戦女神放送局-Commuting Turns into Despair-   作:矢矧草子

36 / 71
2月24日

ポン、ポン、ポン、ポーン

カシュッ

ゴクゴクゴクッ

 

「あ゛ー。sveidラジオ!」

 

「お前ら、元気か。悠衣だ」

「通勤お疲れ様です。お仕事頑張りましょう。パーソナリティーの詩です」

「お前らの通勤に絶望を添える朝から飲酒ラジオ。sveidラジオ! の時間だ」

「給料日よ」

「良い話と悪い話がある」

「それってさ、どっちから聞くかってことでしょ。良い話だけでよくない?」

「ダメだ。どっちも話す。ちなみに聞きようによっちゃ、どっちも悪い話にもなるし、良い話にもなる」

「じゃあ、一応悪い話だと思ってるほうから」

「昨日な、朱音のバイトが休みでさ、家でゴロゴロしてたんだよ。2人で」

「まあ、よくある光景なんじゃないの?」

「ムラムラしてさ。ちょっと誘ってみたのさ。エッチするかって」

「拒否られたって話ね」

「逆だ。私の女が増えた」

「はあ!」

「朱音も女同士のセックスの魅力に気付いたらしい。いやー、昨日は楽しかったー」

「ちょっと! 無理やりやったわけじゃないでしょうね」

「ちげーよ。キスだけ、キスだけちょっとやってみ? って言ってそっからはもうなし崩しよ」

sveid(スヴェイズ)の良心が(けが)された瞬間ね。ま、いつか手を出すと思ってたからこの際諦めるわ。悪い話は」

「姐さんが正社員で働いてるだろ? で、朱音はバイト。私と花純はゴロゴロ。これじゃ金銭的に限界が来るわけだ」

「まあ、ずっと限界ぎりぎりを彷徨(さまよ)ってるけどね。なに、あんた働く気になったの?」

「朱音がレズ風俗で働くことを決めた」

「は!?」

「正確には一日体験入社してくる。来週の頭から」

「なんでそうなるのよ!」

「エッチして金稼げるなんてそんなおいしい商売ないでしょって」

「毒されすぎだし、あんたの影響力デカすぎ」

「体験してくるだけだから、そこで合わなきゃやめるって」

「それのどこが良い話だったのよ」

「稼ぎが倍増するだろ」

「そういう問題じゃないでしょ。あんたが風俗で働きなさいよ」

「前にも言ったが、私は自由にセックスがしたいだけだ。接客業の延長でセックスなんてできん」

「そういう客層向けでいいじゃない」

「レズ風俗に来るような奴が、適当にあしらわれて満足するわけがないだろ。精神的満足感を得ようとしてんだぞ。私には無理だ」

「だからって朱音には」

「だーかーらー。体験入社してくるって言ってんだろー。来週まで待てよ」

「はあ」

「この配信聞いてる男ども。どう調べてもお前らはセックスできねえからな。女になってから出直してこい」

「この情報が全世界に発信されてる朱音が不憫(ふびん)ね」

「じゃ、今日のメールだ。バラバラのバラン。国語ってどうやって勉強したらいいんですか」

「なんてタイミングでこれ読んでんのよ。あと、こんな番組にこんな真面目なこと聞くな」

「まじめな話はまじめな奴よりも、ふざけてるやつから聞いたほうが頭に入るんじゃね」

「一理あるけど限度があるでしょ。まず、古文と漢文はなるべく取りこぼしちゃダメよ。パターンが決まってるのと、点を取れる方法がある程度決まってるから」

「なんだそれ」

「まず古文は、古文常識を頭に叩き込んどきなさい。確か荻野(おぎの)って人が書いた、『マドンナの古文常識』って本があるから、あれの内容全部入れときなさい。古文単語は雰囲気でいいわ。あと助動詞は全部覚える。以上」

「全部覚えるってハードル高いだろ」

「エピソード記憶って言って、一対一対応で訳も分からず覚えるわけじゃないからまだ楽だと思うわ。頑張って。漢文は、再読文字といくつかの文法覚えたら大体何とかなるわ。故事成語の成り立ちをいくつか知っとくと、同じようなパターンの話が多いから解きやすくなると思うわ」

「まだ続くのか?」

「あとちょっとよ。で、現代文はよくわかんないわ。ただ、受験国語において絶対的悪とされている概念と、絶対的善とされている概念があるからそれさえ覚えとけば大体何とかなるわ。平和とか人権とか環境とかが絶対的な善。戦争とか科学とか、サイエンスのほうね、とか、そういうのは絶対的悪よ」

「科学は悪なのか」

「らしいわよ。科学の発展によって自然環境が破壊されたから、科学は悪だって言い訳が、割としっくり来たわ」

「よくわからんから終わるぞ」

「はいはい。相川七瀬さんの『恋心』のカバーを投稿したわ。先月カバーした『Girls in Wonderland』と『magicaride』も併せてぜひ聞いてね」

「絶対聞け」

「明後日には4つ目のカバーも出します。要チェック」

「スマホを手放すな」

「メールフォームあります。メールください」

「NGなしだ。何でも来い」

「チャンネル登録といいねもよろしく」

「今すぐしろ」

「で、今日は。春の歳時記買ってきました。御開帳ー」

「何が楽しいんだよ」

「やっぱり何でも開封って楽しいじゃない。じゃ、さっそく最初の一句。うわ、悩んじゃう」

「時間ねえぞー」

「ん-。今日は石田(いしだ)郷子(きょうこ)の1句。陽春(ようしゅん)の雀があげし雪煙。太陽の陽に春で、陽春ね。陽春の雀があげし雪煙」

「じゃあなー」

「行ってきます」

 

 




概要
お前らいつもご苦労!
『チャンネル登録』、『いいね』まだしてねえ奴、今すぐやれ!

メールもよこせ! ラジオネーム忘れんな!
sveidラジオのメールフォーム
https://peing.net/ja/sveid_radio
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。