「ふぁぁ〜眠いよ〜。」
寝ぼけ目をこすり、体を起こす。
全身が「まだ眠いよ〜」と悲鳴をあげているようだが、いつまでも寝ている訳にはいかないと体に鞭を打ちベットから降りる。
「うへぇ〜…まだなれないなぁー。」
見渡す部屋は見慣れた自室…ではなく一人暮らしにしては少し広いマンションの一室。
あまり物はないが、質素な印象を与えないシンプルにまとまった部屋で、
「面白みのない部屋でごめんね。」と先生は言っていたが、なんとなく先生らしさを感じることができ、私はこの部屋が気に入っている。
「おっと、やることはやっておかないと。」
この部屋に来た当初のことを思い出し感慨に耽っていたが、そろそろ作業に取り掛からねば、先生が起きてしまう。
寝室をでて洗面所に移動し、顔を洗い目を覚ます。
歯を磨き、髪をブラシで梳かし寝癖を整えていく。
「ふぁ〜、めんどくさいよ〜」
自分は髪が長いから、髪の手入れがめんどくさい。
生来の気質も相まって非常に、それはもう面倒なことこの上ないのだが、
先生と寝食を共にしている今の状況下では手を抜きたくない。
この前の出来事もその思いに拍車をかけていた。
ある日のこと
「うへー先生、おじさんの顔なんかじっと見ちゃってどうしたのさ。特にいつもと変わらない老け顔だってー。」
「ホシノが老け顔だったら私は、どうなっちゃうのさ!?」
「先生はどんな顔でも先生だからねー、そんなの気にしなくても平気だってー。」
「これでもまだ20代だからね。別に年齢より若く見られたいとかはないけど流石に老人扱いはね…」
「まぁまぁ…それで?結局なんだったのさ?朝から生徒の顔に熱い視線を送るなんて。」
「いや、その…」
「?」
「ホシノは結構朝の寝癖がすごいタイプだったんだね。」
「えっ……あ……」
「私としてはホシノの新しい一面を見られて新鮮な気分だよ。」
「こんな一面見せたくなかったよ!そういえば先生!朝からなんだかやけにニコニコしてると思ったら、もしかしなくても気づいてたでしょ!」
「ホシノは可愛いなぁ…」
「うあー!朝からおじさんをからかうのはたのしいか!?」
「off course!」
「ふん!」(腹パン)
「ごっ!?」
このあとめちゃくちゃ髪を梳かした。
……先生の介抱もした。
「うへぇ〜、恥ずかしいこと思い出しちゃったよ〜。」
すっかり髪のセットも完了した鏡に映る自分の顔は少し赤みがかっていた。
あのあと意識を取り戻した先生は「からかいすぎたね。ごめんね。」と謝ってくれたので、私も思わず手を出してしまったことを謝罪し済んだ話ではあるがが、それはそれ、これはこれである。
あの様子からもう同じ理由で揶揄ってくるようなことは、彼の性格上ないだろうが、彼の前ではもう寝癖のような隙をみせることはしないと決めたのだ。
恥ずかしいから。おじさんも一応普通の…普通?普通の女の子だから。
「さて、そろそろ始めますか。」
洗面所を少し早足で後にし、台所へ向かう。
まずは、コーヒーメーカーに豆をセットし細挽きに設定する、水をそこに注ぎ電源をONに入れる。
横に置いてあるトースト機に食パンをセットする。
冷蔵庫を開け、事前に作ってあったゆで卵とマヨネーズを取り出し、シンクの角で卵にヒビを入れ、水につけながら殻をするすると剥いていく。
ゆで卵を深皿に移しフォークで潰し、マヨネーズを加えかき混ぜていく。
「お味の方は…っと、いやぁ〜いい感じだねー。」
いい塩梅の味付けに満足しつつ、ラックからペッパーミルを取り出し胡椒を少し加える。
チーン
「おっ、いいタイミングだね。」
できあがったトーストを皿に移し、その上に先ほど出来上がったマヨたまをのせる。
よし、完成だ。
我ながら慣れてきたものだなと思う。
早起きをして誰かのために朝食を作るだなんて、少し前の私なら想像もしていなかった。
そんなことを考えながら、コーヒーを先生と私のマイカップに注ぎ、ダイニングテーブルにつけば、もう準備万端といったかんじだ。
あとは先生がくれば…
「おはよう、ホシノ。」
「あっ、先生おはようー。ナイスタイミングだよ〜、ちょうど準備が済んだところでさ。」
「朝からありがとうホシノ。さっきからいい匂いがしてたから、すっかりお腹が減っちゃって、すぐにでも食べたい気分だったから助かるよ。」
「いやぁ〜うんうん。くるしゅうない、くるしゅうないぞ〜。」
「ははぁ〜!神様仏様ホシノ様〜!」
「うへへ。先生は朝からノリいいね〜。」
なんて、くだらないことを話しながら朝食を2人で食べ始める。
少し前から始まった、奇妙な関係。
私が"この世界"にきてからの新しい日常の風景。
今までは朝は1人で食べるかアビドスのみんなと食べていたから先生と2人きりでというのは、すごく新鮮に感じる。
おいしいおいしいと私のつくった朝食を食べる先生を眺めていると、
嬉しくて温かくて優しい気持ちになる、私をこんな気持ちにさせる先生は私にとってやっぱり特別なんだなーと感じる。
でもそれと同じくらい大切に、特別に思っている、アビドスのみんなはここにはいない。それを寂しく思う。
みんな心配してるんだろうなー。
「ホシノ」
「へ?」
「さっきからぼーっとしてるけど大丈夫?顔色もあまり良くないよ。」
「…おじさん、そんな顔してたかな?」
「不安なこと心配なことがあったら言ってくれていいんだよ。私は大人で、ホシノの先生だからね。」
「…私一人だけこんなに楽しんでていいのかな。
シロコちゃんもノノミちゃんもセリカちゃんもアヤネちゃんも…。
アビドスのみんなは私が急にいなくなって、心配してるんじゃないかなって。先生のおかげで状況が好転したとはいえ、まだアビドスの状況は良い状況ってわけじゃないし…お飾りでも対策委員会の委員長がいなくなったら困る案件なんかもあるだろうし。「ホシn
それに突然学校から、消えるなんて、そんなの今まで学校を辞めてった人たちと同じにしk「ホシノ!」あっ…」
「ホシノはお飾りの委員長じゃないし、しっかり委員長として頑張ってるのを私は知ってるよ。
対策委員会のみんなはホシノが学校を急に辞めたりしないこともわかってるよ。きっとホシノに何かあったと思って探しまわるはずさ。
かつてのホシノがそうしたようにね?」
「でも…「それに、前は退部届書いてから出て行ったしね。」…。」
「ホシノはそんな不義理なことしない…でしょ?」
「うん…。」
「ほら、せっかくホシノのつくってくれた朝食が冷めちゃうよ。
早く食べてしまおうよ!」
「……ありがとう、先生。」
どうやら私の不安な気持ちなんて、この人にはバレバレだったみたいだ。
2人で並んで食器を片付けをしながら、先生の顔をみる。
確かに不安や焦りはまだまだ尽きないが、今はジタバタせずに流れに任せるのもいいのかもしれない。
少なくとも、この人と一緒なら自分は大丈夫だと思った。
続かない…か?
猗窩座「お前も先生にならないか?」