太陽が赤く燃える夕暮れ時、決戦の時は近づいていた。王都入口の門の前には王都の紋章が書かれた旗を持った歩兵隊と騎馬隊が並んでおり、その隣には割れこそはと立ち上がった冒険者がそれぞれその時を待っていた。
その様子を少し離れた小高い丘の上からオディオとフォンセが眺めていた。
「やっぱり、ディーパ来なかったねー、まぁ仕方ないかーだってどうせもうアイツの精神はダーリンの言葉でもうボロボロだもんね」
オディオは鼻で笑うようなそぶりを見せ、「どうだかな」と一言だけ言いドライバーを腰に装着する。
≪spiritdriver!! start up!!≫
「いくぞ、フォンセ」
「うん、いよいよ王都滅亡の時だねー!」
「変身!」
≪ether visit in splendor≫
フォンセのカードをセットし、オディオはエーテル・ダークネスへと姿を変えた。そしてエーテルは天に手をかざし叫んだ。
「Aeternus carcer, te constringo……」
空に禍々しい暗雲が立ち込めたかと思うと、当たりの森や草原、荒野など至る所に呪縛の光が差し込んだ。
その様子は王都入口の門にいた騎士団にも見えていた。
「おいおい……まだ陽も沈んでいないぞ……?」
レグナー達がそう焦るのも無理はない、密書に描いていたの満月の出る頃だった。今はどうだまだ陽も沈んでいない日没前だ。それを見越せていなかった彼らはまだ住民の避難が完了していなかったのだ。
「避難を早めるように指示してください!」
レイナは王城の兵に命令する。まずいこのままでは……!!するとこちらに向かってもの凄いスピードで煙を上げて向かってくる大勢の黒い物体が見えた。
「来ました!魔物群れです!」
エリーゼは望遠鏡を覗きそう叫んだ。それを聞いた3人の聖剣使い達と後ろにいた王城の兵達もそれぞれ武器を構える。その後にエリーゼも自分の武器を構える。
「行くぞ!!」
アルべリク合図をすると3人は「はい!」と言い、一斉に魔物の群れに突撃していく。それを見た兵達も隊長の「突撃ー!」という合図とともに魔物の群れに襲い掛かった。
剣で斬り裂く者、魔法で蹴散らす者、そして様々な剣以外の武器で魔物を蹴散らす者様々な戦闘スタイルで殲滅していく、そしてその後ろには補助魔法でサポートする者もいた。後方支援する魔法使いの中には、ミレイユの姿もあった。
「くそ……やっぱりなかなか減らないな……」
かなりの数を倒したはずだが、一向に減る気配がない……というか増えているような感じもある。
「はぁぁぁぁぁ!!イルミネイティング・アポカリプス!!」
光り輝く剣を円を描くように切り裂くとその周辺にいた、魔物は跡形もなく消えた。それを見たレグナーもその手があったかと感心すると、自分も聖剣グラムに向かって詠唱を始める。
「闇より来たりて、光を纏い、邪悪を断ち切る者よ、我が剣グラムにその力を授けよ!
くらえ!聖なる閃光 グランディオーソ・ディーヴァイン・バースト!」
輝く剣を思いっきり地面に向かってを振りかざすと、剣の刃先から出た輝く衝撃波が
地面をえぐりながら魔物達を襲いはるか先まで殲滅する。
「エリーゼ、魔物数は減ったか?」
アルべリクはデュランダルで魔物達を切り裂きながら隣にいたエリーゼに聞く。
「ダメです……、減ってるどころか増えています!!」
「なにっ?!」
予想はしていたが最悪の状況である。
レグナーとレイナの二人が必殺技を打ってかなりの数を減らしていたと思っていたが、まったく減っておらず、ましてやこちらに向かってくる魔物群れもまだいるというのだ。しかし悪夢はそれだけでは終わらなかった。
「騎士団長!」
一人の兵士がこちらへ向かって慌てて走ってきた、嫌な予感がする。
「魔物の群れがが王都へと流れ込んでいます!!」
「なんだと!?」
嫌な予感は的中してしまった、このままでは……。
「私、王都への中へ行ってきます!!」
「頼む!!」
王都へ向かおうとするが、魔物がたくさんいてなかなか前へ進めない……私も出すしかないか……剣にエネルギーを集中させ、詠唱する。
「闇の深淵より響く力、光に包まれし聖なる剣、エッケザックスよ。邪悪を断ち切り、未 来を照らす力を示すがいい!我が命と魂を込め、聖なる一撃となれ。聖なる剣、エッケザックスの力を解き放ち、必滅の光となれ!壮絶なる一撃、ディヴァイン・エッジ・エクスピアリア!」
二本の剣をまるで大木のように伸びた巨大な刀身を一気に魔物に向けて振り下ろした。振り下ろされた先にいた魔物は一瞬にして打ち砕かれた。
エリーゼは魔物が居なくなったことを確認すると王都へと一直線に走った。
その情報はレイナとレグナーにも伝わっていた。
「住民の避難は終わってるの!?」
「おそらくまだかと……」
まずいこのままだと王都の住民が魔物に襲われて住民が負傷してしまう。現に魔物の群れに襲われ負傷した兵士もいる。
ダメだそんなことを考えていると集中ができない……!!
「おい!レイナ!!ここは俺に任せろ!!お前は王都へいけ!!」
「でも!!」
「俺の事は気にするな!!」
レグナーは笑顔でサムズアップをする、泣き虫レグナーのくせにこんな時に役に立つな……。
「わかった!絶対に死ぬんじゃないわよ!!」
「バーカ!!こんな雑魚相手に死ねるかよ!!」
そんな冗談をお互いに交わしながらレイナは王都へと向かった。
王都に入るとそこに広がっていたのは魔物によって傷つけられた街だった。市街地は無慈悲なまでに破壊され、建物は炎上し、人々は命の危険と戦わねばならない過酷な状況に置かれましたあんなに綺麗だったのに……一瞬にして壊されてしまった。
目を逸らしたくなる現実である。
「レイナ副団長!」
「エリーゼ!」
現れたのは同じく王都へ入ってきたエリーゼだった。「レイナ団長も来たんですね」とほっと一息ついた。
「住民の避難は完了した?」
「いえ……まだお年寄りと子供が……」
周りを見ると兵士たちが体の不自由なお年寄りはを運んだり、子供の手を繋いで避難所へ連れていったりして兵士の姿があった。
「なんとか魔物の侵入は最小限に抑えられましたが……どうなることやら……」
「そうね……」
二人は住民の避難をしようとした時だった、また一人の兵士が顔面を蒼白にしながら走ってきた。
「今度はどうしたの……?」
「それが……王都の城壁が破壊されました!」
あぁ……もう悪夢を見ているみたいだ……まさか難攻不落と言われた王都の城壁が壊されてしまうなんて……、目の前には魔物群れががこちらへと向かって来ていた。
「覚悟を決めるしかないですね、これは」
二人は剣を構える、その後ろでは住民が大勢の魔物群れに驚き、恐怖で悲鳴を上げていた。
それだけではない……王都の兵士も「もう王都はおしまいだ」と腰を抜かしながら逃げる者も……。
王都からの悲鳴はエーテルの元にも聞こえていた。
「ははは!!!もうすぐ王都が壊滅する!ディーパが作り出した平和が壊滅する!!
あー至福だー!!」
エーテルのマスクの中は万年の笑みのオディオがいた。後はディーパさえくれば……
ディーパさえ殺せば……。
「はぁ!!!」
「やぁ!!」
二人は向かってくる魔物を次々と聖剣で薙ぎ払う、王都にいた兵士も後方から弓で応戦したり、勇敢な者は槍で突撃する者もいた。
だが数は増えるばかり……レイナとエリーゼと数百人の兵士だけで対応するのは無理があった。
「も……もう駄目だあ!!!」
一人、また一人と王都から逃げる兵士達、臆病者め……王都を守るために兵士になったんじゃないのか?と叫ぶ力もレイナにはなかった。
「神様……助けて」
祈りを天に向かって捧げる兵士の姿もあった、それを見たもう一人の兵士も人間の少女を連れながら「あぁ……、神様、精霊の騎士様……」と祈りを捧げていた。
「ねぇ、ディーパは助けに来てくれないの?」
その言葉で周りが静まり返った、そうだ王都にはディーパが来ていたじゃないか……。
でも彼は昨日から行方不明であることをここにいる子供達意外は誰も知る事実だった。兵士が「ディーパはもういないんだ」と言おうとすると
「ディーパーーー!!!助けてーーー!!!」
近くにいた亜人の小さな少年が天に向かって叫んだ、それを皮切りに兵士連れられた子供たちが同じように叫び始めた。それを聞いた冒険者たちや他の兵士も叫び始める。
「ディーパー!!!」
「お願い!ディーパ!助けに来て!」
「ディーパ、戻ってこーい!!!」
ディーパ!ディーパ!ディーパ!ディーパ!ディーパ!
「皆……」
レイナは目から涙が溢れそうになっていた、彼にもこの歓声を聞かせてあげたかった……。いやこの声は絶対に彼聞かせてあげなきゃいけない。レイナも敵を薙ぎ払ないながら叫び始める。
それは王都外にもいたレグナー達にも聞こえていた。
「おいおい、なんだ?」
「皆が……皆がソゲン君を必要としている!」
王都から聞こえるディーパコールにオディオの気持ちは高ぶっていた。
「きた、きたきたきたあああああ!!!やっぱり呼ぶしかねぇよなぁ!!!!
さぁ来い!!ディーパぁぁ!!!!!!!」
「レイナさん……!!このままだと……本当にやばいです!!」
エリーゼは真っ赤に光る水晶玉を持ち焦っていた。水晶玉が赤く光っているという事は相当危険な状態を示している。
魔物の群れは勢いが止まらない……最悪のシナリオが待っているかもしれない……。
「それでも諦めない……!!私はソゲン君がきっと戻ってくるって信じてるから!!」
「レイナ副団長……」
エリーゼが呆然とレイナを見つめていたその時だった、王都中にドラゴンの咆哮のようなものが響いた。
聞いたこともない雄たけびだった。兵士達や冒険者達は突然のドラゴンの咆哮に怖じ恐れていた。
「こんな時に……!!」
エリーゼは地面に拳をぶつけた。ドラゴンが現れてしまっては勝てない……本当に王都は終わってしまう。
皆が恐怖に包まれている中レイナも涙を流していた。あぁ本当に終わってしまうのか?だけどそれは違った。彼女は涙を流しながら笑っていたのだ。
「やっと……来てくれた……」
「え……?」
エリーゼは何が何だか分からなかった。ドラゴンの咆哮が聞こえたから来てくれた?どういうこと?そんなことを考えていると、突如として王都外から爆発音が聞こえる。
驚いて振り返ると大量の魔物が天高く舞い上がり火だるまになって燃え上がっているのが見えた。な、なに?と思い走って王都外に出るとそこにいたのは……。
「はぁぁぁぁぁ!!!!!呼ばれて正義のヒーロー参上!!!」
白いドラゴンに跨る刀をもった赤い鎧を付けたヒーローがそこにいた。
だが跨っているドラゴンは他のドラゴンとは違い馬車のような車輪が頭の当たりと尻尾の当たりの合計二つついていた。
ヒーロは後輪だけで立ち上がり高速回転をしながら移動し、周りにいた魔物を蹴散らしていた。
「ソゲンさん……」
仮面の下から聞こえた声ですぐに彼の声だとわかった。本当に生きてて良かった……。
「ソゲンさん!」
「遅刻だぞソゲン!!」
「戻って来てくれると信じていたよ、ソゲン」
エリーゼとレグナーとアルべリクは白いドラゴンに跨った僕の元へ歩み寄ってくる。
「間に合ってよかった……」
僕はほっと胸をなでおろす、少し王都の町が傷ついているがそれでもなくなっていないよりはましだ。
「ソゲン君無事で良かった!!」
僕の無事な姿を見てこちらに走って来て抱き着くレイナ、「生きてて良かったよー」と泣きじゃくっていた。
「すいません……ご心配をおかけして……」
「心配かけさせやがって……どっかで飯おごれよ!!」
レグナーはスリーパーホールドで僕の首を軽くしめた、ギブギブやめてやめてー、セレステとともに死んじゃう!
「ソゲン、君はオディオを頼む……」
「任せて下さい」
「ソゲンさん、オディオはおそらくあそこにいます」
エリーゼは数キロメートル先にみえる小高い丘を指差した、確かにあの場所の雲だけ濃い黒い色をしている。
「オディオを倒せば魔物の暴走は消える、だから頼む」
アルべリクは僕の方に手を置き頷いた。王都の行く末は僕に託すということか、前までの僕は怖気図いてただろう、だけど今は違う。僕はマシンドラゴネスのアクセルをひねり
オディオの場所へ急いだ。
「ディーパがきた!後もう少しの辛抱だ!!」
アルべリクがそう叫ぶと、ディーパの到着で兵達と冒険者が士気がが上がり大きな声で
「おーーーー!!!」と。
「行くぞ、セレステ、これが最後の戦いだ!!」
(うん!行こうソゲン君!)
ディーパの到着はオディオにも当然のように伝わっていた
「待ちくたびれたぞ……ディーパぁ……、これで俺の因縁にも決着がつくぞ……」
斯くして最終決戦の火蓋は切って落とされようとしていた。