双子の弟は小柄な少年   作:赫夜叉

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第4話です。




4話

「祐希くん、悪いんだけど乱馬くん起こしてきてくれない?今手が離せなくて……」

 

「分かりました」

 

乱馬が九能に告白された翌日、祐希はかすみに頼まれまだ寝ている乱馬を起こしに2階へ向かう。

 

「うわ、すごい冷や汗かいてる。しかもなんだかうなされてるみたいだし」

 

部屋に入った祐希の目に飛び込んできたのは、唸り声を上げて汗をダラダラと流しながら寝ている乱馬の姿だった。

 

「おーい、乱馬?」

 

「っ!?うわあああああ‼️」

 

とりあえず声をかけてみると、突然叫び声を上げながら乱馬が飛び起きた。

 

「な、なんだ夢か………」

 

「大丈夫?すごいうなされてたみたいだけど」

 

「あ、ああ祐希か……大丈夫だ」

 

そう言っているものの顔が真っ青になっている乱馬に、心配になる祐希だった。

 

 

 

 

 

ドドドドドド

 

家を出てから猛スピードで学校まで走っていく乱馬とあかね。しかしそれ以上に速かったのが………

 

「ふふふふーん♪」

 

鼻歌を歌いながら2人の遥か前を走っている祐希だった。

 

「ちょ、なんで祐希くんあんなに速いのよ」

 

「そういやお前まだ知らなかったな。祐希は俺よりパワーは少し劣るけど、スピードは俺より断然速いんだぜ。走りでアイツに勝つなんて無理無理」

 

そんなことを話しているうちに学校か見えてきた。

 

「天道あかねが来た!」

 

「許嫁の早乙女乱馬も一緒だっ!」

 

「弟の早乙女祐希もいるぞ!」

 

すると3人の姿を確認した男達がまた次々と校舎から出てきた。

 

「天道あかねっ!僕と交際ぐへっ!」

 

「早乙女乱馬、あかねくんから手を引ごはっ!?」

 

「早乙女祐希!キミに勝てば九能を越えたことになる!是非手合わせをぐがっ!」

 

そのほとんどは言葉を言い終わらないうちにあかねと乱馬に倒されていった。中には純粋に祐希に手合わせを申し込んでいた者もいたが、他の者達に巻き込まれ共に倒されていた。

 

「天道あかね!いざ勝負!」

 

その男たちの後から九能が木刀を持って向かってくる。

 

「(九能の野郎……!!)」

 

だが次の瞬間には顔面から乱馬とあかねの飛び蹴りをくらい、あっさり倒された。

 

「ちょっと、どうして手助けなんかしたのよ」

 

「別におめーのためじゃねぇよ(み〜んな九能が悪いんだ。くそっ、気分悪い)」

 

ちなみに祐希は2人が男達の相手をしている間にさっさと校舎へと入っていた。

 

 

 

 

 

2年E組にて

 

「何よコレ?」

 

「可愛いお人形、プレゼントだ」

 

机の上に置かれた人形を見てそう呟いたなびきに九能はプレゼントと答える。

 

「いらないいらない」

 

「誰がお前にやると言った、天道なびき」

 

真顔でいらないと人形を突き返すなびきにそう言い返す九能。

 

「これは……あの愛らしいおさげの女にだ」

 

「ブーーーッ!」

 

九能の発言になびきは思わず飲んでいた豆乳を九能に向けて噴き出す。

 

「ちょっと、豆乳がもったいないじゃない」

 

「何をいばっとるんだお前は」

 

九能は豆乳まみれになった顔でそう言う。

 

「ねぇ、アンタって女の子と交際することしか考えてないの?」

 

「残念だが僕はお前と交際する気は毛頭無い」

 

「心の底から嬉しいわ」

 

なびきは皮肉をたっぷり込めてそう言った。

 

 

 

 

 

 

【祐希side】

 

「192…193…194…」

 

「ただいまー!」

 

僕が庭で九能先輩から貰った木刀で素振りをしていると、玄関からなびきさんの声が聞こえてきた。

 

「あら、祐希くん先に帰ってたの。乱馬くんって今どこ?」

 

「お帰りなさい、なびきさん。乱馬なら帰ってきてから2階の部屋で寝てますよ」

 

「そう、ありがと」

 

そう言うとなびきさんは2階へと上がっていった。なぜか水の入ったバケツとお湯の入ったやかんを持って。なんで?

 

「うーん……まあいっか」

 

ちょっと気になったけど、自分には関係ないと割り切ってすぐに素振りを再開する。

それから少しして、2階ならなびきさんが降りてきたと思ったら、今度はあかねちゃんがいる道場の方へ歩いていった。

 

「286…287…288…」

 

「祐希くん、少し休憩しない?ちょうどクッキーが焼き上がった所なんだけど」

 

「クッキー!?」

 

素振りを続けていると、かすみさんからクッキーが焼けたから休憩しないかと言われた。そう言えば、キッチンの方から甘い匂いが漂ってくる。

 

「どうかしら、食べる?」

 

「食べます食べます!」

 

かすみさんの言葉に僕は即答していた。何を隠そう僕は甘い物に目がない。こうして素振りを中断してクッキーの方を優先する程に。修行の旅をしていた頃も立ち寄った町のお菓子屋には欠かさず足を運び、それが父と兄の尻拭いをして苦労していた僕の一番の楽しみだった。

 

「じゃあちょっと待っててね。今お茶を淹れてくるから」

 

「はい!」

 

僕は居間に上がってクッキーが来るのを待つ。

 

「はい、お待たせ。焼きたてよ」

 

お茶と一緒に運ばれてきたクッキーは白と黒の市松模様のやつで、焼きたてだから香ばしくていい匂いがしてくる。

 

「いただきまーす!」

 

手を合わせてそう言うと、クッキーを1枚とって口に入れた。

 

「ふわぁ……美味しいぃ……」

 

美味しい、すごい美味しい!サクサクした食感に控えめな甘さだからいくらでも食べられるし、その合間に飲むお茶と抜群に相性が良い!食べる手が止まらない。

気づけばお皿にあったクッキーを完食していた。

 

「ご馳走様でした、すごく美味しかったです!」

 

「ふふ、そう言ってもらえると私も嬉しいわ。これからもたまに作ってあげる」

 

「本当ですか!ありがとうございます!」

 

この美味しいクッキーがこれからも食べられる。そのことを嬉しく思いながら、僕は食後のお茶を飲むのだった。

 

 

 

 

 

 

ー次の日ー

 

「で。一体何の用だ、天道なびき」

 

学校が休みの日、なびきは九能を商店街の喫茶店に呼び出していた。ちなみに九能は呼び出される直前まで稽古をしていたため剣道着姿だ。

 

「アンタって、余程あのおさげの女の子のこと気に入ってるのよね?」

 

「そうだ、それがどうした」

 

「あの子の写真あるわよ、見たい?」

 

「何!?……まぁな」

 

なびきの写真があるという言葉に反応する九能。

 

「どうしようかなぁ、スパゲッティ奢ってくれるなら見せてあげても良いんだけどなぁ」

 

「き、貴様金を持ってくるようにと言ってたのはそういうことか……!」

 

なびきの目的が自分に奢らせることだったことに気づき苦い表情になる九能。

 

「どうなの、見たくないの〜?」

 

「ぐっ……分かった僕が払えば良いんだろう」

 

「決まりね。すいませーん!」

 

九能が奢ることを了承するやいなや、なびきは早速店員を呼んで注文をした。その後なびきがスパゲッティを食べ終え本題に入る。

 

「さてと、じゃあコレ。1枚1000円ね」

 

なびきは写真を5枚出しテーブルに置いた。

 

「おおっ!こ、これは!」

 

その写真には女らんまのあられもない姿が写っていた。しかしどれもカメラの方を向いておらず、中には寝ている姿の写真もあるため、明らかに隠し撮りなのが分かる物ばかりだ。

 

「むむむ……これは……なんて無防備な……」

 

九能はらんまの写真をまじまじと見つめる。

 

「この子全然恥じらいないのよね〜。男の子みたいでしょ?」

 

実際らんまは男なのだが、なびきは正体を知らないかのように振る舞う。

 

「しかし……1枚1000円とは汚いぞ」

 

「ふーん、じゃあいらないんだ」

 

「全部買おう」サッ

 

九能は懐から5000円札を出しテーブルに置いた。

 

「まいど、しかしアンタもいい加減ね。あかねからあっさり乗り換えるなんて」

 

なびきは5000円札をポケットにしまうと九能にジト目を向けてそう言う。

 

「誰が乗り換えた誰が」

 

「何?じゃあ二股かけようっての?」

 

「ふん、下衆なことを言う。力強く可憐なあかねくん、健康美あふれるおさげの女。2人共すごく可愛くて捨てがたいので、両方と容量良く付き合いたいだけだ。このまごころに偽りは無い」

 

普通の女性が聞いたら間違いなく軽蔑するであろうことを堂々といってのける九能。

 

「あのね九能ちゃん、そういうのを二股掛けっていうのよ?」

 

「なんだと……!?(知らなかった……)」

 

二股をしている自覚が無かった九能はなびきの指摘に衝撃を受けている。

 

「ちなみにあかねの写真もあるんだけどな〜」

 

一方でなびきは二股を指摘しておきながらあかねの写真もあると九能に言う。

 

「何!?見せてもらおう」

 

「デザートにアイスクリームね」

 

「卑怯だぞ貴様!」

 

「あっそ、見たく無いのね」

 

「ああ!分かった出そう!」

 

九能はまたしても奢らされることとなり、喫茶店を出てアイスクリーム屋に移動する。ちなみに喫茶店の代金はきっちり九能が払った。

 

「はいコレ、1枚1000円」

 

奢らせたアイスを片手に持ち、なびきはテーブルにあかねの写真を5枚置いた。

 

「おお…!なんたる猛々しさだ……全部買おう」

 

九能はあかねの写真も買い、再び5000円札をなびきに手渡した。

 

「あ、そうそう。昨日のプレゼント、おさげの子に渡すにはどうすればいいか教えてあげよっか?食後のコーヒーね」

 

「よし、良いだろう払ってやるし聞いてやる!」

 

「あのね、おさげの子へのプレゼントは乱馬くんに手渡すのが一番早いわよ』

 

「何?それは一体どういうことだ?」

 

なぜそこで早乙女乱馬が出てくる?そう言っているがごとき表情を浮かべる九能。

 

「ううむ……良し」

 

少し考えた末、九能はその場で墨を擦り何かを紙に書き始めた。

 

「できた……天道なびき、コレを早乙女乱馬に渡してきてくれ」

 

「はいはい、分かったわよ。………あかねとおさげの子の写真、まだあるけどどうする?」

 

「全部買おう!!」

 

結局九能は写真となびきへの奢り分でかなりの額を払うことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

【祐希side】

 

「はい、コレ」

 

「あん?何だよコレ?」

 

家に帰ってきたなびきさんは道場にいた乱馬に手紙を手渡していた。

 

「九能ちゃんからよ。今度は男の方にだってさ」

 

どうやらまた九能先輩からで、しかも今度は男の乱馬を呼んでいるとのことらしい。でも前回女らんまが九能先輩に告白された場面を見ていた僕としては、多分行ったらロクなことにならないだろうなぁと思った。

 

 

「………で、普通に行っちゃったし」

 

 

結局あの後乱馬は九能先輩がいる風林館高校に行っちゃって、あかねちゃんとなびきさんもこっそりついて行ってしまった。ちなみに僕はかすみさんからおつかいを頼まれたので行かなかった。

 

「はい、これが買ってきて欲しい物よ」

 

「分かりました。じゃあ行ってきます」

 

僕はかすみさんから買う物のメモを受け取って商店街に向かった。そして買い物を済ませ帰ってきたら、すでに乱馬たちも帰ってきていた。

 

何やら乱馬とあかねちゃんが険悪な雰囲気で、理由を聞くと乱馬があかねちゃんに色気がないやら言って喧嘩になったらしい。

それとなびきさんがらんまとあかねちゃんの写真を勝手に撮って九能先輩に売っていたことも聞かされた。

 

「なびきさん……もしかしてあの時乱馬がどこか聞いてきたのって……」

 

「いやぁ〜、ちょっとした小遣い稼ぎにね」

 

「だからって実の妹まで使いますか普通……」

 

全く悪びれる様子のない態度のなびきさんに僕は頭を抱えた。聞けば2人の喧嘩の原因がその写真だって言うんだから余計に。

 

「ちなみに祐希くんの写真も撮らせてくれない?水を被ったイケメン姿の方。多分女子に売れるだろうから」

 

「いやですよ、それと少しは反省してください」

 

しかも反省するどころかこんなことまで言い出す始末。これからなびきさんには気をつけようと心に決めた僕だった。

 

 




ちなみに九能先輩と乱馬のやりとりは原作と同じです。 

この作品の九能は祐希には負けを認めていますが、乱馬には女らんまやあかねの許嫁なこともあって負けを認めていません。
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