スーパードクターU   作:黒い平方四辺形

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そろそろ私の体力(ネタ)が尽きてきたので、アニメの話をやって一区切りつけようと思います。
アニメのこの辺を見て、K先生がいてくれたらなあと思ったのがこれを書き始めた理由なので、
どこかでやっておきたかったのです。ただし話の流れは大体まんまです。
それと時系列については深く考えてはいけません。


帝王(前編)

 

 

2度目の骨折から立ち直り、

メジロマックイーンとの再戦に向けて奮闘するトウカイテイオー。

だが彼女を待ち受けていたのは3度目の骨折だった。

かかりつけの医者に診てもらい、骨折の具合を確認する沖野とトウカイテイオー。

 

「また骨折かあ…。で、いつからレースに出られるの?」

 

「3度目の骨折です…癖になっているかもしれません。骨折自体は治ります…

ですが、元のように走れるようになるのかはっきりとは言えません。

申し上げにくいのですが、私の立場からはこれ以上走るのはお勧めできません」

 

 

トウカイテイオー3度目の骨折。

大きくニュースでも報道され、多くのファンに衝撃を与えた。

多くの者はもう復帰は難しいだろうと感じ、

トウカイテイオーへの諦めの声と労いの声が大きくなっていた。

 

 

そしてトウカイテイオー本人も。

 

美しいフォームで、飛んでいるかのように走るメジロマックイーンの姿。

それを眺めながら、大粒の涙をこぼすトウカイテイオー。

 

(そっか、そうなんだ)

 

(ボクはもう、あんな風には走れないんだ)

 

(ごめんね…マックイーン…。)

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

N県T村、Kの診療所。

富永が診療所の整理をしていると、突然入ってきたウマ娘が突撃してきた。

 

「Kせんせい~!!!!!助けてよ~!!!!」

 

「うぼぁっ!!!」

 

それは小柄なウマ娘だったが、富永はその威力に耐えられず吹っ飛ばされた。

 

「ちょっ、なんだいきなり!?…君は、ツインターボか!?」

 

「Kせんせい~!!!うわああああん!!!」

 

ツインターボは富永に抱き着いたまま泣き喚いた。

 

「なんで泣いてんの!?あと僕はK先生じゃないよ!K先生はそっち!」

 

富永がツインターボの顔をKの方面に向けさせる。

するとツインターボは富永から離れ、Kへ突撃していった。

残された富永の白衣は、彼女の涙と鼻水でベトベトだった。

 

「ありゃあ…これは洗濯しなくちゃいけないな」

 

富永に続いて突進されたKだったがさすがはスーパードクター、

ツインターボを難なく受け止める。

 

「ぬっ…!いったい何事だ。怪我でもしたのか?」

 

「うっ、ぐすっ、デイオーが…うわああああ…!!」

 

「全然わからん…。まったく、泣く子と地頭には勝てんな」

 

ツインターボはずっと泣いているためにろくな説明ができなかった。

そこでようやく助け船の登場。

世話役のカノープスのメンバーとトレーナーが診療所に入ってきた。

 

「ターボ!!1人で突っ走るなって言ったでしょ!

ごめんなさいK先生!ちょっとターボが暴走しちゃって…」

 

「うえ~ん!ネイチャ~!!」

 

ツインターボがナイスネイチャの手によって引っぺがされる。

しかし今度はKの白衣もベトベトになっていた。

 

「ターボさん…ここは病院なんですから騒いではいけませんよ」

 

「K先生お久しぶりで~す!

この前も学園に来てたって聞いて、会えなくて残念!って思ってたんですけど。

また会う機会ができてうれしいです!今はお鼻の調子もばっちりですぞ!」

 

「K先生、その節はお世話になりました。今日は先生にお願いがありまして…」

 

ナイスネイチャと共にツインターボをたしなめるイクノディクタス、

Kとの再会を喜ぶマチカネタンホイザ、丁寧にあいさつをする南坂トレーナー。

カノープスのメンバーが勢ぞろいでやってきているようだ。

 

「君たちはカノープス。ツインターボさんに何かあったのか?」

 

「あはは、そう見えますよね。

でも今回はターボさんのことではなくてですね…

トウカイテイオーさんのことでお願いに来たんです。

どうしても頼みに行くって聞かなかったので…」

 

南坂がそう言うと、Kの顔つきが変わった。

 

「トウカイテイオーか、3度目の骨折と言うことで話題になっているな。

本人は連れてきているのか?」

 

「いえ、ここに来たのは我々の願いのためと言いますか…

特にターボさんの願いのためなんです」

 

ナイスネイチャがツインターボの頭を撫でながらKの前に連れて来た。

 

「ほら、ターボのしたいことなんだから、アンタからちゃんと先生に説明しなよ」

 

「うん…」

 

「ツインターボさん、説明してくれるか?」

 

「えっとね…テイオーの脚を治してほしいんだ!

テイオーはターボと勝負するって約束したのに!

もう引退するんだって言ってるんだ!そんなのヤダ!

K先生ならテイオーのこと治せるでしょ!?お願い!」

 

Kは涙ながらに訴えるツインターボを見ながら少し考えこんだ。

 

「そういう話か。確かに俺は彼女の脚を治すことはできるだろう。

だがそれには一つ大きな問題がある」

 

「問題ってなに!?」

 

「それは…トウカイテイオーの脚は治せても、心を治すことができないということだ」

 

「心!?……って、どゆこと?」

 

言っている意味が分からないらしく、ツインターボが頭をかしげる。

 

「彼女は精神面のダメージが大きいのだ。

さっきトウカイテイオーは連れて来たのかと聞いたが、実は来ているはずがないと知っている。

なぜならトウカイテイオーは沖野トレーナーに連れられて一度ここにきているんだ」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

それはツインターボらがKの診療所を訪れる少し前のこと。

沖野からKに連絡が来ており、トウカイテイオーを一度診察をしてもらうこととなったのだ。

 

 

「それでは一通り検査をしていきましょう。採血、触診、レントゲン、CT撮影を行います」

 

「えー!お注射はヤダヨー!もー、なんでまた検査なんかするのさ!?

かかりつけのお医者さんで十分でしょー!?」

 

「まあ我慢してくれテイオー。セカンドオピニオンって言葉もあるだろう。

俺もあの先生は信用しているけど、K先生ならまた別の視点から見てくれるからな」

 

「うう~…でもな~…」

 

「はい、では腕を出してください。採血します」

 

「うああ~!!お注射いやだ~!」

 

注射を見て青ざめるトウカイテイオーを、沖野が必死になだめた。

 

「頑張れテイオー!ゴルシだったら採血されるところを超ガン見してたぞ!

天下の帝王がアイツに負けていいのか!?」

 

「負けでいいよ~!ゴルシはゴルシだからボクと違うもん~!」

 

「はい親指を軽く握ってください。採血します」

 

騒ぐトウカイテイオーを横目に、Kの無慈悲な一撃が刺さる。

 

「うわあぁ!K先生力強すぎない!?全然動かせないんだけど!!」

 

「騒いだりする者を抑える事が出来るくらいには鍛えてある」

 

「あっ、あっ…!うわああぁ~!!」

 

ブスっと大成功♡

 

 

「はいお疲れ様でした。無事に採れました、痕は5分くらい押さえてくださいね」

 

テイオーがしかめっ面をしながらもKの指示に従う。

 

「もう…こんなか弱い女の子が怖がってるっていうのに、先生は全く動じないね」

 

「俺は医者だ、患者のためにやるべきことをやる。

心を鬼にしてでもやらなくてはならないのだ」

 

「全然心が籠ってない!心を鬼にするっていうけど、最初から鬼みたいなもんでしょ!?」

 

Kは患者に少し騒がれたくらいではまったく気にしていないということを、

トウカイテイオーには丸分かりだったようである。

 

鬼門の採血が終われば、残りの診察は楽なものである。

Kが一つ一つ丁寧に診察していき、最後にCT撮影を行った際。

 

「む…これは…!」

 

Kが何かに気づいたようだった。

 

 

 

診察の終了後。

 

「さて、診察結果は分析に少し時間がかかるからあとで連絡をしよう。

今日はこれで終了だ。お疲れ様でした」

 

「お疲れでーす。じゃあトレーナー、帰ろうか」

 

「そうだな。でも…次のバスは1時間以上あとだな。しばらく待っていよう」

 

「うへえ~…時間かかるなあ。そうだ、暇だしその辺散歩しよーよ!」

 

「散歩か。そうだな…」

 

トウカイテイオーは左脚を骨折してるので散歩させていいものかと考えた沖野。

その時Kと目が合い、少し目配せをされた。

 

「そうだな、この辺は自然が多いみたいだし散歩すると楽しそうだ。

でも悪いが、俺はトレーニングのことで先生と話したいことがあるんだ。

1人で行ってくる分には別にいいぞ」

 

「そっかー。じゃあボク1人で行ってこようかな」

 

「行ってらっしゃい。ただし脚には気を付けるんだぞ。

1時間後には戻って来いよ!」

 

「はーい!」

 

そう言ってトウカイテイオーは元気そうに出て行った。

それを見送った後、沖野はKに声をかける。

 

「テイオーは行ったようです。それで、何かありましたか?」

 

「ええ、いくつか聞いておきたいことがありましてね」

 

Kが真剣な表情で沖野に聞いた。

 

「トウカイテイオーさん。彼女の今の精神状態はどうですか?」

 

その質問に、沖野は少し言葉を詰まらせる。

 

「…あー。まあ先生ならわかっちゃいますか。

今のテイオーのメンタルはどん底です。治療を頑張ろうという気持ちが全くない」

 

「やはりそうでしたか。頑張って直そうという気概を感じられなかったのでね。

理由はわかっているのですか?」

 

「ええ、まあ単純な話ですがね…心が折れちまったんですよ、あいつ。

テイオーは過去にも2回骨折してしまったわけですが…

1回目の骨折では三冠の機会を逃してしまったし、

2回目の骨折ではマックイーンへのリベンジを先延ばしすることになった。

このこともかなり精神的にダメージにはなっていたんですけどね…

それでこの3回目です。同じ所ばかり骨折するのは、

骨折の癖がついているかも知れないと、かかりつけ医から言われました。

そして、医者としてはもうレースに出るのはやめた方がいいと。

要は引退勧告されたんです」

 

「なるほど…そういう経緯があったんですか」

 

「それでもね、あいつも我が強いウマ娘です。

医者に引退勧告されたとしても、自分で納得してなかったら諦めるような奴じゃない。

じゃあ今回はどうしてだ…というと。

それはやっぱりあいつ自身の心が折れてしまっているからなんです」

 

「そうですか…。まあ3度も故障したとなれば、精神的につらい気持ちはわかります」

 

「そうなんですよね。俺としては頑張ってほしいし、他のいろんな人も応援はしてくれます。

でもつらい気持ちはよくわかりますし、怪我は治っても脚が元に戻れる保証もない。

だから強くは言えないんです」

 

「無理もない話です」

 

「それで…K先生もかかりつけ医と同じ意見ですか?

テイオーは走らない方がいいと思いますか?」

 

沖野がKの瞳をじっと見つめる。

トウカイテイオーが諦めるのも仕方ないというようなことを言った沖野だが、

それでも『ある答え』を期待している気持ちがよく表れていた。

Kは少しだけ考え、言葉を告げる。

 

「…治すことは『可能』だと思われます」

 

その答えを聞き、沖野の顔が明るくなった。

 

「そうですか!それならテイオーに…!」

 

「ですが」

 

逸る沖野を制止するように、Kが手のひらを前に出す。

 

「治すことは可能ですが、簡単に治るものではありません。

トウカイテイオーさん自身の努力と根気、そして周囲のサポートが必須となる。

それに治療しても再発の可能性がないわけではない。

治療のサポートに関しては問題ないでしょうが…問題は本人です」

 

「テイオーの精神状態…ですね?」

 

「そうです。治療を始めたら数か月は治すことに専念しなければなりません。

ですから本人に強い意志がなければ治療は成功しない。

だが今の状態を見ると、それは難しいように思えます」

 

沖野は悩んでいるようで頭を抱えた。

 

「そうですよねえ…。

俺やチームメイトも励ましているんですけど全然気力が戻ってこないんです」

 

「私は医者として体を治すことはできても、心を治すのは簡単には行きません。

私のような他人よりも、トレーナーや仲間たちが彼女を元気づけてやってほしい。

私はその時が来ることを信じて準備をしておきます。

沖野さんたちでトウカイテイオーさんの気力を取り戻させてください。

それができた時、彼女の治療を始めましょう」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

Kは沖野とトウカイテイオーが来た時のことをかいつまんで話した。

 

「君たちも理解しているだろうが、今のトウカイテイオーには気力がない。

その状態では私にもやれることは少ないのだ」

 

「そんな~!テイオーはターボのしゅーせーのライバルなんだぞ!

治してやってよ!K先生は医者なんでしょ!?」

 

何を言われようと納得はしないツインターボ。

Kはツインターボの目をじっと見つめ、真剣な眼差しで言った。

 

「ならばツインターボ。君がトウカイテイオーを奮い立たせてみろ。

俺のような部外者では心を救うことは難しい。沖野トレーナーにも言ったが…

終生のライバルである君や、スピカの仲間たちのように…

トウカイテイオーの仲間やライバルで彼女の心を治してやってほしい。

心の治療ができたのなら…体の治療は必ず俺が成し遂げる」

 

「ターボたちで…心のちりょーを…」

 

Kの真剣な顔と言葉に、騒いでいたツインターボも動きが止まった。

そして彼女の瞳の中に、かつてない強い意志の炎が灯る。

 

「…わかった。ターボがやってやる。

テイオーを引退なんてさせるもんか!」

 

ツインターボはオールカマーに向けて、トウカイテイオーから言われた言葉を思い出した。

 

『ターボが勝てるわけないよ』

 

ライバルだと思ってくれてないことが悔しかった。

自分が勝つことを信じてくれないことが悔しかった。

最初から諦めているトウカイテイオーの姿を見るのが悔しかった。

そして、テイオーの心の支えになれない自分が悔しかった!

 

「テイオーに言われたんだ、ターボはオールカマーで勝てるわけがないって。

でもそんなことないって見せつけてやるんだ。

ぜったいぜったい、逃げ切って勝ってやる!

それで諦めなければできるんだって教えてやるんだ!!」

 

熱く心を燃やすツインターボ。

しかしそこにナイスネイチャが口をはさんだ。

 

「うーん…それをテイオーに見せるのは難しいかもね…」

 

「えっ、なんで?」

 

「オールカマーの日って感謝祭の日と被ってるでしょ。

同じ時間帯にテイオーはミニライブやるわけだから、

ターボが走ってるのを見せるのは無理なんじゃないかな」

 

「ええ~!!!そんな~!!トレーナー、何とかしてよ!!」

 

「えっ!?何とかと言われましても…」

 

ツインターボは縋りつくような目で南坂の目を見つめた。

いつも明るく楽しく暴走するツインターボが、

これほど悔しそうに、悲しそうに、執着するのは初めてだ。

南坂としても、出来ることなら願いを叶えてやりたいと思う。

 

「わかりました、こうしましょう。皆さん耳を貸してください」

 

南坂が方法を思いついたらしく、カノープスの4人へと作戦を伝える。

 

「まず、オールカマーに出走しないネイチャさんとタンホイザさん、そして私の3人で、

目出し帽をかぶって正体がわからないようにしてミニライブ会場の裏方に侵入します」

 

「「「「うん」」」」

 

「次にネイチャさんとタンホイザさんで、ライブの管理をしている担当者を拘束。

ミニライブの操作の権限を我々で掌握します」

 

「「「「ふむふむ」」」」

 

「そして2人が担当者を拘束している間に、私が配線を変更してバックモニターをジャック。

オールカマーのレース映像を繋ぎ、ターボさんの姿をモニターに映し出します。

これでテイオーさんにターボさんの姿を見せることができます」

 

「「「「なるほど…!!」」」」

 

 

 

南坂の完璧な作戦を横で聞いていたKと富永。

 

「け、K先生。なんかすごいことやろうとしてるみたいですけど…」

 

「うーむ…まあ俺たちには関係のないことだ、好きにさせておけ」

 

 

 

 

「トレーナーは天才だな!これでテイオーにターボのしょーりを見せつけてやれるぞ!」

 

喜ぶツインターボだが、その場にいる他の全員はもう一つの重要なことを忘れてはいない。

 

「これでターボさんのレースを見せることはできます。

しかしもう一つやらなければならないことがあります…

それは『ターボさんが勝つこと』です。これができなければ全てが無駄になります」

 

「それなら大丈夫だぞ!ターボはぜったい負けないから!」

 

「ターボさん。あなたは強い子ですが…毎回必ず勝てているわけではありませんよね。

負けたら次頑張ろう、とターボさんは頑張ってくれましたが…

もし今回のオールカマーで負けてしまった場合、おそらく次の機会はありません」

 

「次がない…ってなんで?」

 

そこにKが会話に加わる。

 

「南坂さんの言う通りだろうな。俺は君たちの行動を止めるつもりはあまりないが…

これでツインターボさんが負けてしまった場合どうなるか?

引退発表をする予定のミニライブを襲撃し、無理やりレースの映像を見せて、

ツインターボさんの諦めない姿を見せ…その結果負けてしまったら?

そうなれば『諦めず頑張っても無理なんだ』と、

トウカイテイオーの弱った心に止めを刺すことになるだろう。

彼女を励ますどころか、君が彼女を殺すことになる。

だからそれを行うのなら、君が勝つことが絶対条件なのだ」

 

「タ、ターボがテイオーのことを…?そ、そんなのやだ!」

 

「だからターボさんにはレースで勝つための『作戦』を伝えます。

いつものように最初から全力で走るのではなく、中盤まで脚をため、

第3コーナー過ぎから爆発させる『変則二段逃げ』をしてください」

 

「えーっ!やだやだ、ターボ全力がいい!

いつも通りなんにも考えない全力がい~い!!」

 

南坂がツインターボに作戦を伝え、ツインターボが案の定ぐずりだしたその時。

ナイスネイチャはKと富永に近づき2人に耳打ちをした。

 

 

「いや~南坂さん、素晴らしい作戦っスね!その作戦を実行したら、

もうツインターボに勝てるウマ娘なんていないんじゃないスか!?」

 

「トウカイテイオーにも匹敵する才能を持つツインターボ。

それが『作戦』という『技術』まで手に入れてしまったら…

最強のウマ娘の名を独り占めする日も遠くないかもしれんな」

 

Kと富永はナイスネイチャに頼まれ、ツインターボをおだててみた。

 

「ほんと!?じゃあターボやってみる!!!

その作戦でターボは最強になるんだ!!!!」

 

するとツインターボはすぐにそれに乗っかってやる気が出たようだ。

 

(おっしゃ。やっぱターボはコレだよね)

 

(チョ、チョロい…!)

 

(彼女はおだてればすぐ木に登るタイプか…)

 

(ネイチャさん、K先生、富永先生!ナイスです!)

 

南坂がガッツポーズをすると、3人はにやりと笑ってサムズアップをした。

 

 

 

やる気は満タンのツインターボだが、少し不安げな表情を見せる。

 

「でも…できるかな?ターボはいつも頭真っ白で走ってきたから…

うまくできるかわかんない…」

 

「ターボさんならきっとできます。

あなたとテイオーさんのために、挑んでみましょう。

あなたは決してあきらめない強い子です。だから、頑張りましょう」

 

「ターボと、テイオーのため…。

そうだ…。テイオーはあきらめそうになってる。

でもターボは、ターボは…どんなに苦しくたってやってやる!

そうだぞ、ターボはぜったいに…」

 

「あきらめないぞ――――っ!!!!!」

 

エンジンに火が入り、ツインターボが吠える。

それは野生と友情の叫びだった。

 

「よーし!じゃあ特訓しなくちゃだな!!!

イクノ、いっしょにやろう!!!」

 

「ええ、共に勝利を掴みましょう!」

 

「じゃあK先生はテイオーのちりょーをよろしくね!!」

 

「任せておけ。俺が必ず治してやる」

 

「よーし!!!ターボの大作戦、開始だ!!!」

 

 

ツインターボ、常に我が道を往くウマ娘。

 

ウマ娘は誰でも自分の目的のために走る。

楽しさのため、勝利のため、冠のためなど様々だ。

だがその中で、走る理由が誰かのためでもあるウマ娘は少なくない。

 

自分を育ててくれたトレーナーのため、家族や家系の願いのため。

応援してくれるファンや仲間のため、共に研鑽するライバルのため。

 

そういう者も多くいる中で、ツインターボは常に自分だけを求めて走ってきた。

自分が楽しい、自分がやりたい、ただそれだけのために走ってきたツインターボ。

 

だがこのツインターボが、一方的なライバル意識によるものではあったが…

生まれて初めて『人のために』走る!

 

 

 

 

「さて、遠路はるばる俺の診療所まで来てくれたんだ。

せっかくだから皆さんの健康診断をしてあげましょうか」

 

Kがそう言って準備を始める。

 

「それは有り難いですね。4人ともK先生に診てもらいましょう」

 

「K先生に診てもらうの久しぶりだなー!今回はお鼻にも自信ありますよ!」

 

「K先生ほどの方に診ていただけるのは助かります。是非宜しくお願い致します」

 

「せっかくだしね~。よろしくお願いします!」

 

「えっ!!!ターボもか!!?」

 

いい機会だと喜ぶマチカネタンホイザ、イクノディクタス、ナイスネイチャに対し、

ツインターボだけが顔を青ざめた。

 

「けんこーしんだんってことは…アレをブスっと…」

 

何かを想像して体を震わせるツインターボ。

そしてKの手元には注射針が用意されていた。

それを見たイクノディクタスは他の2人に号令をかける。

 

「タンホイザさんは右、ネイチャさんは左へ回ってください。

私は背後から向かいます!」

 

「「応!」」

 

イクノディクタスらが散開しツインターボを取り囲む。

 

「注射はいやだー!!ターボエンジン、ぜんか…いっ!!?」

 

「そうはいかないよ!」

 

外に逃げ出そうとしたツインターボだったが、

ナイスネイチャとマチカネタンホイザがそれを取り押さえた。

 

「右側確保だ!」「左も確保したよ!」

 

「うわあ~!裏切るのか!?はなせ、はなせネイチャ、タンホイザ!」

 

「ターボさん、観念してください。今回の作戦はあなたが要です。

我々の中で最も健康を確保しないといけないあなたを逃すわけにはいきません」

 

そう言ってイクノディクタスもツインターボをがっちりとホールドした。

 

「うおお~!!はなせぇ~!!注射いやだ~!!」

 

大暴れするツインターボを見て、Kは少し前にもこんなことがあったと思い返すのだった。

 

(注射を嫌がる所はトウカイテイオーに似ているな。

もっとも、彼女はここまで暴れなかったが…)

 

「トウカイテイオーを診察した時はこんなに怖がっていなかったな。

注射対決はツインターボの『負け』か…。」

 

Kは小さく、だがツインターボに聞こえるように呟いた。

 

「!!!!!  ターボの負け!!?」

 

「おっと、聞こえてしまったか。

そう、トウカイテイオーは帝王らしくどっしりと構えていたよ。

だから君の負けと言うことに…」

 

「いいや、ターボは負けないもん!!テイオーに勝つもん!!

いいよ、だったら何本でも刺してみろ!!」

 

「おっと、それは失礼した。さすがはトウカイテイオーを超えるウマ娘だ…。

それでは採血させてもらう。君の強さを俺に見せてくれ」

 

「か…かかってこい…!!ターボは強いんだからな…!」

 

ツインターボは取り囲んでいた3人を振り払うと勢いよくKの前に座り、腕をまくった。

目は強く閉じられ、脂汗は流れ、耳は逃げるように後ろを向いていたが、

注射から逃げないことを決意したようだ。

 

「おお、ターボが自ら!すごいよ!」

「さすがはK先生、心理誘導もお手の物ですか」

「ターボが大人しくなってくれるとうれしいわ。

今は病院行くたびにアタシかトレーナーが付いてってるかんね」

 

Kの煽る作戦が功を奏し、ツインターボは逃げることなく健康診断を受けられた。

他3人とついでに南坂も診断してもらい、

現状は全く問題なしとのお墨付きを得ることができた。

 

 

オールカマーに向けてツインターボの特訓は続いた。カノープスの他3人や、

乱入してきた爆逃げウマ娘のダイタクヘリオスとメジロパーマーなどの協力を得て、

第3コーナーまで余力を残し、そこから全力ダッシュする作戦を覚えた。

 

 

 

そしてオールカマー、トウカイテイオーの引退ライブの当日が訪れる。

 

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