超昂大戦SS 時駆ける超昂戦士! 未来少女の架けた虹 作:環 藍河
「ああっ…石が…ダイナライトがっ、ますます消えていくううううっ!」
「この期に及んで蝶鉱石を惜しむとは…まさに頭以外ダメダメ女ですね。」
「惜しまれるのは私の怠惰っ! 何で…ぬわんでっ、時間もあったはずなのにいっ…
どうしてっ、石を潰さない代替ゲートの技術開発にっ! 着手しなかったのっ、私いいいいっっ!!」
見えぬ敵の手がかりを探るため、さやかとマドカの漫才に見送られ、一度踏み越えた茨の道を再び潜り抜ける、アカリとトキサダ。
ぎゃるんっ…ごおおおおおっ!!
……
…
「…アカリ!? トキサダも…?
ここまで来るなんて…。」
虹色に輝くビートポータルの先…幻魔界は、かつてオルタナスタインが自らの城として君臨した地。常人ではたどり着かぬばかりか、その存在さえ誰も知り得ない、異次元の地。
そんな一画への思わぬ来客に、少女は…幻魔の巫女・オルバは当惑する。
「済まないが、事は急を要する。」
「オルバちゃんっ! お土産のたい焼きは持ってきたけど、話しの後っ!」
最終決戦以来の再会に、お互い積もる話もあるのだが、今はそれどころではなかった。
……
…
「…たぶん、間違いない。」
いきさつを聞き、見えぬ敵を絞り込むオルバ。
それは、超昂の力と幻魔の接現力を弄び、幻魔王を呪い滅ぼす力を持つ者。
そして滅びの種を雑兵にまき散らさせて戦士の躰の奥深くに植え付け、ほとぼりが冷めた数十年の後に呼び醒ますことが可能な者。
「…その両方が可能な幻魔は…」
「自然発生することは、まず無い。」
今、地上で出没するのは、接現力の…人々の怖れや絶望の吹き溜まりから偶然生まれる、いわゆるはぐれ幻魔と、アルダークの残党が人為的に接現力を集めて生み出した幻魔であり、どちらも知性など皆無。
「言語を喋り、超昂も幻魔も潰そうだなんて頭の回る、高位の幻魔は生まれない。
生み出せる巫女は私ぐらいだけど…私はもうアカリを、ダイビートを滅するつもりは無い。」
「じゃあ…敵は幻魔じゃない…?」
ぶんぶん。
「新たに底終から湧くことが無いだけ。」
首を横に振り、アカリの仮説を却下した代わりに、オルバが出した答え。
「既に現世に在る幻魔で、それができるのは…判官。」
判官…?!
「! マッキンリー!?」
「そんな! あの人は…!」
死令判官・マッキンリー。
オルタナ四天王としてダイビートに対峙し、性欲と貪食・二つの大罪に執着した彼は…。
レジェンド戦士を拉致し、ダイビートが3人を奪還した後も、植え付けた因子で支配し、ダイビートを苦しめた。
彼女たちから吸い上げた超昂の力と、女性たちを誘拐し支配して吸い上げた接現力を自らも濫用し、チートな武器や戦闘力を生み出し、エスカチームを翻弄した。
「…判官は、超昂の力や幻魔の研究をさせろと、何度も王に懇願した。前のめりだった。」
確かにマッキンリーならば、この恐るべき陰謀を実行しうる。
「でも…マッキンリーさんは…!」
「ああ、アカリが…アステライズフォーム初陣のルビーが打倒し、オルタナスタインが斬首した。」
「確かに、判官はもういない。
でも判官は、地上に子飼いの研究者を作り、人体実験を繰り返し、超昂の力と接現力で魔獣を生み出していた。」
「…ああっ…!」
「生き残りの研究者が、あの技術を持ち出して、王や超昂の者を再び狙っていたら…。」
「『!!』」
「探している敵の手口は、判官と同じ。
だったら、判官の実験牢にその記録があるはず。」
「…長官っ!」
「わかってる。さやかさんっ! もういいぞ。戻してくれ!」
「オルバちゃんっ、今度ゆっくりねっ!」
「オルバ、ありがとう。次はたい焼き、お店の全種類持ってくるぞ。またな!」
ぎゃるんっ…ごおおおおおっ!!
…たい焼きを紙袋ごと渡し、30分も無い滞在時間でトキサダとアカリは幻魔の城を後にする。
…
……
「…何だろう、この気持ち…?」
真っ先に齧りつきたいはずの、たい焼きの袋を手にしているのに、オルバの心は…それを後回しに押しやる、温かい感情で満たされていく。
「アカリもトキサダも、熱い…。」
僅かな希望に全身全霊を賭け、はるばる幻魔界まで参じた2人。
いつも真っすぐな友だが、今日のアカリの熱意は、人類の危機だった最終決戦のときでさえ凌駕する。
単にダイビートの危機というだけではない。アカリをここまで動かすのは…自分たちのために命を賭けた娘を、何としても助けようとする願い。
「…私も、あの熱さで、何度もアカリに救われた…。」
敵だったのに。何度も襲ったのに。
それでも手を繋いでくれた。護ってくれた。
「アカリはやっぱり…みんなを護る人。
アカリに護られる、アカリの娘は…きっと幸せ。」
少し前まで、幻魔を滅ぼす危険な存在だと恐れ、いかに地上から滅するかを考え続けた、そんな超昂の力の申し子たちを。
オルバは…慈しみの心で見送っていた。
……
…
戻った閂市の郊外、廃ビルの一角。
「アメイズ…お願い!」
「わかってる。…ここね!」
びしいっ!!
ぱりいいいんっ!!
マッキンリーとの戦いの折、エスカチームが急襲した幻魔の研究施設。
接現力で隠匿された地下への階段を暴き、降りた先に広がるのは…。
「やっぱり、思い出すだけでも…背筋が凍るなあ…。」
「もう、箱船で除染や洗浄は十分済ませたけど、それでも、ね…。」
そこはかつて、牢獄と実験室が置かれた空間。
ここではマッキンリーに研究成果を貢ごうと、人倫にもとる狂科学者が人々を攫い、鉄鎖に繋ぎ監禁。
ある者は精神を弄られ、接現力を吐き出す発電機として扱われ。
ある者は幻魔との交配実験や、新たな因子の移植実験の被検体とされた。
そして最後は使い潰され、文字通りマッキンリーの食餌とされた。
「ルカ、頼む。」
「ああ、改めて検分させてもらうよ、ご同輩。」
同行したルカが、実験室に残されたノートの山を紐解いていく。
悪辣な…見るもおぞましい、その実験記録は、それでも破棄されることなく安置されていた。
(魔女の歴史でも、先人の勇み足や、追い詰められたゆえに禁忌に手を出した事例があるのよ。
それを忘れないためにも、こうした記録は消し去るんじゃなく、語り継ぐことにしているんだ。
過去を断罪するためじゃない。繰り返さないための教材として…ね。)
アメイズは…魔女の歴史を未来に繋ぐ指導者は、人の業を自らに重ね、悲しみを含み、語る。
「…匂うねえ。」
「ルカ…?」
「こっちのノートは幻魔と猛獣の交配記録に、こいつは人間の洗脳と接現力の搾取の記録。
これなんかは…魔力を受信するための因子を人に植え付け、遠隔で魔力を送信、覚醒させて操る研究。」
「…それは…エスカレイヤーたちが…!」
「ああ、既に我輩たちを苦しめた、忌々しい実証済みの研究だねえ。」
かつて最終決戦のさなか、エンジェリックエスカレイヤー・超昂閃忍・超昂神騎として覚醒し、マッキンリーに操られたレジェンド戦士たち。
初めに捕縛された際に植え付けられた因子が、解放後に起動したのは、この研究成果だったのか…?
「ただ、こいつで超昂戦士を呪うのは無理さ。送れるのは魔力を混ぜたエナジーだけ。せいぜいターゲットを暴走させるくらいで、今回の陰謀には使えない。」
呪詛を発動させるトリガーを手元に置き、一気にダイビートを全滅させる…ことは、できないらしい。
「ここの記録で、関連しそうな実験テーマは2つ。」
ルカが、読み解いた研究を噛み砕いて説明。
「まずは、毒の呪詛を潜伏させ、覚醒条件を与えて時間差で発動させる研究。」
「それは…数十年かけても発動するのか…?」
「この研究では【理論上は可能】だとさ。…愚かしいねえ。」
例えば独裁国家なら、この技術で生まれた国民全てに時限爆弾を仕掛け、恐怖支配することさえ可能。
科学・魔法・神力・龍の力…あらゆる力は、時に倫理を離れ暴走する危険と隣り合わせなのだと、改めて思い知る。
「最後に、人間の産む接現力に呪いを含ませ、狙った幻魔に呪いをかけて消滅させる研究。」
「なっ…!!」
「家畜に与える餌や環境を変え、それを食べる人間に毒素を蓄積させ、後遺障害や死に至らせるようなものさ。人類でも害虫駆除薬に使う考え方だが、幻魔に、しかも王に用いようとはねえ。」
「そんな恐ろしいこと…どうして…」
「あの判官は、オルタナスタインも裏切り、あわよくば食らい尽くす腹積もりだったと言うじゃないか。ならば、ダイビートの潰し方と一緒に、幻魔王の潰し方も研究するのは当然と言えよう。」
「…つまり…!」
「ああ、この技術を持ち出し、前者の技術でダイビートを、後者でオルタナスタインを。
君のご子息の時代で発動させ、二大勢力を一挙に潰そうと蠢いている輩がいる。」
「【『!!』】」
アカリ、アメイズ、そしてトキサダが一様に戦慄する。
【続く】
作者です。第5話をお送りしました。
徐々にあらわになる、真の敵の陰謀!
そして、ダイビートの反撃は成るのか?!
…とカッコ良く持って行きたいのですが…。
最低限、環の仕込んだトリックに大穴が無いことだけを祈ります。
第6話、反撃がいよいよスタートします。乞うご期待。