俺が記憶を取り戻してから4年が経った。
この4年間、俺は無双した。この年代の子達の戦いは基本お団子サッカーになる。お団子サッカーはサッカーの0の状態。だからここから1の状態に持っていく必要がある。俺は0から1にする方法を知っている。そして今の俺のフィジカルならあの時の馬狼と同じ事が出来る。そう、馬狼のドリブルを今トレースする。このゲームは馬狼をトレースするだけで勝てるヌルゲーだ。
しかし、そんな事だけではつまらない。だから色々試した。凪のトラップ、カイザーインパクト、蜂楽のドリブル。しかし、俺には出来なかった。やはりあいつらの技は唯一無二らしい。
転生した体は前世の頃とあまり変わらない肉体だった。蟻生みたいな四肢の長い体に憧れたが、体の使い方が同じなので良いかとも思った。だから前世で出来た事の延長線上の事しかできないようだ。しかし、出来た事があった。玲王のトレースだ。この体は小さい頃から鍛えバランスの良い肉体を作っている。そして俺の眼と脳があればトレース技術は可能だ。
この技術があればいずれ糸師冴の技すらトレース出来る。そして俺のゴールのレパートリーが増える。
楽し過ぎる。この
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今日はサッカーのクラブに入る為のセレクションの日だ。これからの日本を担う選手達がいる場所。そして俺の
ん?
俺が喰う相手を観察していると近づいて来る人間がいた。セレクションに来た他の子だ。
「お前、ブルーロックの生みの親。絵心甚八の息子なんだろ?」
「おいおい!ただのチビじゃねーか!」
二人組の子が突っかかって来た。一人は身長が高く明らかに見下した態度。二人目は俺と同じくらいの身長。こいつの腰巾着ってところか。
俺はこいつらに微塵も興味が湧かなかった。故に選択したのは無視だ。こいつらにゴールの匂いは感じない。
「おい、無視すんじゃねーよ」
肩を掴まれる。見えてんだよ木偶の坊が。
俺は掴まれる手を避け別の方向に歩き出す。しかし、あいつらはしつこい。俺が避けたのに驚くと走って追いかけて来た。
「何だよ電柱」
「くそこいつ!」
「まぁ待て」
でかい方が小さい方を抑え俺に話しかけてきた。
「おい七光。お前このセレクション辞退しろ」
論外の命令。
「お前みたいな奴がこのチームに入ってもどうせ何も出来ない。だったら俺みたいな才能ある人間が入れるようにお前は気を遣って辞退しろ」
他者を蹴落す事も出来ない小物が。こいつは久遠と同じの八百長野郎だ!
「びびってんのか?」
睨みつけると二人は怯えた様に一歩後退る。ふと周りを見渡すと全員がこちらを向いていた。全員がプレッシャーに気押されたように怯えている。何かあったのか?
すると一人の男がセレクション会場に入って来る。あれは…馬狼!久しぶりに見た。めちゃくちゃでかいな!ていうかあいつが入って来たからみんなびびってたのか…。あいつ目つき悪いしな。
馬狼に気づいた他の子供達や保護者がザワザワしだす。
馬狼はこのチームの監督らしき人に話しかけられている。そんな馬狼を多くの子供達が羨望の眼差しを向けていた。やっぱ日本代表は子供の憧れだよな…。
「すげー馬狼選手だ!」
「W杯で点決めてて凄かった!」
「でも馬狼選手ってユーヴァースでプレイしてるからイタリアに居るんじゃないの?」
「さあ?」
「何でだろ?」
他のセレクションの子達の話し声が聞こえて来る。すると馬狼が俺の方を見ている事に気づいた。あれこれ不味くないか?俺が転生したとバレたらめんどくさい事になるぞ。まだ両親にも言ってない事なのに。そう思うと俺はバレないよう顔を逸らす。すると馬狼も目を逸らした。危ねー。これからもバレないようにしないとだな。
そうだ、潔世一は死んだ。今ここにいるのは俺、絵心世一だ。これは絵心世一が世界一になる為の戦いだ。
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「腹が減ってしかたねー。クソが!」
馬狼は空腹に怒りを滲ませる。あの時、潔が死ななければこんな思いする事なかったのにと。
今、馬狼は日本に向かう為に飛行機に乗っている。3日後はあいつの命日。日本がW杯優勝した翌日。そして世界一のストライカー潔世一の死んだ日。潔の死因は飲酒運転のトラックに轢かれそうな子供を助け自分が轢かれた事による頭部外傷による失血死。
馬狼はどれだけトラックの運転手を恨んだ事か。しかし、あいつは見えていたという事だ。誰も気づかない路地裏で轢かれそうな子供に。本来なら死んでいた子供の未来を変えた事に。その事に馬狼はやるせない気持ちになっていた。それは正しくその強さが、その才能が潔を殺してしまったという事なのだから。
日本に到着した馬浪に一本の電話があった。絵心甚八の息子がセレクションを受けるらしいと。その事に戯れだと思いながらも、あの潔を作り出した男の息子だという事で見にいく事にした。
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「いや〜日本代表の馬狼選手が来てくれるなんて思いませんでしたよ」
「日本に帰って来たついでだ。それと、絵心の息子を見に来ただけだ」
俺が喰うに値するストライカーに育つのかこの目で確かめに来ただけだ。
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「これからセレクションを始めます。セレクションは今のチームに三人づつ入ってもらってゲームをします」
このチームの監督らしき人がそう言うとゲームが始まる。俺がゲームに入るのは最後だ。まずはチームで自分の実力を示してこのセレクションに合格する事が目標。そして俺がゴールを決める。
一番目の奴は俺に辞退しろとか言っていた奴だ。パスをその高い身長で胸トラップし、シュートを撃とうとするがシュートコースが無い。相手のディフェンスやるなー。あいつはやはりただの電柱だ。俺が喰うに値しない。
そして俺の番がやって来た。
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相手のボール一対一。俺は前世で一対一に関して最強だった。相手に反射で適応し潰すというプレー。これは相手に最高のパフォーマンスを適応能力で喰う事で成立する凛のドリブルのディフェンス版のようなものだ。そこに俺が手に入れたコピー能力を掛け合わせ、相手に反射で適応し、そしてコピーで相手と相性の良い人間の技を使って倒すという新理論。例えば冴に対して凛のディフェンスをコピーするみたいな。これで俺は更に強くなる!
そしてボールを奪った俺はこのチームに適応する。適応とは喰う事。このチームを俺のチームに書き換えてやる!
パス、死角からの裏抜け。ここに出せ!そう目線で仲間に脅す。するとボールが放物線を描き飛んでくる。良い球だ。それを右隅にダイレクトシュートで決める。これぞ糸師凛のやっていた支配的傀儡サッカー。俺にも出来るようになったぞ!
喰ったぞ。もうこのチームは