超昂大戦SS 時駆ける超昂戦士! 未来少女の架けた虹 作:環 藍河
職員会議で午後放課の閂学園、居残る生徒もまばらな校舎の屋上。
「えへへっ…皆さんと同じ制服だあ…!」
自ら未来から持ち込んだ学園の制服に袖を通し、ミキは喜色満面、すっかり体験入学気分。
「アカリっち…すまん、思考が追いつかないぞ。」
「見た目、アカリの数歳年下…つまり、アカリが乳幼児のときに出産、ってことでいいか?」
「カンナあっ?! そんなわけ、ないでしょお?!」
「…正直、こんな冗談でも言わないと、精神の安寧が保てないんだ…。」
…1時間前。
『…アカリっち。3行で説明したまえ。』
《…出会った女の子が、
未来から来た私の娘で、
学園を見学したいんだって…。》
『なるほど。…わからん。』
〘とにかく、その子を学校案内すれば、いいんじゃない? ホントにアカリの娘かどうかは、あとあと考えても遅くなくね?〙
突然の電話の内容はほとんど無茶振りなのに、何とかお膳立てをしてくれるカンナとよっしー…本当に良い友を持った。
そして今。
「こちらでは初めまして! カンナさんとよっしーさん、ですね! 未来でもママともども、いつも可愛がってもらってます!」
彼女を…ミキを信じることを前提とすれば…3人の友情は数十年続いているらしい。
「…あ〜、ミキくん。今の我々は、君の知る我々と見比べて、どうかね?」
「え? …え〜と、見てすぐわかりましたよ。カンナさんはスマホ片手ですし、よっしーさんもおしゃべりの口調がそのままですから。面影も同じです!」
「…それって、あたし…成長が無いってコトかな…?」
「私も…このぽっちゃりは不変で恒久なのだろう…。」
…はああ…っ。
穏当な未来を喜ぶよりも、ため息が先に出るカンナとよっしー。
はっ…!
(あ…あの、コレ、聞いていいかわかんないんだけど…。)
(はい?)
本人に聞こえないよう、カンナがアカリに背を向けてポジションを取り…
(き…君のお父さんって…誰?)
…!?
(バ…バカ者っ! それを聞いて何とする!?)
(だ…だって、当然知るべきだろー…?)
くすっ。
(残念ながら、直接は教えられません。ごめんなさい。)
(そ…そうか。)
安堵半分、嘆息半分の2人。
……
…
「突然すみませんでした。校舎見学、いろいろありがとうございました!」
「あ〜…と言っても、ありふれた校舎ゆえ、君が何を見れば喜ぶかわからなかったのだが。」
「いえ、ママが青春を過ごした場所を見て、どんな日々を送ってきたか…少し覗けただけでも満足です。」
「ミキちゃんって、アカリのこと好きすぎる? そうだよね、それで過去まで来ちゃったくらいだもんね〜。」
カンナの冷やかしは、案外核心を突いていた。
…きりっ。
「ミキくん…一つ問おう。君は母君と同じ超昂戦士を希望だと言ったね。それをお父上に反対され、はるばるこの時代まで家出してきたと…。」
「…はい、そうですよ?」
「なぜだい?」
「…なぜって…?」
きょとんとするミキに、真摯な眼差しで母の親友が続ける。
「アカリは…君の母君は、『みんなを護る力が欲しい』って誓って、平凡で無力な女子学生だったのに、ダイビートに身を投じたのだよ。」
「? …はい、聞いています。」
「でも…そのときのアカリの覚悟と決意は…隣で見ていた私には無謀に見えたよ。」
「…!!」
ミキの表情が、一転引き締まる。
「実際、その強い想いを貫いて、最後は地球まで救ったエスカルビーも…途中は何度も苦しんで、迷って立ち止まったし、実際に死にかけた。
アカリじゃなければ…他人を我が事のように想って命がけで動ける、あの子でなくば…あんな絶望、超えられなかっただろうね…。」
(よっしーさん…)
「だから私は…人並み程度の覚悟で超昂戦士になるのは、かえって君にとっても不幸なことだと思ってる。
…ミキくん。超昂戦士を目指すにあたり、君の覚悟はアカリに負けないものかな? それとも、単なるママへの憧れかい?」
よっしーの話は、友の娘だからこそ、厳しく。
「…負けません! 私だって、みんなを…。
ママを護りたい!」
…?
「アカリっちを…護るの?」
「エスカルビーを? 地球の救世主を?」
「あっ…!」
一瞬の沈黙が場を包むも。
「い…いつかママがエスカルビーを安心して引退できるように、私がママ以上に強くなる、ってことです!」
「あ〜、アカリも寄る年波には勝てないもんなあ。」
「ひ…ひどくない、カンナ?!」
「まあ、未来でもまだまだママは現役ですけどね。私の憧れ、目標です!」
一応、その場は落ち着いた。
…
……
「お話、とても面白かったです! 今日は本当にありがとうございました!」
「おうおう、まだまだアカリの秘話は無限ストックがあるぞお。いつでもこのカンナさんに聞き給え!」
「やめてええっ! は…恥ずかしいよおっ!」
「あ、アカリっち、ちょいと。」
(?)
帰り際に耳打ち。
(ミキちゃんのこと、よく見ておくのだぞ。何か無茶をしかねない予感がする。)
(…えっ? …何?)
よっしーは気づいていた。
ミキの不自然な失言の瞬間、かすかに表情から血の気が引いたこと。
単なる家出というのは…嘘なのだろう。
そして…「アカリを護りたい」の真の意味は…、
未来のアカリが、護らねばならないほどの危機に晒されていること。
少女は単身、時を超えて来た。
これは、ミキの決死のミッション。
その使命を…この時代の誰も、まだ知らない。
……
…
閂市は春の陽気に包まれながらも、まだ日が落ちるのは早い。
夕暮れの学園を後にし、基地への帰り道。
ぎゅっ…。
「あの…ミキちゃん?」
「はい?」
「どうして…腕を組んでくるのかな?」
「だって…未来のママったら、私が大きくなったからって、もう腕を組んで一緒に歩いてくれないんです。だから、こっちのママならオッケーかな、って。」
「あ…あはは…!」
姉が好き過ぎる妹のように、アカリにべったり引っ付くミキ。
「…当たり前ですけど、私の知るママと、同じ香りがします…。ぬくもりも、一緒です…!」
「ミキちゃん…?」
アカリに芽生えた違和感。
ミキはこの年頃にしては、しっかりしているのに。むしろ、母親への反抗期でもおかしくないのに。
どうしてこの子は、こんなにも私に甘えるのだろう。
まるで、いま甘えておかなければ、もうチャンスは無いかのように…?
〘クレッ!〙【クレクレッ!】
《クレエエエッッ!!》
「『!!』」
その空気に水を差し、幻魔・クレイドの群れが2人の行く手を阻む。
「ミキちゃん! 隠れて!」
「ママ!?」
ミキをかばい、アカリが戦闘体勢に入る。
「フラックスプロージョン・ビートチェンジ!」
しゃきいいんっ…!
「長官! 敵出現です!
ポイントC−8、詳細は省略。
なお、要保護者が1名。市民の避難誘導と並行して、保護の手配をお願いします!」
《ルビー、こちら司令室だ。状況はこちらでも確認した。
応援の到着まで無理をするなよ。》
「了解、保護を最優先します!」
通信で概況を伝達し…
「エスカルビー、出撃します!
はあああーーーっ!!」
ミキからクレイドの目を逸らすように、ルビーは敵を自分に引き付け、孤軍奮闘する。
「やあっ! はっ! たああっ!」
どがっ! ばしっ、がつっ!
〘クレッ!〙《クレッ…》
【クレエエエッッ!】
倒すための攻撃ではなく、複数のクレイドをミキに近づけないため、常に間に割って入りながら拳を繰り出すルビー。
保護対象者・ミキはその意図を汲みながら、ゆっくり後退する。
クレイドがこちらに来ないか、視野を広く持ち…そして。
「これが全盛期の…
エスカルビーの、生の勇姿…。」
自らも襲撃を受けている真っ只中のミキは…
「…すごい…!
私とそんなに変わらない歳なのに…!」
尊敬する戦士の一挙手一投足を、瞳に焼き付けた。
……
…
〘グボッ!〙《ゲフッ…》【ガアアッ!】
(えっ…?!)
戦闘は続き、ルビーの優勢は変わらない。
だが、ルビーとミキは異変を感じていた。
高い知性を持たないはずのクレイドが、次第に言語を発し、ルビーを包囲し始める。
〘…チョウコウノ…チカラ…!〙
【ワレラヲ…ホロボス…モノ…】
《サキニ…ホロボス…!》
「ふ…普通のクレイドじゃない!
ミキちゃん! 基地まで逃げて!」
非常事態を悟り、ミキの安否を真っ先に案じるルビー。
だが、護るべき、無力で平凡なはずの少女からは…。
「…こいつらだ…。
こいつらが…ママを! みんなを!」
「っ…? ミキちゃん?!」
湧き上がる気迫と闘志で、後ずさる脚を反転。
「フラックスプロージョン・ビートチェンジ!」
しゃきいいんっ…!
少女を包む、白くまばゆい光。
その輝きは温かく、力強くミキの五体を抱擁し、勇気をまとわせる。
「えっ…えええええっっ!?」
「永遠なる光は無限の銀河!
純白の超昂戦士、エスカ・ダイヤ!
悪の現場に、只今参上!」
「ミ…ミキちゃん、変身できるのお!?」
「はいっ!」
その意匠は、憧れの母の雄姿を受け継ぐ、セーラー服。だが、襟から背中までを包むカラーとレオタード、プリーツスカートから成る戦闘服は、煌めくピンクゴールド。
パールホワイトとのツートンカラーで戦士を包むバトルスーツは、虹の煌めきをたたえる胸の輝石とともに、無垢なる希望を闘志に変え、若き戦士を護る。
カチューシャ型ヘッドガードと左右のギアでツインテールに纏めた赤髪は、伝説の戦士を継ぐ決意の体現。
(でも…ミキちゃん、パパが反対してるって言ってたのに…?)
ふと湧き上がる、ルビーの疑念。
だが、未知の敵と対峙し…その疑念を掻き消すように、若き戦士は気丈に吼える。
「エスカ・ダイヤ、援護に入ります!!」
【続く】
作者の環です。第2話お届けです。
オリキャラ、しかも未来の主役の娘という、読者さまによってはアレルギーを持たれるポジションなので、受け入れていただけるか怖いのですが…寛大に許容してお楽しみいただけましたなら幸いです。
次回、ルビーとダイヤのタッグバトル、スタートです。