ダンジョンで運命を変えるのは間違っているだろうか   作:ぺこぽん

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アストレア・ファミリア救済ルートを書きたくて書きました。
アストレア・レコードも含みます。

ちなみにヒロインは未定です。


出会い

 

 ──―大切な約束をした。 

 

 もう、きっと思い出すことはない。

 だけど。

 

 すごく大切な、忘れてはいけない約束だった気がするんだ。

 

 ──────────────────―

 

 18階層。

 迷宮内のオアシスだ。

 闇派閥(イヴィルス)との闘いの最中。

 アストレア・ファミリアは、一時の休息に訪れていた。

 張り詰めていた空気を解き、気分を入れ替える。

 

「さ、休憩は終わり。地上に戻りましょう!」

 

 そして、アリーゼの声で全員が腰を上げた。

 再び戦場にと赴くために。

 

「……そんな日は来ない。来させない」

 

 ただ、その中で一人だけ。

 リューは柳眉を顰め、呟いた。

 

 ──―大切な仲間たちと交わした約束。  

 

 そんな運命は絶対に、認めないとばかりに。

 

 

 

 

 

 

「なんだ? なんかリヴィラの方で騒ぎが起きているみたいだな」

 

 狼人のネーゼが、その鋭い聴覚で騒ぎを聞きつけた。

 

「まさか闇派閥(イヴィルス)の襲撃!?」

 

 リューが焦燥を顔に出す。

 

「クソッ、またかよ! 息つく暇もねえなぁ!」

 

 ライラの悪態に、アリーゼが号令を掛けた。

 

「行きましょう!」

 

 

 

 リヴィラに街に入ると、杞憂だと分かった。

 喧騒こそあれ、血と騒乱の香りはしない。

 人集りはあれど、騒がしのはここでは通常営業だ。

 

「何があったのかしら」

 

 アリーゼが最後尾から背伸びをして、覗き込む。

 

「あん? な、……紅の正花(スカーレット・ハーネル)!」

 

 アリーゼに気付いた冒険者の男が声を上げた。

 

「お、おまえら【アストレア・ファミリア】……!」

 

 ざわざわと声が広がった。

 

「あら、自己紹介は不要かしら? リヴィラの住人にまで名が知れてるなんて光栄ね!」

 

「いや、知らねぇわけねぇだろ……」

 

「私達も随分と有名になったものね! さっすが私達! フフーン!」

 

 突然、両手を腰に当てて鼻高々となるアリーゼ。

 眼帯を左目に嵌めた男はうわぁ、面倒臭ぇという顔だ。

 

「団長、話が進まない。それで、一体何があったのだ」

 

 輝夜が一歩前に進み出た。

 

「ガキだよ、ガキ」

 

 人込みが割れ、アリーゼ達を騒動の中心に通す。

 

「24階層に行ってたパーティーの前に、一人のガキが現れやがったんだよ」

 

 この街の有力者である男は説明を始めた。

 

「突然襲い掛かってきやがってよ。うっかりモンスターと間違えて、殺しちまうところだったそうだぜ」

 

「襲い掛かる……? どういう事かしら」

 

「知らねえょ。とにかく今はふんじばってとっ捕まえてる」

 

 男の案内で建物の一室に入る。 

 そこには、柱に後ろ手で縛られた子供がいた。

 

「ひっでぇ……」

 

 鼻を押さえてネーゼが思わず声に出す。

 血の匂いがそこには充満していた。

 

「ちょっと血だらけじゃない!? まさか貴方達が!?」

 

「貴様──―!」

 

 見目麗しい少女達。

 特にエルフの鋭い視線に、男は慌てて弁明した。

 

「違ぇ! 俺達は何もしてねぇ!! 出くわす前からそいつはその恰好だったんだッ!!」

 

「ほんとかよ? 嘘じゃねぇ……よな?」

 

 男の追及はライラに任せ、アリーゼは子供に近付いた。

 顔まで覆う赤色かと思われた長髪は、血に染まった黒。

 痩せこけた手足に、こけた頬。

 

「私達より少し下、10歳位かしら。それにしても……。マリュー、治療をお願い」

 

 気を失っている子供の縄を剣で切った後。

 アリーゼは治療師であるマリューを呼んだ。

 

「うん。アリーゼちゃん、わかったわ」

 

「っ、この子。右腕が折れてる!」

 

 体の様態を確かめていたアリーゼは声を上げた。

 ぼろ雑巾の様な衣服から覗く右前腕。

 紫色に変色していた。

 それだけでなく全身血まみれで、あちこち傷だらけだ。

 

「ほぅ、見た所折れたのはごく最近……何もしてないというのは嘘ですなぁ」

 

 輝夜が目を細め、その圧に男は一歩後ろに下がった。

 

「わ、わかった。認める! そいつの腕を折っちまったのは俺達だぁ!」

 

「罪を認めるというのですね。ならば、しかるべき報いを」

 

 平身低頭した男に、リューは木刀に手を掛けた。

 

「だが、誓ってそれだけだ! ただ、派閥(ファミリア)開錠薬(ステイタスシーフ)で確認しようとしただけだ!」

 

 男は弁明を続ける。

 

「そいつが、あんまりにも暴れるからだ。しょうがねぇだろ! ここは託児所じゃねぇんだ!」

 

「…………」

 

 焦りからか非合法な代物の名が、ぽろっと男の口から飛び出す

 正義と秩序を司る女神のファミリアとしては、見過ごすわけにはいかないが。

 だが、それよりも優先すべきものがあった。

 

「どうマリュー?」

 

「う~ん。傷は癒えたけど……失った血までは戻らないわ」

 

 床に横たわった子供は目を閉じたままだ。

 150C(セルチ)もないだろうか。

 傍目にも栄養失調とわかる体だ。

 

「小人族……じゃなくてヒューマンよね」

 

「随分と痩せこけていますけどね」

 

「もしかしてパーティーが全滅したのかしら……」

 

「よくある話だぜ。迷宮の闇に取り残されて、気が狂っちまうってのは」

 

「惜しいな。中層まで行ける冒険者が……何も()()()に」

 

 全員でそんな言葉を交しあう。

 アリーゼが子供の顔に掛かった髪を払いのける。

 

「すごく可愛らしい子ね」

 

 言葉通り、線の細い整った顔が見えた。

 そして次の瞬間、子供の目が開く。

 白銀の瞳がアリーゼの瞳を直視する。

 

「あ、目覚め……」

 

「ああ……あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝ッ!!」

 

 突如の絶叫。

 整った顔を歪ませ、子供は悲痛な叫び声を上げた。

 

「アリーゼ! マリュー! 下がって!」

 

 リューの警告より速く、子供が飛び退いた。

 まるで歩き方を忘れたかの様に四つん這いだ。

 そして大きく見開いた瞳がリュー達を捉える。

 

「あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝ッ!!」

 

 またも痛みに耐えかねる様な、絶叫を発する。

 

「こいつ、うるせぇ!」

 

 ライラが耳を塞ぐ。

 叫び声を上げながら子供は逃げ道を探す様に、視線を動かす。

 

「待って! もう大丈夫だから、安心して!」

 

 アリーゼが手を広げて滲み寄ろうとするも、子供は逃げ出した。

 獣の様に走り回り、アリーゼの手の下を掻い潜る。

 

「なっ!」

 

 そしてリューの足元に飛び込んだ。

 危害はない。 

 ただ、怯えて隠れるように、足にしがみ付いてきただけだ。

 

「離れなさい!」

 

 語気を強めるが、引き剝がせない。 

 自身には、自他共に認めるエルフの潔癖性がある。

 だが、怪我人ましてや、自身より幼い子を力尽くで振りほどく事は出来なかった。

 

「なんだ、リオン。随分と懐かれてんじゃねえか」

 

 警戒を解いたライラ達は力を抜いた。

 子供はリューの足元で、がたがた震えたままだ。

 ローブを掴み、決して離れようとはしない。

 

「もしかし、リオンの知り合いだった?」

 

「いえ……、この様なヒューマンに見覚えはありませんが」

 

 アリーゼが少し残念そうにしている。

 だが、困り果てたのはリューだ。

 

「ア、アリーゼ~。この子が離してくれようとしません……!」

 

「リオンったら。子供はね、ちゃんと笑顔で目線を合わせればわかってくれるものよ!」

 

 助け舟を出そうとセルティが近づく。

 だが、子供はすぐに体を震わせ、怯えた用に隠れてしまう。

 

「さ、この子リオンに任せるとして……」

 

 アリーゼはこちらの様子を見ていたリヴィラの住人に言い放つ。

 

「この子、私達が貰い受けるわ! このまま放っておくわけにはいかないし!」

 

 異論はない。

 元々、オラリオの秩序に携わってきたファミリアだ。

 迷子。

 というのは語弊があるが、その対応も責務の内だ。

 

「ああ、是非そうしてくれ。こっちはその方が助かる」

 

「決まりね! じゃあ、もしこの子の仲間が現れたらギルドに来るようにちゃんと伝えてね!」

 

 散らばっていく住民達。

 薄情だとは思わない。

 命を落とす冒険者など、星の数ほどいるのだから。

 

「ひゃうっ!」

 

 変な声が聞こえた。

 

「うん?」

 

 仁王立ちしたままアリーゼは、首だけ振り返る。

 すっとんきょんな声を出した主はリューだ。

 

「て、手を離しなさいっ!?」

 

 しゃがんでいるリュー。

 子供をローブから引き離す事には成功していた。

 だが、その手。

 

 子供の手がリューの手を握っていた。 

 いや、握るというよりはしがみついているという方が正しい。

 

「──―う~ん」

 

 アリーゼは少し片眉を下げ、困り顔を浮かべた。

 リューの力を使えば振りほどくのは簡単だ。

 

 だが、それをしないのは何故か。 

 他者の接触を忌み嫌うエルフの矜持。

 弱者を助けんとせん正義の誓いか。 

 その両者の均衡か。

 

 ──―それとも。

 

「ア、アリーゼ~! 皆も! 笑ってないで助けて下さい!!」

 

 リューの叫びがリヴィラに木霊したのだった。




ルビふってみましたけど以外と面倒臭いですね。
色々と続くかどうかわかりません。
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