転生世一のエゴイストRTA   作:斉藤田中鈴木

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主役

二子一揮は墓の前に立っていた。墓に刻まれている名は世界一のストライカーという称号を欲しいままにした男の名だ。二子の戦略を読み、二子にストライカー失格と言い放った人間。復讐する。そう心に決めたはずなのに…結局復讐する事すらさせてもらえず死んでしまったあの男に二子は果てしない怨嗟を感じていた。

 

「来てたんですか。馬狼君」

 

「お前こそ来てたのかよ…」

 

馬狼は不満気な表情のまま答える。しかし何処か嬉しそうな…。

 

「他の人達は…」

 

「ハッ!4年経ってまだ死んだ事を理解できねー馬鹿共の事なんて興味ねーよ」

 

馬狼は過去のチームメイト達を鼻で笑う。

 

「相変わらずこまめですね…」

 

「チッ偶々だ」

 

馬狼が嫌な顔をする。

 

「それにしては嬉しそうな…何かいい事でもありましたか?」

 

「別に何でもねー」

 

馬狼はそう言うと墓掃除に満足したのか立ち去って行った。綺麗になった墓に花を添え手を合わせる。

 

#

 

墓参りの帰り道、サッカーの練習着を着ている少年達が歩いているのを見かける。潔君も昔はあんなだったのかな…。

 

彼等が出て来た所を見るとカードショップだった。日本に帰って来たついでに久々にboxでも剥こうかなと思い店内に入る。すると目に飛び込んできたのはブルーロックのメンバー達が写真でカードになった広告だった。そして真ん中には世界一のストライカーになったブルーロックの申し子、潔世一。

 

二子はすぐに店員にこのカードゲームについて尋ねスタートデッキを買う。フリー対戦のスペースに移りルールブックを開く。カードゲームの名はブルーロックライバルリーカードバトル。ブルーロックのライバルリーバトルを再現したカードゲームだった。

 

ゲームを始める前に選手のカードを三枚フィールドに出しておく。まずドローフェイズ。自分のターンの最初にカードを引く。そしてリストアフェイズ自分の選手カードがアクション状態(横向き)なら戻し、選手カードの下にカードを置く。これをスタミナとする。メインフェイズ、ボールコインを好きな選手のカードに置く。そして手札のアクションカードをスタミナを消費して発動する事やパスが出来る。(パスは無限に出来る)。メインフェイズはサッカーで言う中盤。そして最後にシュートフェイズ、選手カードをアクション状態にする事でシュートを撃てる。相手は選手カードが横向きで無いならシュートブロックが出来る。そうして先に3点を決めた方の勝利となるゲーム。

 

二子は何処かで見た事あるルールだなと思った。そして選手カードを見る。一番最初に出て来たのは世界一のストライカー…潔世一。スターターデッキの表紙を飾る彼はW杯の最後の一点を決め日本を優勝まで導いた。これだけで人気も出るだろうが彼は翌日に死んだ。もうリアルで見る事は出来ない。だからこそこのカードの人気は凄まじかった。

 

「すいません!二子選手ですよね?」

 

先程カードショップから出てきたサッカー少年達だった。

 

「はい、そうです」

 

「おお〜!すげー!」

 

「二子選手もブルーロックのカードゲーム、やってるんですか!?」

 

「さっき始めたばっかですよ」

 

「そうなんですか!なら僕達とやりません?ルールとかも教えますよ!」

 

「ならお言葉に甘えて、よろしくお願いしますね」

 

そうして二子は少年達とカードゲームを始めた。

 

#

 

思ったより長く二子はカードゲームをしていた。夕暮れになってきたので子供達にサインを書き家に帰した。二子は先程のカードゲームを思い出す。選手カードが個別に持っているスキルやアクションカード、戦略カード等を使って盤面を見る事に二子は思ったより(ハマ)っていた。

 

しかし…このカードも主人公は潔世一だった。このゲームのtier1は凪誠士郎。スキル"トラップ"はこのカードがパスを受けた時、相手の選手カードを一枚アクション状態にする。このスキルにターン1制限は無い。そしてこのゲームはパス無制限。つまりループする。

 

このカードを封じる為に必要なカード、それが潔世一だった。潔世一のスキル、超越視界(メタ・ビジョン)は相手のスキルやアクションカード、戦略カードをターン1で無効にし相手の選手カード一枚をアクション状態にする。プラス、ワンドローという破格の能力だ。この2枚のせいで潔世一と凪誠士郎は必須カードとなり3枚目を自由枠として好きな選手を入れるデッキが主流となっている。死んだ後でも主役は…潔世一だった。

 

#

 

夕暮れ時に河川敷の道を何となく歩く。ふと目向けると絵心が坂になっているところに腰を下ろしていた。

 

「絵心さん。久しぶりです。何してるんですか?」

 

絵心は何かを観ていたようだったが視線を上げる。

 

「あー二子。息子の練習を観てたんだよ」

 

そう言われて視線をフィールドに移す。そこにはいきいきとしている馬狼と…潔…を思わせる少年がサッカーをしていた。

 

「潔…くん?」

 

「何を言ってるんだお前は。あれは俺の息子だ」

 

「そうでしたか。名前は何て言うんですか?」

 

「世一」

 

この時二子一揮は思った。

 

…おっも!息子に死んだ教え子の名前付けるの重すぎ!

 

「重い…ですね」

 

「何とでも言え。それにお前も世一に潔って言っただろ。重いのはどっちだ」

 

「それは…そうですね」

 

#

 

「世一今のお前にフィジカル勝負は無理だぞ!」

 

そう言って馬狼は俺からボールを奪う。今の馬狼は潔狩り(イサギ・ビジョン)を進化させ自分が潔になる事で自分すら喰う潔化(ザ・エゴイスト)になっていた。

 

「くそ!」

 

今の俺には少しでも体を当てられただけで重心がずれる。なるほど今まで考えてきた理論でもこの体では使えない理論も存在する。この体で使える理論を選定しなければいけないのか!

 

しかしこの体だからこそできる事もある小さい体は捉えずらい。

 

「くそ!ちょこまかと動くな!」

 

そんな感じで馬狼と一対一をしまくった。最初は他の練習をしようと思ったがお互いに自分の練習を優先したいのでボールの取り合いになり、そのままずっと一対一をしていた。結局どちらの練習も出来ないまま夕暮れ時になってしまい水を飲みに行く。

 

すると父さんの横に二子がいた。

 

「げ!二子!」

 

「絵心世一君ですよね。君のお父さんの絵心さんの教え子の二子一揮です」

 

馬狼が嫌そうな顔をする。俺も声をかけようかと思ったが今俺は潔では無い。二子からしたら誰かも分からない子供だ。そんな奴が急に話しかけても驚いてしまうだろう。

 

なので当たり障りのないよう

 

「ども。絵心世一です」

 

と挨拶して少し頭を下げる。完璧だ。完全に二子選手に緊張している少し引っ込み思案な子を演技できた!

 

「ていうか馬狼君はいつ世一君と出会ってたんですか?」

 

そう聞かれ馬浪が俺達の()()について話した。それと馬浪が日本にいる間俺の練習に付き合ってくれている事(俺を喰いたいだけ)を伝えた。

 

「なら僕も混ぜてくださいよ」

 

そう言う二子に俺と馬狼は動揺する。

 

(おい世一どうすんだ?)

 

馬狼が小声で話しかけてくる。

 

(どうするって承諾しないと不自然だろ?)

 

「来いよ二子一揮。お前を喰ってやる!」

 

「絵心さんに似て口が悪いですね。でもよろしくお願いします世一君」

 

「ていうか何で二人共下の名前で呼ぶんだよ!」

 

「絵心と被るからだろ」

 

馬狼が答える。

 

「世一パパと呼んでもいいぞ」

 

「ぜってー呼ばねーよクソメガネ!」

 

「ハハハハハハッ!」

 

絵心がひとしきり笑うと明日は二子も一緒に練習する事を約束してこの場は解散した。

 

絵心は夕暮れの空を見上げ、呟く。

 

「良い景色だ…」

 

#

 

二子は馬狼が子供とサッカーをしている事に驚いていた。馬狼は子供とサッカーをするタイプではない。同じチームで戦っていた二子から見ても違和感があった。しかし馬狼のプレーを見るとW杯以来のキレといきいきとした顔をしていた。潔に最も執着していたあの男が。そしてその子は二子から見ても潔と重なって見えた。さらに名前も潔君と同じ世一。運命を感じた。あの子供に何かある。直感でそう感じた二子は絵心の息子に近づいた。

 

「君がどれほどの人間なのか測らせてもらいますよ…()()君」

 


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