異世界日記~ファンタジーはいらない~   作:kohet(旧名コヘヘ)

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異世界日記③仲間候補が厄ネタは王道展開

43日目

あと数日でエリ公に貰った地図とは別の街に到着すると思われる。

数キロごとに休憩所が設けられているので、遠回りになるが私道沿いを歩いている。

計画性のない私道は蛇の様に曲がりくねっており、当然現代のような整備はされていない。

…休憩所は崩壊寸前のボロ屋であり長年手入れがされていない。当然、雨漏りもする。

 

休憩所の柱等に書かれた罵倒等を纏めると、ボロ屋は王の命令で建てさせられたらしい。

進軍等を考えて休憩所を作り、場合によってはそのまま簡易な軍施設にする。

森という境界があるのだから魔族対策に無駄な労役という感じで愚痴っていた。

隠されていたが、文字を掘る程暇だったのだろうか随分な物言いである。

ついでに思い返すとエリ公も等魔族ですら森に住みはしないと溢していた。

備えとしては個人的にアリだとは思うのだが、流石に用途が限定的過ぎる。

 

これらを建てさせた王は机上でしか物を考えていないような人物だとわかる。

恐らく、将来的な懸念や見通しはあるが現場のことを考えられないタイプだ。

 

万が一の防衛拠点にするだけあり、賊等を住まわせないような工夫はされている。

魔法契約に似た魔法陣があり、何かあれば兵士達が転移できるようになっていた。

だが、ここまでするのなら商人や村落と経済な流通も含めた計画を建てるべきだった。

私道は許可を得て敷設したのもあり整備されているが、休憩所は整備された様子がない。

エリ公も魔法陣等で転移してから森へ侵入したと思われる。

しかし、協会独自で似たような、より整備された施設を使っているだろう。

公共施設に世話になっておいて無礼かもしれないが、もう少しどうにかできなかったのか。

 

44日目

賊と思われる一団に荷馬車が襲われているのを発見する。

牽制で弓矢を放ち、話し合いを求めたが賊は普通にキレて襲い掛かってきた。

賊に負傷させつつ撤退させ、荷馬車の主人に恩を売り相乗りさせて貰うことにした。

主人は冒険者ギルドからの護衛を乗せていたようだが、役に立たなかったらしい。

護衛は五人中三人死亡、遺体は遺品を回収した後埋葬した。

 

死者の中に恋人がいたのか随分荒れた様子の女冒険者がいた。

もう片方が宥めていたが、正直気まずくて話しかけにくい。

賊が再度攻めて来ることを伝え最低限の情報共有をした。

レベル7と10の回復役と魔法使いとのことだった。

ちなみに、荒れているのがレベル10の魔法使いである。曰くD級冒険者らしい。

こちらはレベル20(賊を撤退させたら上がった)の野良のレンジャーと伝えた。

なお、かなり驚かれた。エリ公らの平均が60くらいだったので感覚が麻痺していた。

エリ公にはレベル15で冒険者でも高い方と言われていた。

 

何故、あいつらを殺さなかったと女魔法使いからキレられた。

立ち回りには自信があるが、そこまで強くないので足を封じて逃げる以上は無理と伝えた。

主人が声に反応し、様子を気にしたので誤魔化しつつその日は夜警を担当することにした。

ヒーラーの子が気にしていたが仲間を失ったのだから休めと押し切った。

 

45日目

夜警中に仕留めたモンスターを見た荷馬車の主人が商人の目つきが変わった。実に良く見て来た金の目である。

曰く、冒険者ギルド所属でないなら直接取引できないかとのことだった。

遠巻きの冒険者二名の表情を伺うとグレーゾーンらしい。

冒険者ギルド所属ではないが、顔立てしないと不味いだろうと誤魔化した。

こういう取り決めは冒険者に帰属するだろうと推測し、狩ったのは冒険者ではない為ギルドに訴えて値引きくらいはありなのではと提案した。

商人も妥協というか最初からその気だったようで合意した。

 

警備交代の際に冒険者二名にモンスターに関して余計なことをしたか確認したが感謝された。

曰く、二人ではギルドの討伐実績に残ってもやや困るらしい。

昨日の件で気を使われたとわかったが、そのまま受け入れることにした。

昼まで寝て冒険者ギルドについて話をしたり、主人と少し密談したりした。

 

46日目

魔法使いが魔法を使うところを目撃した。

初めての異世界魔法である。魔法使いのは黒魔法という分類らしい。

空気中のマナに命じて使用するらしく、エリ公の聖典にあった記載も含めて理解できた。

その日の夕方、『Wasser』と水を出す呪文を唱えてみた所成功した。

基盤となる知識があり、かつ実践している様子を見たので簡単な物ならば使えそうである。

魔法使いにグチグチ言われたが、知識はあったが使い方がわからなかったと説明した。

ヒーラーが逆なら良くいるが、珍しいと言われた。回復役は白魔術が使えるらしい。

魔法使いはレンジャーというよりも『セージ』ではないかと言われた。

ガリ勉野郎と馬鹿にされたと悟ったのでエリ公の使っていたエラーノ語で捲し立てた。

二人とも自分が話せることに驚いていた。だが、エラーノ語での罵倒は理解していたので共通語として機能しているのを確認できた。

なお、商人とはエラーノ語での書面契約を結んでいる。契約内容はキチンとしておかないと後で面倒臭い。

 

47日目

街まで後少しというところで暗くなり、明日早朝に街へ入ることとなった。

賊の類が攻めて来ないかと思ったが、商人曰く想定外に強い護衛と判断して襲ってこないだろうとのこと。

念のために街に入るまで警戒することにした。

街に入れば手続きの後にお別れになるが、約二名何だか話したそうにしている。

喪失感から来る変な感情だろうとは思うが、二人は格上の賊相手に生き残っていただけあり優秀である。

話だけ聞くことにして筆を置く。日記帳も商人から買えたし余裕がある。

 

48日目

二人共厄ネタだった件。自分から見て優秀という時点で想定すべきだったか。

一応、会って数日の相手に話すなと叱っておいた。

自分は気にはしないし利用する気もないが悪党なら利用するぞと念入りに。

 

あの時の賊が賊でない、正確には別の意図があったと思われる。

…最悪の可能性だが、引き際が丁寧だった。

本人達は気が付いていないが、逆に保護しないとこちらも不味い。

自分だけ逃げようと思えば勿論容易だが、このまま見捨てるのも気不味い。

 

冒険者ギルドに所属することにした。盾はあった方が良い。

 




・冒険者ギルド
特定の国家に属さない組織の一つ。
孤児から名のある名家の貴族、訳アリまで在籍する組織で対モンスター中心の依頼を熟す。
FランクからAランクまであり、Dランクは技能持ちかつ信頼できる人材。
Cランクまでいけばギルド側からの保証を与えられるが、それ未満は有象無象扱い。

・商人
警護にDランク冒険者を雇っていたが5人中3人が死にかなり危ういところだった。
都合良く助けてくれた男に警戒したが、裏がないと確信し感謝している。
それはそれとして無知があれば付け込む気でいたが、普通に躱されたので友好的な関係構築の為に色々恩を売りたがっている。

・冒険者5人
5人一組で活動していた若いチーム。
魔法使いやヒーラーの教養が高く、仲間も実力はあった為に実力が正当に評価されていた。
まもなくCランクという人権が得られそうなところで無念の戦死。
魔法使い、ヒーラーともに10代女性であり容姿端麗。
男三人で誰が告白するか裏で話していたりした。
痴情の縺れ等でチームが破綻しないようにCランクになってからのつもりが戦死、奇しくも命懸けで抗ったお陰で奴が来た。

・賊?
賊にしてはやたら強い賊。
天下に名を轟かせる大盗賊ならレベル40以上あったりするが、大抵はレベル5以下でありDランク冒険者以上なら負けることはない。
襲って来た賊はレベル20~30あった。理不尽にも横入した野郎に足をやられて追えないので諦めざるを得なかった。

・エリ公
平均レベル60の化け物集団。教会所属のエリート集団である。
なお、それをデバフありの環境とはいえ確実に撒くことができる野郎は頭おかしい。

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