双子の弟は小柄な少年   作:赫夜叉

11 / 15
最近仕事が忙しい……


10話

「よし、今日の特訓はここまでにしよう」

 

「はあ、はあ……ありがとうございましたぁ」

 

良牙があかねに指導を始めてからしばらくして、今回はここで切り上げることとなった。

 

「なかなかのリボンさばきだった。これならすぐに上達すると思う」

 

「本当!?良牙くん」

 

良牙からの言葉に思わずそう聞き返すあかね。

 

「いや、ウソに決まってんじゃねーか」

 

「乱馬は黙ってて!!」

 

「…………」

 

乱馬の発言に怒鳴り声を上げるあかねだが、身体にはぐちゃぐちゃになったリボンが絡みついており、お世辞にも上手には見えない。良牙も流石に無理があると分かってたのか、無言で顔を逸らしている。

 

「まあまあ、まだ初日だから。とりあえず、あかねちゃんはお風呂で汗を流してきなよ。ここは片付けとくから」

 

「うん、そうするわ」

 

祐希にそう勧められたあかねは風呂に入るため道場を出て行った。

 

「………さて、これでここにいるのは僕達だけになったね。もう隠さなくて良いよ、良牙くん」

 

「っ!?な、何のことだ?」

 

あかねがいなくなった直後、唐突に祐希の口から出た言葉に明らかな動揺を見せる良牙。

 

「誤魔化しても無駄だよ、もう見当はついてるから。良牙くん、君呪泉郷に行ったでしょ?」

 

「……どうしてそう思った」

 

「少し前から現れるようになった子豚と良牙くんの巻いてるバンダナが同じだったんだよ。しかもさっき子豚がいなくなるのと同時に良牙くんが現れた、そこで確信した感じかな」

 

「……ああ、そうだ。お前の言う通り、俺は乱馬を追って中国に行った。そして呪泉郷で泉に落ちてあんな姿になっちまった」

 

祐希の推理に良牙は隠し通せないと思ったのか、自分が呪泉郷の黒豚溺泉に落ち子豚になる体質になってしまったことを経緯を含め全て話した。

 

「へぇ〜、よく気付いたじゃねえか祐希」

 

「やっぱり乱馬は知ってたんだね。じゃなきゃただの子豚に対して殴るなんてしないだろうし」

 

祐希は乱馬が知っていることをなんとなく察していたらしく、呆れ顔で乱馬を見ている。

 

「おい乱馬!元はと言えば貴様が俺を蹴り落としたからこうなったんだからな!」

 

「だからそれは悪かったって言ってるだろ!」

 

「あ、それも乱馬が原因なんだ………」

 

良牙のそれにも乱馬が関わっていた事を知り祐希が遠い目になる。

 

「で、だ祐希。このことは内緒にして欲しいんだが……」

 

「あ、うん。別に良いよ。ちなみにあかねちゃんにはどうするの?このまま豚の姿でペットでいるの?」

 

「ふっ、それも悪くないとも思ってる……///」

 

そう話す良牙の頬は少し赤くなっており、明らかにあかねに対し好意を抱いているのが分かった。

 

「けっ、まったくよぉ。おめーもいいツラの皮してやがるぜ。普段は豚であかねの側にいて、いざとなったら元の姿でゴマすりやがって」

 

「ふっ、男のヤキモチはみっともないぜ乱馬」

 

「だっ、誰がヤキモチなんか……」

 

バシャ!

 

そう乱馬が言い終える前に、良牙はいつの間にか手に持っていたバケツに入っていた水を頭から被り、再び豚の姿になった。そしてそのまま道場から出て行こうとする。

 

「……良牙、てめぇ……またあかねの寝床に潜り込むつもりかーっ!!」

 

それを見て怒った乱馬は豚になった良牙を追う形で道場を出て行った。

 

「………ハァ、雑巾とモップも用意しないと……」

 

1人残された祐希は、水浸しになった床を見渡して深いため息をつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全くもう、本当なら道具片付けるだけですぐ終わることだったのに……」

 

そう愚痴りながらモップを持ち廊下を歩いている祐希。あのバケツに入っていた水はかなりの量で、全て拭き取るのになかなかの時間がかかってしまっていたのだ。すぐに終わるため片付けを引き受けたのにこうなってしまっては愚痴の一つも言いたくなるもの。

 

ドーン!

 

「っ!?2階から聞こえた…!」

 

突然2階から聞こえてきた大きな音に反応した祐希が急いで階段を駆け上がると、あかねの部屋から再び大きな音が聞こえた。

 

「あかねちゃんどうしたの!?」

 

ドアを開けると、そこにはあかねとレオタードを着た少女が向かい合っていた。部屋は散らかっており酷い有り様だ。

 

「祐希くん!」

 

「天道あかねのお仲間ですか?邪魔しないでください!」

 

そう言うとその少女は手に持ったハンマーを振り下ろしてくる。

 

「ふっ!はっ!」

 

しかし祐希はそれを難なくかわすと手に持っていたモップでハンマーをはたき落とす。

 

「あなた、誰ですか?」

 

祐希が警戒しつつそう尋ねる。

 

「ふふふ、聖ヘベレケ女学院新体操クラブ、黒薔薇の小太刀。来週ある試合の対戦相手です」

 

その質問に答えるように、レオタードの少女は自らを小太刀と名乗った。

 

「なるほど、昼間あの子達が言ってた闇討ちをしたのはあなたですか」

 

「闇討ちとは人聞きの悪い。私は勝利のためなら試合前も全力を尽くす主義なだけです」

 

「それが対戦相手を襲って出場できなくして不戦勝っていうことですか。随分卑怯な手を使いますね」

 

「言ってくれますね。とにかく、邪魔するのであれば容赦いたし「待ちやがれ!」へぶっ!?」

 

小太刀の言葉は言い切る前に乱馬が思いっきり開けたドアと壁に挟まれたことで阻まれた。その張本人である乱馬は豚になっている良牙を追いかけながら部屋の中を駆け回る。

 

「ちょ…ちょっと乱馬!またPちゃんいじめて!」

 

Pちゃんの正体が良牙と知らないあかねは乱馬に対し声を上げるが、乱馬はそれを無視し良牙を追いかける形で部屋を出て行った。

 

「待ちなさいよ乱馬!……もう」

 

「隙ありです!」

 

あかねが背を見せた隙をつき不意打ちを仕掛ける小太刀。しかし彼女は目の前のチャンスに気を取られ忘れていた。今この部屋には自分とあかねの他にもう1人いることに。

 

「ふんっ」

 

ゴッ!

 

「あだっ!?」

 

当然祐希からして見れば小太刀の姿は隙だらけだったので、モップの持ち手の方で頭を叩く。

 

「女の子だからって容赦しませんよ、こういうことをするなら尚更」

 

祐希は頭を押さえ痛がる小太刀にそう言い放つ。

 

「くぅ…あなたがいては分が悪いですね……出直して参ります!」

 

そう言うと小太刀はリボンを取り出し回し始めた。それと同時に周りに黒い薔薇の花びらが飛び散る。

そしてそれを利用し小太刀は部屋の窓から脱出、その際に自身の象徴と言える黒い薔薇を残していった。

 

「あ、あいつ……誰が部屋片付けると思ってんのよ…!」

 

あかねがそう言うように、部屋はさっきのことで荒れまくり、さらに薔薇の花びらが床に散乱していた。

 

「黒薔薇の小太刀……この礼は試合でさせてもらうわよ!」

 

黒い薔薇を手に持ちながらあかねは窓の方を向いてそう宣言した。

 

「……とりあえず片付けは手伝うよ」

 

先程道場の片付けを終えたばかりの祐希はあかねの肩に手を置いてそう言った。

 

なおこの後不用意にも小太刀を助けてしまった乱馬が彼女に惚れられてしまうことになるのだが、それは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【祐希side】

 

「よっ、おはよう祐希」

 

「うん、おはよう」

 

あの襲撃から一夜明けて、僕達はいつものように学校に登校していた。なんかあの後乱馬が小太刀さんに惚れられちゃったらしいけど、まあ闇討ちをするような人だから碌なことしないだろうし。

 

「天道あかね!覚悟!」

 

「ぬっ!」

 

そう思ってたらまたあかねちゃんをを狙って小太刀さんが襲撃をしてきた。今度は竹刀を持って襲ってきたけど、あかねちゃんは間正面からそれを掴んで受け止めた。

 

「またあんた!?朝っぱらから闇討ちとはいい度胸じゃない!」

 

「闇討ち?とんだ言いがかりですわ。私は乱馬様に会いにきたのです」

 

じゃあその手に持ってる竹刀は何?乱馬に会いに来たのならいらないでしょ。そもそもあかねちゃんに襲いかかる必要もないし。

 

「だったら直接……乱馬のところにいかんかーい!!」

 

そう言ってあかねちゃんは小太刀さんを投げ飛ばして、その方向にはちょうど乱馬がいる。

 

「乱馬さまお待ちになってー!」

 

「うげっ!」

 

逃げる乱馬を追いかける小太刀さん。まあ痺れ薬で無理やりキスされかけたらしいから苦手にもなるか。

 

「おお、これはあかねくんと早乙女祐希ではないか」

 

「あ…おはようございます……」

 

「おはようございます、九能先輩」

 

と、それを見ていたら九能先輩が僕達に話しかけてきた。

 

「あかねくん、新体操クラブの助っ人として試合に出るそうだね」

 

「そうですけど……」

 

「キミの優雅な新体操……目に浮かぶようだよ。激励に情熱の赤い薔薇を捧げよう」

 

「ど、どうも……」

 

あかねちゃんは渋々といった感じで薔薇の花束を受け取ってる。

 

「なんかすげえ嫌そうだぞ?」

 

いつの間にか隣に来ていた乱馬がそう言う。

 

「ふっ、早乙女乱馬。貴様は分かってないな。これは照れ隠しというのさ」

 

違うと思うけどなあ……。

 

「ら・ん・ま・さ・ま❤️」

 

僕達が話していると、いつの間にか乱馬の背中に小太刀さんがくっついていた。

 

「ん〜?う〜〜む……」

 

するとそれを見た九能先輩が乱馬と小太刀さんをじっくり観察し始めた。そしてしばらくすると唐突に乱馬の肩に手を置く。

 

「よし、交際を許す」

 

「は?」

 

自分に言われた訳でもないのに思わずそんな声が口から漏れた。いきなり何を言ってるんだろう?

 

「嬉しいっ、乱馬さま!」

 

「ちょ、ちょっと待てっ!!勝手に決めんじゃねぇ!それに俺はお前と付き合う気なんか……」

 

「………」プルプル

 

うわ、小太刀さん涙で顔がすごいことになってる。

 

「私が嫌いなのですかーーーっ!!」

 

「あ、いや、だから、あの……」

 

泣きながら詰め寄る小太刀さんに乱馬はタジタジになってる。乱馬婚約するの嫌なんだからハッキリ言った方が良いと思うけど……。

 

「えっと……そ、そう俺には許婚がいるんだっ。こいつ、だから……」

 

そして最終的にはあかねちゃんが許婚という話を持ち出して諦めさせようとしていた。

 

「許婚ぇ〜?あなたが?」

 

「まあ一応」

 

「ふっ、面白い。ではいかがです?今度の試合で乱馬さまを賭けるというのは」

 

「なっ……!?」

 

小太刀さんの提案に乱馬とあかねちゃんは驚きの表情を浮かべた。小太刀さん意地でも乱馬を諦めるつもりはなさそうだ。

 

「乱馬さま……試合が終わったら、あなたは私のもの。それまでおさらばっ!!」

 

最後にそう言うと黒薔薇の花吹雪と共に去っていった。というか僕完全に無視されてたなぁ。

 

「全くとんでもない変態女だが、とにかく早乙女乱馬、()をよろしく頼むよ」

 

え?

 

「九能先輩、今乱馬になんて言いました?」

 

「ん?妹を頼むといったが?」

 

「小太刀さんって先輩の妹だったんですか!?」

 

乱馬以上に僕の方がビックリしてる。

 

「まあ恥ずかしいがな。兄の僕が言うのもなんだが、あいつは陰険で執念深く、根も捻くれている」

 

ああそう言われれば、好きになった相手に執着してるところは兄妹揃って似てる。

 

「まあそういうことだ。じゃああかねくん、試合で怪我をせぬように」

 

あかねちゃんにそう告げると九能先輩もその場から立ち去るけど、途中で足を止めた。

 

「ああ、言い忘れていた。小太刀は狙った男は決して逃さん。きっと試合でも卑怯な手を使うだろ。十分気をつけたまえ」

 

そう言うと今度こそ立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なる程……彼が早乙女祐希……」

 

物陰から祐希を見ている1人の姿があった。その服装は小太刀と同じヘベレケ女学院のものだった。ただし下はスカートではなくズボンだが。

 

「日本に戻っているとあの人から聞いてたけど、こんな近くに住んでいたとはね……」

 

「とにかく、後であの人に連絡しよう。居場所は分かったし」

 

そう呟くとその人物はその場から立ち去った。

 




最後に出てきたのはオリキャラです。
これから何人か出てきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。