杏花との決闘から数日後……祐希ははるきと海斗を連れて甘味処にやって来ていた。
「はあ……美味しいぃ……」
「なあ、ちょっといいか祐希」
「ん?」
祐希があんみつに舌鼓を打っていると、海斗が質問を投げかけてきた。
「あのな、お前以前許嫁がいるって言ってたじゃねぇか。お前その子とどこで知り合ったんだ?」
それは海斗からしたら何気ない問いだった。以前祐希が語った惚気話から彼がその許嫁にゾッコンなのは間違いない。そこでふと気になったのだ。
祐希とその子はどれぐらい付き合いが長いのかと。
「ああ、修行の旅の途中で寄った町で会ったのが始まりで、その町に留まってる間は毎日会ってたよ。許嫁の約束をしたのはその時。しばらくして旅に戻るために別れて、それ以降は会ったことないんだけどね」
「そうなのかー」
「今でも手紙でやり取りはしてるけど、やっぱり直接会いたいなぁ。近いうちとはいってたけど、いつになるのかなぁ?」
そう話す祐希の顔は少し寂しそうだった。
ー翌日ー
「えー、いきなりだが、この教室に転校生が来ることになった」
「本当にいきなりですね」
ホームルームが始まるや否や、担任の口から出た発言にクラスメイトの一人がツッコミを入れる。
「急なことだったんだ、すまんな。という訳で転校生を紹介する。入ってきなさい」
担任のその言葉にクラスの全員が教室の入り口の方に目を向ける。
ガララ
すると扉が開いて風林館の制服を着た女子が入ってくる。長い茶髪をリボンで結んだ美少女だが、1番目につくのは背中に携えている巨大なヘラだ。
「じゃあ、自己紹介して」
「関西からきた久遠寺右京や。趣味はお好み焼き作り、みんなよろしゅう頼むわ!」
「え……嘘……」
「(ん……?右京…!?)」
その名前を聞き祐希は驚愕で目を見開き、乱馬は自分の知る人物と同じ名前だったことで彼女を凝視する。
「ん〜……あっ!」
自己紹介した右京はクラス内を見渡すと、お目当ての人物を見つけその方向へと歩いていく。
そして祐希の席の前に来た所で足を止める。
「祐ちゃん、久しぶりやな!会いたかったで!」
そう言うと祐希に向けて満面の笑みを浮かべた。
「その呼び方、やっぱりウっちゃんだ!ホントに久しぶりだね、僕も会いたかったよ!」
「祐ちゃんあの時と変わらんなぁ。やっぱりむっちゃ可愛ええわ」
「ウッちゃんも相変わらず可愛いね」
「も、もう……祐ちゃんったら……///」
『…………』
急に始まった2人の仲睦まじい光景にクラスの者達は呆然としていたが、何人かがあることに気付き口を開いた。
「祐希、その子ってもしかして……」
「うん、この子が僕の……」
「うちと祐ちゃんは許嫁同士なんや!」ギュッ
1人の男子の問いに答えようとする祐希だったが、右京が祐希の腕に抱きつきながら代わりにそう答えた。
「……まあ、そういうこと」
『あ〜、やっぱり……』
『えええええええ!?』
それを聞いて許嫁のことを知っていて納得する少数と、それを知らず驚愕する大半に分かれた。
「ゆ、祐希くん許嫁いたの!?」
「嘘だろ!?兄貴の方だけじゃなかったのかよ!?」
「おー、あん時の俺らと同じ反応してるな。まあ祐希の奴普段許嫁いるとかの話全然しないしなぁ」
突然判明した祐希の許嫁にクラスが騒然となる中、以前祐希から言われて知っていたはるきや海斗らはそう呟く。
事実祐希は許嫁の話は基本自分から話すことはなかったため、あの時その場に残っていた者達以外でこのことを知っている者はほとんどいなかったのである。
「あーー!そうか!おまえやっぱりあの右京か!」
と、ここまで無言だった乱馬が思い出したように大声を発した。そして納得した表情で右京を指差す。
「なんや、やっと気づいたんか。まあ、乱馬はこうやと思っとったわ」
「ハハ……」
乱馬に対して呆れた視線を向ける右京に祐希は困ったような笑みを浮かべる。
「おーい!お前ら、色々あるだろうがそれは休み時間にしろー!授業始めるぞー!」
「おっと。じゃあ祐ちゃん、また後でな!」
担任の声に生徒達はとりあえず静かになり、右京も祐希の腕を離し自分の席へと向かった。
「祐希、こりゃ休み時間質問攻め確定だな」
「うん、だよね」
乱馬からそう言われ祐希は頷きながらそう返した。
「ねえねえ!祐希くんと久遠寺さんってなんで許嫁になったの?」
「乱馬はともかく祐希はずっと前から許嫁って決まってたんだよな、どういう経緯があったんだ?」
乱馬の予想通り、授業が終わった瞬間祐希はクラスメイト達に囲まれ質問攻めを受けていた。内容は案の定2人の馴れ初めなどだ。
「とりあえずみんな落ち着いて。ちゃんと話すから」
祐希がそう言うと、群がっていたクラスメイト達はとりあえず大人しくなった。
「さて、じゃあ話すよ。あれは10年前になるかな」
周りが静かになった所で、祐希は右京との馴れ初めを話し始めた。
ー回想ー
今から10年程前、僕達兄弟は父さんと一緒に修行の旅で全国を回っていた。ウっちゃんと出会ったのはその時。ある町に一ヶ月程滞在することになって、そこでお好み焼きの屋台を営んでいたのがウっちゃんとそのお父さん。
滞在中はほぼ毎日親子共々お好み焼きをご馳走になって、僕は屋台を手伝うお駄賃代わりとして食べさせてもらってたけど、乱馬や父さんはそれに便乗してタダ食いばかりしていた。
「今日も手伝ってくれてサンキューな祐ちゃん。うちが作ったお好み焼きうまいやろ?」
「うん、とっても美味しいよ!僕と年が同じなのにこんなに美味しく作れるなんて凄いね!」
「そんな……照れるやんか…///」
そんな風に頬を染めながら笑う姿が可愛くて、いつしか僕はウっちゃんのことが好きになってた。
「ウっちゃん……僕……ウっちゃんのこと好き!!」
「祐ちゃん……///じ、実はうちも……祐ちゃんのこと好きなんや///」
「え……!?」
だからある日思い切ってそれを伝えたら、向こうも僕に好意を持ってたらしくてお互いに両想いだったことが分かった。
「父ちゃん父ちゃん!うち祐ちゃんのお嫁さんになりたいわ!」
それが分かったその日の晩にウっちゃんはお父さんにそう言ったらしくて、それ聞いて僕の父さんにウっちゃんを僕の許嫁にして欲しいって頼んだという。
父さんは最初早雲さんとの約束があるから渋ったらしいんだけど、滞在中いくらでもお好み焼きを食べさせるという条件をだしたらあっさり了承したらしい。
こうして僕とウっちゃんは正式に許嫁同士になった。それを告げられた時はウっちゃん共々大喜びしたのを覚えてる。ちなみに乱馬はウっちゃんのことを男だと思ってたらしくて、それを知って思わず殴り飛ばしたことは今も後悔していない。
そしてしばらく経ってからまた旅に戻ることになって、僕はウっちゃんも連れて行こうとしたんだけど、ウっちゃんはそれを拒否した。
「うちはこれから花嫁修行をせなあかん。それを終えて一人前の女になったら、その時に祐ちゃんにまた会いに行くで!」
そう言って引き下がらなかったウっちゃんに僕も一緒に行くことは諦めて、また必ず再会する約束をして別れた。
「まあ、こんな感じかな」
祐希が馴れ初めを話し終え周りを見ると、男子達は口を開け固まっており、女子達は頬を赤くしていた。
『キャーー!!2人とも大胆〜❤️』
直後、女子の黄色い悲鳴が教室に響き渡った。
「祐希くんやるじゃな〜い!」
「しかも10年経っても久遠寺さんだけを好きなんて素敵だわぁ…」
「久遠寺さんも花嫁修行終えるまで祐希くんと会わないなんて、相当本気だったのね……!」
女子達が2人の関係を知り色々言っている一方……
「ま、マジかよ……」
「なんだよそれ……めちゃくちゃ羨ましい展開じゃねぇか……」
「いや、全然次元が違ったわ……」
男子達は自分達の想像以上だった祐希と右京の馴れ初めに衝撃を受け、中には四つん這いになり涙を流す者までいた。
「それで!祐希くんはどうだったの?10年ぶりに愛する人と再会して!」
女子の1人がテンション高めの状態で祐希にそう言う。
「ど、どうって……成長してさらに美人になってて、すごくドキドキした、よ……///」
『(か、勝てねぇ……)』
顔を赤くしながらそう答える祐希に男子達は共通してそう思った。
「祐ちゃん❤️」
「ふふっ、ウっちゃん」
放課後になり、祐希は右京と一緒に帰路についていた。その右京は祐希にベッタリくっついており、祐希への好意を隠そうともしていない。祐希の方もそれを受け入れ、嬉しそうな表情を浮かべていた。
「あの2人本当に仲良いのね。見てるこっちが少し引いちゃうくらいよ」
「全くだぜ」
そんな2人の少し後ろではあかねと乱馬がその光景を見ながらそんなことを話していた。
「お前もあれぐらい可愛げがあったらよぉ」
「何よ!悪かったわね可愛げなくて!!」
相変わらずいつものようなやり取りをしているが、祐希と右京はお互いに夢中で聞こえてない様子。
「あっ、ウっちゃん。僕今あかねちゃんの家に居候してるんだけど、もし良かったら一緒に来ない?早雲さん達にもウっちゃん紹介したいし」
「ええんか?ならお邪魔させてもらうわ。うちも祐ちゃんの居候先に挨拶したいからなあ」
祐希からの誘いに右京はすぐに答えを返すと、そのまま天道家へと足を進めた。
「あ、おいあかね。あいつら行っちまうぜ」
「え?あ、ちょっと待って!」
いつの間にか足を止めていたあかねと乱馬は2人の姿が遠くなっていることに気づきすぐに追いかけるのであった。
ここの右京は原作でのいざこざがないので男装はしてません。