「何!?ソゲン君が行方不明!!??」
レイナの叫び声が騎士団本部の建物内を木霊した。
「はい……本日の朝に青い髪の女の子と一緒に出たきり、帰ってきていないそうで……」
エリーゼは昨日、明日の襲撃の作戦会議のためソゲンがいる宿屋に向かったのだが、ソゲンの姿はなかった馬車や荷物はそのままだったので出かけているのだろうと思い待つことにした、店主によると普段なら日が暮れるまでには帰ってくるらしいのだが、その日は朝まで待てどもが帰ってこず。オディオの事もあるのでまさかと思い、町中、王都外の草原も探したが見つからなかった。その後騎士団へ来る途中エリーゼは不穏の噂を聞いていた。
「それと、昨日のお昼頃王都外で変な光を見たという目撃情報が多数、寄せられてました」
「変な光……??まさか……!!」
間違いない呪縛の光だ、昨日のお昼頃はカフェで呑気にご飯を食べていて気付いていなかった。お昼ごろはソゲンが出かけていた時間……まさか……!!今ソゲンが行方不明ということは……、レイナの脳内に最悪のシナリオが浮かぶ。
いやそんなはずは……。
「すみません、私も宿で寝てしまっていたので……もし気づいていれば……」
「ううん、別に気にする必要はないわ、私もカフェでのんびりしてたんだし」
まだ決めつけるのは早いが、もし気づいていれば彼を助けられたかもしれない……後悔先に立たず……とはこの事である。
「まずいわね……、ソゲン君がいないと数十万の魔物の群れを食い止めきれない……
王都の兵って確かどれくらいいたっけけ?」
「おそらく、1万くらいかと……」
ダメだ守り切れない……王都にいる兵はその辺の冒険者よりも相当な訓練を積んでいて戦闘面では問題はない、だが問題は数だ例え襲ってくる魔物が雑魚であっても数でこられて太刀打ちできない。しかも普通の魔物ではなく、呪縛によって操られ狂暴化した魔物達だ。それを実際に体験したレイナは王都にいる誰よりもその恐ろしさを知っている。どうすればいい……?
「くそ、アイツ何してるのよ……」
「どうした?朝から騒がしいが……」
入ってきたのは騎士団長のアルべリクだった、レイナは「それが……」と前置きしエリーゼから聞いた事を全て話した。
「ソゲンが行方不明だと……?まさか……オディオに……」
アルべリクは焦った表情をする、無理はないだろう朝から悪いニュースを叩きつけられたのだから。
「可能性はありますが、まだ気を付けるのは早いかと」
「そうです、まだ遺体も見つかっていないんですよ!?」
「そうだな……とにかくレイナ王城へ兵の援軍要請を!」
「了解しました」
レイナは扉を開けて王城へ向かって一目散に走り出した。
「エリーゼ、ギルド協会にも連絡をしろ!義勇兵の募集張り紙をしろと!!」
「えぇ!?でもそんなことをしたら……」
そう魔物が数十万押し寄せることは王都の民衆はまことしやかにささやかれる噂程度であまり知られていなのである、しかも唐突に明日来ると言われればパニックになること間違いなしである。
「やむを得ない……!背に腹は代えられない!!」
「わかりました……」
エリーゼも急いでギルドハウスに向かって走り去って行った。
「はぁ……、面倒なことをしてくれる……」
「何!?ソゲンが行方不明!?」
「昨日から宿に帰ってないみたい……」
その話はレグナーやミレイユにも伝わっていた。自分たちの住んでいる家からは騎士団本部が近い。なので窓からは本部の様子が確認できる。慌ただしく本部を出入りする王城の兵の様子を窓から見ていた。
「騎士団のやつらは相当焦ってそうだな……」
「どうやら王城の兵では足りないから、ギルド協会で義勇兵も募集するみたいよ……
でも大丈夫かしら?急にそんなことが王都中に広まったら……」
「とんでもないことになるな……」
レグナーは聖剣を腰に携えると部屋を出て行こうとする。
「どこに行くの?」
「ソゲンを探しに行く……」
「あてはあるの!?」
「ない……、だけどそう遠くには行っていないはずだ」
レグナーは急ごうとすると、ミレイユはレグナーの服を引っ張り「私も行くわ」と引き留める。
「私だって、ソゲン君に助けられた身なのよ?私にも手伝わせて……」
そう彼女もオークに捕まっていたところをソゲンによって助けられた身だ、次に会った時は絶対に恩返しするんだと心に秘めていたが、ソゲンが行方不明で安否がわからない今、それを果たす滅多にないチャンスである。
「わかった、一緒に行こう」
二人は家を出て、ソゲン捜索の旅に出たのだった。
オディオは自らのアジトへ戻るとソファに吸い込まれるように倒れ込む顔に太いミミズのよう浮き上がっていた血管はもうなくなってはいたが、満身創痍の状態だった。
「大丈夫?ダーリン?」
「大丈夫だ……こんな痛みなんてことはない!!」
オディオは勢いよく立ち上がるとクリーナーソードガンを取りだしフォンセに手渡した。
「いいのー?ダーリンー?」
「あぁ、構わないよ」
フォンセは大喜びでトラストモードへ変形させると、大きく口を開けノズルに口を付けた。
「いただきまーす♡」
フォンセの体内に三色の粒子が入っていく、フォンセは「あぁ……満たされていくー」と言いながら幸せな表情だ。しばらくするとフォンセの体が禍々しく輝きだした。未成熟だった体は大人の成熟した体となる、はち切れぬばかりの豊満な胸、そして大きく張りのあるお尻、細く引き締まったウェスト、妖艶だがまだ少し幼さが残った顔へと変貌した。これこそがフォンセの真の姿である。
「やったー!!ようやく元に戻れたねー、3人だけだったからどうなるかと思ってたけど」
甘い声だがどこか幼さが残る声で喋りながらオディオの隣に座るフォンセ、そして
「元に戻してくれたお礼」と耳元でささやきながら手をかざした。するとみるみるうちに
男の体にたまっていたダメージが回復していく。
「ありがとう、フォンセ」
そう言いながらフォンセを押し倒そうと「だーめ」と言いながらオディオを制止した。
「お楽しみはー、ディーパを倒してから、だよ?♡」
「そうだな……」
男は残念そうな顔をしていた、その顔を見てフォンセは男の体を撫でるようにして「勝てるよね?」と囁いた。
「3人の精霊を失った今、やつに俺に勝つすべはない……。本当は4人全員を捕まえて完膚なきままに叩き潰したかったが……」
「まぁ、もうダーリンは勝ったも同然だよねー♡あいつ尻尾を巻いて逃げちゃったし」
「あぁ、やつは完全に戦意を喪失している……だが王都を襲えば奴は必ず戻ってくる!!
今度は逃がさない……!!」
「キャー!!ダーリンかっこいい!!」
「ふふ…フハハハハハ!!!」
フォンセにおだてられ、少し嬉しくなったのかオディオの高笑いがいつまでも響いていた。
無我夢中で逃げていた。ただひたすらにどこまでも、今どこにいるかもわからない……。
いや別にどこだっていい……あいつから逃げられるならどこまでも。
(ソゲン君?本当にどうしちゃったの?)
「はぁはぁ……あぁ……ああああ!!!!!!」
脳内に女の子が響いていたが、誰だっけこの娘……?ドスンっと鈍い音を立てて吹き飛ばされた何かにぶつかった?ふと前をみるとそこには……。
「よぉ……」
「うわああああああああああああ!!!!!!!」
そこにはさっき逃げてきたはずのエーテルに変身したオディオが立っていた。なんでこんなところに!!!
「あぁぁ!!!くるな!!!くるなぁ!!!!!」
(ソゲン君!!違うって大きな木だよ?)
そう怯えていた正体は草原の真ん中に立つ大きな木だったのだ、日も登らずまだ少し暗かったのでその影がエーテルに見えたという訳である。だがそんなことはつゆ知らずまるで生まれたばかりの赤子のようにのたうち回っていた。
セレステはどうすればいいかと考えていた。そうだまずはドライバーを脱着しないと……左腕に全神経を集中させる、いつもは簡単に動くが緊張や恐怖で体が硬くなっていたのかなかなか動かなかった。
(ふんぬーーーー!!!!!!)
ようやくドライバーに届いた、後は外すだけ……左右にのたうち回る力を利用し引きちぎるようにドライバーを脱着させることに成功する。赤い粒子が人型を形成するとセレステが隣に現れた。
「ソゲン君、落ち着いて!!」
「うわああああああ!!!!来るなあ!!!来るなああ!!!!!」
ダメだ、今度はセレステをエーテルと勘違いしてしまったようだ。逃げようと立ち上がる彼にセレステは覆いかぶさるように押し倒した。
「離せ!!離せぇ!!!!!」
「ソゲン君!!私だよ!!セレステだよ!!わからないの!?」
体の上に乗り優しく顔を触って呼びかけてもダメ、こんな時ってどうすればいいんだっけ……?とても怯えた顔をして見つめている、早く安心させてあげないと。
「あーもう!!どうすればいいかわかんないよーー!!」
セレステは頭を抱えながら、誰もいない草原で我慢できず叫んだ。自分も泣きそうになっていた。助けてあげたいのに何もできない自分が悔しくて仕方がないのだ。そんな時だった。セレステの服を手で引っ張ているのに気付く。
「た……たすけ……やだ……やだよ……僕を必要だって言ってよ……」
そこには子供の用に今にも泣きそうになりながらこちらを見つめる彼の顔があった。そうか……ソゲン君は今誰かに必要だって言ってほしいんだ……じゃあ今してあげる事は……。
「ソゲン君、私がいるよ……、だからもう怯える必要はない……」
優しく抱きしめるセレステ、だけどまだ体が震えていて怯えているようだ。こうなれば……セレステは顔を至近距離で近づける。本当にしちゃっていいのかな……?いやここを逃してしまえば、もうチャンスはないかもしれない。意を決してセレステは自分の唇を重ねた。
気付くと僕はセレステと唇を重ねていた、え?何で僕セレステとキスをしてるの??
しかもガッチリと僕の体の上に乗って抱きしめられてるし……。
「んー!!んー!!」
僕はセレステの背中を優しく叩く。
「ソゲン君……?」
「セレステ……」
顔を上げたセレステは、僕の顔を見るなり目に涙を浮かべて「良かった、良かったよー!!」僕の胸に顔をうずめて泣き出してしまう。また泣かせてしまったと申し訳ない気持ちになりながらセレステの頭を優しく撫でた。
しばらくして落ち着いたセレステと大きな木の下で並ぶように座っていた。
「ごめん……、心配をかけた」
「ううん、大丈夫だよ」
すごく話しづらい……、情けない姿をさらしてしまったというのもあるが、何よりも……。
「後、ご褒美はもらったから気にしなくて大丈夫だからね!」
とても顔を赤らめながら、そういうセレステ。セレステさんそれ実は……。
「あ……あのさ……、実はファーストキスで……」
「えぇぇ!!!!」
驚いた表情をし飛び上がる彼女を見て、自然と笑みがこぼれてきていた。
「そんな驚くことはないと思うけど、大げさだなぁ」
「ご、ごめんびっくりして……、でも嬉しい……ソゲン君ファーストキス奪っちゃった……」
まさかこんな形でファーストキスをしてしまうとは……、初めて告白してきたネレイスどう思うだろうなぁ……。
「あ、そうだこの事皆には内緒ね?」
セレステはそう言って、中指を唇の前に立ていたずらっぽく笑ったのを見て、僕は「わかった」と言って頷いた。
「ソゲン君……王都に戻ろう……?」
セレステそう言って手を指しのべた時だった、僕の頭の中にまたあの光景が浮かぶ。
そしてオディオのあの言葉も……。
「うっ……痛い……」
「ソゲン君!?」
頭を抱え、苦しむ僕にセレステが寄り添う、「大丈夫、大丈夫だからね……」と僕に優しく何度も訴えかけていた。
けれど……。
「ごめん……今の状態じゃ……」
そう言いかけた僕はそのまま地面にバタンと音を立てて倒れこんでしまうのだった。