超昂大戦SS 時駆ける超昂戦士! 未来少女の架けた虹   作:環 藍河

3 / 8
第3章 時を超える呪詛! 超昂戦士を蝕む毒牙

「やあああーーーっ!!」

だっ…!!

「はあっ! やあっ!」

【ゲブッ…!】《ガハアッ!》

ルビー包囲網を断ち切るように、未来から訪れた援軍、超昂戦士エスカ・ダイヤは…母譲りの俊敏さと蹴撃で、その一角のクレイドを蹴散らす。

 

「ルビーさん! 敵の狙いはあなたです!

倒すと毒の泥を吐きます! すぐ退いてくださいっ!」

「えっ? …あっ…!」

ルビーは初見の、人語を解するクレイド。だが、ダイヤはその特性を知っている。

やはり彼女は、未来から来たのか…?

 

一方。

(…もしかして…!)

その戦いぶりを観て、ルビーによぎる感覚。

 

戦闘マニュアルに忠実に、演武のように綺麗な技を重ねるダイヤ。だが、今は無難でも、マニュアル外の敵には通用しない、経験不足の危うさをルビーは感じていた。

そして、自分の一挙手一投足に…体が軽く、速く鋭く動く様子に感動し、童心に帰るような笑顔を時折覗かせる。

 

2年経っても絶対に忘れない、その感覚は…。

(これ…ダイヤの初変身、初戦闘だ…!)

ルビーも初出動では、フーマンたちをなぎ倒せる超昂戦士の漲るパワーに胸を踊らせた。

ダイヤの表情は、まさにその再現。

 

(ダメ…ムチャだよ、ダイヤ…!!)

デビュー戦を導くセコンドとして、ルビーは決意する。とにかくダイヤをカバーして、無事にこの場を凌ぐしかない。

 

「ルビーさん! こっちです!」

「ダイヤ!? くっ…!」

 

〘ニガサヌ…!〙【フタリトモ…!!】

《【〘クラエエエエッッ!!〙】》

ダイヤが開けた、クレイドの壁の隙間へ…ダイヤのもとへ走り込むルビー。

逃がすまいと包囲網を狭め、ルビーをダイヤもろとも追撃するクレイド軍団。

 

ダイヤの前で反転して、迫るクレイドを遮り、ダイヤを護る…はずだった。

が、待ち構えたダイヤは、駆け込むルビーの左腕を取ると…

「ルビーさん、ごめんっ!」

「えっ…? わっ、わわわわっ…!」

 

 ぶん…っ!

 

「せえええいっ!!」

「わああああーーーっ!?」

 

陸上競技のハンマー投げのように…自分を軸にルビーを振り回し、投げ飛ばしてクレイドから逃がす。

 

「…っ! ダイヤっ!」

「えっ…?!」

 

 ぶしゃあああっ!

 びゅううっ、ぶしゅっ!

 びしゃあああっっ!!

 

「きゃあああーーーっ!!

ああっ! うぶっ…ごほっ…!

く…うあああーーっっ!」

 

クレイドが、顔の中心から泥のような粘液を吹き出す。

 

ルビーを逃がすことに意識を捉われ、自分が退く判断を遅らせてしまった。

実戦経験が浅いがゆえの、ミスの代償。

取り残されたダイヤは…両眼に、頭に、胸に。腹に、背中に、スカートに。

四方八方からその直撃を浴びてしまう。

 

「あああっ…あーーーっっ!!」

汚泥にまみれて顔を押さえ、奪われた視界に狼狽しながらかがみ込むダイヤ。そこに追撃をかけようと、なおもクレイドが戦士への包囲を狭める…!

 

「ストライク・エスカレーション!!」

《〘【グアアアアァァッ!!】〙》

「その子からっ、離れろおおっ!!」

 

今度は泥液攻撃を逃れたルビーが、ありったけの必殺技と連撃で、クレイドを薙ぎ払っていくが…。

 

……

 

《チ…チクショウ…!》

 どろ…っ…。

 

最後の一体を撃ち倒すも、ルビーの瞳に勝利の喜びは無く。

「ダイヤっ! ダイヤああっ!!」

毒の汚泥に苦しむ戦士に駆け寄る。

 

「げほっ、うぶうっ…。

だ…ダメですっ…私に触らないで…!」

「えっ…?」

潰された視界が戻らず、うずくまりながらも、声の聞こえる向きだけを頼りに駆け寄るルビーを制止する、エスカ・ダイヤ。

 

「この泥は…ルビーさんを蝕む、時限爆弾…。

私はワクチンを射ってますから…。

大丈夫…なので…。」

「そんな…!」

 

「これが…私がこの時代に来た目的…。」

「!?」

「ママ…これでもう、大丈夫…!」

「ダイヤっ! しっかりしてっ!」

「へへ…ちょっと…寝るね…。」

 

 ばたっ。

 

(ああっ…ダイヤ、ダイヤあっ…!)

そのまま力なく倒れ込むエスカ・ダイヤ。

ルビーは、今すぐにもダイヤを自ら救急搬送したい気持ちを押さえ、唇を噛む。身を挺して汚染からかばったダイヤの行動を、無駄にしないために。

 

この後すぐさま、防護服を装備した救護隊が到着、ダイヤを除染し基地へ運んだ。

だが、それまでの十数分は、ルビーには時計が停まったかのように長く…長く感じられた。

 

……

「ダイヤさんの…ミキさんの意識は…混濁したままです。」

基地のメディカルルーム内に設けたクリーンルームに搬送されたダイヤは…ユユエルとセラフィールが必死に看病するも、苦しみ続ける。

「今は…毒素が消えないまま、消耗した体力をヒールで補って、何とか繋ぐだけで精一杯です。」

「そんな…ワクチンを射ってるから…大丈夫だって言ってたのに!」

症状説明にアカリの血の気が引く。

 

「ワクチンなど無いねえ、たぶん未来でも。」

「ルカさん!?」

「ミキくんの血液を検査したが、現代医学で説明できる毒の成分は不検出。いま彼女を蝕んでいるのは…幻魔の呪いの類いさ。」

「そんなっ!」

ダイヤがワクチン接種済だと言ったのは…恐らくルビーを近寄らせないため、泥の呪いを自分だけで背負うための、優しい嘘だった。

 

「ルカ…解呪はできないの?」

「…レディもご存知だろう。幻魔それぞれの起源や接現力のルーツによって、もたらす呪いは千変万化。解析は我が弟子が全力で進めているが、いつ終わることやら…!」

 

「な…ならば、私の断絶の力なら、幻魔の侵食部だけを断つことができるはずです!」

「ヒビキくん…残念だが却下だ。呪いはミキくん本人の体組織を蝕んでいる。もう幻魔と彼女の境界が曖昧な現状では、人質を取られているようなものなのだよ。」

 

「…私がこうなっていたはずなのに…。」

「アカリ…!」

「未来の医療で治せないから、過去まで来たんだ…。私の身代わりになってまで、ミキちゃんは私を護ったんだ…!」

 

ミキは…娘として、母・アカリを幻魔の呪いから護るために、未来から来たことになる。

それはワクチンはおろか、治療薬や予防方法さえも持たない、捨て身のワンマンレスキュー。

 

「こらあーっ! 起きなさいよっ! あんた、アカリの子どもなんでしょ!!」

「う…うららちゃんっ!?」

クリーンルームのガラス越しに、うららが叫ぶ。

「ヒーローは倒れても立ち上がってなんぼでしょーがっ! アカリの子なら、絶対にあたしがヒーロー英才教育をしてきたはずよっ!

自己犠牲なんて許さないんだからあっ!!」

 

(…大、正解、ですよ…。)

「『〔《っ!!》〕』」

 

スピーカーから、意識を振り絞るミキの声。

 

(絶対に私…呪いに…勝ちます。

エスカルビーを…継ぐ戦士は…

こんな呪いに…負けない…!)

「ミキちゃんっ!?」

 

(でも…万が一、私が負けちゃったら…。

ママ…。必ず、妹を作ってね…。)

「…それは…!!」

それはミキの弱音。

自分が呪いに負けても、妹が遺志を継ぐように…。

 

……

司令室では、アカリがうなだれていた。

「…アカリ、俺たちがすべきことは何だと思う?」

「…現状を整理して、すべきことを洗い出すことです…!」

トキサダが差し出したコーヒーを一口含み、混乱する頭に活を入れるアカリだが…。

「でも…もう、何がなにやら…。」

 

ぷしゅうっ。

「じゃあ、彼女を知る人に聞いてみよっか!」

「えっ…!?」

足早に飛び込んできたさやかが持ち込んだのは、突貫工事で作り出した通信機。

その映像には…!

 

【続く】

 

 




第3話、お届けしました。
なるべく簡潔に、わかりやすく表現したいのですが…次回は謎解き回、めっちゃ読解が大変かも、です。
何とかついてきていただけますよう、頑張ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。