スーパードクターU   作:黒い平方四辺形

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場面の区切りの関係でちょっと短くなりました。


命の番人③

 

 

帝都大学にテロリストが攻め込んできて少し後の時刻、場所は西城医院。

ここはKEIが経営する病院。ここもテロリストの標的の1つであり、

こちらにはテロリストが3人やってきていた。

 

窓ガラスに静かに穴をあけて侵入してきたテロリスト。

中を探索すると、ベッドに寝かされた男がいるのを発見した。

 

「黒須一也、ここにいたか。やはり帝都大学のほうは囮だったようだな…。

存在してはいけない存在。ここで死ね!」

 

テロリストがサバイバルナイフを取り出し、寝ている男の胸に深々と突き刺した。

しかし返ってきたのは妙な手ごたえ。明らかに人間のものではなかった。

 

「な…これは人形!?」

 

寝ていた男が一也ではなく偽物だと気づいた直後。

そのベッドの下から手が伸び、テロリストの1人の足をむんずと掴んだ。

足を掴んだままベッドをひっくり返しそのまま起き上がる、ベッドの下に潜んでいた男。

スキンヘッドと屈強な肉体を持つ、ロシアからテロリストを追ってきたジリノフスキである。

 

 

【ラスカー・ジリノフスキ】

一也を作り出したKAZUYAの叔父・一昭の右腕。

一昭のことを慕っており、一昭亡き後も彼の思いを受け継ぐ。

戦闘能力が非常に高く、TETSUに襲われた時は一方的に彼を殴り倒し、

人間を片手で軽々と持ち上げるような怪力がある。

 

一昭の組織は人間のクローンを成功させた組織だったために、

ロシア政府によって秘密組織として研究をさせられていたが、

唯一の成功例である一也の研究データはすべて一昭が墓まで持っていったため、

一昭亡き後は特に大きな成果は出せなくなった。

その結果組織は秘密組織を解除されて再生医療研究の機構として、

ハバログラード大学に組み込まれ公的な国家機関となった。

3か月前にその機関が命の番人に襲撃され150人もの犠牲者が出てしまい、

さらに一也をも抹殺しようとしていることを知ったため、

一也を守るべく護衛としてビクトルを派遣。

次いで自らも部下を連れて日本に乗り込んできた。

 

 

 

 

 

「うわっ…お前はジリノフスキ!?」

 

「囮にまんまと引っかかってくれたようだな」

 

ジリノフスキがテロリストを絞めた鶏でも掴むようにして軽々と持ち上げる。

掴まれたテロリストは咄嗟に腰から銃を取り出し、ジリノフスキに向けて数発発射した。

弾丸は命中するも、しかしジリノフスキは全く怯む様子がない。

ジリノフスキは防弾ベストを装着しており、命中したのはそこだからである。

 

「むんっ!!」

 

体勢を崩したテロリストの顔面に向けて、ジリノフスキによる凄まじい威力の拳が飛んだ。

受け身も取れない状況から顔面を殴られた上に硬い床に頭を打ち付けられ、

テロリストはそのまま沈黙した。

 

「わわ…ジリノフスキだ…!」

「黒須一也はここではなかったんだ…退けー!」

 

ジリノフスキの戦闘能力はテロリストたちも重々把握しており、

そのまま戦えば勝ち目がないことは明白だった。

残る2人のテロリストはすぐさま踵を返し逃走を試みる。

しかし病室から廊下に出ると、そこには2人の女が待ち構えていた。

この西城医院の長であるKEIと、援軍として来たナリタブライアンである。

 

「こちらは…行き止まりだ!」

 

ナリタブライアンはそう言うが早いかテロリストの1人に接近し、

腕を強く引き、さらに尻尾で足払いをしてバランスを崩させる。

そして即座に襟をつかみテロリストの体を宙に浮かせた。

鍛えたウマ娘の腕力にかかれば成人男性などトレーニンググッズ程度の重量でしかなく、

投げの技術も相まってテロリストは何の抵抗もできぬまま投げ落とされた。

背中から強かに地面に打ち付けられたテロリストは数十センチ跳ね飛び、

かなりの衝撃によって呼吸ができなくなり苦しんでいる。

 

さらにKEIも軽やかに残りの1人に接近し、凄まじい威力の回し蹴りを顔面にお見舞いする。

通常の人間の女とはいえK一族の一員であるKEIは、やはり戦闘能力では普通の男を上回る。

蹴りを受けたテロリストは歯の大半をへし折られ、そのまま昏倒した。

 

 

【磯永KEI】

旧姓・西城KEI。KAZUYAの妹。

一也同様特殊な生まれであり、

KAZUYAの母が亡くなる際に受精卵として体内に残っていたものを、

KAZUYAの叔父である西城頼介の妻が代理母となり出産した。

その出生のいきさつを知った時、元々の母が死んだのは医学のせいだと思い、

世界から医学を崩壊させようとして様々なテロ行為を行った。

最終的には改心し、KAZUYAの後輩である磯永幸司と結婚する。

医療技術は非常に高く、彼女もまたスーパードクターの1人。

だが自分の技術はKAZUYAには及ばないとしており、

KAZUYAに匹敵する能力を持った神代一人をドクターKにするため活躍した。

 

子供のころにK一族の身体能力を得るためにT村へ連れられてきており、

村で起こった事故の衝撃で逆行性健忘でしばらく忘れていたが、

若き日の神代一人とも面識があった。

 

 

 

 

ナリタブライアンはKEIの鋭い動きに驚きつつ、制圧が完了したことを確認した。

 

「案外歯ごたえのない連中だったな。まあ道具に頼るテロリストの実力などこんなものか」

 

「すべて片付いたようね。帝都大学の方にも食いついたと連絡が来たけど、

そちらも無事に制圧したそうよ」

 

「あちらはダイヤがいたな、無事に済んだようならよかった」

 

「全くだわ。しかしブライアンさんはウマ娘なのにいい動きしてるわね。

ウマ娘は力が強いから技がおろそかになりがちなのだけど、あなたの動きはとても美しかったわ」

 

「フッ、鍛えているからな。『走る』という行為は至極単純で原始的なものだが、

頂点に立とうと思えば体の動きを突き詰めていく必要がある。

だから体の扱い方を鍛えられる格闘技は相性がいいものだ。

カレンやオペラオー、アキュートなんかも体術を鍛えていたっけな…」

 

KEIとナリタブライアンが話していると、

ジリノフスキが失神したテロリストを引きずりながらやってきた。

 

「ふむ、片付いたようだな。そちらでは銃撃されなかったようで安心したぞ」

 

ジリノフスキが2人をジロリと見回し、ナリタブライアンは少しだけ嫌そうな表情をした。

KEIは身軽な方がいいからと言って防弾ベストは装着していない。

ナリタブライアンはアグネスタキオンにもらったものを着けていたのだが、

勝負服に合わせてあったために腹部も腕も丸出しだった。

それを見たジリノフスキに怒られ、半ば強引にしっかりした装備にさせられていたのだった。

勝負服が隠れてしまうことは不本意であり、まだ少し不満げな表情をしている。

そういう状態であったため、ジリノフスキは2人のことを少し心配していたのである。

 

意識が残っていた1人のテロリストが、自分が敗北したことを悟って口を開いた。

 

「こ…ここも囮だったか…見事に…戦力を分散させられたな…」

 

「む、まだ喋れたか」

 

ジリノフスキが追撃をしようと拳を握るが、テロリストはそのまま続ける。

 

「だが、矢はもう一本放たれている…!知っているぞ…

お前たちが…黒須一也を匿う可能性のある…もう一つの場所を…!」

 

「なに…!貴様ら、そこも把握しておったか…!」

 

テロリストの言葉にジリノフスキとKEIが顔を見合わせる。

一方でピンと来ていないナリタブライアン。

 

「そういえば私も一也の場所は聞かされていないな。

ダイヤのいる帝都大学や、一也の母親がいる家でもないのだろう?」

 

「ああ、一也がいる場所はもう一つの場所…

ドクターKEIの父親の病院、西城総合病院だ」

 

「あそこも知られてるとなるとまずいわね…私たちも向かいましょう」

 

「ああ、行かねばならんな!」

 

ジリノフスキとKEIが移動の準備を始めている間に、

ナリタブライアンはテロリストへ厳重な拘束を行う。

その時さらにテロリストが余計なことを言い始めた。

 

「ハハ…今更向かってももう手遅れだ…

俺たちから連絡がなかったら西城総合病院を強襲する手立てになっている…

それにお前たちはもう一つ放たれていた…毒矢にも気づいていない…」

 

拘束作業を行っていたナリタブライアンがジリノフスキに聞いた。

 

「ジリノフスキさん、何かこいつブツブツ言っているぞ。

おいお前、毒矢とか言っているが何のことだ?

このまま頭部をザクロのように潰されたくはないだろ…?」

 

ナリタブライアンはテロリストの頭部を握ると、

万力のようにゆっくりと、そして凄まじい握力で力をかけていく。

 

「ぐああああ!!バ、バカめ…誰が言うか…!殺せばよかろう…!

そして…終わってから後悔しろ…!」

 

テロリストは他人の命はもちろん自分の命も犠牲にする覚悟ではあったため、

余計なことを口走るわりに尋問に対する口は堅そうだ。

喋っていたことも負け惜しみの憎まれ口であることは明白だが、

内容そのものに嘘はなさそうに見える。

 

ジリノフスキが言葉の意味を考えていると、1つの懸念材料に思いあたった。

帝都大学からは制圧完了の連絡が来ていたが、

黒須麻純の家からは何も連絡が来ていない。

テロリストの襲撃がないというだけならばそれでいいのだが。

 

「…黒須邸のほうはどうなっているだろうか?」

 

そこでジリノフスキが、派遣している護衛者の1人に連絡をかけてみると何の応答もない。

 

「なんだ…?黒須邸の者と連絡が取れんぞ。まさか…」

 

「黒須邸と言うのはライスシャワーが援護に行っているところだろう?

元から数人の護衛が付いているのだから、

この程度のテロリストに後れを取るなんてことがあるのか?」

 

ナリタブライアンがそう言うと、ジリノフスキは少し考える。

彼女の言う通り、黒須麻純の家には自分の部下を数人向わせてあった。

自分ほどではなくとも、それほど軟弱な者を護衛として付けてはいない。

それなりに腕の立つ男と、ウマ娘の護衛者もいるのだから、

緊急連絡も取れないほどあっさりやられるとは思えないが…。

 

その時、1つの可能性を頭に浮かべた。

前に一度考えたが、状況的に対処のしようがない問題。

「毒矢」という表現にも合致するような存在のことを。

人の心の中はわからない。もしかすると自分の部下の中にも悪しき思想に蝕まれている者が…

 

「まさか…内通者か!?」

 

 

 




命の番人事件ではテロリストにブチ切れながら戦ってくれたKEIですが、ヤンチャしてた頃の行動を考えたらぶっちゃけ命の番人よりもよっぽどヤバいことしてるんですよね、この人。
人のこと言えるような立場じゃない(小声)
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