戦女神放送局-Commuting Turns into Despair-   作:矢矧草子

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2月3日

ポン、ポン、ポン、ポーン

カシュッ

ゴクゴクゴクッ

 

「あ゛ー。sveidラジオ!」

 

「みんなー、オッハー。パーソナリティーの悠衣でーす」

「通勤お疲れ様です。お仕事頑張りましょう。詩です」

「お前らの通勤に絶望を添える朝から飲酒ラジオ。sveidラジオ! の時間がやってきました」

「ビバ週末」

「なんだそれ」

「イタリア語で、万歳って意味よ」

「なんで急にイタリア語なんだよ」

「そもそも今日一日働かないと休みではないんだけどね」

「姐さんも難儀なキャラだな」

「それよりも、調べてきたわよ。舌ピ」

「どうだ」

「無理ね」

「なんで」

「確定的な情報じゃないから、話半分で聞いてね。みんなも」

「はいはい」

「まず神経損傷のリスク。で、口臭のリスク。最悪なのは、活舌が悪くなるリスク」

「それは致命的だな」

「こんな風に毎朝ラジオやってるのよ。ピアス開けてからしばらくはそもそも炎症でラジオどころじゃないと思うし、活舌悪いラジオなんて誰も聞かないわよ」

「姐さん、一番大事なことが抜けてる」

「何よ」

「ボーカル」

「そういえば、私らバンドやってたわね」

「お前ら聞いたよな? 『Girld in Wonderland』と、『magicaride』。あれ、姐さんがドラムボーカルやってんだぜ」

「キャラ的にはアンタが歌う感じでしょ」

「私歌下手だからなー」

「私も別にうまいわけじゃないわよ」

「そんなこと言うなって。メインボーカルがそんなマイナスなこと言ったら誰も聞かねえぞ」

「そうは言っても、ねえ」

「そういうことなら仕方ない。朱音にピアス開けてもらうか」

「無理させちゃだめよ」

「大丈夫だってー。はい、今日のメール。窓ふき大臣だ。あ、なんだこれ。姐さん読んで」

「何。えーっと、ああ。歳時記(さいじき)は何を使ってますかって」

「なんだそれ」

「私がいつも持ってきてるこれ。俳句の季語の辞書みたいなやつね」

「はあ」

「最初に買ったのは、新装版俳句小歳時記 水原(みずはら)秋櫻子(しゅうおうし)編だったわね。全部の季節が入っててページも見やすくてよかったけどすぐに物足りなくなって。今は角川書店の俳句歳時記 第5版 大活字版を使ってるわ。今日の一句もここからの引用よ」

「はあ」

「これは季節ごとに分かれてるやつだから、値段はちょっとかかるけど。その分収録数が多くて助かるわね。手軽なサイズで持ち運びもしやすいし」

「姐さんの鞄いつもパンパンだもんな」

「歳時記と、句帳と、メモ帳と、ペンがね」

「あとタバコな」

「まあね」

「いまどきそんな鞄してる奴いねえぞ」

「知ってるけど、鞄の中なんて趣味全開でしょ、普通。いちいち気にしてられないわ」

「そういうところがかっこいいんだけどな。じゃ、次のメール。ヒレカツ。水受けがある灰皿に灰を落とすときのジュッって音良いよね」

「わかるわ。だから、ちょっと長めに灰を残して叩くのよね。その水が新しくなったばかりだと余計に良いものよね」

「何が」

「なんか、きれいなものが汚れていくのって良くない?」

「それはわかる」

「アンタは汚してばっかりよね」

「失礼な。汚すというよりも自発的に汚れてもらうのを眺める方が好きだ」

「朱音も時間の問題かもね」

「じゃ、締めるぞ」

「はいはい。この前の日曜日に、けいおんの『Girls in Wonderland』のカバーを投稿しました。最初のカバーの『magicaride』とあわせてぜひ聞いてね」

「死んでも聞け」

「あとは、メールフォームあるので、メールください」

「NGなしだ。何でも来い」

「今日は。あ、立春じゃない」

「なんだ」

「暦の上で春になったから、春の歳時記買わなくちゃ。冬の季語は今日までね。来週からお楽しみに」

「誰だ、楽しみにしてる奴は」

「おそらく、窓ふき大臣くらいでしょうね。さて、山口(やまぐち)青邨(せいそん)の1句。寒鰤は虹一筋を身にかざる。寒鰤は虹一筋を身にかざる」

「じゃあなー」

「行ってきまーす」

 

 




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