超昂大戦SS 時駆ける超昂戦士! 未来少女の架けた虹 作:環 藍河
「やあああーーーっ!!」
だっ…!!
「はあっ! やあっ!」
【ゲブッ…!】《ガハアッ!》
ルビー包囲網を断ち切るように、未来から訪れた援軍、超昂戦士エスカ・ダイヤは…母譲りの俊敏さと蹴撃で、その一角のクレイドを蹴散らす。
「ルビーさん! 敵の狙いはあなたです!
倒すと毒の泥を吐きます! すぐ退いてくださいっ!」
「えっ? …あっ…!」
ルビーは初見の、人語を解するクレイド。だが、ダイヤはその特性を知っている。
やはり彼女は、未来から来たのか…?
一方。
(…もしかして…!)
その戦いぶりを観て、ルビーによぎる感覚。
戦闘マニュアルに忠実に、演武のように綺麗な技を重ねるダイヤ。だが、今は無難でも、マニュアル外の敵には通用しない、経験不足の危うさをルビーは感じていた。
そして、自分の一挙手一投足に…体が軽く、速く鋭く動く様子に感動し、童心に帰るような笑顔を時折覗かせる。
2年経っても絶対に忘れない、その感覚は…。
(これ…ダイヤの初変身、初戦闘だ…!)
ルビーも初出動では、フーマンたちをなぎ倒せる超昂戦士の漲るパワーに胸を踊らせた。
ダイヤの表情は、まさにその再現。
(ダメ…ムチャだよ、ダイヤ…!!)
デビュー戦を導くセコンドとして、ルビーは決意する。とにかくダイヤをカバーして、無事にこの場を凌ぐしかない。
「ルビーさん! こっちです!」
「ダイヤ!? くっ…!」
〘ニガサヌ…!〙【フタリトモ…!!】
《【〘クラエエエエッッ!!〙】》
ダイヤが開けた、クレイドの壁の隙間へ…ダイヤのもとへ走り込むルビー。
逃がすまいと包囲網を狭め、ルビーをダイヤもろとも追撃するクレイド軍団。
ダイヤの前で反転して、迫るクレイドを遮り、ダイヤを護る…はずだった。
が、待ち構えたダイヤは、駆け込むルビーの左腕を取ると…
「ルビーさん、ごめんっ!」
「えっ…? わっ、わわわわっ…!」
ぶん…っ!
「せえええいっ!!」
「わああああーーーっ!?」
陸上競技のハンマー投げのように…自分を軸にルビーを振り回し、投げ飛ばしてクレイドから逃がす。
「…っ! ダイヤっ!」
「えっ…?!」
ぶしゃあああっ!
びゅううっ、ぶしゅっ!
びしゃあああっっ!!
「きゃあああーーーっ!!
ああっ! うぶっ…ごほっ…!
く…うあああーーっっ!」
クレイドが、顔の中心から泥のような粘液を吹き出す。
ルビーを逃がすことに意識を捉われ、自分が退く判断を遅らせてしまった。
実戦経験が浅いがゆえの、ミスの代償。
取り残されたダイヤは…両眼に、頭に、胸に。腹に、背中に、スカートに。
四方八方からその直撃を浴びてしまう。
「あああっ…あーーーっっ!!」
汚泥にまみれて顔を押さえ、奪われた視界に狼狽しながらかがみ込むダイヤ。そこに追撃をかけようと、なおもクレイドが戦士への包囲を狭める…!
「ストライク・エスカレーション!!」
《〘【グアアアアァァッ!!】〙》
「その子からっ、離れろおおっ!!」
今度は泥液攻撃を逃れたルビーが、ありったけの必殺技と連撃で、クレイドを薙ぎ払っていくが…。
……
…
《チ…チクショウ…!》
どろ…っ…。
最後の一体を撃ち倒すも、ルビーの瞳に勝利の喜びは無く。
「ダイヤっ! ダイヤああっ!!」
毒の汚泥に苦しむ戦士に駆け寄る。
「げほっ、うぶうっ…。
だ…ダメですっ…私に触らないで…!」
「えっ…?」
潰された視界が戻らず、うずくまりながらも、声の聞こえる向きだけを頼りに駆け寄るルビーを制止する、エスカ・ダイヤ。
「この泥は…ルビーさんを蝕む、時限爆弾…。
私はワクチンを射ってますから…。
大丈夫…なので…。」
「そんな…!」
「これが…私がこの時代に来た目的…。」
「!?」
「ママ…これでもう、大丈夫…!」
「ダイヤっ! しっかりしてっ!」
「へへ…ちょっと…寝るね…。」
ばたっ。
(ああっ…ダイヤ、ダイヤあっ…!)
そのまま力なく倒れ込むエスカ・ダイヤ。
ルビーは、今すぐにもダイヤを自ら救急搬送したい気持ちを押さえ、唇を噛む。身を挺して汚染からかばったダイヤの行動を、無駄にしないために。
この後すぐさま、防護服を装備した救護隊が到着、ダイヤを除染し基地へ運んだ。
だが、それまでの十数分は、ルビーには時計が停まったかのように長く…長く感じられた。
……
…
「ダイヤさんの…ミキさんの意識は…混濁したままです。」
基地のメディカルルーム内に設けたクリーンルームに搬送されたダイヤは…ユユエルとセラフィールが必死に看病するも、苦しみ続ける。
「今は…毒素が消えないまま、消耗した体力をヒールで補って、何とか繋ぐだけで精一杯です。」
「そんな…ワクチンを射ってるから…大丈夫だって言ってたのに!」
症状説明にアカリの血の気が引く。
「ワクチンなど無いねえ、たぶん未来でも。」
「ルカさん!?」
「ミキくんの血液を検査したが、現代医学で説明できる毒の成分は不検出。いま彼女を蝕んでいるのは…幻魔の呪いの類いさ。」
「そんなっ!」
ダイヤがワクチン接種済だと言ったのは…恐らくルビーを近寄らせないため、泥の呪いを自分だけで背負うための、優しい嘘だった。
「ルカ…解呪はできないの?」
「…レディもご存知だろう。幻魔それぞれの起源や接現力のルーツによって、もたらす呪いは千変万化。解析は我が弟子が全力で進めているが、いつ終わることやら…!」
「な…ならば、私の断絶の力なら、幻魔の侵食部だけを断つことができるはずです!」
「ヒビキくん…残念だが却下だ。呪いはミキくん本人の体組織を蝕んでいる。もう幻魔と彼女の境界が曖昧な現状では、人質を取られているようなものなのだよ。」
「…私がこうなっていたはずなのに…。」
「アカリ…!」
「未来の医療で治せないから、過去まで来たんだ…。私の身代わりになってまで、ミキちゃんは私を護ったんだ…!」
ミキは…娘として、母・アカリを幻魔の呪いから護るために、未来から来たことになる。
それはワクチンはおろか、治療薬や予防方法さえも持たない、捨て身のワンマンレスキュー。
「こらあーっ! 起きなさいよっ! あんた、アカリの子どもなんでしょ!!」
「う…うららちゃんっ!?」
クリーンルームのガラス越しに、うららが叫ぶ。
「ヒーローは倒れても立ち上がってなんぼでしょーがっ! アカリの子なら、絶対にあたしがヒーロー英才教育をしてきたはずよっ!
自己犠牲なんて許さないんだからあっ!!」
(…大、正解、ですよ…。)
「『〔《っ!!》〕』」
スピーカーから、意識を振り絞るミキの声。
(絶対に私…呪いに…勝ちます。
エスカルビーを…継ぐ戦士は…
こんな呪いに…負けない…!)
「ミキちゃんっ!?」
(でも…万が一、私が負けちゃったら…。
ママ…。必ず、妹を作ってね…。)
「…それは…!!」
それはミキの弱音。
自分が呪いに負けても、妹が遺志を継ぐように…。
……
…
司令室では、アカリがうなだれていた。
「…アカリ、俺たちがすべきことは何だと思う?」
「…現状を整理して、すべきことを洗い出すことです…!」
トキサダが差し出したコーヒーを一口含み、混乱する頭に活を入れるアカリだが…。
「でも…もう、何がなにやら…。」
ぷしゅうっ。
「じゃあ、彼女を知る人に聞いてみよっか!」
「えっ…!?」
足早に飛び込んできたさやかが持ち込んだのは、突貫工事で作り出した通信機。
その映像には…!
【続く】
第3話、お届けしました。
なるべく簡潔に、わかりやすく表現したいのですが…次回は謎解き回、めっちゃ読解が大変かも、です。
何とかついてきていただけますよう、頑張ります。