双子の弟は小柄な少年   作:赫夜叉

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第3話です。


3話

【祐希side】

 

「あ、乱馬いたいた。あかねちゃんもいる」

 

乱馬を探し始めてから少しして。遠くの方で乱馬が女の子の姿で木の上にいるのを見つけた。その下にはあかねちゃんがやかんを持って立っている。わざわざお湯を用意してあげたんだね。

 

「ん?あっ、九能先輩」

 

しばらく見ていると、2人の方に九能先輩が近づいて来ているのが見えた。先輩もう動けるようになったんだ。

 

「早乙女乱馬は何処(いずこ)!」

 

どうやら乱馬を探しているみたい。でも今乱馬は女の子だから会いたくないだろうね。するとあかねちゃんが乱馬にやかんを投げ渡して九能先輩の方へ向かっていった。そして何か会話をすると互いに構えた。なんか手合わせするっぽい。

 

「ハアッ!でやぁっ!」

 

「ふっ、はっ!」

 

九能先輩の攻撃をあかねちゃんは軽やかにかわしている。そして振り下ろされた木刀を真剣白刃取りで受け止めると、そのまま九能先輩を投げ飛ばした。

 

「あれ?九能先輩が投げられた方向って……」

 

そう思いそっちに視線を向けると、九能先輩は乱馬がいる木の方へ投げ飛ばされていた。しかも乱馬はまだ女の子のまま、なんで男に戻ってないの!?

そして結局男に戻る前に乱馬は九能先輩に見つかってしまった。

 

「ハァ……なんかもういいや、教室に戻ろう。」

 

それを見てあそこに行く気が失せてしまい、僕は教室に戻ることにした。行ったら行ったでめんどくさいことになりそうだしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

祐希がさっきまで見ていたことなど知らない3人。

あかねに投げ飛ばされた九能はらんまの持つやかんに頭から落ち、らんまと顔が向き合っている。

 

「む?君はさっきの……君、おさげ髪の妙な男の行方を知らんか?」

 

「………」フルフル

 

今言ったら面倒なことになると思ったのか、九能の問いにらんまは首を横に振って知らないと返す。

 

「そうか……おのれ早乙女乱馬め、逃げよって!この僕に臆したか、弟の方と違ってとんだ腰抜けな。あんなやつ男じゃない男じゃない!」

 

「………(ムカッ)」

 

しかし九能の発言にらんまはイラっとして、やかんごと九能を木の下に落とした。

 

「痛いじゃないか」

 

「言ってくれるじゃねぇか……しかも祐希より腰抜けだとぉ?」

 

「早乙女祐希を知っているのか、やつはこの僕に初めて黒星をつけた男。さっきやつと勝負をして負けたのだ。」

 

『‼️』

 

九能の話した内容にらんまとあかねは驚きの表情を浮かべる。祐希は既に九能と戦い勝っていたのだ。

 

「正直小柄だからと舐めていたよ、だがやつの強さは本物だった。悔しいがそれを認めるだけの力があったからな」

 

「(あの九能先輩がここまで言うなんて……)」

 

ただ驚愕しているらんまと違い、あかねは九能がどんな人物なのか知っているだけに自分を負かした祐希を素直に認めていることに驚いていた。

 

「弟はあれ程強いのに、兄の早乙女乱馬はなんて卑怯な。勝負から逃げおって、兄弟であそこまで差がつくとは」

 

「てめぇ、好き勝手言いやがって。俺はいつでも勝負してやるぜ」

 

そう言ってらんまは戦闘体勢に入る。

 

「ふっ、面白い。君が勝ったらこの九能帯刀が……交際してあげよう!」

 

九能はそう言いながら木刀を振り回す。

 

「誰が交際を申し込んどるか!」

 

しかしらんまはそれをかわし木刀の上に飛び乗ると、そこから九能の顔に蹴りを叩き込んだ。

 

「(つ、強い……あかねくんと同等……いやそれ以上……!)」ドサッ

 

蹴りを受けた九能はそのまま地面に倒れた。

 

「言っとくけどなぁ、早乙女乱馬はおれよりもずっと強いぜ」

 

「(一体、何者……)」

 

そう思いながら九能は意識を手放した。

 

「さ、帰ろ帰ろー」

 

「帰るって、まだ授業中よ?」

 

「良いって良いって。1日くらい」

 

結局らんまだけでなくあかねもその日は授業をサボりそのまま家に帰ったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

「乱馬にあかねちゃん戻ってこないなぁ」

 

教室に戻った祐希はお昼休みになっても教室に戻ってこない2人のことを考えながらそう呟く。

 

「(まあ、乱馬のことだからそのまま帰ったんだろうなぁ)」

 

ご明察の通りである。

 

「ハア……帰ったらお説教だね」

 

祐希は帰ってからのことを考えながら、かすみが作ってくれた弁当を机に置いた。

 

「なあ祐希、俺たちと一緒に食わないか?」

 

すると、祐希に数人の男子生徒が話しかけてきた。彼らは祐希が教室に戻ってから休み時間などに色々会話をして親しくなった者たちである。

 

「いいよ、一緒に食べようか」

 

勿論祐希もそれを快諾し、机を囲んで弁当を食べ始めた。

 

「しかしお前すげぇな、あの九能に勝っちまうんだからよ。窓からバッチリ見えてたからなぁ」

 

「そうそう、見かけに似合わず強いんだなお前」

 

「うーん、まああそこで勝たないと居候させてもらえなさそうだったからね」

 

彼らは弁当をつまみながら九能との勝負について話している。実は祐希と九能の勝負は3階の窓から見えており、祐希が九能を倒した場面を多くの生徒が目撃したのだ。そのため教室に戻ってからはクラスから質問責めにあい、それがきっかけで転校初日からクラスにはかなり馴染むことになった。

 

「そういや兄貴の方はどうなんだ、一緒に中国行ってたんだよな?」

 

「勿論乱馬も僕と同じ武道家だから強いよ。でも口が悪くて調子に乗りやすいのがたまにきずかな」

 

兄である乱馬についての問いに祐希は苦笑いを浮かべながら答える。

 

「ほーん。にしてもお前と兄貴って兄弟なのに随分違うんだな。顔とか女っぽいし、身長とか性格も」

 

「うん、確かに修行の旅先々でよく言われたよ」

 

祐希と乱馬は双子の兄弟だが容姿や性格はかなり異なる。乱馬は多少中性的だが基本的に男だと分かるのに対し、祐希は初対面では女の子に間違われたことの方が多い。

性格については乱馬は(玄馬)程ではないがスチャラカな所があり、旅先で騒動をいくつか起こしたことがあった。対して祐希は父を反面教師として見ていた所があったため、そうならないようにしていた結果今の性格になり、父や兄の起こした騒動の後始末などをしていたのである。

 

「まあそれについてはある程度慣れてるから気にはしてないけどね。」

 

「ちょっとあなたたちー、そろそろお昼休み終わるわよー」

 

そう話しているうちにかなり時間が過ぎていたようで、クラスの女子からもうすぐお昼が終わることを告げられる。

 

「やっば、話し過ぎた!」

 

「早く食べないと!」

 

祐希たちはそれを聞いて残っていた分を急いでかき込んだ。その後午後の授業も何事もなく終わり、生徒たちは部活に行く者と帰路につく者に分かれる。

 

「じゃあな祐希、また明日」

 

「うん、じゃあねぇ」

 

当然祐希は帰路につく側なので、別れの挨拶をすると校門を出て天道家へと帰った。

その後授業をサボって先に帰っていた乱馬とあかねは帰宅した祐希に叱られることになるのだが、それは別のお話。

 

 

 

 

 

ー翌日ー

 

「何?それは本当か?」

 

「ええ、よーく知ってるわよ。アンタが言ってるおさげ髪でチャイナ服の女の子」

 

2年E組にて、九能となびきは先日戦った女らんまのことについて話していた。

 

「ふっふっふっ………この風林館高校の蒼い雷である九能帯刀に勝ちっぱなしで済むと思ったら、大間違いだ!」

 

「あら、祐希くんの方は良いの?負けたんでしょ」

 

「アイツへの再戦は後回しだ。早乙女乱馬を倒した後、僕はやつに再び勝負を挑む。今度は慢心などしない」

 

「へぇ〜、アンタにそういう所があるなんてね」

 

なびきは九能の意外な一面を知り感心したような表情を浮かべるのだった。

 

 

 

 

【祐希side】

 

「え?九能が俺に?」

 

「そ、女の子の方にだってさ。同一人物とは思われてないみたいよ」

 

学校が終わり、家に帰ってきたなびきさんは先に帰ってきていた乱馬にあるものを渡していた。

 

「乱馬何それ?」

 

僕が後ろから覗き込むと、"木の上のヤカンの女へ"と書かれた紙が見えた。

 

「なになに……【今日の夕方5時、風林館高校第二グラウンドに来られたし】だと」

 

「果たし状ね」

 

乱馬の読み上げた手紙の内容からあかねちゃんは女の子のらんまに向けた果たし状だと判断したみたい。

 

「九能ちゃん負けず嫌いだからねー、祐希くんにもまた勝負を挑むって言ってたし」

 

「はあ、そうですか」

 

確かにいずれ勝負を挑むって言ってたからなぁ。その時は受けて立つけどね。

 

「執念深いからねぇ、九能先輩。やめといた方が良いと思うわよ」

 

あかねちゃんがそう言ってるけど、乱馬は行くかどうか悩んでるようだった。

 

 

 

その日の夕方5時

 

結局乱馬は行くことを選んだみたいで、女の子になった状態で学校の第二グラウンドに立っている。

僕はというと少し気になったので乱馬に内緒でこっそり物陰に隠れて様子を見ている。

 

それから少しして九能先輩がやってきた。でも九能先輩は格好こそ剣道着を着ているけど、武器である木刀を持っていない。

 

「おい、木刀はどうしたんだよ!」

 

らんまもそのことに気づいたようでそう問いかけている。

 

「ふっ、木刀など必要ない。貴様にくれてやるのは………これだっ!!」

 

そう言うと九能先輩はらんまに向かって薔薇の花束を投げつけた。らんまもキャッチしたそれを見て困惑している。

 

「おさげの女、好きだ///」

 

九能先輩はそれだけ言うと背を向けて去っていった。残されたらんまはその場にへたり込んで呆然としている。なんだかややこしいことになっちゃったなぁと、僕は他人事ながら今後のらんまのことが少し心配になった。

 

 

 

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