仮面ライダーディーパ   作:瓜生史郎

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王都防衛編chapter⑨

 気が付くと、見知らぬ天井が見えた。

 ログハウスのような木だけでできた屋根だ。どこかの小屋だろうか?

 

「気が付いた?」

 隣には椅子に座って僕の手を握るセレステがいた。

 

「ここは……?」

 

「ここはさっきいたところから、ちょっと行ったところにあったログハウスだよ。多分誰かの別荘だと思うんだけど、鍵開いてたから勝手に入っちゃった」

 そう言って、いたずらっぽく小さく舌を出して笑うセレステ。勝手に使って良いんだろうか?

 

「ごめん、また迷惑をかけてしまったな……」

 

「ううん、気にしないで、迷惑だなんて思ってないから、ね?」

 

「そうか……」

 そのまま無言の時間が続いた、何を話せば良いんだろう?いやそれは向こうも同じか……、王都へ戻りたいのは僕も同じ、だけど中々踏み出せないでいたのだ。戻ってまたあの姿を見れば封印していたトラウマが再発してさっきと同じようになってしまう。

 でも一刻も早く戻らなければ王都が……

 

「ねぇ、ソゲン君……とりあえず今は王都の事は忘れよ?」

 優しく僕の頬を両方の腕で包み込むように持つ、なんでだろう?これすごく安心する。

彼女が優しい聖母のように思えてきた。

 

「あぁ、そうだな……」

 そんな優しいセレステに本当いけないはずなのに……思わずうむと言わされてしまった。

恐るべしセレステ。

 

 

 

 その頃王都では、明日の襲撃に備えて騎士団本部で会議が開かれていた。

 出席者は団長のアルべリク、そして副団長のレイナ、そして団員エリーゼ、レグナーと

王城兵士隊長と国王に代わって第二王女であるオリヴィアが出席していた。

 

「一応王城兵士隊1万は確保できました、義勇兵はどれくらいになりそうでしょうか?」

 

「それが……まだ150人程しか……」

 

「たったの150!?」

 兵士隊長は落胆の声を漏らした、それもそうだろう襲ってくる魔物数十万に対してこちらはたったの1万ちょっとで迎え撃つことになるのだから。

 

「ちゃんと募集したんですかぁ?」

 

「はい、ギルド協会に義勇兵を募る張り紙だしてほしいと連絡をしたのですが、噂が広がりすぎてしまい、我先にと王都から脱出する冒険者が続出し……」

 

「もっと前もって準備した方が良かったんじゃないですか?ディーパに頼りすぎるあまり

対応が不十分なのでは?しかも肝心のディーパは行方不明って……」

 

「はい……おっしゃる通りです、すいません」

 エリーゼはオリヴィエの言葉に何も反論できず、ただただ頷くだけった。

 

「レイナ副団長もぉ、もっと教育をしてくださいね?」

 

「は、はい……」

 

「その辺にしてください、オリヴィア様……ここは会議の場です」

 アルべリクはオリヴィエにそう言い聞かせると機嫌が良くなったのか「はーい」と愛嬌いっぱいの返事をする。

 

「とにかく、王都の住民の避難を優先させてください、絶対に王都を守り抜くのです!」

 

 

 

 しばらくして会議が終わり、レグナーは「終わったー」と言いながら背伸びをした。

 

「お疲れ様」

 

「レイナか、お疲れー」

 

「一緒に帰ろー弱虫レグナ~」

 そういうとレイナはまるでしおれた花のようにレグナーに倒れ込んだ。

 

「おいやめろ!くっつくな!」

 レグナーはレイナを離そうとすると、「冗談だってー」といたずらっぽく笑って廊下は歩き始めた。その様子を見て「全く……」とため息を付きながらレイナの後を追いかける。

 しばらく二人は無言で並んで廊下を歩いていた。外へ出ようとすると、「ソゲン君いた?」とレイナは口を開いた。

 

「ダメだ、ミレイユと結構遠くまで探しに行ったけど、どこにもいねぇ」

 

「そっか……」

 そんなことを話していると、後ろから「レイナさん?邪魔です」という穏やかな声が聞こえる。振り向くとオリヴィエが不機嫌な顔をしながらアルべリクと立っていた。

 

「あぁ……申し訳ありません!!」

 レイナとレグナーは横に避け、跪礼をすると、オリヴィエはレイナの顔を睨みつけながらアルべリクを引き連れ王城へとゆっくり歩いて行った。

 

「アイツ、本当に好きになれないぜ……てかなんで第二王女なんだよ、普通は第一王女が来るんじゃないのか?」

 

「まぁ、普通はね……」

 

「アルべリクがついているといい、怪しい匂いがぷんぷんするぜ」

 

「はぁ本当にレグナー、騎士団長の事嫌いよね」

 

「別に嫌いとかそう言うのじゃなくて……、ただ気に入らねぇだけだよ

騎士団長も本当はレイナがなるはずだったんだろ?アルべリクに奪われて悔しくないのかよ……」

 

「別に気にしてないから……」

 レイナは曇った表情だった、さっきまでは晴れ渡るように笑顔だったのに。

 

「本当か?」

 

「本当だって!!」

 突然顔を近づけたレグナーにびっくりしたレイナは慌てて無理やり笑顔を作った。その後レイナは眩く光る大きな満月を見ながら呟く。

 

「それよりさ、ソゲン君大丈夫かな?」

 

「大丈夫、アイツは絶対生きてる」

 

「明日はきっと王都に戻って来てくれるよね?」

 

「絶対に戻ってくる!アイツは簡単に死ぬような奴じゃねーよ

 4人の精霊もいるんだし、絶対戻ってくるに違いない!!」

 二人は信じていた、彼はきっとこの広く続く星空のどこかできっと生きていると……。

 

 

 

 この星空の向こうで僕を待っている人がどれくらいいるんだろう?でも今の僕にその期待に答える事は出来なさそうだ。目の前にいるオディオを倒せば王都を救えたはずなのにたった一つの言葉で僕はその場から逃げてしまった。トラウマだったとはあの場から逃げてしまった自分が本当に情けない。

 本当はもう一度戻って王都を救いたい……でも……オディオの前に立てばまたあのトラウマが蘇って逃げてしまうだろう……。ベッドに横たわりながら僕はずっと夜空を眺めていた。

 

「ソゲン君、おかゆできたよ?」

 

「ありがとう」

 セレステがお盆に載せてもってきたおかゆを受け取ろうとするが、ふと思った。あれ?これを作る材料なんてどこにあったんだ?

 

「なぁ、これどうやって作ったんだ?」

 

「えっと……、ここにあったもの使ちゃった」

 ここの別荘の持ち主の人本当にごめんなさい……。

 

「まぁいいや、ありがとう」

 僕は今度こそ受け取ろうとお盆を持つとセレステ離そうとしなかった。引っ張ろうとするもなかなかセレステは手を離さない。

 

「あの……手を離してほしいんだけど」

 

「私が食べさせてあげるから、お盆を離して」

 

「ちょ……いいって!!自分で食べれるから!」

 

「ダメ、今日はソゲン君は絶対体を動かしちゃダメ!」

 そういってセレステは僕からお盆をひったくると、鍋の蓋を開け木のスプーンでおかゆをすくうと、スプーンにのったおかゆをふーふーと息を吹きかけ冷まして僕に「あーん」と言いながらおかゆを乗せたスプーンを差し出した。

 

「いや、だから自分で……」

 僕がそう言うとセレステは体から赤いオーラを出し、不機嫌な顔をし「あーん」と声を荒げておかゆを近づけた。ダメだこのまま言う事を聞かないと別荘が燃えてしまいそうである。

 

「あーん……」

 口を開けるとおかゆが入ったスプーンが口に入れられた。するとまろやかな味わいが口いっぱいに広がる。お米のやわらかさと、ほんのりと感じる塩の風味が、心地よい調和を奏でていた。

 

「おいしい?」

 

「うん、すごくおいしいよ」

 

「嬉しい」

 万年の笑みを浮かべるセレステ、赤いオーラも消えとても機嫌が良くなったようだ。

 

「もっとあるから、たくさん食べてね!」

 その後はなくなるまでセレステに食べさせてもらい、食べ終わった後はハンカチで口を拭いてもらったりもした。

 本当に介護されてる人みたいな気持ちだった。

 

 このまま、セレステと二人でここで暮らすのも悪くないのかもしれない……、いやいや何を考えているんだ。でも……王都には戻りたくない……精霊の騎士なんていう重い十字架ももう嫌だ。

 そんなことを思う程に僕の精神はずたずたに引き裂かれていたのだ。

 

もう……ディーパになんてなりたくない

 

 このまま何事もなく平和に暮らしたい、戦いたくない、もう元の世界に帰りたい……

僕の目からはいつの間にか冷たいものが頬を伝っていた。その刹那だった、突然後ろから

セレステに優しく包み込むように抱きしめれたのだ。

 

「ソゲン君、辛かったんだねもう大丈夫だよ」

 いつもは突然布団に入ってきて抱きしめられると動揺してしまうのに、この時は違った。こんな自分を受け入れてくれる彼女がとても嬉しかったのだ。僕は振り向いて彼女をみる。

 聖母みたいだった。なんでも受け入れてくれそうなくらい優しい顔をしていた。

 

「ごめん!」

 一言そういうと僕は彼女の大きな胸の間に顔をうずめてしまう。

 

「え?えぇ!!」

 凄く動揺していた、多分今のセレステは顔を真っ赤にして頭から湯気を出しているだろう。

 

「ソゲン君……これすごく恥ずかしいんだけど……」

 でも今の僕はこうしたかったのだ、「ねぇ?もういいかな……?」と言ってるがずっとこうしていたい気分だった。すごく暖かくて安心する……そんなことを思っていると、目から涙が止まらなく……。

 

「ソゲン君?」

 

「本当はさ……、すごく怖かったんだよ」

 

「え?」

 

「こんな僕がさ……ディーパでいいのかってさ……最初は正義のヒーローになれるとか

意気込んで調子に乗って……いざディーパになったら……やれ精霊の騎士や……、先代のディーパがいるなんて……でっかいことになってきて……、プレッシャーって言うのかな?そんなのが重くのしかかってくるんだよ……本当に皆の期待に答えられてるのかなって……」

 

「大丈夫だよ……ソゲン君は、皆の期待に答えられてるよ」

 

「でもやっぱり怖いんだよ……負けられない……守らなきゃいけない……失敗したら皆から憎まれ口が言われるんじゃないかって……それがすごく怖くて、怖くて……」

 

「うんうん……」

 ダメだ……聖母のように優しいセレステにもう自分が抑えきれない……

 

「騎士団にも本当に入りたくなかったんだよ……でも守りたい!王都を守ってやるんだって!!自分に自信がついてたから……いざ!!って思ったら……アイツに打ち砕かれた……本当に情けない……おめおめとこんなところまで逃げて……み…んなに合わせる顔がないよ……」

 溢れ出る涙をもう堪えきれなかった、セレステの服は僕の涙で濡れてしまっているだろう。

 でも彼女は嫌な顔をせずずっとぎゅーっと抱きしめてくれていた。

 

「ソゲン君、自分を追い詰めすぎてない……?」

 

「え?」

 僕は顔を上げてセレステを見つめた。

 

「いい?ソゲン君は誰かの背中を追いすぎなんだと思うよ、誰かの背中を追うと真似をするから、自分の首を絞めてる……」

 

「誰かの背中を……」

 

「そう、ソゲン君はソゲン君の道をいけばいい、ソゲン君だけのディーパを全うすればいいの!」

 セレステのその言葉に胸の中でつかえていたものが取れた気がした。

 そういえばトラウマを封印できたのはなんでだろう?と今まで思っていたがようやく今答えが分かってきた。馬鹿だなぁ……、なんで今まで自分で自分の首を絞める真似をしてたんだろう?そんなことを思っていたら自然と笑いが込み上げてきた。

 

「もう、大丈夫みたいだね」

 

「あぁ……あり…がとう……」

 僕は泣き疲れたのかそのまま意識を失ってしまう。

 

 

 気が付くと、朝日が僕の顔を照らしていた。どうやらあのままセレステの胸の中で寝てしまったらしい。

 それにしても昨夜の事思い出したらちょっと恥ずかしくなってきたな……セレステに甘えん坊だとか変な男の人なんて思われていないだろうか?まぁ別にいいや……僕はそーっと腕をほどいて起き上がった。

 それにしても可愛い寝顔だ……ありがとうセレステ……。

 

「う……、うーん……おはようソゲン君……。」

 

「おはよう、セレステ」

 

「ソゲン君……なんかすごく前より顔がきりっとしてるね……寝ぼけてるからかな?」

 そう言われて僕は鏡を見ると、たしかに自分で言うのもなんだが少し勇ましくなってるような気がする。これも全部セレステのおかげだな。

 

「ありがとうセレステ、お前のおかげで全部すっきりしたよ」

 

「良かった……私ソゲン君の事救えて、これでイニシオ村の恩は返せたかな?」

 

「恩?」

 僕が首をかしげると、「忘れたの?」と機嫌悪く言いながら頬を膨らませる。

 

「ソゲン君、私が精霊だからお母さんに捨てられたって思ってて落ち込んでた時に、ソゲン君は過去の事を考えるより今を考えて生きようって言ってくれたよね?」

 

「あー、そういえば言ったなー」

 ようやく思い出すと、あの時にとっさにセレステを抱きしめた事を思い出して恥ずかしくなってしまう。

 

「だから、いつか私がソゲンを救う番だって思ってたの、それができてすごく嬉しいな」

 あの時の事僕はそんなにいい事言ったつもりはなかったが、彼女にとっては心に響く言葉だったんだなと改めて思う。まさかあの時と逆の事が今起こるなんてな……、彼女の嬉しそうな顔を見て「ありがとう」と言いながら頭を撫でる。そして僕は「よしっ」と気合を入れて立ち上がりドアを開けて外に出た。

 

 

「どうしたの?ソゲン君……?」

 

「王都にいくぞ、セレステ」

 そういうとセレステは満ち足りた様子を見せると、ベッドから起き上がり僕の隣に並び立った。

 そしてドライバーを腰に装着すると、深呼吸をし決意を込めて叫ぶ。

 

「変身!」

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