「はぁ……疲れた」
部屋へと戻った僕は大きなため息を付きながら、ベッドへ吸い込まれるように倒れ込んだ。
まさかセレステとネレイスがお互い戦闘モードになって武器を構えるとは思わなかった。あーなるとさすが生身の僕では止められない、かといって変身してまでもと言われると……。
「やっぱり、武器が必要か……」
自分の身を守るために護身用で作ろうと思っていたが、もう一つ理由ができた。
あの二人がまたいつああやって喧嘩をするかわからないし早い目に作っておくか、うーん材料は何から作ろうか……鉄鉱石なんかじゃ味気ないけど低コストでできる。
ミスリルだと良い感じの丈夫な武器ができるが、せっかく作るならもっといいのがいいよなぁ。もっとこう……。
そんな事を頭で妄想していると後ろのドアが開いた。
「ゲン~♡」
ドアが開くと同時に大きな体とは思えないスピードで僕の身体に飛び込んでくるエンデル。
「いてて……ど、どうしたの?エンデル?」
「明日、ゲンとお出かけしたい」
「お出かけ?」
そういえば、前にエンデルとお出かけするって約束したな、オディオの事とかですっかり忘れていた。
「ダメ??」
キラキラと目を輝かせてじーっと見つめてくるエンデル、まずいこれは僕に効く。
「わ、わかった明日街に出かけるから一緒に行く?」
「行く!行く!明日絶対!行く!」
そう言いながらルンルン気分で部屋中を走り回った。
「こら、ほこりが舞うからやめて」
「ごめんなさい……」
しょんぼりした顔をするエンデルに「別に怒ってないよ」と慰め頭を撫でる。
「ゲン♡」
頭を優しく撫でられてご満悦のようだ。そんな時エンデルは「あ、そうだ」と何かを思い出したかのように近づいてきた。
「ゲン、オリハルコン大事にしてくれてる?」
「うん、大事にしてるよ」
オリハルコンか、そういえば木箱にずっとしまったままだったな。
あのまま何もしないまましまっておくのももったいない気がする。
「なぁエンデル、オリハルコンを武器にしてもいいか?」
「うん、いいよ、ゲン、オリハルコンもしまったままだと可哀そうだから……」
「そうだよな!ありがとう、エンデル」
「うん!」
許可はもらったはいいけど、この屋敷に来てからどこにしまったっけ?
「どこに閉まったのかなぁ……?」
エンデルと別れた後屋敷の隅にある倉庫を探していた。それにしてもほとんどネレイスの荷物だ……。
あとはアウリスの調合器具や、乾燥させた薬草か?どおりで薬草の匂いが充満しているわけだ。
「どうした?ソゲン、何か探し物か?」
振り向くと丁度お風呂から出てきたばかりの黒いナイトウェアを着たアウリスが立っていた。
丁度この物置がある角を曲がったところにお風呂場があり物置に電気がついていたので誰かいるか気になって来たのだろう。
「うん、エンデルからもらったオリハルコンを剣にしようと思って探してるんだが……」
「あー、オリハルコンかー、それなら確か……」
アウリスは物置に入りネレイスの荷物が入った木箱をどけて前かがみになって「ここにあったはず……」と言いながら探していた。
「本当にそこにぃ……!!!???」
僕は目の前の光景に目を逸らした、前かがみになりナイトウェアがアウリスのお尻にぴったりとくっつき白い下着が透けていた。
アウリスさんなんちゅうパジャマを……。
「ソゲン、どうした?」
澄ました顔で前かがみになりながらこちらに顔を向けるアウリス。まさか気づいてないんだろうか?
「あ、あの透けてるんだけど……」
「ッ!!!」
言われて気づいたのか顔を真っ赤にして背筋をピンとする、本当に気づいてなかったんだな。
「ネ、ネ、ネレイスのやつが涼しいパジャマがあるって、プレゼントしてくれたんだ……決して私が……」
「わかってる!わかってる!」
お互い顔を赤くしながらあーだこーだと数分間の間アウリスが落ち着くまで言い合っていた。
しばらくして、普通のワンピースのルームウェアに着替えたアウリスが戻ってきた。
「すまない…見苦しいもの見せてしまって」
「いや、気にしてないよ、お互いもうその事は忘れよう」
それにしてもネレイスもあんなパジャマを着ているのか、目に毒過ぎるぜ。
「あった、あったこれだ」
アウリスが取り出してきたのは、まさしくオリハルコンが入っている木箱だった。中を開けて確認するとオリハルコンが挨拶するかのように虹色の眩い輝きを放っていた。
「それにしても何で武器を?」
「まぁ、一応護身用だよ、後は今日のようにセレステとネレイスが喧嘩をした時にも使えるかなぁと……」
それを聞いたアウリスは「あぁ……」と呆れたような顔をする。
「それにしても、今日みたいなあんな喧嘩されると止めるすべがないから困るよ
二人にはもっと仲良くしてほしいんだがな……」
僕がそうボソッと呟くと、アウリスは「まぁほとんど君のせいだがな……」と言う。
「まぁそうだな……、でもやっぱり誰か一人って言うのは選べないよ、皆大切な仲間だしさ……」
「それでもいいんじゃないか?君がそう言うなら皆も反対しないさ」
「そう言ってもらえると、助かるよ」
僕がそう言うとアウリスは小声で「私は我慢しているのに……」と呟いた。「なんか言った?」と聞き返すと
「い、いやなんでもない!!」と顔を赤くしながら声を荒げた。
「ソゲン、私はそろそろ戻るよ」
そう言って立ち上がると、僕もオリハルコンが入った木箱を閉まって「僕も」と言いながら出ようとすると急に床がつるんと滑りそのままアウリスを巻き込み、大きな音を立てて倒れ込んだ。
「ちょ、ちょっと大丈夫ですの?」
「大丈夫!?」
大きな音を聞きつけて二人が二階から同時に物置へと走ってくる。
「いてて……」
「ソゲン……、あまり手を……」
「へ!???」
少し起き上がってよく見ると、ルームウェアを胸がもう少しで見えるところまで捲りあげ、僕の手はなぜかルームウェアの中に手を突っ込んでいた。
しかも運が良いのか、悪いのか丁度胸の間だった。
「ご、ごめん!!!」
急いで手を抜いて立ち上がろうとするが、床に何かが撒かれているのかなかなか立ち上がれなかった。
「あ♡やめ……♡」
手は抜けたがツルツルして立ち上がれない、さっきまでこんなことなかったのに……。
ようやく二人に持ち上げられて立ち上がる事ができたのだが……。
「ソゲン……??」
「ソゲン君??」
二人は体から凄まじいオーラを出してニッコリと笑いながら僕の顔を睨んでいた。
「アウリスに手を出したら容赦はしないって言いましたわよね?」
「ソゲン君……、ちょっとお話がしたいから」
「「こっちへ来てくれるよね?」」
「ひぃ!!!!」
僕は二人にがっしりと掴まれたまま二階へと連れていかれるのだった。それを見届けた後捲れたルームウェアを元に戻して息をふぅ…と吐き立ち上がる。
「嫉妬というのは怖いものだな……」
アウリスは手に持っていた瓶を見つめてにやりと笑った。
気が付くと朝だった。
昨夜の事全く覚えておらず恐らくはギタンギタンにされたのは間違いないと思うが途中から気絶したらしい。
本当に精霊を怒らせるのは恐ろしい……特にアウリスに手を出した後のネレイス気を付けないと。
さてエンデルと出かけるために起き上がるか……あれ?なんか腕が動かない?なんで?不思議に思って隣を見た時だった。なんとそこにはネレイスの何とも可愛らしい寝顔があったのだ。
しかもガッチリと腕を組んで動かないようにしている。
「ん……、あらおはようですわ、ソゲン……」
「お、おはよう……」
右にネレイス、まさか左には……振り向くとやっぱりセレステがいた。こちらもとても可愛らしい寝顔で寝ていらっしゃいます。
「あ、おはよう、ソゲン君」
「おはよう、とりあえず腕を離してくれると助かるんですが……」
「「なんで?」」
2人は先ほどまでの優しい声とは違い尖った声で脅すように睨みつける。
「いや、起き上がれないので」
そう言うとセレステは僕の腕を自分の大きい胸に触れさせる。
「まだ寝てたいんだけど……だめ?」
「なッ……私だって…!!」
ネレイスも負けじと自分の小さな胸に僕の腕を触れさせた。
「そんな小さな胸で、ソゲン君が興奮するとでも……?」
ぷーくすくすとネレイスを見下すように笑うセレステ。あーまた始まっちゃった。
「そんな確証どこにあるんですの?」
「だって、ソゲン君は大きな胸の人に抱きしめられるのが好きって」
「!?」
それを言ったらネレイスさん大ダメージを受けてしまいます!!
「ぐぬぬ……」
「ふふーん!!」
あー、勝ち誇った顔をしてるよセレステ、てかもう僕起き上がっていいかな?
「二人とも、いい加減にしろ!!!」
突然部屋にアウリスの怒号が響いた。
「アウリス……」
「ソゲンが困ってるだろ?」
2人はアウリスの気迫には勝てなかったのか、起き上がって自分の部屋へと不満げな顔をして出て行った。
「全く……」
「ありがとう」
「君もたまには容赦なく叱り飛ばした方がいいぞ?」
「確かにそうだな……、今度からそうする」
女の子に叱りつけるのは自分の性に合わないが……こればっかりは仕方ないか。
「ところで、アウリス何か用事があるのか?」
「あぁ、騎士団から女性の方が挨拶にって……」
「こんな朝から?」
僕は早々に身支度を済ませると、足早に玄関に向かうとそこに立っていたのは騎士団の白い制服にスカートではなくズボンを履いており、青い長い髪の毛に宝塚にいるような女性の顔立ちだったが、先ほどのアウリスの怒号にびっくりしたのか震えた顔をしていた。
「すいません、お待たせして……」
「い、い、いえ……だ、だ大丈夫です!!」
深みのある声で喋っているが、すごい震えてるな……アウリスの気迫がそれほどまでに怖かったという事か。
「あの、一階落ち着いた方がいいですよ?」
「そ、そ、そうですね」
青い髪の女性は深呼吸を数回する。するとようやく落ち着いたのか震えが止まっていた。
「ご迷惑をおかけしてすいません、僕は騎士団ヴァレリオ・インディゴと申します。本日はレイナ様のご命令でご挨拶にはせ参じました」
一人称が僕の女性か。
クールな雰囲気によく似合っている。ふと振り返ると階段の上からセレステとネレイスがひそひそと何やら話し合っていた。どうせまた女の子と話し合ってるとか言い合ってるんだろうな。
「あの、勘違いされてるかと思いますので一応言っておきますが、僕男です」
「え……」
えーーーー!!!という4人の声が屋敷中に響き渡った。まさかこんな美しく雰囲気の男性がいるとは……
「すいません、よく間違えられるんですよね、この見た目なので……」
あははと愛想笑いしながらそう言っているが、結構この容姿で苦労しているんだろうなぁという事が見て取れた。
男性から告白されてそうだ。
「まぁでもこの見た目僕好きなのであまり気にしてませんけどね」
「そうですか、ちなみにヴァレリオさんも聖剣をお使いになるんですよね?」
「はい、私の聖剣はクラウ・ソラスです」
そう言って鞘から抜くと、美しい透けるような青い刃をを持つ剣が現れる。
「すげぇ……」
「まるで僕の髪の毛ようだったので一目惚れしました」
そう言ってキラキラしたと目で見つめるヴァレリオ、なんかこいつちょっとキザなところあるな。
「それでは、これで失礼します」
「朝早くからご苦労様でございました」
剣を鞘に収め、お辞儀をし後ろを向いて屋敷を出て行こうとすると、何かにつまずいたのかその場で転んでしまった。
それを見て駆け寄ろうとするが、「お構いなく~」と制止する。その後も心配でずっと見ていたがこの屋敷を出るまで5回くらいはこけていたのだ。
まさか襲撃の時に間に合わなかったのってこれのせいだったのか……。と思いながら
見ていたのだった。
精霊で誰が好き?
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セレステ
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ネレイス
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アウリス
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エンデル
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フォンセ