王都での日常chapter①
ここはとある場所にある廃れた教会。周りは枯れた木が生い茂っており周りには荒れ果てた荒野が広がっていた。
荒れ果てた教会の薄気味悪さを醸し出すようにカラスの鳴き声がずっと響いている。
「まさか、オディオがやられるとはなぁ……」
チャーチチェアに行儀悪く座った、赤髪の髪のロックな雰囲気の男が剣を床に叩きながら喋る。
それを聞いた隣にいた金髪の小さな人形を持った少女が「あのディーパもやるねー」と人形に喋りかけるように言う。
「オディオは凡人だしー、精霊の力に頼らないと駄目だったのが敗因かなー」
オディオはここにいる中で唯一の何の才能もない凡人であった、それもそのはずこの教会内に入ったのが一番最後でディーパが現れたと聞いていち早く言う事も聞かず飛び出して行ったという経緯があった。オディオは所謂、奴は俺達の中で一番最弱という事である。
「エンビーヤ様も悲し……そんなわけねぇか」
目の前の玉座には白い所々破れたドレスを着て、頭にはウィンプルと呼ばれる白い布を被った少女がずっと下を向いて座っていた。
「ずっとを下を向いてて疲れないのかな?」
「死んでるんじゃねーのか?」
男がそう言って笑った後、少女の手が動き男に指を指すと黒い矢がどこからともなく飛んできて男の頬をかすめた。
「あーびっくりしたー、生きてんじゃん」
「あはははー、何やってるのーバカみたい」
少女は床を転げまわるように笑っていたが、しばらくして「あ、そうだ」と言って立ち上り男の目の前に立った。
「ネクロスはさー、ちゃんとうまくいってるのー?」
「まぁな……、めっちゃ順調だぜー」
ネクロスと呼ばれる男はにやりと笑う。
「デルヴォイドお前はどうなんだよ」
「もう準備は完了してるよー、後は時を待つだけ、足止めは私に任せてね」
デルヴォイドと呼ばれる少女は人形にキスをすると、そのままスキップをするように教会を出た。
「本当に足止めできんのかよ」
ネクロスは一人になった教会内をぐるっと見渡して一言呟く。
「アイツもうまくいってるのかなぁ……」
「平和だ……」
綺麗な景色、なごやかな雰囲気、そして広い庭園。須藤ソゲン21歳異世界にて自分だけの屋敷を手に入れました。
はてさてなぜ屋敷を手に入れたのか順を追って回想で説明しようと思う。それは3日前のことである。
襲撃から暫く経った後町も修復はほとんど終わり、後は魔物の群れに破壊された王都を守る壁を修復するだけとなった。
そんな中僕は騎士団本部の団長室にいた。目的は王都壊滅の危機を救って英雄として爵位を受けることになっていたのだが今の僕そんなものは必要ないので辞退する事を伝えに来ていた。しかし辞退するためには手紙ではなく実際に自分の声で直接伝えに行かなくてはいけない決まりらしい……、なんとめんどくさい決まりだ…….。
団長室にはアルべリク意外にもレイナとエリーゼもいた。
「爵位の件は辞退させていただきます」
僕は深々と礼をし、さらに「それと宣言通り騎士団も退団させていただきます」と綺麗にたたまれた騎士団の制服を差し出した。ちなみに僕と同じ条件だったレグナーも昨日すでに退団したらしい。
「爵位自体の件了解した、それとその服は返さなくていい君にプレゼントしよう」
「そうですか、じゃあ遠慮なくもらっておきます」
実を言えば来ている内に愛着がわいてきていて、結構かっこいいやんと思っていたところなので返すのが惜しいなぁと思っていたところだったのだ。
僕は机に置かれた制服を抱えるようにもち「では失礼します」と言って出て行こうとすると「待て」と引き留められた。
「君にはまだ話がある」
「話?」
僕は振り返り机に座る団長の前に立った。
「オディオについてだ、奴がどのような力を使ってこの町を壊滅に追い込もうとしていたのか私達騎士団は知っておく必要がある」
そういえば僕以外はオディオに会ったことがなかったか、確かにオディオの件は騎士団には話しておく必要がありそうだ。
僕は机の上にオディオが持っていた黒いドライバー スピリットドライバーを置いた。するとレイナとアルべリクはきょとんとした表情だったがエリーゼだけは驚いた反応をしていた。
「ソゲンさん!これ本当にオディオが持っていたんですか!?」
「あぁ、オディオはこのドライバーとフォンセの力を使い魔物達を操っていた」
「まさか、ソゲン君意外に精霊の騎士がいたなんて……」
「ありえないです……」
それを聞いたエリーゼは疑ってやまない表情だった。
「どういうことだ?」
「普通の人間ならソゲンさんが使っているドライバーやこのドライバーは使う事は出来ないはずなんです」
「本来ならそうです、でもやつは霊液という薬品を使って遺伝子を無理やり変貌させて変身していたらしいんです」
「うーん……なんか知らない単語がでてきてよくわかんないよぉ……」
レイナは目を回しながら頭の上にはてなマークが大量に浮いていた。まぁ僕もよくわかっていないけど。
「つまりオディオは無理やり霊液という薬品で遺伝子を変貌させて変身し、数十万を超える魔物を操ったという事か……」
「まぁ、そう言う事になるんですが……」
「そもそも霊液なんていう薬品なんてあったけ?」
しばらく沈黙した後、僕は一番疑問に思っていた事を口にする。
「このドライバーを使っていたオディオが正式な装着者じゃないという事は別にいるって言う事ですよね?僕みたいにこのドライバーを使える人が」
「まぁそう言う事になりますね……、ところでこのドライバーお預かりしていいですか?
少し調査させてください」
興奮して鼻息を荒くして僕に顔を近づけるエリーゼ、近い、近い!凄く近い!!
「別にいいけど……」
僕がそう言うと「ありがとうございます!」と言いながらスピリットドライバーを持ち団長室を後にした。
「ああいうことになると、すごくテンション上がるのよねー」
僕は少し苦笑いをし「ではこれで僕も失礼します」と退散しようとすると、「あ、そうそう」と言い引き留める。
まだ何かあるのか?と思いながら振り向くと、突然アルべリクが座っている机の上にカギと一通の手紙が置かれる。
「これは?」
「もし爵位を辞退した時に渡してくれと言われたものだ、受け取ってくれ」
僕は何も躊躇することなくそのカギと手紙を受け取った、その時の二人の顔はとてもにこやかであった。
「嘘だろ……」
地図に描かれた場所に4人の精霊とともに向かうとそこにあったのは洋風の屋敷だった。場所は王都の城下町から少し離れた場所にあり、前にエアリアに行く前に立ち寄った森の洋館よりは小さかったがそれでもかなり豪華な作りだ。重厚な石造りの外観と共に、美しい庭園が広がっていた。その日の太陽は、空に優しく輝いており、屋敷と庭はまるで
絵画のように美しく映えていた。
「大きいね、ゲン」
「すごい……ソゲン君本当にここに住んでいいの?」
「そうみたいだな……」
自分でも信じられなかった、まさかこんなお屋敷をもらえるなんて……。
「それにしても、ソゲンまんまとハメられましたわね」
「なんで?」
「おそらく爵位辞退の件を直接に伝えに来いというのは囮で、本当はこれを渡したかったんじゃないんですの?」
確かにそうかもしれない……、本当にいい意味でハメられたな。
「それと、ソゲンに絶対に王都に残ってほしいというのもあるんじゃないのか?」
「まじで?」
「それでないと5人で住めるような屋敷をもらえないだろ?」
それでも5人で住むには少し豪華すぎるような気がするが……まぁありがたくもらっておくか。
という感じで今にいたる、回想終了。それにしても内装もかなり豪華なものだ。
大理石の床が足元に涼しさを運び、壁には美しい絵画と彫刻が飾られていた。高い天井からはシャンデリアが垂れ下がり、そのクリスタルが光を反射してまばゆい輝きを放っていた。さらに部屋は、豪華なソファとクッションが配置されゴージャスなカーペットが床を覆っていた。窓からは庭園の緑と花々の美しい光景が広がっているのだった。
「このまま平和な日々が続けばいいのにな」
そう思いながら僕は窓から庭園と城下町を見ながらカップに入ったコーヒー飲み黄昏ていた。
そういえば昨日はレグナーとミレイユもこの屋敷を訪問して来ていた。
「まさかお前が屋敷の主とはな~」
「すごいいい屋敷ですね」
二人は屋敷を見渡しながら僕が屋敷の主となったことを祝福してくれていた。主になる事ってすごいことなんだなとそこで改めて実感していた。
「大切にしないとなぁ」
そんなことを考えていると突然ドアが開きセレステの「ソゲン君!」という声が部屋に響く、あぶねー、危うくびっくりしてカップを落とすとこだった。
「どうした?セレステ」
「今日の晩ご飯何食べたいかなって」
「うーん……特に食べたいのはないかなぁ……」
そういうと不機嫌そうな顔をして隠し持っていたナイフを取り出した。
「それって、私のご飯はいらないって事?」
あーやばい答え方間違えちゃったぁ……、このままだと屋敷が事故物件になってしまう。
食べたいもの、食べたいもの……セレステの料理で食べたいもの……あ!
「ビーフシチューかな、森の洋館で食べたやつすごくおいしかったからまた食べたいな」
「ほんと?!じゃあ今日はソゲン君のためにビーフシチュー作るね♡」
「うん、楽しみにしてる」
ふぅ……これで一安心だな。機嫌が悪くなったセレステと話すときは精神をすり減らされる……。
「ところで……」
「ん?」
顔を赤くしてこちらへじりじりと近づいてくるセレステ、今度はなんだ?と僕は身構える。
「ソゲン君、今日は久しぶりに一緒にお風呂に入ろ?」
「へ?」
またなにを言い出すかと思えば……、流石に他に4人がいる屋敷でそれは……。
「エアリアの温泉入った時は、ソゲン君の背中流せなかったから……」
「あー」
そういえばあの時はお互い恥ずかしがってただ温泉に浸かっているだけだったな……もう 何年も背中流してもらったことないなぁ、すごく気持ちいいんだろうなぁ……。
いやいや何を考えているんだ。相手は小さい女の子だぞ?またエアリアみたいに皆に怒られてしまう!
「いやダメだ……さすがにみん……いだだだだだ!!!!」
右腕をがっしりと握りつぶすよう持つセレステ、やばい本当に骨が折れる!!
「そこまでしときなさい、セレステ?」
声がした方を向くとネレイスが入口に立っていて、「しつこいと嫌われるわよ?」と言いながら僕の部屋へと入ってくる。
「なんですか?ネレイスさん……私をソゲン君と混浴させたのネレイスさんじゃないですか、今度は止めるんですか?」
「あら?私は導いてあげただけですわ、混浴したのはセレステの意思なのでは?」
「な……な……なんでわかるんですか??」
「だって、脱衣所にソゲンの着替えがありましたわよね?まぁまぁ狭い脱衣所でしたし……気づかないはずがないですわよねぇ?」
「~!!!」
隠された事実を暴露されて顔を真っ赤にし頭から蒸気を出すセレステ、あーネレイスの言ってる事本当なんだ。
「セレステって結構大胆な女の子ですわね~でも大胆過ぎると男に嫌われますわよ?」
「う、うるさい!!!うるさい~!!!」
そう吐き捨てて顔を真っ赤にして蒸気を出しながら僕の部屋を出て行ってしまった。それを見てしてやったりと言った表情で笑うネレイス。
「はぁ……あんまりセレステをいじめるなよ……」
「なっ!もしかしてセレステの味方をするんですの!?」
「いやそんなわけじゃねーけど……」
「む~~!!」
頬をフグのように膨らませ、悔し気な表情を浮かべ目に少し涙を浮かべるネレイス。はぁ……、叱る気はなかったんだけどなぁ……と思っていた時。
「なぁ?ネレイスはいるかー?」
アウリスの声が廊下に響いた、どうやら用事があるらしく探しに近くまで来ているらしい。
「わかりましたわ、すぐ行きますわー」
そう叫んで部屋を出ようとした時、「まぁこの件については後で話しましょう」と言いながら出て行った。
「もうこの先どうなるか怖いよ」
そう呟いて、コーヒーを飲もうとするともうカップの中にはなく、もう一杯作ろうとした時だった。
突如として開いていた窓から白い鳩が入って来て僕の肩に止まった。ずいぶん人懐っこい鳩である。よく見ると足には手紙が括り付けられている。
「誰からだろう?」
括り付けられた手紙をほどき広げ内容をみる、そこに書いてあったのは……。
精霊で誰が好き?
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セレステ
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ネレイス
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アウリス
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エンデル
-
フォンセ