双子の弟は小柄な少年   作:赫夜叉

12 / 15

今回は後半オリジナル展開です。



11話

ー試合前夜ー

 

「ふっ、はっ!」

 

道場ではレオタード姿のあかねが明日の試合に向けて最後の仕上げに入っていた。

 

「ふんっ!」

 

「おっと」

 

そんな中であかねは練習台として乱馬に攻撃を仕掛けているが乱馬はそれをひょいひょいっとかわし続ける。

 

「ちょっと!大人しく練習台になりなさいよ!」

 

「いやー、すげー上達ぶりだなぁ」

 

乱馬の言う通り、あかねは道具も完璧に扱えるようになり初日と比べて見違える程上達している。試合に出ても十分戦えるレベルになっていた。

 

「言っとくけどね乱馬!あたしあんたのために戦う訳じゃないのよ!!」

 

「んなこと分かってるよ」

 

「とにかく、相手がいなきゃ練習になんないのよ!試合は明日なんだから付き合ってくれなきゃ困るじゃないの!今日はあんたしかいないんだから!」

 

そう、今回練習を見に来ているのは乱馬だけで、祐希はかすみの手伝いでいないのである。

 

「良牙くんもここ2、3日来てくれないし……頼りにしてたのに…」

 

「むっ……」

 

「ふごっ」

 

「ん?あら、Pちゃん!」

 

あかねがふと溢した発言に乱馬が不機嫌になる中、道場にPちゃん(良牙)が背中におみやげらしきものを背負って入ってきた。

 

「あなたもここんとこ見かけなかったわね、どこ行ってたの?」

 

あかねはPちゃんを見ながらそう言う。

 

「もみじ饅頭に生八ツ橋……広島と京都か」

 

乱馬はお土産の表紙を見てPちゃんがどこに行っていたのか察する。

 

「Pちゃんよぉ、本当はどこ行きたかったんだ?キミは方向音痴だからなー」

 

「方向音痴って、良牙くんじゃあるまいし」

 

Pちゃんの正体が良牙だと知らないあかねは乱馬の言葉にそう返す。

 

「……ま、んなことより練習だ練習」

 

「ようやくやる気になったのね。よおーし!いくわよ!」

 

そういって乱馬に向かっていくあかねだが、彼女の足元には競技用のボールがあり………

 

ずる、どてっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、終わったよあかねちゃん」

 

「ありがとう……祐希くん」

 

「マヌケねー、自分ですっ転んで足捻挫するなんて」

 

現在あかねは自分の部屋で祐希に足に包帯を巻かれていた。あの時あかねは足元にあったボールを踏んでしまい、そのまま倒れ足を捻挫してしまったのだ。

 

「これじゃ明日の試合、棄権するしかないわね」

 

「出るわよっ!あんな女に負けるなんて冗談じゃないわ!」

 

かすみの言葉にあかねは反論してベットから立ち上がろうとするが……

 

「(ズキッ)…っ痛ぁ……」

 

足の痛みに思わず蹲ってしまう。

 

「ホラ、言わんこっちゃない」

 

「あかねちゃん、流石にその足じゃ試合は無理だよ。代理を立てるしかないよ」

 

「簡単に言わないでよ。第一身が軽くてスタイルが良くて格闘ができる女の子なんて他に……」

 

と、そこまで言ったところであかねの視線が今まで黙って立ったいた乱馬に向けられた。

 

「……え?ちょ、ちょっと待てよ、冗談だろ?俺レオタードなんか着たく「バシャ」……」

 

嫌な予感がした乱馬は拒否しようとするが、言い終わる前に後ろから水をかけられ女になってしまう。

 

「徹夜で特訓だな、らんま」

 

水を掛けた張本人である良牙がそう言ってらんまの肩に手を置いた。

 

「………(チラッ)」

 

らんまは助けを求めるように祐希の方を見る。

 

「………(フルフル)」

 

「……っ!」ガクッ

 

しかし祐希から無言で首を横に振られ、らんまはガックリと肩を落とした。こうしてらんまは代理のあかねの代理として試合に出ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そういえば祐希くん宛に手紙が届いてたわよ。はいこれ」

 

「え?僕にですか?」

 

らんまが特訓のため道場に向かった後、祐希はかすみから一通の手紙を受け取っていた。

 

「誰だろう?あの子から……じゃないな」

 

とりあえず封を開け中身を読んでみることにした。

 

「……!これは……」

 

その内容に祐希は目を見開くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そう、明日接触するの』

 

「はい、彼も既に知っている頃でしょう」

 

日付が変わる直前の深夜、とある家の中にある部屋である人物が誰かと連絡を取り合っていた。

 

「あなたが期待しているという彼の実力、今から楽しみです」

 

『手は抜いたりしないことよ?』

 

「ええ、分かっています。それではもう遅いので今日はこれで失礼します」

 

『結果を楽しみにしているわ……杏花(きょうか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー翌日ー

 

「いよいよね、本当に大丈夫なのよね乱馬!」

 

「問題ねえよ。徹夜までしたんだ、完全にマスターしたっつうの」

 

試合当日、天道家ではあかねが乱馬にちゃんとできるようになったのか念押ししていた。

 

「あの子達も観にくるの。絶対負けられないから、勝ちなさいよ!」

 

「あたりめぇだ。俺だって負けたらあいつと婚約なんてごめんだぜ!」

 

「(……まあ、こんな軽口叩けるなら少しは信用してもいっか)」

 

「ところで祐希、お前も試合観に来るんだろ?」

 

乱馬は庭で素振りをしている祐希に声を掛ける。

 

「…………」

 

「おい、祐希?」

 

「……ごめん。僕は今日の試合観に行けないかも」

 

『ええっ!?(はあっ!?)』

 

祐希の急な発言にあかねと乱馬は驚きの声を上げる。

 

「実は昨日乱馬が道場に行った後こんな手紙が届いたんだよ」

 

祐希は懐から手紙を取り出すとあかねに手渡す。

 

「えーとなになに………

 

 

【早乙女祐希、ボクはキミのことをある方から聞かされている。相当な実力を持つと。ゆえにキミに決闘を申し込む。明日の正午、聖ヘベレケ女学院グラウンドまで来い、待っているよ】

            鬼月杏花(おにづききょうか)

 

……これって、祐希くんへの果たし状じゃない!」

 

手紙の内容を読んだあかねはこれが祐希への果たし状だと察する。

 

「うん。新体操の試合は1時から。でもそこに書かれてる指定の時間は正午。試合を観に行ける余裕はないかも」

 

試合があるのはヘベレケ女学院の体育館、対して祐希の呼び出し先もヘベレケ女学院内のグラウンドだが、時間の差が1時間では祐希の言う通り試合には間に合わない可能性が高い。

 

「……よし、祐希。お前はそっちの方に行け」

 

「ちょ、乱馬!?」

 

「元々祐希は俺やお前と違ってこの件には関係ねぇんだ。果たし状が来てんならそっちに行くべきだ」

 

「乱馬……あんた……」

 

いつになく真面目な顔でそう言う乱馬にあかねは何も言えなくなる。

 

「ありがとう乱馬……もし間に合うなら途中からでも必ず観に行くから」

 

「へっ、その前にサクッと終わらせてやるぜ」

 

祐希と乱馬はそう言うとお互いの拳を突き合わせた。

 

「じゃあ、僕はそろそろ行くよ。乱馬も試合頑張って!」

 

祐希は最後に乱馬に激励の言葉を掛け居間から出て行った。

 

「あんた、たまには良いとこあるじゃない」

 

「うっせー、たまには余計だっつーの」

 

祐希を見送った後、微笑みながらそう言うあかねに乱馬はそっぽを向きながらそう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

【祐希side】

 

「えっと、ここで合ってるよね」

 

天道家を出た僕は果たし状に書かれていたヘベレケ女学院のグラウンドに来ていた。ちなみに今の姿は普段着ている青のチャイナ服で武器として九能先輩から貰った木刀を背負っている。

 

「来たね、待ってたよ」

 

僕がやって来たのを見計らってか、木陰から声が聞こえてきた。

 

「ほぼ時間通り、しっかりしてるね」

 

そう言いながら現れたのはボーイッシュな顔立ちをした所謂イケメン少女だ。上はヘベレケ女学院の制服だけど下は男者のズボンを履いている。

 

「あなたが果たし状を送った方ですか……」

 

「そうだよ。まずは自己紹介、ボクは鬼月杏花。この聖ヘベレケ女学院に通う高等部2年さ。気軽に杏花とでも呼んでくれ」

 

「僕は風林館高校1年、早乙女祐希です。それで、どうして僕に?僕とあなたには何の接点もない筈ですが……」

 

僕の記憶が正しければ目の前にいる人とは話すどころか会ったこともない筈。

 

「確かにボクはキミとこうして話すのは初めてだ。けど、ボクはキミのことをある人から聞いて知っている」

 

「ある人……?」

 

「ラピスさんって言えば、分かるかな?」

 

「っ!?」

 

杏花さんの口から出てきた名前に僕は驚愕した。脳裏に浮かんだのは僕にとって最大の目標になっている人……。

 

「ボクは昔その人から数年間師事を受けていてね。今でも連絡は取り合っているんだ」

 

「そしてキミのことを聞いていくうちにある思いが浮かんできたんだ。あの人が目をつける程の存在。その実力をボク自身も感じたいってね」

 

そう言うと、杏花さんの顔が真剣なものになった。

 

「今日ここに呼んだのは他でもない。キミと戦って、その強さがどれ程のものなのか知りたいんだ。

改めて言う!早乙女祐希、キミに決闘を申し込む!」

 

杏花さんの宣言を聞いたけど、僕も同じく戦いたい思いだった。ここ杏花さんに勝てないようなら彼女の師であるラピスさんを越えられる訳がない!

 

「その申し出、受けて立ちます!」 

 

「ふっ、そう言ってくれると思ってたよ!」

 

僕の返事に杏花さんは好戦的な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、じゃあ早速始めようか」

 

その瞬間、杏花さんの姿が消えた。

 

「どこに……っ!上か!」 

 

僕は咄嗟に背負っていた木刀を手に取り上にかざした。

 

バンッ!

 

「……やるね。あの一瞬で上からの攻撃を察知するとは」

 

そこには僕の掲げた木刀に空中から蹴りを打ち込んでいる杏花さんの姿があった。

 

「はっ!」

 

僕はすぐさま間合いを詰めると腹に向けて発勁を打ち込む。

 

「ぬうっ!」

 

杏花さんは吹っ飛ばされるが、すぐさま空中で体勢を立て直し着地した。

 

「かなりの威力だ。ならこれはどうかな?」

 

そう言うと素早く接近して連続で蹴りや拳を放ってきたから、僕はそれを躱したり木刀で受け流しながら機会を伺う。

 

「そこだっ!」

 

「ぐふぅっ!?」

 

拳を木刀で受け止めて一瞬動きが止まった隙をつき、鳩尾に拳を叩き込んだ。さっきと違って急所に攻撃を受けたからか杏花さんの顔が苦悶に歪む。

 

「くぅ……確かに強いね。ボクの攻撃を全て見切って攻撃を的確に打ち込んでくる」

 

「毎日修行してますから、一応風林館最強とも言われていますし」

 

「どうやらそうらしいね。でも………」

 

杏花さんの顔が苦悶の表情から元に戻る。

 

「ボクもこの学院内では最強という自負があるんだ。ラピスさんの弟子としてもだけど、学院最強として、簡単に勝ちは譲らない」

 

そう言うと杏花さんは懐に手を入れ一本の短剣を取り出した。

 

「ここからはボクもこれを使わせてもらうよ」

 

杏花さんの持つ短剣は紛れもなく本物で、下手をすれば怪我をするかもしれない。けど………

 

「望むところです」

 

怪我が怖かったら武道なんてやってないし、今更刃物で物怖じはしない。

 

「じゃあ……ふんっ!!」

 

ガキンッ!

 

「ぐっ……」

 

杏花さんの剣を受け止めたけど、さっきの蹴りとは攻撃の重さが桁違いだ……。

 

「ボクは素手より武器を使った戦いの方が得意なんだ。それよりお腹ががら空きだ……よっ!!」

 

「ぐうっ!」

 

攻撃の重さに木刀に両手を使っていたことで、無防備になっていた腹部に強烈な蹴りをくらってしまった。吹っ飛ばされそうになるけど、なんとか踏ん張って少し後退する程度に抑えた。

 

「へぇ、結構力を込めてたんだけど、耐えるとはね」

 

「このぐらいの痛み、今までの修行でいくらでもありましたから」

 

「そうか。その感じだと、まだまだ余裕そうだね」

 

「ええ、どこからでもかかってきてください!」

 

そう、まだまだ戦いはこれからだ。数ヶ月ぶりに味わう真剣勝負に全身の血が滾るのを感じる。

 

「「さあ、いくぞっ!」」

 

僕と杏花さんは同時に走り出しそれぞれの武器を振り上げる。

 

「ハアッ!!」

 

「でやあっ!!」

 

そしてお互いの武器が再びぶつかり合った。

 




最初のオリキャラである鬼月杏花の登場です。
容姿イメージは刀使ノ巫女の獅童真希と思っていただければ。

祐希VS杏花の決着は次話に続きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。