とある日曜日。
黒須麻純が買い物帰りに道を歩いていると、
曲がり角から飛び出てきた小柄なウマ娘とぶつかってしまった。
「あっ…!」
「きゃっ…!」
ウマ娘の膂力に押し飛ばされ、転倒する麻純。
「あたた…!ご、ごめんなさいね。よそ見しちゃってたわ」
「ごめんなさい…!ライスがちゃんと前を見てなかったから…!
大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」
「ええ、大丈夫よ。ちょっと転んだだけで擦りむいてもいないし、痛いところもないわ」
「ほ、本当ですか…?た、立てますか?」
そのウマ娘が手を差し伸べた。
「ありがとう。本当に大丈夫よ」
麻純がそう言って差し出された手を握った瞬間。
彼女の脳裏には、見るもおぞましいグロテスクな情景が浮かび上がってきたのだった。
「…!? ひっ…! うぷっ…!!」
麻純はライスシャワーの手を振り払い、えずいて苦しそうな声を漏らした。
「お、お姉さん大丈夫ですか!?やっぱりどこか…!」
「触らないで!!!
…あっ、ご、ごめんなさい…!ちょっと気分が悪くて…!」
「気分が…!待っててください、きゅ、救急車を呼びます…!」
ウマ娘がそう言ってスマートフォンを取り出そうとするのを麻純が制止した。
「ま、待って!気分は良くないけど本当に大丈夫だから!
今朝からあまり調子が良くなくてね、だから不注意になっちゃったのかもしれないわ。
これから元々病院に行く予定だったから、その時に相談してみるわね」
「だ、大丈夫なんですか…?」
「ええ、ちゃんとお医者さんに話をしてみるわ。
普通に歩くことはできるから救急車は大げさよ。
ごめんなさい、手を振り払ったりして」
麻純はそう言って立ち上がり、落としてしまった荷物を拾った。
「そう、ですか…。それなら…」
「うん、だから気にしないで。そうだ…あなた、お名前は?」
「あっ、そうですよね!もし何かあったら連絡してもらわないとですね…!
私、ライスシャワーって言います。トレセン学園に通っているので、
もし何かお怪我があったら連絡してください…!」
「ライスシャワーさん…ね。わかったわ、大丈夫だろうけどもし何かあったら連絡するわ。
トレセン学園に通っているのね、エリートさんじゃない!
そういえばあなたの名前、テレビで見たことあるわ。
菊花賞や春の天皇賞を勝った子じゃなかったかしら?」
「そ、そうです…!知っててくれたんですね…!」
「GIで優勝なんてすごいわね。…これからも、頑張ってね」
「はい…!ありがとうございます…!」
「それじゃ私は行くわ。練習頑張ってね」
「はい!あの、しつこいようですけど、今日のことで何かあったら言ってくださいね…!」
「ええ、わかったわ。じゃあ、さよなら…」
麻純はライスシャワーに一礼をしてその場を離れる。
その時の麻純は離れていくライスシャワーの顔をいつまでも思い浮かべていた。
その彼女の顔は、いつになく険しいものだった。
【黒須麻純】
一也の『産みの親』。
奈良時代から続く看護師の家系の末裔。
触れた相手の死期が近いと、寿命を見ることができる特殊な能力を持つ。
KAZUYAへ強い好意を寄せていたがKAZUYAから女性としては見てもらえず、
それが原因でクローン計画に参加し一也を産んだ。
ところ変わって、Kの診療所。
一也が勉強をしていると、診療所にある電話が鳴り響いた。
「はい、診療所です」
『こんにちは、黒須麻純です。その声は一也かしら?』
「あっ、母さん!うん、一也だよ!どうかしたの?」
『ちょっとね…。K先生はいらっしゃる?』
「K先生は往診で出かけてるよ。伝言があるなら伝えようか?
急ぎの話なら呼びに行くけど…」
『急ぎ…ではないと思うわ。でもそうね…K先生に伝えたいけど、
この際だからあなたにも話しておこうかしら』
「僕に…?どんな話なの?」
『一也も知ってるわよね?私が持つ特別な力のことを…』
「うん。…死が近づいた人間の死のイメージが見える、ってやつでしょ?」
『そう。それがね…今日見ちゃったのよ…』
「…それはどんな人に?」
『うん…。あなたも知ってるかしら?
菊花賞や春の天皇賞を勝利した、小柄で黒髪のウマ娘さんを』
「菊花賞や春天を勝った黒髪…それってライスシャワーさん!?」
『そうなのよ。若いウマ娘さんだからこんなものが見えるなんて思わなかった…
戦歴を調べてみてもとても元気そうだったわ。いったい何が起こるのか…』
「それをK先生に調べてほしい…ってこと?」
『ええ…。私の見えた死の予知は…結局変えられたことは無いの。
でも…私は看護師をしていたから、死が見えた人のほとんどは重傷者や重病人だった。
それと比べると、ライスシャワーさんはまだ健康に見えるわ。
もしかしたらK先生ならなんとかできるかもしれない。
大きな病気が潜んでいたりしないか、どうにか調べてもらえないかしら』
「わかった…!K先生に話してみるよ!」
『ありがとう、お願いね。
ところで一也の方はどう?学校は楽しめてる?』
「うん、毎日楽しいよ!先週だってね…」
麻純と一也はクローン組織の襲撃騒ぎ以来安全のため別居しており、あまり会うことは無い。
2人は久しぶりにできた親子の会話を楽しんだ。
しばらくしてKが診療所に帰ってくる。
「戻ったぞ。こちらには異常なかったか?」
「K先生おかえりなさい!異常はありませんでしたが、少し相談が…」
「む、相談…?」
一也は麻純から聞いた話を一通り伝えた。
「そうか…ライスシャワーは俺も顔は知っている。
彼女に死のイメージが見えた…と言うんだな?」
「そうなんです。どうにかできないでしょうか?」
「うむ…麻純さんの持つ寿命を見る力…今まで覆したことは無いと聞いている。
例えば末期癌のようなものでは確かに手の施しようもないだろうが…
しかしまだライスシャワーに問題は発生していないようだな。
それならば彼女の言う通り、調べてみる価値はあると思われる」
「もし何らかの病気なら…K先生なら治せるかもしれませんね!」
「トレセン学園はそろそろ健康診断を行う時期だ。
麻純さんのことは話さないが、学園に掛け合って調べさせてもらう機会を作ってみよう」
「お願いします!」
そうしてKはトレセン学園と相談をし、健康診断を行う医師の1人として学園に行ったのだった。
「さて、次はライスシャワーさん。お入りください」
「ライスシャワーです…!よろしくお願いします…!」
「そんなに緊張しないで大丈夫ですよ。単なる健康診断ですから気軽にね」
「はい…!」
単なる健康診断と言いつつ、Kは真剣にライスシャワーの体を診察した。
(体に異常は見受けられない。心拍や目は正常、のどや聴力に異常なし。
疲労があるのは見受けられるが、常識の範疇のようだ。
この段階では全く問題は発見できないな…。
精密検査をしなくてはなるまい。ならばあの手を使うか)
かなり真剣に診察されているのを察して、ライスシャワーはだいぶ不安そうだった。
「あ、あの、先生…。ライスに何か悪いところがありましたか…?」
「ああ、失礼。健康的な体でしたのでね、ちょっと見惚れてしまいました。
診断では何の問題もなさそうですね。後は血液採取を行って終了です」
「そうですか…!ありがとうございます…!」
「……」
そう言いながらも満足していない表情のK。
その後血液検査のための採取を行い、ライスシャワーは帰宅した。
数日後、ライスシャワーのトレーナーの下に一本の電話が届いた。
「はい、もしもし」
『こんにちは、お忙しいところ恐れ入ります。
私は先日ライスシャワーさんの健康診断を行った医師です』
「こ、こんにちは!お医者さん…まさか、ライスに何かありましたか!?」
『ええ…。血液検査の結果、実はちょっと気になる所がありまして…
精密検査をしたいので、お手間ですが病院に来ていただきたいのです』
「精密検査…!い、いつでも行けます!今日の午後でも大丈夫ですか!?」
『ええ大丈夫ですよ。では午後3時に予約を取っておきますね。
検査のために昼食は抜いておいてください。病院の住所は…』
「はい、はい…!わかりました!必ず向かいます!よろしくお願いします!」
電話を切った後、トレーナーが呟いた。
「ライスに精密検査なんて…!もし何かあったらどうしよう…!
トレーニングなんてさせてる場合じゃない、準備しないと!」
トレーナーは自主練をしていたライスシャワーに事情を話し、
病院へ向かう準備をさせたのだった。
午後3時前、病院に到着したライスシャワーとトレーナー。
「ふええ…怖いよお姉さま…。ライス、どこかおかしいのかな…?」
「だ、大丈夫よ。おかしいところがないかちゃんと詳しく調べるんだから。
仮に何かあっても治せばいいだけよ!私もついてるから、そう怖がらないで」
「うん…。」
再検査と言う言葉に、ライスシャワーはだいぶ怯えているようだった。
病院ではKが2人を迎え入れた。
「ようこそおいでくださいました」
「よろしくお願いします。その…ライスの体にどのようなことが…?」
「血液の成分に気になる点がありましてね。
ですが異常であると決まったわけではありません。
異常があるのかないのか、しっかり調べておくべきと考えました」
「そうですか…。ライス、大丈夫よね?」
「うん…お、お願いします…。」
「本日は主に血液の再検査と、MRIによる測定を行います。
人工関節やペースメーカーのような金属製品が体内にあったり、
閉所恐怖症ではないですね?」
「はい、大丈夫です…」
「ではまず血液の採取を行ったら検査着に着替えてください。
MRIの測定は数十分かかるので、途中気分が悪くなったり、
トイレに行きたくなった場合は声をかけてくださいね」
「わかりました…」
そうしてライスシャワーのMRI測定が行われた。
この再検査と言う話、実は精密検査を行いたかったKがついた嘘であった。
(よし、なんとか精密検査に持ち込めたな。
手間をかけさせて申し訳ないが、医者の嘘は方便と言うやつだ。
せめてもの侘びに費用は俺が払っておくことにしよう)
測定終了後。
「ライスシャワーさん、お疲れ様でした。結果は数日後に詳しくお伝えします。
費用に関してはトレセン学園から依頼されているのであなたの負担はありません」
「そ、そうなんですね。検査よろしくお願いします…」
ほとんど横になっていただけとはいえ、1時間以上に及ぶ測定で少々お疲れのライスシャワー。
「あの、先生。結果が出るまではライスはどうしたらいいですか?
トレーニングはせずに安静にしていた方がいいでしょうか?
もうすぐ今年の春天に出走するので、できればトレーニングはさせたいのですが…」
トレーナーはずいぶんと心配そうな様子だ。
「そうですね…。もどかしいでしょうが、念のため安静にしてください。
学習系のトレーニングで体に負荷がかからないようなものならいいと思います」
「わかりました。結果がわかったら教えてください。よろしくお願いします」
「お任せください、なるべく早めに連絡いたします」
ライスシャワーの帰宅後、測定した画像をKが分析する。
「うむ…脳内出血やくも膜下出血、腫瘍や癌、動脈瘤や梗塞、白血病等の兆候はない。
血中成分にも異常はなく、筋肉量や骨密度にも異常なし。
アグネスタキオンやトーセンジョーダンのような脚部不安も時に無し…。
これを見る限り、健康そのものだな」
Kは3日後に分析を終え、「一切の異常なし」をライスシャワーに伝えた。
再検査が必要となったのは血液検査で起きた偽反応だったのでしょう、
手間をかけて申し訳ない、と話すとライスシャワーとトレーナーは安心し、
またトレーニングを再開させていった。
だが診療所に戻ったKはやはり真剣な表情である。
もし病気が発見されていればある意味いいことで、対処のしようもあったのだ。
しかし精密検査をしても問題がなかったことについて、一也にも話した。
「K先生の診断でも問題なし…ですか」
一也も眉をしかめながら考え込む。
「観察でも触診でもMRIでも成分分析でも異常はない。
こうなると短期間で病死する可能性はゼロと言ってもいいだろう。
しかしそうなると考えられるのは…」
「事故…でしょうか…?」
「おそらくな。ウマ娘の事故死はそれなりにあるが…
可能性が高いのはトレーニング中とレース中だ。
高速で走っている際に何かが起こると、車に撥ねられたのと同等な衝撃に襲われるからな」
「そうですよね。でも事故となると防ぎようがないのでは…?
事故が起きそうだから走るなと言うのは無理でしょうし、
それに単純に車に轢かれたり倒壊した建物に押しつぶされたり、そういう可能性もありますよね」
「そうだな…。四六時中ついて回るわけにもいかないからな。
ここは事故の可能性が高いところを注視してみよう。
日常の突発的な事故は我々では防ぎようがないのでこれは排除。
トレーニング中は基本的にトレーナーが付いているだろうから事故の確率は少ないし、
仮に事故があってもすぐ対処がされるはずだ、死につながる可能性は低い。
するとやはり、部外者の俺たちの観察しやすさを考えても…レースを見てみるべきだな。
ウマ娘は異世界の魂を受け継ぐという話があるが、
それが由来なのかわからんが日常生活での事故はかなり少ない。
ほとんどはレースやトレーニングの中で発生するものだ、それに賭けよう」
「レースならライスシャワーさんは来週の春天に出走するようです。そこで何かが…?」
「可能性はある。ちょうど俺も来週に京都の病院で執刀予定がある。
日はずれているのでレースを見に行く時間はある、俺が行ってみよう」
「お願いします、先生!」
1週間後に開催された春の天皇賞。
Kと一也の心配をよそにライスシャワーは素晴らしい走りを見せ、
危なげなく勝利を掴んだのだった。
帰宅したKが一也と話す。
「特に事故は起こらなかったな。今回ではなかったらしい」
「よかったですが…でも不安ですね」
「うむ…ライスシャワーの次の出走予定は宝塚記念か。
今回の宝塚記念は京都で開催されるらしい。この日も俺は京都に行く予定があるが、
ちょうど同じ日のオペだから見には行けんな。一也、お前に頼んでいいか?
村の診療は村井さんに頼むから、富永と一緒に観戦に行ってもらいたい」
「わ、わかりました…!富永先生もいれば、何かがあっても対処できると思います」
「富永には予知のことは伝えずにおこう、何かがあると決まったわけではないからな。
だが…何かが起きたらその時は頼むぞ。
俺は現場には行けないが、近隣の病院にいるからオペの終了後に待機しておく」
「はい…!」
一也はKとの話を受けて、富永に「宝塚記念に行こう」と誘った。
一也から誘われると思っていなかった富永はたいそう嬉しそうであった。
「おおー!宝塚記念、僕も行きたいとは思ってたんだよ!
まさか一也くんから誘われるなんてね!いいんですかK先生!?」
「ああ、行ってくるといい。たまには休みにして出かけるのもいいだろう。
俺も京都に行く予定があるから一緒に向おうか。
村の診療は村井さんと麻上くんがいれば問題なかろう」
「でもK先生はその日オペをするんですよね?よかったら僕も助手をしますよ!」
「気にするな、大学病院での教鞭のようなものだ。
学生も多いが教授たちがサポートしてくれるから富永の手を借りずとも問題ない」
「そうっスか、それならお言葉に甘えて!一也君は応援してるウマ娘はいるのかい?」
「ぼ、僕ですか?えっと…ライスシャワーさん、ですかね…」
「ライスシャワーか!いいところを選ぶね!
彼女は立派だよ、小さい体であんなに大きな走りをするんだから。
思い出すなァ、ミホノブルボンを破った菊花賞、メジロマックイーンを破った前の春天…
僕はその前からずっと彼女を応援しているのさ!」
「そうなんですか、結構前から好きだったんですね?」
「そう!!ライスシャワーはねえ、一時期ヒール扱いされてた時があったんだ。
さっき言ったミホノブルボンは無敗の三冠、メジロマックイーンは天皇賞三連覇、
それぞれが偉業にリーチをかけていたのさ。それに期待している人も多くてね。
でも勝ったのはライスシャワー…期待を破られたって心ない言葉を投げる人が結構いて、
夢を壊す悪役だとか言われてしまったんだ。今思い出しても腹が立つなァ…
正々堂々戦った彼女らの勝負を否定するなんて、そんなのファンとは言えないよ。
それでも彼女はめげずに頑張って…今はヒーローってみんなに認めてもらえたんだ。
今年の春天も見事な走りだったね。宝塚記念も楽しみだ!」
富永は過去のレースをしみじみと思い出し、熱く語り始めた。
富永という男、逆境にめげずに努力を重ねる子が大好きなのである。
「そ、そうなんですね。僕も宝塚記念が楽しみです」
「いっぱい声援を送ろうな!
でも宝塚記念はライスシャワー以外にもいいウマ娘がいっぱいだからなァ…!
ライスシャワーだけでいいのかちょっと迷っちゃうよ…!」
事情を知らない富永は純粋にレースを楽しみにしていた。
春の天皇賞のあと、特にライスシャワーに関するニュースはなかった。
順調にトレーニングを重ね、宝塚記念に向けて頑張っているらしい。
そして一月ほどたち、運命の日。
宝塚記念の日がやってきたのだった。
その日は曇り、稍重のバ場。
前日の雨が残り、芝の状態はあまりいいとは言えない状態だった。
宝塚記念は通常阪神レース場で行われるレースだが、
阪神レース場の改修工事のため特別に京都レース場で行われることになっていた。
一也と富永は早い段階から準備をし、観戦席の最前列に陣取ることができた。
「よおーし!天気は微妙だけど、雨は降らなくてよかったね!
早くから並んだおかげでこんないい席をとれた!」
「うん、よかったです!おかげで…コースがよく見えますね…!」
控室で待機するライスシャワーとトレーナー。
最近は調子もよく、トレーニングも十分積んできた。
かつては気の弱いウマ娘だったライスシャワーだが、多くのライバルと出会い、
何度もGIレースを戦ってきた経験で培った実力にもう恐れはなかった。
「今年の宝塚記念は京都レース場、ライスにとってはホームグラウンドみたいなものね。
やっぱりあなたはラッキーなウマ娘よ!」
「えへへ、そうかな?ありがとうお姉さま。
でもね、レースはやっぱり運じゃなくて、実力が大事だと思うの」
「その通りよライス!あなたは実力がある、そして運もある。
宝塚記念、勝ってやりましょうね!」
「勝つぞ、おー!」
「よしよし…!頑張れ…!」
手を掲げて気合を入れるライスシャワーの頭を撫でるトレーナー。
「今日は雨は降ってないけど稍重だね、体力の消費に気を付けて走ろう。
ライス、調子は大丈夫かしら?」
「うん、大丈夫だよ!」
「よぉし!それじゃあ頑張ってきてねライス!
ここで勝って、今年の秋天に向けて勢いを付けていこう!」
「行ってきます、お姉さま!」
ライスシャワーはパドックへ向けて、力強く歩いて行った。
『本日は曇り模様の京都レース場、宝塚記念が開催されております。
通常の阪神レース場ではなく京都レース場の開催となった今回、
出走ウマ娘の様子は何か違いがあるでしょうか?』
『投票で選ばれた優駿たちですからね、どのウマ娘も落ち着いているようです。
しかしライスシャワーは京都レース場を得意とするウマ娘ですから、
彼女にとってはむしろ幸運と言えるでしょう』
『先に行われた春の天皇賞で見事勝利した一番人気ライスシャワー、
宝塚記念ではどのような走りを見せてくれるのかが楽しみですね!』
『さあ、17名の選ばれしウマ娘がゲートインしました。
果たして勝利の栄冠をつかむのは誰か!今…ゲートが開かれました!』
ゲートが開かれ、綺麗にスタートを決めたウマ娘たち。
ライスシャワーは後方に位置取りをし、最後の差しのために脚を蓄えているようだ。
「うおおおお!行けライスシャワー!!」
「頑張れ、ライスシャワーさん!」
全力で応援する富永と、警戒はしつつもレースを楽しみ応援する一也。
レースはつつがなく進行し、レースも終盤に差し掛かる。
ウマ娘の集団が第3コーナーを回るとき、『それ』は起こった。
ライスシャワーは来たるラストスパートに向けて、
立ち位置やコース取りを考えながら走行していた。
(そろそろ終盤に向けてルートを確保しなくちゃ。
前は詰まり気味で中から差すのは少し難しい。
これなら、このコーナーで少し外を回って外側からのルートを取る!)
レース展開を考え、外差しの準備をして脚を強く踏み込んだライスシャワー。
その瞬間。ゴキ、と言う音が左脚から聞こえた。
「えっ…? つっ…!!!!?」
前へ進むための強い強い踏み込み。
しかしそこで起きたのは前方への加速ではなく、鈍い音と共に走る激痛であった。
その激痛に耐えられず体はバランスを崩し転倒。
高速で走行していた体はその勢いのまま地面を抉りながら転がっていった。
『ああっと、転倒、転倒です!ライスシャワーだ、ライスシャワー転倒!!』
実況は慌ててライスシャワーの転倒を告げ、
観客席から聞こえていた歓声は途端に悲鳴へと変化した。
しかしその中に響いた悲鳴ではない声。
「一也くん!!」
「富永先生!!」
2人の医者は互いの名を呼び一瞬だけ目を合わせた後、
迷うことなく柵を乗り越え、ライスシャワーの元へ駆けていった。
個人的に「この世界観で存在していいのか?」っていう超能力や超技術が結構好きです。
K2はかなり真面目な世界なのでスーパードクターK時代の名残のバイオレンスや超能力が好き。
他の作品だと、コナンに本物の魔女がいたり金田一少年に本物の幽霊がいたりします。好き。
さすがに本編の重要なところに絡んだらアレですけどね。