたアウリスを助けてくれたじゃないですか……」
「あれは奇跡で……」
「奇跡なんかじゃない!!!あれは絶対にソゲンの実力だと私は信じてる!!」
実力か……僕もそんなことを言えるようなくらいにはなりたいな……でも今はそんなこと言える自信はない。いつかはネレイスが王都舞踏会の講師の名誉ある地位を手に入れるよりも価値のある男になりたいな。だけど今は……。
「あぁ、ありがとうな」
ただそれだけしか言えず、彼女を頭を撫でる事しかできなかった。
「ソゲン♡」
令嬢の髪を男が触るのは失礼かと思ったが、彼女はとてもご満悦のようだ。喜んでくれてよかった……とコーヒーを持ってふと下を見た時だった。見覚えのある黒い長髪の少女が何かから逃げるように走っていくのが見えた。
「あれって……フォンセ?!」
「えぇ?」
ネレイスも僕の言葉に驚き僕と同じ方向を向いた。そしてさらにその後かなり遅れてセレステ達が追いかけていった。
「おい、ネレイス僕達もフォンセを追いかけるぞ!!」
僕とネレイスはカフェから急いで出てセレステ達の後ろを追いかけた。
「ねぇ、ソゲンどこへ行ったかわかりますの?」
「多分こっちの方だと思うんだが……」
セレステ達の後ろを追いかけているはずだったが、見失ってしまった。さすがに二階建てのカフェから追いかけるのは無理があったか……。
「どうしますの!?」
「なぁ……離れてても精霊と話せるようなやつない?」
「知らないですわ!」
ネレイスは頬を膨らませてとてもご立腹の様子だった。なんかちょっと申し訳ない気分になってきた。
その頃セレステ達は何かから逃げるように走るフォンセを追いかけ王都東門を抜けて人気のない草原へとやってきた。フォンセは息を切らして立ち止まる。
「フォンセ!王都にまで来て何を企んでいるんだ!?」
霊服になった3人の精霊が武器を構えて取り囲むように立ちはだかる。
「何?……私疲れてるんだけど……?」
「問答無用!!はぁぁぁぁ!!!!」
3人はフォンセに一斉に襲い掛かる、だがその刹那上空から禍々しい光がフォンセに降り注ぎ、その衝撃で3人は吹き飛ばされてしまう。
「おい、今のってまさか……」
その光は僕らがいた王都内まで見えていた。
「行きますわよ、ソゲン!!」
僕とネレイスは光が降り注いだ場所へと急いだ。
「……」
光が晴れた後のフォンセは無言で、まるで置物ように微動だにせずその場に立ち尽くしていた。
「フォンセ……ここにいたのか……」
立ち尽くすフォンセの後ろに黒い靄が現れたかと思うと、一人の男がその場に現れる。
「ダーリン♡」
男が現れた瞬間さっきまでの様子が嘘のように男に飛びついた。
「お前が、オディオか?」
「そうか、実際に会うのは初めてだったね、僕がオディオだ。よろしくね」
律儀に万面の笑みで挨拶をする深緑のぼさぼさの髪の青年のような男、そう彼こそがオディオだ。
「貴方が、あの禍々しい光で罪のない種族を……」
「エンデルのゴードンを……」
2人はオディオに向かって憎しみの表情を向けた、その表情を向けられた男は「フハハハ」と大声で不敵に笑い出した。
「いいねぇ……その顔……僕を早く殺したいという憎悪……僕の大好物だよ……」
「なんなんだ…お前は……」
気持ち悪い……気持ち悪すぎる……なんなんだこいつはと不快感を表すアウリス、後ろにいた2人も同じ気持ちだっただろう……
「でも、僕のディーパに対する憎悪に比べれば安い!!」
とっさに黒い掃除機のような銃から放たれる弾丸を避ける2人……素早い動きができないエンデルは拳を向けて男に衝撃波を飛ばし弾を撃ち返した。だがそれはフォンセの黒い翼によって塞がれてしまう。
「ダーリンをいじめないでくれる?」
「まずい!」
黒い腕をエンデルを伸ばし握りつぶすように抑えつけた。だがそれはエンデルには効かなかった「んがぁぁぁ!!」という雄たけびとともにエンデルは握られた手を取り払った。
「さすがは地の精霊、凄まじい力だ……」
「痛いよ~、ダーリン……」と抱き着くフォンセに向かって狼のように睨みつけるエンデルは「許さない!絶対に!」と闘志を燃やしていた。
「おっと……、メインディッシュの登場か……」
「皆!大丈夫か!?」
颯爽と現れる僕とネレイスに3人は安どの表情を浮かべ全員口々に「大丈夫」と答えた。
「ゲン、アイツがオディオ、ゴードンをひどい目に会わせた犯人!」
指を指した先に不敵に白い歯を見せて笑うオディオがいた、ようやく現れたかというような表情をしている。
「お前が、全ての元凶か……」
「ははは……」
「お前がフォンセを操り、魔物を操り……罪のない民衆を!!!許さないぞ!!
ここでお前を倒して、全て終わらせてやる!!」
拳を握りしめオディオを鬼のような形相で睨みつける、だがオディオは僕に睨みつけられても微動だにせず、ただ不敵に笑っているだけだった。
「何を笑っているんだ……お前!!!」
「ふふふ……、昔のディーパと一緒だなと……」
「どういうことだ……?」
「今の君には関係のない事だよ、君はここで僕が殺すのだからねぇ……」
そういって取り出したのは僕と同じ形をしたドライバーだった。
「僕と同じドライバー!?なんでお前が!?」
4人の精霊も同じように男が持つドライバーに注目していた、間違いなく4人も僕と同じ気持ちだっただろう。
「ダーリン、いつでもいいよ」
フォンセの合図とともにドライバーを腰に装着する。
≪spiritdriver!! start up!!≫
フォンセのイラストが描かれたカードを装填すると、僕のドライバーとは別の少女の電子音声が流れる。
「変身……」
≪PreparationDarkness!!≫
≪ether visit in splendor≫
ベルトの音声とともに黒い旋風が巻き起こると、男の体を黒いアンダースーツが包み込み黒い禍々しい鎧が装着され、マスクには悪魔のようなパーツがつき目はまるで漆黒の闇のように黒く染まり背中には黒いマントが靡いた。
「なんだよ……あれ……」
「これがもう一人の闇の精霊の騎士、エーテル・ダークネスだ!!」
凄まじい気迫が僕の体を貫いた。これは男が全身から発している強い憎悪と言ったらいいのか?いやそんなものでは納まりきらないほどだ……ダメだ目の前に立っているだけで恐怖で押しつぶされそうだ。
だけど……。
「エンデル行くぞ!」
「うん、ゲン!いこう!」
≪driver starting≫
白いドライバーを取り出し、腰に装着する。
「変身!」
≪Geo!metamorphosis!≫
ベルトの音声ともにエンデルが粒子化し、僕の体を白いアンダースーツが包み込みその上から黄色い頑丈な鎧が上半身を包み込み、象を思わせるようなパーツが目は黄色く光り輝きジオフォームに変身する。
「行くぞ!皆!!」
「「「了解!!!」」」
「来い!ディーパ!」
こうしてディーパvsエーテル二人の精霊の騎士による戦いの火ぶたが切って落とされた。