めんどくさがり屋の極地 作:暇人
『ごめん……もうお前とは仲良くできない』
『あいつに関われば内申点が悪くなる』
『お前と仲良くしてたら理事長に目をつけられるんだ…』
そんな言葉を投げかけられる1人の男がいた。
伐刀者としての才能が最底辺の男。
そんな境遇にも負けず足掻き続けていた時の出来事だった。
しかし、友達も家族も周りの人は彼を避けられ孤立していく中ででも彼は腐ることなく努力を続けた。
──こんなのは昔からのこと、今に始まったことじゃない。
思い込み続け誰にも恨み辛みを吐き出すことなくただただ努力をし続けた。
最底辺でも強くなれると、最弱でも最強に手が届くと。
そんな日々の中、ある日の事だった。
男はひとつの出会いを果たした。
「あ、おたく新入生?悪いけどさ、財布忘れたから飲み物ひとつ奢ってくんね?」
腕をまくった黒いワイシャツに緩めた白いネクタイ。
ブレザーを腰に巻き寝癖が目立つ短髪の黒髪を指で掻きながらへらへらした様相で彼は立っていた。
後に男は彼のことをこう評した。
──めんどくさがり屋の極地
と……、
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「──40、41、42、43と……乙ー」
「はぁ……はぁ……、タイムは、どうですか?」
「お前タイム縮めようとしすぎてペース配分間違えたな。昨日より47秒遅くなってる」
その言葉を聞き男、『黒鉄一輝』は地面に仰向けへと倒れた。
「体力なんて日々の積み重ねなんだから変に負荷を変えちゃダメダメ。明日からは気をつけるよーに」
「は、はい……いや全くもってその通りです」
そうしてはははと笑うイッキ。
そんな彼に目もくれず、タイマーの時間をメモに記す男。
「……先輩」
「んー?」
「ほんとにいいんですか?僕なんかに付き合ってもらっちゃって」
「あーいーのいーの。この学校の方針とか嫌いだから。留年されても別に気にせんし」
「あの、それ僕が気にするんですけど…」
「ばっかでぃ。いいか?留年するということは他の人よりも長く学生でいられるわけだ。みんなが社会人になってる時俺はまだ学生。人より多く気楽に生きてられるって訳」
「……それ後々辛くなるんじゃないですか?」
「そん時はそんとき考えればいいでしょー、と」
イッキの言葉を飄々と受け流す男。
彼はイッキの1つ上の学年。つまり"2年生"である。
今の時間帯、本来なら学生らしく勉学に励んでいる時間であるが、イッキは学園の方針ゆえ、と言うよりも嫌がらせで学業に参加出来ず、男はその方針を嫌い、半ば学園と不仲な関係にあるためにボイコット中なのだ。
「クソみたいな学園の内申点気にするよか、将来有望な後輩に唾つけといた方が後々良いことあるって俺のカンが言ってるってわけよ」
「あ、相変わらずですね先輩は」
先輩の言葉に苦笑いがこぼれるイッキ。
しかしながら彼はそんな先輩に対して感謝している。
『……こうはーい。飯食いに行こうや。今金ないからお前の奢りな』
イッキはそう言って教室に入ってきた先輩の姿を思い出していた。
周りから除け者扱いされ、下に見られ、バカにされ。
そんな同級生を容易く地面に倒し現れる先輩はイッキからは輝いて見えた。
周りの目を気にせず、嫌なことはとことん嫌い、好きなことだけして生きていく自由な人。
……多少自由すぎてイッキ自身振り回されてる節もあるがそれでも今まで出会ったことがなかったタイプの人。
イッキが懐くのも早いものだった。
「……先輩、一手ご指南下さい」
「えー、また?ぼーっとしながらタイム測るならまだしも俺汗かきたく「お昼は僕が持ちます」よし、早速やろうすぐやろうなうでプレイしよう」
イッキの言葉に高速手のひら返しを披露する先輩。
そんな現金な彼に呆れた笑みがこぼれるイッキ。
めんどいけど昼飯のためならがんばるかーと言葉をこぼし屈伸する彼を横目にイッキもまた呟いた。
「来てくれ、『陰鉄』」
手を前にかざすと青白い光がイッキの目の前に集まりだした。
それはやがて固まりとなり、それを掴むと次の瞬間、その手には1本の刀後握られていた。
「準備オーケー?」
「はい!」
目の前に立つ男に剣先を向け構える。
男は気だるそうに首に手を当て骨を鳴らしていた。
固有霊装は出していない。
「よーし。……あ」
「……?」
「俺お昼ステーキ食いたい」
「……わ、分かりました」
そんなバトルの前に似つかわしくない言葉にイッキは困惑……はしていない。ただ、軽くなることが確定した自身の財布の中身に思いを馳せていた。
「そんじゃやるか。……奉れ、『九天鏡谷』」
これは落第騎士と最強のサボり魔の物語である。
モチベがあったら続くよ。応援してね。