双子の弟は小柄な少年   作:赫夜叉

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待っていた方はお待たせしました。第9話です。


9話

ザザー

 

「…………」バシャバシャ

 

雨が降りしきる真夜中、天道家に近づく一つの影があった。

 

「ここが天道道場……間違いないな」

 

その人物は良牙であった。彼はあの時うやむやになった勝負の決着をつけるため、乱馬が居候している天道家にまでやってきたのである。

ちなみにここに来るまでに1週間もかかっており、どういう訳か海を渡り沖縄の方へ行ってしまっていたのだ。

 

「(今日こそ乱馬の息の根を止めてやる……!!)」

 

心の中でそう決心しながら家の中に入った良牙は、2階にある早乙女家の部屋にやって来ていた。部屋の中には何故かパンダになっている玄馬、下着とパンツ姿の乱馬、パジャマ姿の祐希がそれぞれ布団で寝ていた。

 

「起きろ乱馬、俺だ、良牙だ」

 

「うぅん……」

 

乱馬の顔を覗き込む形で声を掛ける良牙だが、乱馬は起きる気配がない。

 

「勝負しろ。乱馬おい………起きんか!」

 

一向に起きない乱馬に良牙はパンチを放つが、乱馬は寝返りを打つ形でそれをかわす。その様子に痺れを切らした良牙は………

 

 

起きんかコラあっ!!

 

「っ!!??」

 

乱馬の耳元で大声を発した。当然そんなことをされた乱馬は目が覚める。

 

「起きたか乱馬、決着つけ「ガシッ」……え?」

 

寝ぼけている乱馬に声を掛けようとする良牙だったが、横から伸びて来た手に顔を掴まれたことで呆然とする。

 

おい……

 

かなりドスの効いた声が聞こえ、顔を掴まれたまま良牙は恐る恐るそちらに目線を向ける。

 

今何時だと思ってんの……

 

「ゆ、祐…希…?」

 

そこには瞳孔を見開いたものすごい形相の祐希が立っていた。男子校にいた頃にも見たことが無かった祐希の表情に良牙は思わず息を呑む。

 

こんな夜中に……出てけぇっ!

 

良牙を掴んでいる祐希は窓を開けるとそこから良牙を放り投げた。同時にパンダ姿の玄馬が乱馬を窓から放り出していた。

 

バタンッ!!

 

そして力強く窓を閉めると祐希は無言のまま布団に戻り再び寝息を立て始めた。

 

「…………(汗)」

 

玄馬は一瞬だが本気でキレていた祐希に戦慄を覚えながらも自身も布団を被り夢の中へ戻っていくのであった。

 

その後あかねと乱馬が夜中にも関わらずドタバタしていたのだが、祐希が起きることは無かった。

 

 

 

 

 

 

【祐希side】

 

「151、152、153……」

 

いつもより早く目を覚ました僕は道場でトレーニングをしていた。メニューは腕立て腹筋200回ずつ、木刀の素振り300回。

 

「ふっ、はっ!、せいやっ!」

 

その後は1人稽古に移行、素早く動いて蹴りや拳を突き出す。

 

「ふぅ、今日はこのくらいかな……」

 

一時間くらい経った所で稽古を切り上げ、風呂場でシャワーを浴びると、制服に着替え居間へ向かう。

 

「あら、おはよう祐希くん」

 

「おはようございます、かすみさん」

 

「おや、祐希くん、道場に行ってたのかい?朝から精が出るねぇ」

 

「いや、まあ………ところでちょっと聞きたいんですが、なんで乱馬はあんなボロボロなんですか?それとあの子豚は?」

 

居間には僕以外全員揃っていたんだけど、パンダになってる父さんはともかく、何故か乱馬がボロボロになってて、あかねちゃんは黒い子豚を抱えてる。

 

「乱馬くん夜中あかねの部屋に夜這いかけたらしいのよ。で、あかねにボコボコにされたって訳」

 

「だから違うんだよぉーー!!」

 

乱馬のこの感じからして、たぶんまた何か誤解されてやられたんだろうなぁ。まあ部屋に勝手に入る時点で乱馬も少しアレだけど……

 

対するあかねちゃんは乱馬をジト目で見ながら子豚に餌をあげてる。それにしても、あの子豚に巻かれてるバンダナ、なんか見たことあるような……?

 

「ッ!ぷ、ぷぎぃ………」

 

あれ?なんか僕のこと見て怯えてる……?どうしたんだろう?

 

「ほら祐希くん、ずっと立ってないで早く朝ご飯食べちゃいなさい」

 

「あ、はい」

 

うーん……まあいっか。僕はとりあえず子豚のことは保留にして朝食を食べ始める。

 

「うん、今日も美味しいです!」

 

「ふふ、ありがとう」

 

その後朝食を終えるといつも通り登校したけど、やっぱりあの子豚気になるなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後……

 

「はあぁ〜、美味しいぃ……」

 

いつも通り学校から帰った祐希は居間でおやつであるみたらし団子を食べていた。これは今日の学校帰りに和菓子屋で買ったものだ。

 

ガラガラガラ

 

「ん?誰か帰ってきたのかな?」

 

玄関の方を見てみると、女になっているらんまと怪我をしている女子達が数人いた。

 

「あれ?あの子達ってうちのクラスの女子達じゃ……」

 

「みんなどうしたのその怪我!?」

 

クラスメイトの怪我した姿を見てあかねが慌てた様子で玄関にやって来る。

 

「うう、あかね……」

 

「とりあえず、部屋に来て。話はそこで聞く」

 

 

 

 

あかねの部屋にて……

 

「それで、どうしたの?」

 

「うう…聞いてよあかねっ!」

 

「あたしたちみんなやられたの!」

 

「新体操クラブ全員負傷ってこと?」

 

あかねの部屋に移動した彼女達は怪我をした事情を話していた。ちなみにらんまも一緒に来て話を聞いていて、祐希も一緒に来て彼女達の手当てをしている。

 

「そう、卑怯な闇討ちにあったの!このままじゃ来週の出場辞退になっちゃう……」

 

「で、あたしが出場するってこと……?」

 

「お願いあかね!もうあんたに助っ人頼むしかないの!」

 

「だって!だって今度の試合は……」

 

「格闘新体操なんですもの!!」

 

「あんまり動かないで!包帯がちゃんと巻けない!」

 

「あ、ごめん祐希くん……」

 

手当てをされていた女子の1人が激しく動いたため思わず注意をする祐希。

 

「格闘新体操?なんだ、そりゃ?」

 

聞いたことのない競技名にらんまが首を傾げる。

 

「我が風林館高校と……」

 

「聖ヘベレケ女学院の代表同士が戦うの!」

 

「新体操の技と道具を使って!」

 

「……何だかよく分からないけど、分かったわ!あんた達の敵はとってあげる!」

 

「え、大丈夫なのあかねちゃん?こういっちゃアレだけど、新体操の経験ないんでしょ?いくらあかねちゃんでも流石にキツいんじゃ……」

 

あっさり助っ人を引き受けたあかねに祐希は経験も無いのに大丈夫かと心配の声を掛ける。

 

「平気よ、練習すれば何とかなるわ!」

 

「うぅ、ありがどうあかね……」

 

結局あかねは負傷した新体操クラブの代わりに格闘新体操の助っ人として出場することになった。

 

 

 

 

 

 

 

「で、安請け合いしたけどよぉ、お前道具とか扱えんのか?」

 

「まあ見てなさい」

 

その日の夜、道場では早速あかねが道具を集めて新体操の練習を始めようとしていた。その様子を祐希と男に戻った乱馬が見物している。

 

「ぶぎっ!」

 

「ん?」

 

ふとそんな声が聞こえ祐希がその方向を見ると、バンダナを巻いた黒い子豚が道場の入り口から入って来た。

 

「あっ、Pちゃん!」

 

「Pちゃん?」

 

「それってその子豚の名前?」

 

「うん、ピッグのPちゃんよ。この前考えたの」

 

「ふーん……ねえあかねちゃん。僕前から気になってんだけど、その子豚に巻かれてるバンダナ、なんか見覚えある気がするんだよ」

 

「ぷぎっ!?」

 

祐希がそう言った瞬間、あかねに抱えられてるPちゃんが異常に反応を示し、ダラダラと冷や汗もかきはじめた。

 

「そういや祐希はまだ知らなかったな、コイツ本当は良「ぶぎっ!」いって!この野郎!」

 

乱馬が何か言いかけたが、途中でPちゃんに噛みつかれたことで言葉が止まる。当然乱馬は怒りPちゃんを殴りつける。

 

「いじめないでって言ってるでしょ!」

 

だがその後ろからあかねが手に持ったこん棒で殴った。

 

「まあとりあえず、練習始めましょ。まずはこれからやってみようかな」

 

そう言うと、あかねは本格的に新体操の練習を開始した。

 

 

 

 

 

 

【祐希side】

 

「ゔがあぁぁぁ!!もう嫌ーー!!」

 

「あはは……」

 

練習を始めてから30分くらい経って、僕の目の前には地団駄を踏んでいるあかねちゃんの姿があった。

 

練習を始めたは良いものの、棍棒はキャッチできず床に落ち、リボンは体に絡まり、フープは通り抜ける際に割れる始末。

 

もうハッキリ言っちゃうと、あかねちゃんは新体操には全く向いてない。見ていて分かったけど、あかねちゃんはかなり不器用な類だ。道具を使って演技したりする新体操との相性は最悪と言っても良い。

 

「不器用以前に優雅さの欠片もねーじゃねぇか」

 

「不器用で悪かったわね!祐希くんも相性最悪なんて言って!」

 

ありゃ、途中から口に出てたか………でもこれじゃあ来週の試合に勝つなんて絶対ムリだ。

 

「俺が指導してやろうか?」

 

そう思っていると入り口の方から声がして、そっちに視線を向けると良牙くんが立っていて、その代わりにさっきまでいた子豚がいなくなってる。

 

「ん?あのバンダナって……あ」

 

ようやく思い出した。あの子豚が巻いていたバンダナは良牙くんが頭に巻いてるのと同じものだ!しかもその子豚と入れ替わるように良牙くんが現れた。

 

「まずはリボンだ、せいっ!」シュルル

 

「どわっ!何しやがる!」

 

なんか良牙くんが乱馬に攻撃してるみたいだけど、今僕の頭にあったのはあの子豚の正体だ。

 

その後のあかねちゃんへの良牙くんの指導を見ながら僕はそのことをずっと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、助っ人を頼むとは、往生際が悪いですね」

 

祐希達が道場にいる頃、天道家の前に怪しい人影があった。その人物は身に纏っていたマントを取り払う。

 

「天道あかね……この黒薔薇の小太刀が足腰立たなくしてさしあげましょう」

 

現れたのはレオタードを着た黒髪ロングの美少女。そんな彼女の手には巨大な木製のハンマーが握られていた。

 




ちなみに祐希には夜中に良牙を窓から投げた一件の記憶はないです。
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