ゴールデンウィーク前なので仕事が忙しく、なかなか進みませんでした………
とある村にて
「風林館高校はどこだ?」
地図を持った男が村人に道を尋ねていた。
「地図か?見せてみ」
「おいこれ、東京ちゃうんか?ここ四国やぞ」
「そうか、邪魔したな……」
男はそれを聞くと、そう言ってその場を立ち去る。
「(早乙女乱馬、首を洗って待っていろ!男と男の勝負、もはや逃げ隠れは許さんぞ!!)」
男は東京を目指しながら心の中でそう思った。
「待ちなさいらんまくん!!」
「やだっ!絶対やだ!!」
男が乱馬に探しに東京を目指していた頃、天道家では上半身裸のらんまがなびきとかすみから逃げ回っていた。その日は学校の帰りに急な雨に見舞われ、乱馬は女になってしまったのだ。しかし着替えとなる服は現在全て洗濯中のため、2人は代わりとして女物の服を着せようとしていたのである。
「裸でウロウロされちゃ迷惑なのよ!!」
珍しく怒鳴り声を上げながららんまを追いかけるなびき。流石の彼女も家の中を裸でいられるのは我慢ならないようである。
「やだーー!!絶対にや……!?」
逃げるらんまだが、突然誰かに頭を掴まれ動きを止められる。
「らんま、いい加減にしな」
それは青年姿で着物を着ている祐希だった。祐希も下校の際らんまと一緒だったため雨に濡れ青年の姿になってしまい、祐希の服も洗濯中のため早雲の服を借りているのである。
「離せ祐希!離せよっ!」
らんまはジタバタと暴れるが、祐希の掴む手はびくともしない。これが普段の祐希なら振りほどけただろうが、青年姿になっている祐希はスピードだけでなく力も遥かに増すため、女になっているらんまができるはずもなかった。
「ナイス祐希くん!さあ、もう逃げられないわよ」
「俺は男だ、女の服なんて絶対着ねぇぞ!」
「アンタの服全部洗濯しちゃったんだからしょうがないでしょ!」
「すぐにお風呂沸かすから、少しだけ我慢して」
「嫌だ!」
かすみの言葉にも断固として拒否し続けるらんま。
「乱馬くん、アンタ居候でしょ?」
「え……?」
「水に濡れる度にお風呂沸かすのって、結構不経済なの。しかもアンタ頻繁に濡れるじゃない」
「うぅ………」
なびきに痛いところを突かれらんまは何も言えなくなってしまう。
「服、着てくれるわね?」
「はい……」
なびきの言葉にらんまは観念したように頷いた。もう逃げる気が無くなったということで、祐希はらんまを掴んでいた手を離す。
「じゃああかねの部屋行くわよ。今のらんまくんの身長的にあかねの服が一番ピッタリなはずだから」
そう言うとなびきはらんまを連れてあかねの部屋がある方へと向かった。
「すいません、らんまが色々……」
「大丈夫よ、それより祐希くんは服の着心地どう?」
「とても良いです。サイズもピッタリですし、着物は着たことなかったんで新鮮な気分です」
どうやら祐希は借りた服を気に入った様子。
「お、中々様になってるじゃないか」
「あら、お父さん」
するとそこに服の持ち主である早雲がやって来る。
「早雲さん、着物貸してくれてありがとうございます。すいませんわざわざ……」
「なーに構わんさ、もう着ていない服だからね。……そうだ!もし良ければそれを含め私の持っている服、いくつか君にあげよう」
「え?良いんですか?」
「その姿の時に着る服もあった方が君も便利だろう?遠慮せずに貰ってくれたまえ。結構似合ってもいるしね」
「分かりました、じゃあありがたく受け取らせてもらいます!」
こうして祐希は早雲から借りている服を正式に譲り受けることになった。
「風林館高校はどこだ?」
「お前さん、ここは北海道だよ」
四国で迷っていた男は改めて東京を目指していたが、今度はなぜか海を越え北海道で迷っていた。
1週間後………
「待ちなさい乱馬!」
「へへーんだ、ここまでおーいで!」
風林館高校にて、今日も乱馬があかねを怒らせ2人の追いかけっこが始まっていた。あかねは必死に追いかけているが、乱馬は逃げながら余裕の表情を浮かべている。
「またやってるねぇ」
祐希は他の生徒に混ざりながら2人の追いかけっこを眺めている。
「(ん!?殺気!)」
そんな時、乱馬は自分に向けられた殺気を感じ上を見上げると、番傘を持った鬼が頭上に迫っていた。
「乱馬!覚悟っ!!」
男はそう叫びながら乱馬に向け番傘を振り下ろす。乱馬はそれを避けるが、避けた所の地面は大きく抉れ穴が空いていた。
「ふっ。相変わらず逃げるのが上手いな、乱馬」
男は攻撃を避けた乱馬を挑発するようにそう言う。
「何?知り合い?」
「うーん……あのっ、ほら、なあ?」
「早く思い出してあげなさいよ……」
乱馬は必死に思い出そうとしているがなかなか出てこなく、あかねに呆れた視線を向けられている。
「覚えてないのか……ま、まあいい。だが一つだけ聞かせろ。乱馬、なぜあの時勝負に来なかった!」
「勝負?………あーー‼️思い出した!お前中学で同級生だった……えーと」
「なぜそこまで出て名前が出てこんのだ!俺は響良牙だ!」
最後まで思い出しきれない乱馬に男はツッコミながら自らを良牙と名乗った。
「あ〜そうそうそれそれ!いや〜久しぶりだなぁ、元気だったか良牙!」
「そんなことより質問に答えろ。なぜあの時勝負に来なかった!」
「いや、俺約束の場所で3日間待ってたんだけど」
「3日間も!?」
乱馬の発言にあかねは驚いた様子でそう呟く。
「そう……だが4日目に俺がその場にたどり着いた時、貴様はすでにいなかった」
拳を握り締めながらそう言う良牙。
「なあ良牙、俺からも一つ聞いて良いか?あの時お前と勝負するはずだった場所って、お前の家のすぐ裏の空き地だったよな?なんで俺が3日間も待たされにゃならなかったんだ!」
「貴様ぁ!俺が4日間のうのうと散歩していたとでも思っとんのか!着くまでにどれ程の苦渋をなめたことか!」
「方向音痴か?」
「ああ、方向音痴だなありゃ」
「しかも極度のな」
生徒たちは良牙の言葉を聞き方向音痴とあちこちでヒソヒソ話している。
「男と男の約束破って、父親と祐希と一緒に中国なんぞに逃げおって!!」
そう言い良牙は持っている番傘を振り回し、乱馬はそれをかわす。
「よーするに、決着つけに来たって訳か」
「決着!?生温い!復讐だあっ!!」
良牙は番傘を開くとそれをブーメランの如く乱馬に投げつけてきた。乱馬はそれを避けるが、その番傘は後ろにいた生徒達の方へ飛んできた。
パシッ
しかし生徒達に当たる直前、番傘はある人物によって掴まれ止められた。
「危ないじゃん。誰かに当たったらどうするの」
良牙と乱馬がその声のした方に目を向けると、生徒達の中から祐希がこちらに歩いてきており、その手には先程キャッチした番傘が握られている。
「やあ、良牙くん。元気そうだね」
「お前、祐希か。久しいな」
「うん、久しぶり。ところで、こんなところで傘なんて投げて危ないよ。他の人達もいるのに怪我なんてしたらどうするの」
祐希はそう言いながら良牙をギロリと睨む。
「うっ……そ、それは悪かった……」
「今度から気をつけてね。はいこれ」
良牙の謝罪を聞いた祐希は持っていた番傘を返す。
「ゴホン………とにかくだ乱馬!俺はどんな手を使っててでも、貴様の幸せをぶち壊す!!」
「俺の幸せ……?なあ祐希、俺って今幸せか?」
「僕に聞かないで。そんなの自分で考えなよ」
乱馬の問いに祐希はため息を吐きながらそう返す。
「乱馬、アンタ一体アイツに何したの?」
良牙の怒り具合をみてあかねがそう聞いてくる。
「うーん……何かしたかなぁ?」
しかし乱馬はやっぱり思い出せない様子。
「でもあの恨みよう、只事じゃないわよ?」
「うーん、でもなぁ……」
「ええい!ゴチャゴチャと抜かすな!いくぞ乱馬!!」
そう言うと良牙は番傘を構え突っ込んできた。
「てやああああ「バシッ」…何!?」
「良牙くん、ここは一旦落ち着いてもらおうか」
しかしそれは乱馬の前に出て番傘の先端を掴んだ祐希に阻止された。
「祐希、貴様何の真似だ」
「さっきも言ったけど、今ここには他の生徒も沢山いる。ここで2人が戦ったら皆を巻き込んじゃうかもしれない。だから戦うのはまた後日改めてっていうのはダメかな?」
「………良いだろう、お前に免じてここは身を退いてやる。奴にはあとで果たし状を出す。乱馬、祐希に感謝することだな!」
祐希の出した案に良牙は少し考えた後にそれを了承し、改めて果たし状を出すことを話すとその場を走り去っていった。
「ふう、ひとまずこの場は収まった。で乱馬、良牙くんが恨んでる理由何か思い出した?」
「ちょっと待てよ……うーん……」
「ダメね。まだ全然思い出せてないわ」
未だに心当たりが見つからず考え込んでいる乱馬にあかねが呆れた顔でそう言う。
「あ…そう……ハァ……」
それを聞き祐希は大きなため息を吐いたのだった。
数日後………
「らんまくん、手紙届いてるわよ。響良牙くんって子から」
「良牙から?なんだこれ、果たし状?」
祐希に言っていた通り、良牙は乱馬に向け果たし状を送ってきた。ちなみに乱馬は先程までシャワーを浴びていて、現在は女の姿になっている。
「ねぇ、やっぱりなんかあるんでしょ?いい加減思い出しなさいよ。只事じゃなかったもん、あの恨みよう」
「う〜〜ん………あっ、もしかしてあのことか?」
「ほら、やっぱり心当たりあるんじゃない」
何か思い出した様子の乱馬にあかねがそう言う。
「あれは確か新学期になって間もない頃だ。俺はパンを手に入れるために購買に行った。で、おばちゃんの投げたカレーパンをジャンプして口でキャッチしたんだ。そん時踏み台にしたのが良牙だったなぁ、アイツ悔し涙流してたっけ」
「お昼は凄かったからね。あの時は僕達男子校に通ってたし」
「「「男子校!?」」」
祐希の言った男子校というワードにあかね、なびき、かすみは驚愕する。
「その時はまだ完全な男だったんだよ!!」
3人の考えていることが予想できたのか、乱馬は訂正するようにそう言う。
「にしてもカレーパン取ったくらいでそこまで恨むかしら?」
「まあ、だよなぁ。あっ、となると焼きそばパンを奪った時か?それともコロッケパン奪った時?カツサンド、ミートパン、もしかしてワカメパンか……?」
「乱馬……僕の知らない所で良牙くんとそんなこと毎回してたんだ……」
乱馬の口から次々と出るくだらない話に祐希は呆れた表情を向けながらそう言う。
「チリも積もれば山となるってことなんじゃない?」
「そうかもねぇ……」
なびきとかすみはそれが原因じゃないのかと思っている様である。
「つーか、なんで祐希知らねぇんだよ。お前クラス違かったけど購買行ってただろ?」
「何言ってんの?僕は購買ほとんど行ってないよ」
「はあ!?なんでだよ!?」
「いや、僕自分のお弁当作ってたから購買に行く必要なかったし……」
「なんで俺の分も作ってくれなかったんだよ!」
「自分で作りなよ自分で!僕が朝早く起きてお弁当作ってる時乱馬寝てたじゃん!」
いつの間にか口喧嘩に発展した2人をよそに、あかねは良牙の果たし状を読み始める。
「あれ?ちょっと乱馬。この果たし合いの日昨日になってるけど」
「ん?ああ平気平気。アイツ極端な方向音痴だから、どーせ今頃道に迷ってるさ」
「風林館高校はこっちだな」
「だからこっちだっつーに!なんで逆な方向行くんだおめーは!」
乱馬の予想通り、良牙は東京から遠く離れた山奥で道に迷っていた。