HENTAIの野望〜キヴォトス同人誌化珍道中〜   作:伝説の超三毛猫

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あっという間にお気に入り3000突破、UA48万の中間まで来た……本当にありがとうございます。これからも頑張りまず。

ただ、ヒフミTシャツのネタに対する反応が意外と淡泊で驚きました。
やはり最新の中の人ネタはもうちょい早く出すべきでしたか…

さて、黒服との会談回です。
ぶっちゃけ言いますと、スーパー考えました。
もうこういう回は出したくない。頭カラッポのエロ&ギャグ回が書きたい。


悪人(おとな)の戦い

 黒服と出会った俺は、黒服の案内されるがまま、一つの喫茶店に案内されていた。

 大通りから外れた、裏の喫茶店のドアをくぐると、鈴の音と同時に「らっしゃい」とロボ店主の無愛想な声が聞こえた。

 店内は和風モダン……大正・昭和を感じさせる椅子とテーブルではあるが、客足は世辞にも良いとは言えない。閑古鳥が鳴いている。

 

「…ホントにここで良いのか?」

 

「えぇ…この店、実はとても良い豆を使っているのです」

 

「そうなのか……じゃなくて。

 話なら、ビルの中とかじゃないんだなって思ったんだよ。

 悪い大人なら金持ってんだろ。ビルの一つや二つはどうしたと思ってよ」

 

「お茶に誘ったのは私です。それに……貴方を私のビルに招いている絵面は、世間体にはかなり誤解を生みやすいものでして……」

 

「今のこの状況もだいぶマズいだろ」

 

「クックックッ……それもそうですね」

 

 黒服が一番奥の席に足を踏み出す。

 だがそれより先に、喫茶店の一番窓際に近い席に座って同席を促した。

 

「おーい、こっちこっち」

 

「ククッ、成る程…分かりました。飲み物は何になさいますか?」

 

「ホットコーヒーで」

 

「分かりました。すみません、ホットコーヒー2つ」

 

「はいよ」

 

 黒服が慣れた様子で店主を呼び、流れるようにホットコーヒー2つを注文した。

 すぐに店主が去り、訪れる沈黙。

 向かいに座った黒服は、手を顔の前で組んで肘をテーブルについたゲンドウポーズをしていて、なかなか表情が伺い知れない。

 そんな中で、先に沈黙を破ったのは俺からだ。

 

「俺と話がしたいとは言ったが……聞きたいことでもあるのか?」

 

「えぇ勿論。お声掛けしたのもまさに、尋ねたい事があるからで―――」

 

「答えても良いが……タダとはいかねぇ。こっちからも色々聞かせて貰うぞ」

 

「…ほう?」

 

 黒服の声色が少し変わった。

 

「ソレが何を意味するか分かっておいでですか?」

 

「契約……だろ?

 こう見えて俺はお前を信用してるんだぜ?

 ベアおばとは違う、契約と言う名の筋は通す大人だ」

 

「……」

 

「加えて、お前は研究者とみた。わざわざ俺に会いに来たのは……俺の持つナニカ目当てだろ?

 そんなお前からすれば、何も得られない…という結果は出来るだけ避けたい……

 俺としても、黙って情報を持っていかれたくない。ましてお前に借りを作るなんて尚更な」

 

「………なるほど」

 

「だから、この提案は俺から申し込む契約の提案だ。

 イヤならこの蹴ってもいいんだぜ?

 そしたら俺は貝のように口を閉ざすだけだ」

 

「…無理矢理割らせる可能性は考えなかったので?」

 

「あぁ、無い。先生の機嫌を損ねるからな」

 

 そこまで言い切ると、黒服はチャンチャラおかしそうにクックックと笑う。

 そしてテーブルにドンと手を突いて覗き込むようにコチラに迫る。

 

「何を言い出すかと思えば…!

 そもそも私はゲマトリア……貴方の知る悪い大人の仲間ですよ?

 私が先生の意向を無視して貴方を実験にかけるかもしれないのですよ? 契約を迫るにはあまりに弱い……!

 貴方は…今の言葉で私が話に乗るとお思いなのですか…? 本当に…?」

 

 大人として、威圧感たっぷりに真意を確認したつもりなのだろう。

 その威圧は、心臓を掴まれるように恐ろしき感覚。

 

 でもそれは……バシリカでのゴルデカとの会話の時に覚えた。

 あの時以上に、心を落ち着かせて答えることができる……!!!

 

「あぁ。お前は先生との対立を避ける。どんな手を使ったとしても……!!」

 

 臆することなく放った答えに、黒服は再びクックックッ、と笑い出した。そして、またゲンドウポーズへと戻っていく。

 やがて………折れた。

 

「えぇ、その通りです。先生と敵対する気はありませんからね」

 

 それに、と続ける黒服。

 

「貴方に対して行いたいのは実験ではなく対話です」

 

「お前は対話も実験だとか言いそうなんだけど」

 

「それもそうですね、失礼。クックックッ…」

 

「ホットコーヒー2つ、お待たせしました」

 

「あぁ、失礼」

「ありがとうございます」

 

 コトン、と白磁のコーヒーカップが二つテーブルに置かれた。

 ロボ店主に二人してお礼を言うと、「ごゆっくり」と言いながらカウンターの奥へ引っ込んでしまった。

 若干空気の読めない店主が置いていったコーヒーが湯気をたてて、独特な芳香で席を包む。

 俺は角砂糖を数個入れて、黒服はそのまま……示し合わせたかのようにコーヒーを一口、飲み込んだ。喉が焼けるような熱さ、砂糖の僅かな甘味、コーヒー特有の苦味に喉から鼻に抜けていく豊かな香り…………それらが大正レトロな店内とマッチして、非常に心地良い。

 

 

「……で、なんの話だったっけ?」

 

「えぇと…先生と敵対するつもりはないから、互いに質問をする契約に乗りましょう、という結論だった気がしますよ」

 

「そうか」

 

 コーヒーカップを傍らに置いて、舌と頭を回す作業を再開する。

 黒服は、俺との質問を交わし合う契約に乗り気のようだ。

 

「契約ですから、そうですね…

 互いにひとつずつ聞かれた事を答える、というのはどうでしょう。

 契約内容として……『質問には必ず答えること』『質問交換を終わらせるタイミングはどちらかの任意によるものとする』、というのはどうでしょう?」

 

「あー…じゃあそれにルールを加えてくれ。

 『質問に答える際に嘘を言う事を禁ずる』この一つだ」

 

「良いでしょう」

 

 パッと見、ただの対談でしかないだろう。

 しかしお互い、分かっている。

 コレは大人の戦いだ。

 自分の秘密を守りつつ、相手から知りたいことを引っこ抜く。

 いかに悟らせず、相手の上を行くかの…そんな戦いが。

 

 ―――悪人(おとな)の戦いが、今始まった。

 

 

⋆

 

 

「では始めましょうか。

 スバルさん、お先にどうぞ」

 

「え、いいのか?」

 

「モチロンです。なんでもお聞きください」

 

 先攻は譲ってくれた。

 それが大人の余裕なのかなんなのか知らないが、様子見で何か聞いてみるか。

 ……純粋に興味の湧いたことを聞いてみよう。

 

「じゃ、一つ目の質問だ黒服」

 

「はい」

 

「お前らのゲマトリア加入順&時期を教えてくんない?」

 

 黒服は俺の質問にふむ、と頷く。

 ニヤニヤしながら黒服は俺の質問に「知っている範囲で宜しければ」と前置きをしながら、最初にこう言った。

 

「まず最古のゲマトリアはどなただと思いますか?」

 

「え? お前じゃないの?」

 

「いいえ。ゴルコンダとデカルコマニーです*1」

 

「ま、マジか……!!?」

 

 意外な答えが出た。

 まさか、あの首無し&肖像画が最古メンだったとは。

 てっきり黒服が最古参だと思ってたわ……!?

 更に黒服が続ける。

 

「私が入ってきたのはとある人物の誘いを受けてのことです。

 程なくしてマエストロが加入して、それから……数百年後にマダム…ベアトリーチェが加入したのですよ*2」

 

「へぇ~、ベアおばって新参だったのか。そこも意外だわ」

 

「クックック…こんなところで宜しいでしょうか?」

 

 黒服の返答を「あぁ十分だ」と言って打ち切った。

 ゲマトリアの加入順と時期について訊いたが……俺が知りたかったのはそれだけじゃあない。

 ゲマトリアには俺の知らない誰かがいる。更にコイツらには人間の寿命を超越する術がある。

 黒服の発言にあった「とある人物からの誘いがあった」「黒服&マエストロの数百年後にベアおばが加入した」……という発言からの仮説だ。

 確証はないが……だからって何もないと思うのは楽観的過ぎるだろう。

 

 こんな感じで、質問の答えだけじゃなくて言葉のひとつひとつに気を配らねばならないのだ。

 もちろん、黒服の発言を聞く時だけじゃあなくって、俺の発言にも注意が必要だ。

 言い回し一つで、コイツは鋭い考察を突きつけてくる可能性が高い。

 

 特に俺の最(・)重(・)要(・)な(・)秘(・)密(・)――俺が断片的に未来を知っている事実と元大人であった事実――を悟られてはいけない。

 先生に話す前に黒服にバレましたなんてあっちゃあいかん。現段階での敗北条件はこれだな。

 

「では、私の番です」

 

「おう…何でも来いや」

 

「貴方はいつ、ゲマトリアを知ったのですか?」

 

「!」

 

 こ、こいつ……!

 サラっと答えづらいことを聞いて来やがる…!

 

 俺がゲマトリアを知ったのは原作知識。

 つまり、俺が「間島スバル」として目覚めた時……3年前だ。

 だが詳しい事は俺も分からない。俺の実感として、電(・)車(・)が(・)入(・)っ(・)て(・)く(・)る(・)駅(・)の(・)ホ(・)ー(・)ム(・)に(・)突(・)き(・)飛(・)ば(・)さ(・)れ(・)て(・)事(・)故(・)っ(・)て(・)死(・)ん(・)だ(・)と(・)思(・)っ(・)た(・)ら(・)キ(・)ヴ(・)ォ(・)ト(・)ス(・)の(・)生(・)徒(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)んだ。原理なんて分かる訳がない。

 

 それに、この情報を先生より先に黒服に話すなんてとんでもない。

 しかし“契約”によって嘘も黙秘権も使えない。ならば、嘘をつくことなく凌ぎきるしかない。

 

「アビドスの事件の後…カイザーPMCの理事が指名手配された頃に、先生から聞いた。お前の特徴はそん時かなり詳しく聞いたからな………」

 

 聞いた、と言うことで時期を誤魔化す。

 先生から聞いた時期と詳細は本当だが「先生から聞く前から知っていた事実」は一言も言っていない。

 

「クックック…その答えではスジが通りません。

 それでは、マ(・)ダ(・)ム(・)を(・)知(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)理(・)由(・)にはなり得ませんよ」

 

 黒服が不気味な笑みを崩さぬまま指摘した。

 確かに、今の俺の答えではベアおばを知っていた理由にはならない。

 なぜなら、先生と黒服は、ホシノおじさん返還の交渉の場においてベアおばの存在を一度も口にしていない。

 だから、先生が知らないハズのベアおばを知っているのはおかしい、と。

 でも大丈夫。そう指摘された場合の想定はしている。

 

 しまった、とでもいうような表情を出す。勿論演技で。

 

「…あー、そこを失念してた。スマン。ベアおばの件はその後だな。

 アリウスが一度目に侵入してきた時……捕まえたヤツを尋問したところ、ベアおばの存在を吐いてな……

 あの尋問の場に先生はいなかったから、当時先生が知らなかったベアおばを俺は知っていたんだ」

 

 これでいいか?……と問うて黒服の様子を観察に入る。

 黒服の、真っ黒な面の中の白い瞳と合って………黒服は再びクックックと笑い出した。

 コイツ結構クックックって言ってるな。

 

「……………まぁ、それで良いでしょう」

 

 何秒か、間を置いてからのこの返答。

 コイツ、明らかに俺が誤魔化したのに気付いてるな。

 結構気を張って言葉を選んだのにそうやすやすと見破ってくると恐ろしいと言うか、萎えると言うか、流石は現役の大人というか。

 俺も元社会人とはいえ3年のブランクが効いてるな。

 

 生徒なら今の説明で確実に納得していただろう手ごたえであっただけに侮れないぜコイツは。

 舐めていたつもりは微塵もないが、もっとギアを上げた方が良いだろう。

 

 

「…次、貴女の番ですよ?」

 

「おっと、そうだった」

 

 さて、再び俺のターンだ。

 何を聞こうか……。

 あっちはイキナリ「いつゲマトリアを知った?」という質問をブチ込んできたからなぁ。

 こっちも踏み込んだ質問をするべきか?…しかし、ソレがキッカケで俺の重要機密がバレるような事態は避けたい。

 ……と、なると―――

 

「お前らは先生を敵として見ていない……まぁ、例外もいたが。

 じゃあ、お前らが共通して敵視しているモノって何だ?」

 

 これだ。

 予想はつくが、「俺が知らないハズのことを知っている」と悟られにくい質問にした。

 これに対する、黒服の答えは………?

 

「ふむ。我々の共通の敵、ですか?

 ……先生、だとは思わないので?」

 

「……確かにベアおばは先生に敵対してたし、命を狙っていた。

 でも黒服、お前は違うって言ったばかりだろう。むしろ協力さえ求めていた。そこも先生から聞いてるんだぜ。

 マエストロとゴルデカ……ゴルコンダとデカルコマニーからは、詳しく聞けてないから分からないけど…あ、でもゴルコンダはベアおばを『舞台装置』って扱き下ろしてたな」

 

「クックック……よく覚えていらっしゃるようで。

 確かに、我々ゲマトリアは先生に協力を求めました。残念ながら、断られてしまいましたが……

 しかしそれは、我(・)々(・)に(・)と(・)っ(・)て(・)先(・)生(・)が(・)計(・)画(・)の(・)最(・)大(・)の(・)障(・)害(・)と(・)な(・)る(・)で(・)あ(・)ろ(・)う(・)と断じているからです」

 

 黒服の答えに、俺は眉を顰めた。

 あからさまな欺瞞に満ちた詭弁であると、感じ取ったからだ。

 俺が予想していた答え―――それは「色彩」だ。

 ブルアカ最終章で別世界のキヴォトスから襲いかかってくる、次元を超えた災害的ナニカ。

 リアルタイムイベントでクロコ戦だけ知っている俺からすれば、その情報をもっと欲しいと思っていた所なんだが。

 気付いているのか否か、コイツは俺の知りたいものと違う情報を話しやがった。

 

「…冗談はよせよ、黒服。あの人、タダの人間だぜ。

 銃弾一発が致命傷になる先生のどこが、見た目化け物軍団のお前らの脅威になるってんだ?

 もっと恐ろしい相手の一つや二つ、あんだろ。お前くらいになると」

 

「とんでもない………我々を見た目で判断しない方が良いですよ。

 それに…あの人には、我々にも、貴女がた生徒にもない力がある。

 代償を支払う代わりにあらゆる奇跡を、縁を、運命を味方につける力が」

 

「………それって…!」

 

「大人のカード。

 他の要因も色々ありますが、彼が障害になり得るのはソレの影響が一番大きいと言えるでしょう」

 

 更に揺さぶって見るも、暖簾に腕押し。

 まるで決死のメタル斬りさえ避けるメタルスライムのごとく、のらりくらりと交わされてしまった。

 これは痛い………!こうなるくらいなら、身バレのリスクを負ってでももうちょいストレートに聞くべきだったか?

 

「では、次は私のターンですね。

 貴方は、貴方自身の神秘―――力について、どれくらい知っていますか?」

 

 黒服から聞かれた第二の質問。

 それは、俺自身の力についてどれだけ理解しているかを問うものであった。

 その答えを出そうと考えてみて―――

 

「(………あれ?)」

 

 俺は、自分が思っている以上に何も知らないことに気が付く。

 思えば、当たり前のようにかつての世界の技を再現しまくっていたが……細かい理論とか考えなかったなぁ。ジャンプ理論のもとにやってみた結果できたけど、コレってなんなんだろう。

 結局、この質問には正直に思ったことを答えるしかないな。

 

「……俺の神秘とやらは、そんなに大したものじゃあないと思う。

 この力は、確かに他のヤツは持っていないものばかりだが……結局使いようってモンだろ。

 キヴォトス最高の神秘のホシノ先輩とかには、敵わないと思うぜ」

 

「ックッ」

 

「?」

 

「クックッククククハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

 

 俺の答えを聞いた瞬間、黒服が大笑いしだした。

 口の中に抑え込むような笑いではなく、腹の底からの可笑しさを解放した笑い方。

 うるっせぇなコイツ。ここが喫茶店なの忘れてんだろ。迷惑だぞ。

 その雰囲気を察したのか、咳払いで先の哄笑を誤魔化した。

 

 

「クックククク……失礼。

 貴女の答えがまるで見当違いなのでつい」

 

「…そんなに変な事言った?」

 

「変……えぇ、えぇ。言いましたとも。

 貴女が『大したものじゃあない』などと…とんでもない。

 むしろ、貴女の神秘は実に興味深い! 小鳥遊ホシノに匹敵するくらいには。

 先生がいなかったら、今すぐに我々に引き込みたいくらいです!」

 

「………何のことだ?」

 

「ふむ……契約違反によるペナルティを受けている様子がない…。

 成る程、貴女は本当に何も知らないようですね……貴方自身の神秘について」

 

 ……俺の神秘について、か……。

 そう言われてみて、思い出したのはマエストロとゴルデカと出会った時の会話だ。

 たった今まで忘れていたことだが、アイツら……なんか意味深なこと言ってた気がする。

 

「………マエストロと会った日…あいつは、俺の事を『神と魔王を宿す子』と言っていた。

 ゴルコンダとデカルコマニーは、俺を何だと思っているんだって質問に、『狂気の主』と答えた。

 意味はまったくわかんねーけどな」

 

「クックック……なるほど、彼らはそう捉えるのですね」

 

 先程までと比べて明らかにテンションが高くなった黒服は、そのまま舌に脂が乗ったかのように話を進めだした。

 

「いいですか? 我々が観察した限り……貴方の神秘は他とは決定的に違う点が一つあるのです。

 そして、それによって他の神秘では為せないことが―――2つ、あるのです」

 

「んん?」

 

 俺と他の生徒で、決定的に違う点?

 それによって、俺にしか出来ない事が二つ?

 なんだ? 一体、なんのことをイッているんだ?

 ……イヤ、待てよ。

 決定的な違いなら分かる気がする。

 

 

「―――分かった」

 

「ほう?」

 

「俺と他の生徒の決定的な違い、それは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分自身がエロだと認識してることか―――!!!」

 

「残念ながら違います。クックック…ッ!!!」

 

 な……なんだと…!?

 エロじゃあない!?

 それなら一体、何だと言うんだ?

 決定的な違いってのは…

 

 

「貴女と他の生徒の違い。

 それは―――貴女に神(・)秘(・)が(・)二(・)つ(・)宿(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)ことです」

 

「神秘が………ふたつ……?」

 

 

 黒服が言ってのけた違い。

 それの意味が、いまいち掴み切れないような…

 待て待て。落ち着け。

 神秘………神秘か…

 

 黒服は確かホシノ先輩のことを「暁のホルス」と言っていた。

 いわずもがなエジプト神話のホルス神のことだろう。

 クロコ…つまり砂狼シロコ(我がシスター)も無名の司祭あたりがアヌビス神とかなんとかイッていた気がする。

 となると他の生徒も元ネタ……もとい神秘があるとか?

 例えるなら、アヤネがトト神で、セリカがバステト女神。んでノノミ先輩がネフティス女神………。

 

 ……あり得る。

 アビドスだけじゃあない。他のみんなにも、何かしらの神秘(元ネタ)があってもおかしくない。

 けれど……そんな神秘が、俺には二つ? それって………

 

「…それって……あり得る事、なのか?」

 

「無論、あり得ませんよ、普通は。

 だいぶ前に実験しましたが……神秘を他の神秘持ちに移植しようとしたところ、互いに拒否反応が起こって共倒れしました。

 あの時とは条件がかなり違いますが……神秘を二つ所有していて、尚且つどちらも拒否反応が起こらないのは初めて見ました」

 

「どういう原理なんだ、そりゃ?」

 

「推測ならいくらでも出来ます。両方とも我が強く且つ相性が良いとか、片方が昏睡に近い状態にいる、とかね。

 現段階では何とも言えませんが……研究のし甲斐がある、とだけ申し上げておきます」

 

 黒服も知らない事実、か。

 いったい、俺のこの肉体と魂どうなっているんだ?

 考えたことが無かった。そんなことよりも先に考えるべきことが山ほどあったから。

 でも。

 

「黒服。俺にしか出来ない二つの事って何だ?」

 

「……それが、三つ目の質問で宜しいのですね?」

 

「ホントはもっと違う事を訊くつもりだったが……無視できない事実が出てきたからな」

 

 俺の身体と力の特異性。

 たった今明らかになったソレは、今知るべきだと…そんな気がした。例え黒服相手にリスクを負ってでもだ。

 それを熟知した上で黒服に質問したところ、彼は「計算と観察による推察で宜しければ」と言ってから答えを口にした。

 

「一つは……『他の神秘に変化を促すこと』」

 

「変化……?」

 

「そう。関わることで、関わった神秘の性質を書き加え、時に書き換えてしまうのです。

 貴女の漫画を読んだ者の特徴が変わった事はありませんでしたか? 例えば……肉体的にも精神的にも極限に脆くなった代わりに不死性を手に入れた、とか」

 

「あ……!!」

 

 そう言われて真っ先に思いついたのはナギサのことだ。

 アイツ、最近人間辞めつつあるからな。

 だが、それもキヴォトスクオリティのギャグならあり得るかと思っていただけに衝撃だ。

 

「それだけではありません。

 アビドスの生徒に『六式』なる体術を教えたこと、貴女に従う神秘たちが個性を持ち始めたこと、アリウスの生徒達に慕われるようになったこと………

 それによって起こった変化は……すべて、貴女の行動がキッカケではないでしょうか?」

 

「そう…なのか?」

 

「恐らくは」

 

 ぶっちゃけ、ヒヨリの件はまだ実感が沸かないが……そういうこと、なんだろう。

 ……俺の行動で変わった人達、か。

 今すぐ何が出来るか分かることじゃないが……必要に応じて、責任を取る必要が出てくるか……?

 

 今は、置いておこう。答えの続きを聞く方が先決だ。

 

「さて、もう一つですが……

 ズバリ、『神秘解放が他のそれよりもケタ違いである』ということです」

 

「神秘解放…」

 

 それは確か……ブルアカにおいて生徒の星の数(レア度)を上げる機能の事だったはずだ。

 神名文字を使うことで、ステータスの上昇や親密度の上限解放とかがあったが…

 

「神秘解放とは、文字通り生徒に宿った神秘の本領を解放することです。

 一時的な身体能力の向上のほか、それぞれの生徒特有の能力を解放する事ができます。

 貴女の場合は……解放される上限が突き抜けすぎていて見えない事、です」

 

「上限が突き抜けている…?」

 

「例えば、他の生徒が神秘解放によって100から120の力を解放出来るものとするならば……貴女のそれは、100から200…或いは300にも手が届きうる。そういう代物です」

 

「そりゃあ、別格だな。…代償でも払いそうなくらいには」

 

 二つ目に出てきた神秘解放は、ここでは超サイヤ人化みたいなものらしい。

 その中で俺だけ超サイヤ人3みたいな強化を得られている事に、絶対反動あんだろと問えば、思った通り黒服はクックックと笑いながら、俺の懸念を肯定した。

 

「えぇ。ただでさえ一つの身体に二つの神秘を宿し、かつ安定を保つという無茶が成立しているのです。多用すると命に関わります」

 

「でも、俺はそんな強化形態になったことないぞ?」

 

「いいえ。兆候はアリウスに入った時に起こっているのです」

 

「え? いつ?」

 

「貴女がマダムを撃破した時の大技があったでしょう。

 あの時……実は一瞬だけ、扉を開いていたのですよ」

 

 意外だった。

 俺の神秘解放…黒服の言う事が正しければ、思ったよりも修得が近く、しかも危険だ。

 まさか、『擬・天地魔闘の構え』から放った必殺技が、神秘解放の一端だったとは思わなかったわ。

 ついでにあの黒服が「多用すると命に関わる」というオマケ付き。一体何なんだこの身体?

 

「クックックッ……考え込んでいるところ申し訳ありませんが、私からの質問に答えて頂けますか?」

 

「良いよ。なんだ?」

 

「今日、出会ってからというもの、貴女を見ていましたが……交渉事に手慣れ過ぎている。

 この手の勝負が駆け引きであると知っているご様子。子供の権謀術数ごっこに塗れたトリニティともまた違う。本物の取引現場を知っている言動でした。

 社会に出ていないにも関わらず……そんなことは普通ありえない。まるで……そう。

 まるで、子供の肉体に大人の魂が入っているかのようです」

 

「ッッ!!?」

 

「ズバリ尋ねましょう。貴女は一体、何者ですか?」

 

 黒服が出してきた比喩に、質問に、俺はすぐに声を出す事が出来なかった。

 やられた。脳裏をぐるぐる回っていたのは、その文言だった。

 

 俺はこれまで、黒服にボロを出すまいとあらゆる言動に注意を払っていた。

 しかし、それこそが子供らしからぬ雰囲気を生み、黒服に手がかりを与えていたっていうのか。

 一杯どころか数杯食わされた気分だ。

 

 とうに冷め切ったコーヒーに手を伸ばす。

 砂糖を入れていたハズなのに、コーヒーが苦かった。

 

 

 

 

 

 

 俺の答えをうんうんと頷いて満足そうにする黒服。

 

 あの致命的な質問の後、俺ももう一個質問したが、手ごたえがあったかどうかはわからない。

 で、俺が4つ目の質問を終わらせた後、黒服は質問を打ち切った。

 

「良いのか?」

 

「えぇ。想像以上の成果です。現段階に於いてはこれで十分です」

 

「そっか。じゃあ話は終わりだな」

 

「はい。本日はありがとうございました。

 付き合ってくださったお礼にここのお代は私から出しておきます」

 

「お、ありがとよ」

 

「いえいえ。……あぁそれと」

 

 コーヒーを飲み切り、コーヒー代を店主に払った黒服は、何かを思い出したかのように振り返って言う。

 

 

「貴女の神秘解放ですが……今軽く計算したところ、限度は2回です。

 2回…神秘解放を使った時、貴女の魂はこのキヴォトスから消滅する……そう思っていただきたい。

 1(・)度(・)限(・)り(・)の(・)切(・)り(・)札(・)であることを、ゆめゆめお忘れなきよう……」

 

「……なんでそんなこと俺に教える?」

 

「言ったでしょう。貴女はゲマトリアにとって興味深い存在です。

 ソレが失われるのは極力避けたい……そう考えるが故の自然なアドバイスですよ」

 

 そう答えて、喫茶店の扉を開けて出ていく。

 窓越しに去っていく黒服の背中を眺めながら、残ったコーヒーを全て飲み干した。

 

「―――潮時だな」

 

 そう思いながら。

 

 

⋆

 

 

 間島スバルとの対談を終えた黒服は、彼女との会話を振り返っていた。

 

「(私の予想通り…実に興味深いですね…)」

 

 ゲマトリアを知ったタイミングを誤魔化す手腕。

 神秘に対する理解・認識。

 最後の質問に対する答え。

 

「(それに―――4つ目の質問……)」

 

 

『黒服。お前はなんで、先生を知っている?』

『お前はなんで、“大人のカード”に代償があることを知っている?』

『なんでお前は、ホシノ先輩を「ホルス」と呼ぶ?』

 

『…間島スバルさん、質問はひとつずつ―――』

 

『落ち着け。これらの質問は、ある一つの仮説に辿り着くんだよ。

 黒服…お前はかつて、“大人のカード”を持ち外の世界から来た先生として、キヴォトスで生きていた。違うか?』

 

『!!!! そ、れは……』

 

『イッておくがこの質問には簡単に答えられる。

 ちがうのならば「違う」…それだけのことだ』

 

 

「(最後の最後で、私から一本取るとは…!)」

 

 黒服は、その質問に対して、はいともいいえとも言わなかった。言えなかった。

 契約で嘘と黙秘権を封じたのはこれが目的かと気付いた時は後の祭り。

 せめてもの抵抗で、嘘を言わずに誤魔化すしかなかった。

 

 あまりに予想以上な舌戦の腕前で、予想したデータの半分も取れなかったが予想外の収穫はあった。

 しかし、それはそれとして、自身の正体にあそこまで予想立てる人間が現れるとは思わなかったのだ。それも生徒から。

 生徒相手に大人の戦いで深手を負った。間違いなく黒服自身はそう思っていた。

 

「間島スバルさん……忘れることはないでしょうが……覚えておきましょう」

 

 誰に言ったでもないその一言は、裏路地の闇の中に消えていった。

 

*1:
公式の情報と考察班の噂を元にした独自設定です

*2:
公式の情報と考察班の噂を元にした独自設定です





Tip!
スバルと黒服は、互いに大人の戦いに「負けた」と思っているぞ!
同格同志の戦いの結果なんてだいたいそんなもんだ!



おまけ・受け入れがたい真実
黒 服「貴女に受け入れがたい真実をお教えしましょう…必死で否定し、拒否したくなるような…クックックッ…」
スバル「大袈裟な奴め。何を言うつもりだ?」
黒 服「鳥○○さんが亡くなりました」
スバル「何ィィィッ!?そんな馬鹿な!!あの人まだ60代だろう!!」
黒 服「残念ながら、本当です。私も衝撃でしたよ…」
スバル「あの人の漫画、好きだったからな…」
黒 服「ドラゴン○ールでは誰が好きでしたか?」
スバル「好きっつーか…嫌いなキャラいねーよ……ブウの犬撃った殺人鬼とバビディ以外は」
黒 服「ほぅ…魔人ブウ編は見たクチですか?」
スバル「あぁ。特にミスター・サタンの活躍がだな…」

以降、ドラゴンボールトークが続く………


おまけ②・ブルアカカバーソングアルバム:millennium②

1.DISCOTHEQUE/一ノ瀬アスナ
2.君が好きだと叫びたい/美甘ネル
3.イセカイジュエリー/室笠アカネ
4.夜に駆ける/角楯カリン
5.ガーネット/生塩ノア
6.年下の男の子/早瀬ユウカ&生塩ノア&黒崎コユキ
7.ギターと孤独と蒼い惑星/早瀬ユウカ&生塩ノア&黒崎コユキ
8.EXCITE/各務チヒロ
9.home sweet home/ヴェリタス



おまけ③・その後のモモトーク

スバル「コイツに会ったわ」
っ【ヒフミTシャツを着た黒服の絵】
シロコ『ブフッ』
アヤネ『シロコ先輩!?』
ノノミ『わぁ、シロコちゃんが噴き出しました〜』
セリカ『黒服じゃないの!!』
ホシノ『大丈夫?変な契約結ばされてない??』
スバル「バカ言うなセリカ」
スバル「よく見ろ」
スバル「コイツは」
スバル「ヒフミTシャツだ」
ホシノ『ブハッ』
セリカ『ブフォッ』
アヤネ『ふ、二人とも!!?』

好きなゲマトリアのはっちゃけ具合は?

  • NOMAL(先生のファン)
  • HARD(面白大人軍団)
  • VERYHARD(先生大好き倶楽部)
  • HARDCORE(敵でも味方でもなし)
  • EXTREME(敵対関係)
  • INSANE(宿命のライバル)
  • TORMENT(不俱戴天の仇)
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