デスゲーム出身PK狩りがいろいろやる話 作:ゴリ押しこそ至高
目を覚ました時、知らない…とは言い難い天井が視界に入った。
ここは自分がかつて入院していた病院の一室だ。
ひとまずナースコール。少し待てば1人の看護師が来てくれた。
「おはようございます。どうしてここにいるか、わかりますか?」
「いいえ」
「あなたは街中で倒れて搬送されたんです。ドクターの診断は極度の睡眠不足です」
「そうですか。退院はいつに?」
「検査入院に数日は確定です。正確な日数はカウンセリング次第ですね」
「カウンセリングですか?」
「はい、目が覚めたからって、睡眠不足の原因も知らずに放り出す訳にはいきませんから」
「……そりゃそうですね」
数時間後
SAO帰還者を多く対応しているというカウンセラーに色々話した。
14層であった事、それによるPKプレイヤー狩り、別のゲームでのプレイヤーの対応の違いによる戸惑いを洗いざらい。
とにかく楽になりたかった。
「PTSD…みたいなものですか」
「SAO帰還者にはちょいちょいいるんだよ。HPという死に対するわかりやすすぎる指標が可視化されていて、戦争の爆発ほどじゃないけど確実に意識せざるを得ない分ストレスは想像以上にあるみたいだね」
「…戦いが身近な世界ですからね。多少豊かに暮らそうと思ったら、戦闘は避けて通れない」
「SAO特有の症状もあるんだよ。例えばゲームをしていて体力表記が減っていくと恐怖を覚えたりとか……ゲームをしなければ良いって解決策はあるけど、それはある意味残酷な提示だよ。何せSAO帰還者の多くはゲームが好きだから、SAOを入手してあの世界に囚われたんだからね」
「そうかもしれないですね」
「君はどうかな。話を聞いていたらALOで対人戦を100%避けるのは困難だ。少なくともプレイしなければPKプレイヤーとの問答なんて起こり得ない」
「………」
「それが君のその思考になるきっかけなら、しばらくの期間は完全にそれを絶って罪悪感を風化させるのも一つの手だ」
「……罪悪感を風化させるのは余りにも無責任じゃないですか」
「少なくとも僕はある程度罪の意識を減らす事は、時には刑罰より優先すべきだと思うよ?個人の意見だけれど。罪悪感で自殺するというのは贖罪を果たしているとは思えないしね。君は『罪の意識があるのなら生きて裁く側の罰を待つべき』という考えは理解できる人だろう?」
「何を根拠に?」
「君が恨みを向けている人というのは、他の誰でも無い自身の手で決着をつけたい相手じゃないのかい?その人が勝手に自害して後からそれを知ったら、少なくとも現時点での君はそれでスッキリするのかい?」
「…………しませんね。最低でも殺されたプレイヤーの元仲間か遺族が復讐を果たすか、法で裁かれるかのどちらかでなければ納得出来ないと思います」
「そうだろう?…それに少なくとも君が戦ってきた悪人達の何人かは、個人的に君より遥かに悪人だと思うけど殆どがのほほんと暮らしているはずだ」
「……そうでしょうね。腹立たしい事に」
「なら、君ものほほんと暮らす事が許されるべきだ。少なくとも法はそれを肯定している。君が裁かれるべきなら既に裁かれているべきだろう」
「こじつけに聞こえますが」
「君の不安も結構なこじつけから始まっていると思うよ?」
…言い返せない。
「……ともかく言えるアドバイスはこんな所かな。最後に警告。…君は性格上純粋な復讐鬼には向かないと思うよ。僕の経験上ね。どうするにせよ復讐心以外の行動原理を持たないといつか身動きが出来なくなる」
「意外ですね。カウンセリングで復讐心を肯定されるとは思ってませんでした」
「自分が人を恨んでいるんだから否定はしきれないさ。…っとこれは個人的な話だったね。これでカウンセリングは一応終わり!今日までは入院してもらって、どうしても眠れないようだったら睡眠薬を処方してもらうんじゃないかな」
「ありがとうございます。…個人的な話をしても?」
「何かな」
「どうしてSAO帰還者を中心にカウンセリングを?」
「……結構踏み込んだ事を聞くね」
「恨んでいる相手がいて、自身の手での決着なんて言ってたので疑問に思ってました。経験上って発言もアレ、カウンセリングをしてきた患者さんの傾向って意味じゃなくて文字通り『自分の経験上』じゃないですか?」
「………」
「あなたはSAOで誰かを失った。ゲームで一緒に戦っていたか、リアルで帰りを待つ側だったかはわかりませんけど…違いますか?」
「…正解だよ。帰りを待つ側だった。ただし、死んだ訳じゃ無い。弟はPKプレイヤーだった……らしい。拘束されて、一年近くを牢獄で過ごしていたようでね。今は精神に異常を抱えている。カウンセリングでどうこうできるレベルでは無いものをね。薄暗い場所に異常なまでに恐怖を感じるようになったんだ」
「殺さずにケリをつけるにはそれしかありませんでした」
「わかっているよ。悪事を働いたのは弟だ。君のような拘束もしくは討伐をしたプレイヤーを恨んではいない。感謝しているくらいだ。弟が罪を重ねる前に止めてくれた。だが、唆したプレイヤーは許せなかった」
「…死んでたんですか」
「ああ、モンスターの群れを他プレイヤーにぶつけようとしてしくじったと…。若葉君、これはカウンセラーとしてではなく、僕個人のわがままなんだが、聞いてもらえるかい?」
「内容によります」
「構わないよ。……どうか全て間違いだったと思わないでくれ。僕の弟のような人に罪を重ねさせなかった事を、間違いだと言わないで欲しい」
「…すぐに肯定する事は出来ません」
「それでもいいんだ。ただ、僕のような意見もあることを忘れないでいてくれると嬉しいな。それじゃあ僕はこれで。君と話せて良かったよ」
ある意味ではこの回が最も書きたかった内容の一つです。
ソードアートオンラインという作品において私が疑問に思った事項の一つとしてあったのが、
『PoHやクラディールみたいな狂気の殺人鬼が作中においてのPKプレイヤーの代表格だけど、唆された側の、いわゆる意志の弱さでPKをした人もいるんじゃ無いのかな?その人達の家族も居るけど、法的に問題無しになったとはいえ身内の殺人経験をどう受け止めるんだろう?』
というものでした。
考えた末の一つの答えとして、別れ道は
『本人に罪悪感があるかどうか』
だと思いました。
今回は罪悪感がある場合で書きましたが、無い場合での答えはあまりにも主人公の今後をシリアスすぎる展開に塗りつぶしそうだったのでナシという事で…。
皆さんは家族や大切な人が人を殺して帰って来たらどうしますか?
今後の展開の参考になるので感想で意見をお聞かせいただけると幸いです。